上 下
677 / 734
5:大森林観測村VSガムラン町

677:芋の町にて、続々・おにぎりの休日

しおりを挟む
「しかし、どうしますか? あちらの紳士しんしを、伸しちまいやしたぜ、こいつ・・・
 近寄ちかよろうとする手下てしたを――
「ぅおまち! あんたたちかな相手あいてじゃなぁいわよっ!」
 団長だんちょうせいした。

 コイツ呼ばわりされた、黄緑色きみどりいろねこ魔物まものは――すぽん♪
 細剣代ほそけんがわりの長串ながくしを、ぱっと跡形あとかたもなく消した。
 そして、まだ地に突き刺さったままの紳士しんしを、スポンと引っこ抜き――ヴッ♪
 どこからともなく取り出したなわで、きゅっとしばり上げてしまった。

「こらー、きみたちー! またぁーさわぎを、起ーこーしーてぇー!」
 解散かいさんした女性じょせいたちの向こうから、姿すがたあらわしたのは――
 冒険者ぼうけんしゃギルドの受付嬢うけつけじょう制服せいふくに、身をつつんだ――
 かなりどっしりとした・・・・・・・女性じょせいだった。

   §

なんてことかしら!?」
 手配書てはいしょ黄緑色きみどりいろ魔物風まものふうを、繁々しげしげ見比みくらべていたギルド受付嬢うけつけじょうが――

「これはこれは御使いさま・・・・・っ、アリゲッタ辺境伯領・・・・・・・・・へ――ようこそおいで下さいましたわっ!」
 ――などとのたまひざを突き、うやうやしくこうべを垂れる。
 その真剣しんけん様子ようすは、並々なみなみならぬ事態じたいであることを、うかがわせた。

「みゃぎゃやーにゃぁー
 御使いさま・・・・・は、振りかえる。
 うしろにだれも居ないことを、たしかめたようだ。
 すくなくとも黄緑色きみどりいろかれもしくは彼女かのじょには、御使い・・・である自覚・・はないらしい。

「おじょう――はなれてくだせぇ! そいつぁ、町民ちょうみん紳士しんしを手にかけた、悪党あくとうなんでさぁ! ぐぇへっへへへっ!」
 悪党あくとうのようなわるかおをする、自警団じけいだん手下てした
 かれ受付嬢うけつけじょうを、おじょうと呼んだ。

はなれるのは、きみたちのほうよ! ひかりのたてよ!」
『<MAGIC・SHIELD>――ピッ♪』
 受付嬢おじょうふくよかなてのひらに、浮かび上がる――
 一枚いちまいの、ひかりのたて。

 せいなる曼荼羅もんようは――ヴァチヴァチヴァチヴァチィ――――――――ッ!
 なわで巻かれた町民ちょうみん紳士しんしを――――燃え上がらせた・・・・・・・

 ぼっごおぉぉぉぉぉっぅわわぁっ!
 紳士かれかぜに吹かれたほのおで、とても良く燃えた。
 あわてふためく〝ポテフィール自警団じけいだん総員そういんめい)〟や、道行みちゆ人々ひとびと

「落ち着いて、この火はすぐに消えます!」
 その宣言通せんげんどおりに、せいなるひかりいぶされた紳士しんしが――ぷすぷすん♪
 ひとりでに、鎮火ちんかした。

「あれ、ここはどこだ? わたしなにをしていたのだ?」
 ほほかみを焦がした粗野そや紳士しんしが、きゅうひとが変わったように温和おんわ表情ひょうじょうを見せる。
 そして身を起こし、受付嬢うけつけじょう見上みあげた。

「おや、これはこれはポテリュチカじょう本日ほんじつもご機嫌麗ごきげんうるわし――ぎゃっ!? ねこ魔物まものっ!?」
 となりひざかかすわり込む、黄緑色ねこのまもの
 それに気づいた紳士しんしが――こしを抜かし、バタリとたおれた。

「これはまさかっ!? こんな町中まちなかで、〝魔神返まじんがえり〟に出くわすとはっ――あんたたちっ!」
 いさましく号令ごうれいをかける団長だんちょう

「「「へへーい!」」」
「にゃみゃー
 だらしなく立ち上がり、敬礼けいれいする団員だんいんたち。

顔色かおいろわるくて、いらついた様子ようす町人まちびとがいたらぁ――自警団詰じけいだんつしょに、連れてくるんだよ!」
 団長かれ内股うちまたはふたたび、ぐねっていたが――
 そのかおはとても真摯しんしで、とおくのほう女性じょせいの取り巻きが湧いた。

 どたたたっ、ぽきゅらら――と散っていく団員だんいんたち。
「あっ、御使みつかいさまは、そんなことをなさらなくて、よろしいですのよぉー!」
 受付嬢おじょう黄緑色みつかいを追って、行ってしまう。

 倉庫そうこに取りのこされる紳士しんしと、種芋たねいもとげ団長だんちょう

大丈夫だいじょうぶかいっ!?」
 紳士しんしからだを起こしてやる、筋骨隆々きんこつりゅうりゅう
「ぅうーん?」
 抱き起こされた紳士しんしが、いきを吹きかえした。

 その視線しせん交差こうさし――「ぅふぅん――♪」
 バチィン♡
 片目かためを閉じ、身をくねらす団長だんちょう

 その視線直撃ちょくげきした紳士しんしかおが、ふたたびあおざめ――
 パタリとたおれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...