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5:大森林観測村VSガムラン町
646:冒険者ギルド大森林観測村支部、一触即発ふたたび
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ニゲルが、腰の剣に手を掛ければ――ガチャッ♪
村長が、頭陀袋から取り出した魔法具箱に、金貨を――チャリン♪
かなり大きく作った厨房には、巨大な焼釜や竈がたくさん並んでいる。
中央には階下の宴会場に繋がる、鉄籠が備え付けられており――
左右へ抜ける通路の先には、階段がある。
そして鉄籠を越えた正面奥、巨大倉庫の入り口付近には――
運び込まれたばかりの、巨大な〝イイスタァエッグ〟が置かれている。
つまり、ここから出るには階段へ続く左右二つの通路の、どちらかを通るしかない。
しかし、その両方が目つきの悪い、お貴族ご令嬢たちにより塞がれていた。
とても逃げられねぇじゃんか!
取り残されたおれたちや、数名の村人たちには同情するぜ。
通路さえ塞がれてなきゃ、卵と二股角娘を木箱ごと担いで、逃げることもできたが。
ふぉん♪
『シガミー>ロォグ! ココは女神像の中みたいなもんだろう? 例の扉を開いてくれや!』
返事がねぇ。さっき見たとき黒板を、持ってなかったから一行表示は使えないのか。
ならば――
ふぉん♪
『シガミー>星神さま! その辺の棚の扉を何処か、王都の大講堂で良いから繋いでくれ!』
ふぉん♪
『ホシガミー>女神像は1階から8階まで。ココは地下一階の切り株の中なので、出来かねます。何よりロォグさんが、あの有様ではププププークスクスクス♪』
転移扉の仕組みは流石に、まるでわからん。
ニゲルと村長が、厨房内に進み出る。
おれの背には焼釜。
正面には大竈と、鉄製の調理台。
そして、階下へ続く鉄籠――
「そうだぜ、鉄籠で下へ降りりゃぁ!」
調理台の上に、勢いよく飛び乗る。
つつつ-と、尻ですべりきり――
鉄籠の前に降りた。
そしたらずいと、工房長そっくりの奴に立ち塞がられた。
「駄目だぜ嬢ちゃん。あの籠はさっき一回、使っただけでガタが来ちまってるぜ」
あー、それでその下に潜って、何かやってたのか。
「ちょっと、そこの鉄釘たち! わーたーくーしわぁー、そんなに重くありませんでしてよ!」
あれ? ガムラン姫の矛先が鉄籠近くの、おれたちに向けられたぜ!
おれぁ、関係ねぇだろうが!
「でもお嬢さま。ちょっと見ぬ間に気のせいか、お顔がふっくらされたような?」
リオレイニアばかやろう、刺激をするなってんだ!
「誰が鉄釘だぁ! こいつぁ、オリハルコン製だぜ!」
ガガガァーーーーン!
鉄杭を手甲で打ち鳴らす、筋骨隆々。
全員の視線が、厨房中央のドワーフ族に集まった。
鉄杭の頭に――ヴォゥン♪
神殿のと同じ紋様が、浮かび上がる。
間違いなく何かのスキルを秘めた、強力な魔法杖だぜ――だがな。
「うーん、オリハルコン製と言われてもよ。ガムランじゃ避雷針に使うから結構見慣れたもんだぞ?」
勿論、素材として強力ではある。
だから避雷針として、使ってるんだし――
「くすくすくす♪ 費用対効果の点だけでなく、猪蟹屋謹製の迅雷鋼を使用すれば、コモン装備としての取り回しの良さを享受できるのでオススメ致しますわ、プププー♪」
やめろ星神。そんな場合か。
計算魔法具を弾き喜々とする、猪蟹屋従業員。
「なんだとっ!? そりゃぁ本当か?」
計算魔法具の数字を見て目を丸くする、髭の鍛冶職人。
あの工房長の叔父っていうなら、たぶん此奴も凄腕の熟達した職人だろうぜ。
「おれじゃなくて……ぐぎぎ……隣の奴に言え!」
がっちりと両肩をつかまれた。動けん。
誰が敵で味方か、わかりゃぁしねぇ。
何だぜ、この有様わよぉ!?
ふぉん♪
『シガミー>やい隣の奴。商売っ気もほどほどにしとけ。迅雷鋼の元になる使い切った避雷針は辺境伯さまと姫さんの直々の、ご厚意でもって仕入れられてる。其処の所をよーく考えろよ?』
あと今は、商売をしてる場合じゃねぇ。後にしろや!
ふぉん♪
『ホシガミー>わかりましたわー、クスクスクスクス?』
「んろっ? 同じ顔が並んでやがると、紛らわしいな」
凄腕の職人が、おれをぽいと投げ捨て――
おれの数年後の姿である茅野姫を、背中の鉄杭の上にひょいと乗せた。
「ちょっと通してくれ! 急いで見せてぇ、試作品があるんでよ!」
ガハハハハ-と、笑いながら――ロットリンデと村長を押しのけて、出て行ってしまう。
何人かの村人が、その後ろにくっついて逃げていった。
「はっ!? くそう、出遅れたぜ!」
気づいたときには、もう遅かった。
見れば調理台の上で震えていた鉄器が、無くなってる。
ふぉん♪
『シガミー>茅野姫、お猫さまを持って行ったか?』
ふぉん♪
『ホシガミー>はい、一緒に居ります。あのままでは、お可哀想でしたので、ププーッ♪』
なら、ついでに辺境伯名代さまも、持ってってくれりゃ助かったんだが。
ふぉん♪
『>>私たちもワーフ氏のように、気さくな感じで「ちょっくら通しては、頂けませんでしょうか?」と脱出を試みるべきでは?』
そう簡単にいくか。あの胆力はドワーフ族……小柄で屈強な彼奴ら、ならではのもんだぜ。
おれは、そっとリットリンデを見る。
「なんですの小猿。邪魔すると、また痛い目にあわせますわよ?」
眦をつり上げた、その顔も――
痛い目にあわせると言ってる。
おれは意を決して、振り返った。
「なんですのシガミー、この勝負に水をさすつもりなら、いつぞやの決闘の続きを今ココでしてもよろしくてよ……いえ、むしろそれっ、楽しそうですわね――クツクツクツ♪」
月影の眼光が顔の輪郭を越えて、はみ出しているように見えてきた。
これ以上は直視、出来ねぇ――はぁはぁはぁ。
おれは鉄籠にしがみ付き、巨大倉庫を見つめる。
あの倉庫に裏口はねぇ。
これから建てる建物の全てに、裏口を作ることを誓うぜ。
ふぉん♪
『>>まず全員を倉庫へ避難させ、その後に裏口を作れば良いのでは?』
気楽に言うな、大工仕事はアレで神経を使うんだぜ。
折角、良く出来た建物を、傷物にはしたくねぇ。
何より、大工仕事はそれなりに、でかい音がする。
後から「「水を差しましたわね!」」って、両方から詰め寄られるに決まってるぜ。
飛びつきゃぁ倉庫入り口まで、一歩の近さだが――
下手を打つと、卵を割りかねねぇ。
おれは身を屈め、食い入るように見つめる。
木箱に敷き詰められた藁の様な蔓草。
その上に乗せられた、大きな卵。
それに抱きつき、撫でるのは――
二股角の迷子娘。
「ぎゅぎぎぃ――――早く大きな卵になるんだよぉ♪」
卵は大きくならんだろうが……ならんよなぁ?
「少なクとも食用卵に関シては、育つことはアりません」
だよなぁ……食用?
ふぉふぉん♪
『イースターエッグ/
生体ベースの魔導回路を内包した、疑似生態系。
開封すると中身が生成される。それまで中身は存在しない。』
こいつぁ、どーなんでぇい?
おれは、さっき鑑定した記録を見直す。
地獄の業火をまき散らす巨木の苗か、二股角娘の弟妹か――
ひょっとしたら、ミノ太郎までが――出てきかねねぇと来た。
そもそもこいつぁ、どっから来たんだぜ!?
ふぉん♪
『リオレイニア>ひとまず巻き込まれた子供たちと村人たちの安全を最優先しますが、お嬢さまは私が制圧するとして、先方さまはいかがなさいますか?』
おれにロットリンデさまを、押さえろというのか?
手も足も出なかったことは、伝えたはずだが。
ふぉん♪
『ホシガミー>>あくまで生物としての〝ミノタウロース〟が出現する可能性が、わずかにあると言うだけです。彼の地で眠る彼が再び顕現する訳ではありません』
そいつぁ、星神さまの領分だから、信用するが――
なんか聞き方によっちゃぁ……ミノ太郎が二匹になるって、聞こえなくもねぇな。
在り方としての〝ミノ太郎〟と、生き物としての――
あ、やべぇ。迅雷、五百乃大角を、あの卵に近づけるなよ。
ヴォオォゥンッ♪
『ファロコ・ファローモ・ジオサイト
■■■■□□□□□□44%』
枠は、じわじわと満ちていく。
この際、巨木・木龍じゃねぇなら――
ましてや、ミノ太郎|(生物)じゃねぇなら――
噛みつき癖くらい、かわいいもんだぜ!
ふぉん♪
『>>結論が出ましたね』
ニゲルが――――ザリザリザリリッィィン♪
錆び付いた剣を抜く。
村長が――――パタパタパタギャッチャリリィィン♪
箱を開いた。
スドンッ――――!
ニゲルの姿が、消えると同時!
バッガガガガガァァァァァァァンッ!
とんでもない騒音と揺れに、晒され――――!!!!
気づけば厨房に残っていた、全員が――――
倉庫と大竈と板場が混在する、部屋に立っていた。
さっきまでとは、あちこちの物の配置が違ってる。
鉄籠が二つに増え、調理台は波打ち、壁の大釜に至っては――
丸に三角に四角、そして溶けたような歪んだ形。
見えるだけでも……10個はある。
しかも壁を埋め尽くしても飽き足らないのか――
床や天井にまで大釜の扉が、取り付けられていた。
ちっ――――村長の魔法具箱、魔法自販機とやらだ!
おれと手伝いの村人たち。
あと卵の木箱とファロコ。
そしてリカルルとロットリンデに――
ニゲルに村長。
リオレイニアとルリーロも、近くに居る。
あとは大食らいの子供と、大人しい子供。
そして針刺し男と、天ぷら号――
これで全員かぁ?
ふぉん♪
『>はい。天ぷら号を入れて、総員18名です』
すっぽこぉん♪
『イオノ>シガミー、あたくしさま、すごいことに気づいてわ、いたのだけれどさあ?』
何だぜ? どこに居やがる!?
やべぇ、また落っことして無くしたか?
ヴォオォゥンッ――飛んでいく迅雷。
『>>シガミー、イースターエッグの影に居ます』
倉庫入り口から位置がずれ、厨房側に出てきた木箱を見た。
「ちょっ、来るんじゃないわよっ! 見つかっちゃうでしょっ!」
浮かぶ迅雷を小さな手で追い払う、根菜の頭が見える。
『イオノファラー
□□□□□□□□□□1%』
美の女神(笑)の頭上にも、枠が現れやがったぜ。
やっぱり、そう来たか!
村長が、頭陀袋から取り出した魔法具箱に、金貨を――チャリン♪
かなり大きく作った厨房には、巨大な焼釜や竈がたくさん並んでいる。
中央には階下の宴会場に繋がる、鉄籠が備え付けられており――
左右へ抜ける通路の先には、階段がある。
そして鉄籠を越えた正面奥、巨大倉庫の入り口付近には――
運び込まれたばかりの、巨大な〝イイスタァエッグ〟が置かれている。
つまり、ここから出るには階段へ続く左右二つの通路の、どちらかを通るしかない。
しかし、その両方が目つきの悪い、お貴族ご令嬢たちにより塞がれていた。
とても逃げられねぇじゃんか!
取り残されたおれたちや、数名の村人たちには同情するぜ。
通路さえ塞がれてなきゃ、卵と二股角娘を木箱ごと担いで、逃げることもできたが。
ふぉん♪
『シガミー>ロォグ! ココは女神像の中みたいなもんだろう? 例の扉を開いてくれや!』
返事がねぇ。さっき見たとき黒板を、持ってなかったから一行表示は使えないのか。
ならば――
ふぉん♪
『シガミー>星神さま! その辺の棚の扉を何処か、王都の大講堂で良いから繋いでくれ!』
ふぉん♪
『ホシガミー>女神像は1階から8階まで。ココは地下一階の切り株の中なので、出来かねます。何よりロォグさんが、あの有様ではププププークスクスクス♪』
転移扉の仕組みは流石に、まるでわからん。
ニゲルと村長が、厨房内に進み出る。
おれの背には焼釜。
正面には大竈と、鉄製の調理台。
そして、階下へ続く鉄籠――
「そうだぜ、鉄籠で下へ降りりゃぁ!」
調理台の上に、勢いよく飛び乗る。
つつつ-と、尻ですべりきり――
鉄籠の前に降りた。
そしたらずいと、工房長そっくりの奴に立ち塞がられた。
「駄目だぜ嬢ちゃん。あの籠はさっき一回、使っただけでガタが来ちまってるぜ」
あー、それでその下に潜って、何かやってたのか。
「ちょっと、そこの鉄釘たち! わーたーくーしわぁー、そんなに重くありませんでしてよ!」
あれ? ガムラン姫の矛先が鉄籠近くの、おれたちに向けられたぜ!
おれぁ、関係ねぇだろうが!
「でもお嬢さま。ちょっと見ぬ間に気のせいか、お顔がふっくらされたような?」
リオレイニアばかやろう、刺激をするなってんだ!
「誰が鉄釘だぁ! こいつぁ、オリハルコン製だぜ!」
ガガガァーーーーン!
鉄杭を手甲で打ち鳴らす、筋骨隆々。
全員の視線が、厨房中央のドワーフ族に集まった。
鉄杭の頭に――ヴォゥン♪
神殿のと同じ紋様が、浮かび上がる。
間違いなく何かのスキルを秘めた、強力な魔法杖だぜ――だがな。
「うーん、オリハルコン製と言われてもよ。ガムランじゃ避雷針に使うから結構見慣れたもんだぞ?」
勿論、素材として強力ではある。
だから避雷針として、使ってるんだし――
「くすくすくす♪ 費用対効果の点だけでなく、猪蟹屋謹製の迅雷鋼を使用すれば、コモン装備としての取り回しの良さを享受できるのでオススメ致しますわ、プププー♪」
やめろ星神。そんな場合か。
計算魔法具を弾き喜々とする、猪蟹屋従業員。
「なんだとっ!? そりゃぁ本当か?」
計算魔法具の数字を見て目を丸くする、髭の鍛冶職人。
あの工房長の叔父っていうなら、たぶん此奴も凄腕の熟達した職人だろうぜ。
「おれじゃなくて……ぐぎぎ……隣の奴に言え!」
がっちりと両肩をつかまれた。動けん。
誰が敵で味方か、わかりゃぁしねぇ。
何だぜ、この有様わよぉ!?
ふぉん♪
『シガミー>やい隣の奴。商売っ気もほどほどにしとけ。迅雷鋼の元になる使い切った避雷針は辺境伯さまと姫さんの直々の、ご厚意でもって仕入れられてる。其処の所をよーく考えろよ?』
あと今は、商売をしてる場合じゃねぇ。後にしろや!
ふぉん♪
『ホシガミー>わかりましたわー、クスクスクスクス?』
「んろっ? 同じ顔が並んでやがると、紛らわしいな」
凄腕の職人が、おれをぽいと投げ捨て――
おれの数年後の姿である茅野姫を、背中の鉄杭の上にひょいと乗せた。
「ちょっと通してくれ! 急いで見せてぇ、試作品があるんでよ!」
ガハハハハ-と、笑いながら――ロットリンデと村長を押しのけて、出て行ってしまう。
何人かの村人が、その後ろにくっついて逃げていった。
「はっ!? くそう、出遅れたぜ!」
気づいたときには、もう遅かった。
見れば調理台の上で震えていた鉄器が、無くなってる。
ふぉん♪
『シガミー>茅野姫、お猫さまを持って行ったか?』
ふぉん♪
『ホシガミー>はい、一緒に居ります。あのままでは、お可哀想でしたので、ププーッ♪』
なら、ついでに辺境伯名代さまも、持ってってくれりゃ助かったんだが。
ふぉん♪
『>>私たちもワーフ氏のように、気さくな感じで「ちょっくら通しては、頂けませんでしょうか?」と脱出を試みるべきでは?』
そう簡単にいくか。あの胆力はドワーフ族……小柄で屈強な彼奴ら、ならではのもんだぜ。
おれは、そっとリットリンデを見る。
「なんですの小猿。邪魔すると、また痛い目にあわせますわよ?」
眦をつり上げた、その顔も――
痛い目にあわせると言ってる。
おれは意を決して、振り返った。
「なんですのシガミー、この勝負に水をさすつもりなら、いつぞやの決闘の続きを今ココでしてもよろしくてよ……いえ、むしろそれっ、楽しそうですわね――クツクツクツ♪」
月影の眼光が顔の輪郭を越えて、はみ出しているように見えてきた。
これ以上は直視、出来ねぇ――はぁはぁはぁ。
おれは鉄籠にしがみ付き、巨大倉庫を見つめる。
あの倉庫に裏口はねぇ。
これから建てる建物の全てに、裏口を作ることを誓うぜ。
ふぉん♪
『>>まず全員を倉庫へ避難させ、その後に裏口を作れば良いのでは?』
気楽に言うな、大工仕事はアレで神経を使うんだぜ。
折角、良く出来た建物を、傷物にはしたくねぇ。
何より、大工仕事はそれなりに、でかい音がする。
後から「「水を差しましたわね!」」って、両方から詰め寄られるに決まってるぜ。
飛びつきゃぁ倉庫入り口まで、一歩の近さだが――
下手を打つと、卵を割りかねねぇ。
おれは身を屈め、食い入るように見つめる。
木箱に敷き詰められた藁の様な蔓草。
その上に乗せられた、大きな卵。
それに抱きつき、撫でるのは――
二股角の迷子娘。
「ぎゅぎぎぃ――――早く大きな卵になるんだよぉ♪」
卵は大きくならんだろうが……ならんよなぁ?
「少なクとも食用卵に関シては、育つことはアりません」
だよなぁ……食用?
ふぉふぉん♪
『イースターエッグ/
生体ベースの魔導回路を内包した、疑似生態系。
開封すると中身が生成される。それまで中身は存在しない。』
こいつぁ、どーなんでぇい?
おれは、さっき鑑定した記録を見直す。
地獄の業火をまき散らす巨木の苗か、二股角娘の弟妹か――
ひょっとしたら、ミノ太郎までが――出てきかねねぇと来た。
そもそもこいつぁ、どっから来たんだぜ!?
ふぉん♪
『リオレイニア>ひとまず巻き込まれた子供たちと村人たちの安全を最優先しますが、お嬢さまは私が制圧するとして、先方さまはいかがなさいますか?』
おれにロットリンデさまを、押さえろというのか?
手も足も出なかったことは、伝えたはずだが。
ふぉん♪
『ホシガミー>>あくまで生物としての〝ミノタウロース〟が出現する可能性が、わずかにあると言うだけです。彼の地で眠る彼が再び顕現する訳ではありません』
そいつぁ、星神さまの領分だから、信用するが――
なんか聞き方によっちゃぁ……ミノ太郎が二匹になるって、聞こえなくもねぇな。
在り方としての〝ミノ太郎〟と、生き物としての――
あ、やべぇ。迅雷、五百乃大角を、あの卵に近づけるなよ。
ヴォオォゥンッ♪
『ファロコ・ファローモ・ジオサイト
■■■■□□□□□□44%』
枠は、じわじわと満ちていく。
この際、巨木・木龍じゃねぇなら――
ましてや、ミノ太郎|(生物)じゃねぇなら――
噛みつき癖くらい、かわいいもんだぜ!
ふぉん♪
『>>結論が出ましたね』
ニゲルが――――ザリザリザリリッィィン♪
錆び付いた剣を抜く。
村長が――――パタパタパタギャッチャリリィィン♪
箱を開いた。
スドンッ――――!
ニゲルの姿が、消えると同時!
バッガガガガガァァァァァァァンッ!
とんでもない騒音と揺れに、晒され――――!!!!
気づけば厨房に残っていた、全員が――――
倉庫と大竈と板場が混在する、部屋に立っていた。
さっきまでとは、あちこちの物の配置が違ってる。
鉄籠が二つに増え、調理台は波打ち、壁の大釜に至っては――
丸に三角に四角、そして溶けたような歪んだ形。
見えるだけでも……10個はある。
しかも壁を埋め尽くしても飽き足らないのか――
床や天井にまで大釜の扉が、取り付けられていた。
ちっ――――村長の魔法具箱、魔法自販機とやらだ!
おれと手伝いの村人たち。
あと卵の木箱とファロコ。
そしてリカルルとロットリンデに――
ニゲルに村長。
リオレイニアとルリーロも、近くに居る。
あとは大食らいの子供と、大人しい子供。
そして針刺し男と、天ぷら号――
これで全員かぁ?
ふぉん♪
『>はい。天ぷら号を入れて、総員18名です』
すっぽこぉん♪
『イオノ>シガミー、あたくしさま、すごいことに気づいてわ、いたのだけれどさあ?』
何だぜ? どこに居やがる!?
やべぇ、また落っことして無くしたか?
ヴォオォゥンッ――飛んでいく迅雷。
『>>シガミー、イースターエッグの影に居ます』
倉庫入り口から位置がずれ、厨房側に出てきた木箱を見た。
「ちょっ、来るんじゃないわよっ! 見つかっちゃうでしょっ!」
浮かぶ迅雷を小さな手で追い払う、根菜の頭が見える。
『イオノファラー
□□□□□□□□□□1%』
美の女神(笑)の頭上にも、枠が現れやがったぜ。
やっぱり、そう来たか!
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