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5:大森林観測村VSガムラン町
634:御神体修復作戦、グランジ・ロコロ村集会所
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「私も少し大人げなかったですわ、ふんっ!」
そう言う張本人も同じく、丸くて大きな頭の毛をしてやがる。
此処はロコロ村中央、村の集会所。
大申の像……騎士像と言うらしいのが、そびえ立つ場所。
其処を見渡せる大きな窓に、おれや大申女の大きな頭が鏡に映《うつ》り込んでいる。
「本当にごめんね。蘇生薬を髪に付ければ、元に戻るからさ……元に戻りますのじゃ、どうか許されよ」
そいつぁ、初耳だ。蘇生薬には、そんな使い道もあったんだな。
「そうですわね、村の倉庫にある分でしたら、ご自由にお使いなさいな、フフーンッ!」
集会所の奥、『倉庫』と書かれた大扉を指さす――チリチリモサモサ頭。
「けどロットリンデ……その頭、僕は好きだけど。ティーナさんに見られたら、魔導固め食らうよ?」
そんな村長のジトリとした目には、見覚えがある。
ガムラン代表がしでかしたときに、元侍女長が向けるのと同じ目だ。
「ぎゃっ――――そ、そうそう宮廷魔導師にやられてばかりもいられませんし、この髪型は我がフカフ村の魂ですのよ! 文句を言われる筋合いなど、あーりーまーせーんーでーしーてーよー!」
ふふんと気丈に振る舞ってるが、口の端が引きつってた。
自らチリモサ頭にすることは、商会長に厳禁されているらしい。
「一先ず、頭を丸めて謝罪した、その心意気は汲んでやるぜ――なぁ、リオレイニア?」
リオレイニアは隣の部屋に、寝かされている。
「むぅにゃわっ!? だ、駄目です、来ないで下さい! もう一度その姿を見たら、し、しししししししっ死んでしまいますので―――」
ヴォヴォヴォヴォゥゥン――――マナの唸りが……遠ざかっていく?
まさか!? 戸を開けてみれば、蛻の殻だぜ。
開け放たれた戸口から、杖に乗って逃げやがったな!
おれは――ヴッ♪
村長に貰った鏡を、壁に立てかけた。
もう一度、丸い頭を確認する。
そこまで、面白いかぁ?
矯めつ眇めつ、手前の面を――よーく見てたら。
「「あははははははははっ♪」」
生意気なのと物怖じしないのに、指を指して笑われた。
「「「「ぷふふふっ、うひひひっ♪」」」」
残りの連中も、口元を押さえてやがるぜ。
「こりゃぁ……相当に面白ぇかぁ? ウカカカッ♪」
見慣れれば、なかなか良く思えてきたぜ?
「クスクスプー♪ 楽しそうで何よりですけれど、どうするんですか?」
ふぉん♪
『ホシガミー>まさか、シガミーさんの剣の技が通用しないなんて――ププププブッフ、クスクスクスッ♪』
大申の石像は未だ健在。傷一つ付いてやがらねぇ。
星神が見つめる窓の外。
騎士像と呼ばれる石像を叩き折って、一刻も早くレイド村に行かねぇとならん。
五百乃大角と迅雷を直すまでは、何も始められねぇーのだ。
おれは小太刀を抜いて、欠けた刃を確認する。
さっき斬ってみたが、この有様だ。
ニゲルの〝重い剣〟なら、いや轟雷の〝太刀風の太刀〟でもありゃ、斬れそうな気はするんだが――あっ!?
「この頭じゃ、強化服虎型が着られねぇーぞ!?」
つまり轟雷も着られねぇ。
おれは手持ちの蘇生薬を、取り出して――ヴッ♪
頭から、ぱちゃりと掛けた。
おぉー、しゅわしゅわと泡立つ音が聞こえらぁ。
鏡を見れば緑色の光に包まれた、丸い頭の子供が映ってる。
「それでだ、ゲ……ロットリンデさまよぉ?」
「何ですの小猿?」
楽しそうに、でかい頭を揺らす、ご令嬢《れいじょう》に尋ねる。
「あの大申……じゃなくって、騎士像てぇのを叩き壊せば、村から出られるってのは本当なんだな?」
轟雷で斬りつけりゃ、へし折ることくらい出来るだろう。
「村をかこんだ〝Ψ・ω・Ψ〟の魔法わぁー、この、お猿の石に掛けられてるよぉ?」
ああもう。
胡坐をかく、おれの膝に顔を埋める、幼体ファローモの娘。
年の頃は、リオレイニア並み。中身はレイダ並み。
随分と懐かれたもんだぜ――――ガチィーン♪
「危ねぇっ!?」
隙あらば顎を鳴らし、おれを囓ろうとするのは――
相当、行儀が悪くね?
お目付役の大申ご令嬢を睨みつけてやるが――
「フフフーン!」と鼻であしらわれた。
ふぉん♪
『シガミー>解析指南でもヒントでも良いから、この石像が硬い訳を教えろやぁ』
ふぉん♪
『ホシガミー>女神像ネットワークを介した量子演算は使えないようですよ。それと、シガミーさんのスキルの一部は轟雷か虎型を着用していないと、使えないようです』
ふぉん♪
『シガミー>この頭じゃ、着られんだろが』
頭を手でつかみ、もっさもささと揺らしてみるも――
中々、元に戻らんぞ?
蘇生薬の光も、弱まっちまったし。
「シガミーちゃんさぁ、後ろから見たらまるで――おにぎりちゃんみたいね」
物怖じしねぇ子供が、そんなことを言いやがる。
「ばかやろぉい! おにぎりと一緒に、するんっじゃねぇやい!」
森の中を通ったときに出来た、細かい切り傷なんかのチリチリした痛みが――
消えていく。蘇生薬はちゃんと、利いてやがる。
もう一度、鏡を見た。
「やい、まるで治らんだろぉーが!?」
「それはそうですわよ。早くても三日程かかりますもの♪」
そう言って自分のモッサモサ髪を、もしゃもしゃと弄ぶ大申姫。
「はぁー!? 三日だぁとぉー!?」
それまで虎型や轟雷を、着られんのかぁ――!
そう言う張本人も同じく、丸くて大きな頭の毛をしてやがる。
此処はロコロ村中央、村の集会所。
大申の像……騎士像と言うらしいのが、そびえ立つ場所。
其処を見渡せる大きな窓に、おれや大申女の大きな頭が鏡に映《うつ》り込んでいる。
「本当にごめんね。蘇生薬を髪に付ければ、元に戻るからさ……元に戻りますのじゃ、どうか許されよ」
そいつぁ、初耳だ。蘇生薬には、そんな使い道もあったんだな。
「そうですわね、村の倉庫にある分でしたら、ご自由にお使いなさいな、フフーンッ!」
集会所の奥、『倉庫』と書かれた大扉を指さす――チリチリモサモサ頭。
「けどロットリンデ……その頭、僕は好きだけど。ティーナさんに見られたら、魔導固め食らうよ?」
そんな村長のジトリとした目には、見覚えがある。
ガムラン代表がしでかしたときに、元侍女長が向けるのと同じ目だ。
「ぎゃっ――――そ、そうそう宮廷魔導師にやられてばかりもいられませんし、この髪型は我がフカフ村の魂ですのよ! 文句を言われる筋合いなど、あーりーまーせーんーでーしーてーよー!」
ふふんと気丈に振る舞ってるが、口の端が引きつってた。
自らチリモサ頭にすることは、商会長に厳禁されているらしい。
「一先ず、頭を丸めて謝罪した、その心意気は汲んでやるぜ――なぁ、リオレイニア?」
リオレイニアは隣の部屋に、寝かされている。
「むぅにゃわっ!? だ、駄目です、来ないで下さい! もう一度その姿を見たら、し、しししししししっ死んでしまいますので―――」
ヴォヴォヴォヴォゥゥン――――マナの唸りが……遠ざかっていく?
まさか!? 戸を開けてみれば、蛻の殻だぜ。
開け放たれた戸口から、杖に乗って逃げやがったな!
おれは――ヴッ♪
村長に貰った鏡を、壁に立てかけた。
もう一度、丸い頭を確認する。
そこまで、面白いかぁ?
矯めつ眇めつ、手前の面を――よーく見てたら。
「「あははははははははっ♪」」
生意気なのと物怖じしないのに、指を指して笑われた。
「「「「ぷふふふっ、うひひひっ♪」」」」
残りの連中も、口元を押さえてやがるぜ。
「こりゃぁ……相当に面白ぇかぁ? ウカカカッ♪」
見慣れれば、なかなか良く思えてきたぜ?
「クスクスプー♪ 楽しそうで何よりですけれど、どうするんですか?」
ふぉん♪
『ホシガミー>まさか、シガミーさんの剣の技が通用しないなんて――ププププブッフ、クスクスクスッ♪』
大申の石像は未だ健在。傷一つ付いてやがらねぇ。
星神が見つめる窓の外。
騎士像と呼ばれる石像を叩き折って、一刻も早くレイド村に行かねぇとならん。
五百乃大角と迅雷を直すまでは、何も始められねぇーのだ。
おれは小太刀を抜いて、欠けた刃を確認する。
さっき斬ってみたが、この有様だ。
ニゲルの〝重い剣〟なら、いや轟雷の〝太刀風の太刀〟でもありゃ、斬れそうな気はするんだが――あっ!?
「この頭じゃ、強化服虎型が着られねぇーぞ!?」
つまり轟雷も着られねぇ。
おれは手持ちの蘇生薬を、取り出して――ヴッ♪
頭から、ぱちゃりと掛けた。
おぉー、しゅわしゅわと泡立つ音が聞こえらぁ。
鏡を見れば緑色の光に包まれた、丸い頭の子供が映ってる。
「それでだ、ゲ……ロットリンデさまよぉ?」
「何ですの小猿?」
楽しそうに、でかい頭を揺らす、ご令嬢《れいじょう》に尋ねる。
「あの大申……じゃなくって、騎士像てぇのを叩き壊せば、村から出られるってのは本当なんだな?」
轟雷で斬りつけりゃ、へし折ることくらい出来るだろう。
「村をかこんだ〝Ψ・ω・Ψ〟の魔法わぁー、この、お猿の石に掛けられてるよぉ?」
ああもう。
胡坐をかく、おれの膝に顔を埋める、幼体ファローモの娘。
年の頃は、リオレイニア並み。中身はレイダ並み。
随分と懐かれたもんだぜ――――ガチィーン♪
「危ねぇっ!?」
隙あらば顎を鳴らし、おれを囓ろうとするのは――
相当、行儀が悪くね?
お目付役の大申ご令嬢を睨みつけてやるが――
「フフフーン!」と鼻であしらわれた。
ふぉん♪
『シガミー>解析指南でもヒントでも良いから、この石像が硬い訳を教えろやぁ』
ふぉん♪
『ホシガミー>女神像ネットワークを介した量子演算は使えないようですよ。それと、シガミーさんのスキルの一部は轟雷か虎型を着用していないと、使えないようです』
ふぉん♪
『シガミー>この頭じゃ、着られんだろが』
頭を手でつかみ、もっさもささと揺らしてみるも――
中々、元に戻らんぞ?
蘇生薬の光も、弱まっちまったし。
「シガミーちゃんさぁ、後ろから見たらまるで――おにぎりちゃんみたいね」
物怖じしねぇ子供が、そんなことを言いやがる。
「ばかやろぉい! おにぎりと一緒に、するんっじゃねぇやい!」
森の中を通ったときに出来た、細かい切り傷なんかのチリチリした痛みが――
消えていく。蘇生薬はちゃんと、利いてやがる。
もう一度、鏡を見た。
「やい、まるで治らんだろぉーが!?」
「それはそうですわよ。早くても三日程かかりますもの♪」
そう言って自分のモッサモサ髪を、もしゃもしゃと弄ぶ大申姫。
「はぁー!? 三日だぁとぉー!?」
それまで虎型や轟雷を、着られんのかぁ――!
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