627 / 740
5:大森林観測村VSガムラン町
627:大森林探索行、成体ファローモの生態その3
しおりを挟む
ぽこぽこぽこここんっ――――ガシャズザッ!
頭の中の、机の上。
並べられたのは、小さな木や大きな木。
そして切り立つ渓谷や岩場。
此方には沼地や火山に、滝や湖まであるな。
五百乃大角や迅雷の映し絵とは、また別の感じの――地図。
双六の駒みてぇなので、形作られたのは――大森林だった。
「ここがフカフ村だとするとぉ……相当な森の奥に生えたぁ、このどでかい太木ぃおぉー斬り倒しゃぁ良いのかぁ?」
おれの小首が傾く。
「まぁ概ね、そのような……もぐもぐ。おいしい♡」
額から小枝を生やした、珍妙な男の声をした女。
〝考え〟は、おれの頭の中に居座り――
饅頭のお代わりを、ぺろりと平らげた。
大森林の外れにあるフカフ村からは、相当奥。
大森林の真ん中から流れている川を、数本のとんでもなく大きな木が、せき止めているようだった。
ひのふのみ――結構、生えてやがるなぁ。
「その木ってのわぁ……たぶん、巨木のこったろぉ? おれ一人じゃ、厳しいかも知れんぞ?」
ネネルド村を襲った巨木・木龍。
あれ一本で沼地に、大きな湖を作り出しやがったからな。
木の根の周りに水を溜め込むスキルを持った、魔物の木。
対魔王結界から吹き出す程の大火を生み出し、その熱を使い――
一晩で成長するスキルも持った、厄介な木。
そして、央都建国の礎となった龍――そのものでもある。
幸いなことに、その龍……木龍を倒した奴らが、ここに居る。
少女タターと鬼娘オルコトリアだ。
タターが使う長銃には、五百乃大角が作る丸が要るから――
五百乃大角が動かん今、本当は戦えんのだが――
魔法具作りの妖精、お猫さまが居てくれるので――
いやまて、あの草を枯らす丸は……五百乃大角にしか、作れんのだったか?
それでも、生えちまった巨木を切れってことなら――
女将さんとおれと……ニゲルを連れてくりゃいけるか?
せめてリカルルかルリーロの、どっちかが居てくれりゃぁ――
狐火でスパンと、切り倒してくれそうだが。
「そうですか? 私の頭突きでも簡単に倒せる程度ですので、ご心配なく」
「じゃぁ、お前さんが切り倒しゃぁ良いじゃんかぁ?」
「いえ、ソレには及びません。お構いなく、ご存分にどうぞ」
また話が、ひん曲がってきたぞ?
頭の中の机の上に、空になった紙箱が置かれている。
空の箱を弄ってるから――ヴッ♪
駄目元で饅頭を出してみたら、ちゃんと出た。
此方は甘くねぇ味だが、構うまい。
「ほら娘よ、あなたも頂きなさい」
男の声の女が、そんなことを言うと――
「ぎにゅるりぃぃぃぃ?」
頬を膨らませた若い女が、傍らに立っていた。
「うわっ!? どっから出やがった!?」
おれの手先を斬り飛ばした、あいつだ!
こうしてみると、大人びて見える。
といっても、そんな気がしているだけだが――
その片目は、まだ『Θ』のままな……気がするぞ。
「ありゃっ!? 悪ぃ、この箱わぁ、空じゃねぇか!」
おれは、何度か収納魔法具を使ってみたが――
何も出て来なくなった。
「随分と大きな寝言で……いえまさか、この様子――アレが、来ているのですの?」
「うん。なんかそうみたいだよ、ロットリンデ」
瞼の外から、そんな声が聞こえる。
フカフ村に置いてきたはずの大申女が、追いかけて来たのか?
そういやさっき、黒板を出してやった……っけか?
「仕方ありませんわね。お供え用に持っ来て、良かったですわ――」
がさごそと、何かを探る音。
「ぎゅぎゅぅ――――!?」
空箱を渡された二股角の娘の目が、つり上がっていく。
おれはまた、饅頭を取り出そうと――ヴッ♪
「何だぜこりゃ? こいつぁ、さっき話に出た、高級な菓子じゃんか!?」
ふぉん♪
『シガミー>おにぎり、居るのか?』
一行表示には返事がねぇが――
何にしても、ありがてぇ。
おれはその菓子箱を、開いて見た。
§
「こんな辺鄙な森の中で、央都の菓子ってのわぁ、どういうことだぜ?」
目の前には、リカルルが執心してた高級菓子店の箱の――気配。
中身はちゃんと入っていて、手に取り貪る森の主の母娘たちの――気配。
「どういうことも何も、この菓子店は私のレシピを元に宮廷魔……商会長が店舗化したものですわ?」
この声、やっぱり……「大申女ゲスロットだなっ!?」
「だれが、ゲスロットかっ!」
ゴチン――痛ぇっ!
あまりの痛さで、おれの目が開いた!
頭の中の、机の上。
並べられたのは、小さな木や大きな木。
そして切り立つ渓谷や岩場。
此方には沼地や火山に、滝や湖まであるな。
五百乃大角や迅雷の映し絵とは、また別の感じの――地図。
双六の駒みてぇなので、形作られたのは――大森林だった。
「ここがフカフ村だとするとぉ……相当な森の奥に生えたぁ、このどでかい太木ぃおぉー斬り倒しゃぁ良いのかぁ?」
おれの小首が傾く。
「まぁ概ね、そのような……もぐもぐ。おいしい♡」
額から小枝を生やした、珍妙な男の声をした女。
〝考え〟は、おれの頭の中に居座り――
饅頭のお代わりを、ぺろりと平らげた。
大森林の外れにあるフカフ村からは、相当奥。
大森林の真ん中から流れている川を、数本のとんでもなく大きな木が、せき止めているようだった。
ひのふのみ――結構、生えてやがるなぁ。
「その木ってのわぁ……たぶん、巨木のこったろぉ? おれ一人じゃ、厳しいかも知れんぞ?」
ネネルド村を襲った巨木・木龍。
あれ一本で沼地に、大きな湖を作り出しやがったからな。
木の根の周りに水を溜め込むスキルを持った、魔物の木。
対魔王結界から吹き出す程の大火を生み出し、その熱を使い――
一晩で成長するスキルも持った、厄介な木。
そして、央都建国の礎となった龍――そのものでもある。
幸いなことに、その龍……木龍を倒した奴らが、ここに居る。
少女タターと鬼娘オルコトリアだ。
タターが使う長銃には、五百乃大角が作る丸が要るから――
五百乃大角が動かん今、本当は戦えんのだが――
魔法具作りの妖精、お猫さまが居てくれるので――
いやまて、あの草を枯らす丸は……五百乃大角にしか、作れんのだったか?
それでも、生えちまった巨木を切れってことなら――
女将さんとおれと……ニゲルを連れてくりゃいけるか?
せめてリカルルかルリーロの、どっちかが居てくれりゃぁ――
狐火でスパンと、切り倒してくれそうだが。
「そうですか? 私の頭突きでも簡単に倒せる程度ですので、ご心配なく」
「じゃぁ、お前さんが切り倒しゃぁ良いじゃんかぁ?」
「いえ、ソレには及びません。お構いなく、ご存分にどうぞ」
また話が、ひん曲がってきたぞ?
頭の中の机の上に、空になった紙箱が置かれている。
空の箱を弄ってるから――ヴッ♪
駄目元で饅頭を出してみたら、ちゃんと出た。
此方は甘くねぇ味だが、構うまい。
「ほら娘よ、あなたも頂きなさい」
男の声の女が、そんなことを言うと――
「ぎにゅるりぃぃぃぃ?」
頬を膨らませた若い女が、傍らに立っていた。
「うわっ!? どっから出やがった!?」
おれの手先を斬り飛ばした、あいつだ!
こうしてみると、大人びて見える。
といっても、そんな気がしているだけだが――
その片目は、まだ『Θ』のままな……気がするぞ。
「ありゃっ!? 悪ぃ、この箱わぁ、空じゃねぇか!」
おれは、何度か収納魔法具を使ってみたが――
何も出て来なくなった。
「随分と大きな寝言で……いえまさか、この様子――アレが、来ているのですの?」
「うん。なんかそうみたいだよ、ロットリンデ」
瞼の外から、そんな声が聞こえる。
フカフ村に置いてきたはずの大申女が、追いかけて来たのか?
そういやさっき、黒板を出してやった……っけか?
「仕方ありませんわね。お供え用に持っ来て、良かったですわ――」
がさごそと、何かを探る音。
「ぎゅぎゅぅ――――!?」
空箱を渡された二股角の娘の目が、つり上がっていく。
おれはまた、饅頭を取り出そうと――ヴッ♪
「何だぜこりゃ? こいつぁ、さっき話に出た、高級な菓子じゃんか!?」
ふぉん♪
『シガミー>おにぎり、居るのか?』
一行表示には返事がねぇが――
何にしても、ありがてぇ。
おれはその菓子箱を、開いて見た。
§
「こんな辺鄙な森の中で、央都の菓子ってのわぁ、どういうことだぜ?」
目の前には、リカルルが執心してた高級菓子店の箱の――気配。
中身はちゃんと入っていて、手に取り貪る森の主の母娘たちの――気配。
「どういうことも何も、この菓子店は私のレシピを元に宮廷魔……商会長が店舗化したものですわ?」
この声、やっぱり……「大申女ゲスロットだなっ!?」
「だれが、ゲスロットかっ!」
ゴチン――痛ぇっ!
あまりの痛さで、おれの目が開いた!
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる