滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６２２：大森林探索行、森の主かたむく

　着替きがええのために、体からだを縁取ふちどる光ひかり。
　服ふくと体からだの、位置合わせ・・・・・なんざぁ――
　チカリと光ひかりゃぁ、すぐ終わる。
　それが何時いつまでも、収おさまらねぇ。

　辺あたり一面いちめんが白しろい。眩まぶしい。
　その強つよすぎる瞬またたきに、両腕りょううでで目を覆おおい隠かくした！

　それでも閃光せんこうが瞼越まぶたごしに、血の色いろを透かし続つづける。
　ぼおぉぅ――その赤あかみはやがて。暗くらがりの中なかに影かげを落とし――
　鈍にぶい闇やみと化した。
　薬草やくそうを生なまで囓かじったときの、えぐみにも似た――
　何なにかに苛さいまれる。

　おれが黄泉路りゅうみゃくを、さ迷まよったときの――心こころの在処ありか。
　そんな不確ふたしかで、形かたちとしては捉とらえようのない――
　単たんなる濃淡のうたんのような――視界しかい。

　フォフォフォフォオン――――ヴォワッ♪
　引かれていく、光線すじ。
　（やい！　眩まぶしくて鬱陶うっとおしいだろうがぁ！）
　腕うでで覆おおった視界しかいに、重かさなる画面モニタ。
　その中なかへ、筆ふでを走はしらせる奴やつがいる。

　そんな芸当げいとうが出来できるのは、迅雷ジンライか五百乃大角いおのはらくらいのもんだ。
　（やい迅雷ジンライ！　おれの頭あたまの裏側うらに、絵なんか描くんじゃねぇー！）
　ひとまず偽にせの迅雷ジンライを、叱しかりつけておく。

　……フォォフォォオン――――ヴォワワワワンッ♪
　やがて描えがき出されたのは、紋様もんようを配置はいちした図案ずあんだった。
　それは、釈迦金輪しゃかきんりんに九曜くよう。
　お山やまに登のぼった……ことのある坊主ぼうずには――
　馴染なじみの深ふかい――浄土図じょうどずのひとつだった。

　ふぉん♪
『ジューク＞ふう、びっくりした！　これ知ってるよ。ファロコのお母さんが、ファロコを村に置いていったときにも見たことある』
　そんな一行表示ティッカーが出たが……そんな訳わけがあるかいっ！

　見た目は、女将おかみさんが使つかう古代魔法こだいまほうにそっくりだが――
　こいつぁ、中身が・・・全然違ぜんぜんちがうぜ！
　裏鬼門うらきもんから始はじまる、鍵星かぎぼしを配した・・・――！

　ふぉん♪
『シガミー＞はあ？　どう見ても日の本の、星曼荼羅にしか見』
　その意識しきを境さかいにして――チカチカチカ。
　おれは猪蟹屋制服ししがにやせいふくの給仕服メイドふくに、身を包つつんでいた。

　ここは魔法具箱まほうぐばこの建物たてものの上うえ――――ゴンガン、バララララッ！
　ばらばらと土塊つちくれが、降って来やがる!?
　音おとが聞こえ――現うつつに戻もどった。

　　　§

　一安心ひとあんしんしたのは束つかの間で、深ふかく呼吸いきをしたら――
　おれの目の前まえには……いつ、むー――六つ又またの、一対そろいの角つの。
　そんなのを生やした……明あきらかに人ひとじゃねぇ、化生けしょうの者ものが立ってやがる？
　男の目は・・・・――『Θけだもののめ』をしていやがる。

「やい、お前まえらさまよ。目の前まえのが見えんのか？」
　近ちかくに居るのは、オルコトリアとタターとジューク村長そんちょうに、お猫さまロォグ。
　少すこし離はなれた所ところに、角つのの男おとこ。

「ニャーァ♪　ニャミャヤー♪」
　ふぉん♪
『ロォグ＞見えているニャァ♪　この〝方陣結界〟が星だというなら、この大陸から観測出来る星の配置に、合致する物はないニャァ♪』
　村長ジュークの頭あたまに飛び乗る、お猫さまケットーシィ。
　猫ねこが覗のぞき込む村長そんちょうの掌てのひらには――さっき見た星曼荼羅ほしまんだらが、浮かんでいる。

　ふぉん♪
『シガミー＞そうじゃなくてよぉ。このでけぇ角の男は、見えてないのか？』
　おれは男そいつを指ゆびさしたが――

「「「角つのの男おとこ？」」」
「にゃぎゃにゃ？」
　皆みなは首くびを傾かしげた。
　どうやら、見えていねぇらしい――――ゴッ、バララッ！
　まだ上うえから土塊つちくれは降ってくるが、小降こぶりになった。

「お前まえさまは、誰だれだぜ？」
　全部ぜんぶで７対つい１４本ほんの――角つのの男おとこを問いただす。
　男おとこは答こたえず――――ゴガンッ！
　建物の天井まほうぐを踏みつけ――――ピカッ！
　バリバリバリヴァリリッ――――巨大きょだいな角つのから、雷光かみなりを迸ほとばしらせた！

「ぬぅぉわぁぁぁぁっ――――!?」
　ばっがぁん――――角つのの一本いっぽんが強つよく光ひかり、弾はじけた！

　７対ついあった角つのの一本いっぽんが欠け――ぐりん。
　まるで〝釣り合いが取れなくなった〟かのように――
　角男おとこの首くびが傾かたむき――――がららん、ごろろぉん♪
　と騒々そうぞうしい金音おとを立てた。

　男おとこの顔かおつきは、黒騎士エクレアか辺境伯寄ラウラルより。
　つまり面つらが、相当良そうとうよい部類ぶるいで――

　そんな男おとこの首くびには、まるで似つかわしくない――
　大おおきな鈴すずが、吊り下げられていた。