上 下
609 / 737
5:大森林観測村VSガムラン町

609:大森林探索行、やせいの尋ね人があらわれた

しおりを挟む
 みみいたくなるほどの、静寂せいじゃく世界せかい
 ひか双眸そうぼう――長銃ひなわを持つ少女タターひとみが、チカチカとひかってやがるぜ。

 ふぉん♪
『タター・ネネルド LV:25
 盗賊★★★ /早く動くための何たら/息を潜める何たら/罠に関する何たら/龍殺し』
 一行表示ティッカーおなじやりかたで、おれは画面がめんなかはしり書きをした。
 うろおぼえだが、タターの冒険者ぼうけんしゃカードは――こんなだった気がする。

 このへん全部ぜんぶ迅雷ジンライまかせだったからな。
 元々得意もともととくいだった覚えも・・・にぶくなっちまってる。
 迅雷ジンライ使つかえねぇだけで、ちょうマジ・・こまらぁ。

 ふぉん♪
『追加スキル/風読み/アダマン何たら/魔法具操作術』
 そして追加ついかのスキルは――こんなだった気が。

 『風読み』で目がひかることもないだろ……てなると『魔法具操作術』か。
 よるくらがりでも無けりゃ、そう目立めだつこともねぇーが。
 あとでなにさくかんがえるから、TODOリストやることに――

 (わたくし迅雷ジンライは、現在停止中げんざいていしちゅうです)
 そうだったぜ……阿呆あほうかおれぁ。
 にせのおまえあたまをよぎるから、ついわすれちまうぜ!

――全員――無事かぁ?
 聞こえぬこえを掛けるも、当然とうぜん返事へんじはねぇ!

 のそりと身を起こす、タターをかかえた特撃型改シシガニャン
 それは手足てあし倍加ばいかさせ、はやつよく――研ぎ澄まされていた。
 って、そんなごつい筋肉からだをしてるわけがあるかぁ!

 それは強化服シシガニャンじゃ無くて、オルコトリアだった!
 咄嗟とっさにタターをかかえて火縄ひなわを撃つ修行しゅぎょうの、成果せいか発揮はっきした……んだろぅなぁ。
 正直しょうじきたすかったぜ。

 そして鬼の娘オルコトリアかたには――もうひとつの、ひか双眸そうぼう
「――、――♪」
 しがみ付くお猫さまロォグが、なにか言ってやがる。
 なるほど、丸込たまごやくか。
 まったく、いくら・・・たまを撃ちやがったんだぜよぉ。

 (ごぉ――――)
 きゅうかぜいだ。

「にぎゅるりぃぃ――――?」
 はっきりとしたうなごえに、しんぞぷが跳びはねた。

 とおくから聞こえた、そのこえは――
 すくなくとも、ひとこえじゃなかった。

 ふぉん♪
『リオレイニア>どうやら今度は魔物じゃ無くて、ファロコさんのようですね』
 そうだな。静寂せいじゃくを打ちやぶれるのは――
 それ・・はなったやつ、くらいだろうぜ。

――うぬぅ!?」
 おれはめつ太刀たちはなつときの、境地きょうちにも似た――つよ思い・・に捕らわれた。
 それは〝あせり〟でしかなく――冷えたあせが、からだつたって落ちていく。
 どうにも未熟みじゅくさを痛感つうかんするぜ、まったくよぉ。

「「――!?」」
「「「――、――!」」」
「「「「――――!!!」」」」
 全員みんなあたりを、警戒けいかいしだす。

 ふぉん♪
『ホシガミー>シガミーさん。このエリア全体が電波無響室と化していますわ?』
 わからん。
 ふぉん♪
『リオレイニア>これは詠唱暗室装置と同じ環境を作り出しているようです。ですが音声も遮蔽されていますので、生活魔法すら使えなくなりました!』
 はぁ?
 そうしたら……リオレイニアの魔法まほうが、全部使ぜんぶつかえねぇだろぅが?

 ふぉん♪
『シガミー>そいつは、やべえじゃんか!』
 どうする、むらもどるしかねぇが――

「――――ぎゅぎるるるりぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
 うなごえは〝一直線いっちょくせんつらなる特撃型改おれたち〟を、逃がさないよう・・・・・・・――
「ぎゅぎるるるりぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――!」
 とんでもねぇはやさで、まわり込んできた!

 此処ここたたかうしかねぇか?
 この静寂せいじゃく使つかわれりゃ、どこに居てもおなじことだぜ。

 魔法まほう高等魔術こうとぷまじゅつたよらずとも、全力ぜんりょくたたかえる――
 ニゲル青年せいねんを置いて来ちまったのは、失敗しっぱいしたかもしれねぇ。

「コラ、ジューク! ヤセイカシテルジャナイカ! ファロコヲヒトリデソトニダシタネ?」
 なんだこの片言かたこと。すぐちかくから聞こえた。
 二股角の娘ファロコとやらこえじゃねぇー。
 おれはメイドふくうえから付けた手甲てっこうを、――ガガァァン!と打ち合わせた!
 火花ひばなが散ったが、おとは聞こえなかった。

 どうなってる――――?
 特撃型11番シシガニャンあたまのぼると――

 おなじく5ばんあたまうえに立つ、女将おかみさんの姿すがたが見えた。
 あたまに巻かれている頭巾ずきんが取りはらわれ、そのかみが――
 まるでみずなかのように持ち上がり、ふわふわとただよっている。

――女将さん! ――――何で声が聞こえる!?」
 返事へんじはねぇ!

 女将おかみさんのつまさきからあたま天辺てっぺんまで、無数むすう魔法まほう神髄しんずい――
 ひかりすじで、おおわれてやがる!
 (オルコトリアの金剛力こんごうりきが、血を媒介とする・・・・・・・なら――おそらく)
 ああ、あの文様もんよう活力マナ発露はつろ――古代魔法こだいまほう呼び水・・・にしてやがる!

 ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォオヴォヴォヴォッ――パルゥルルルルルルルッ♪
 ボバボーンなからだ節々ふしぶしたいして展開されたソレ・・・・・・・は――
 彼女おかみさん全身ぜんしんを、かがやかせ――――フッ!

 おとも無く姿すがたを消す、女将おかみさん。
 (ゴゴゴォォォンッ――――!)
 からだしんつらぬほど衝撃ふるえが、草履ぞうり足裏うらから這い上がってくる・・・・・・・・
 まるで金堂こんどうきょうを読んだときの、くちのどつたわる――おも震え・・だぜ!

 (バリバリバリリィッ――――ギャリギャリギャリンッ!)
 たかい木のうえかみなりが落ち、火花ひばなが散った。
 女将おかみさんと、もう一人ひとり
 背後うしろから飛んできた、でかい木さじを――
 見もせず蹴り払う・・・・人影ひとかげ

 そのあたまには、鬼族オーガのような雷光らいこう
 片角かたつのほとばしらせているのは、つよひかり

 ふぉん♪
『リオレイニア>シガミー、見て下さい。足が蹄になっています』
 リオの耳栓一体型みみせんいったいがた眼鏡めがねは、遠くを見通せる・・・・・・・
 ヴュゥゥゥッ――♪
 自分じぶんが見ている映像ものを、此方こっち画面モニタおくって寄越よこした。
 〝白狐しろぎつねめん〟の写し・・を、もう完全かんぜん使いこなして・・・・・・やがるぜ。

 ふぉん♪
『ルガーサイト改【金剛相】
 防御力310。魔術的特性の構成質量をキャンセルする。
 装備した者の眼光を抑制すると同時に、
 魔術構文の概算化による詠唱時間短縮。
 追加機能/使用者の好みに形状変化可能』

 こっちは記録ブクマを取っておいたからか、ちゃんと表示ひょうじされた。
 これに書かれてはいねぇが、おれや迅雷ジンライが使う――
 動体検知むしのしらせ暗視よめが利く、便利べんり代物しろものだ。

 ふぉん♪
『ホシガミー>あら、かわいらしい。足は蹄になっているようですね』
 画面がめんうつった足先あしさきには、フサフサした毛が生え――
 たしかに、それはうまのようだったが――

 ふぉん♪
『シガミー>かわいいだとお!? 立って歩く馬わぁ、ミノタゥ、ミノ太郎を呼びそうで怖え!』
 (あれ? シガミーともあろうものが、びびってんの? ねぇ、びびってんのぉ――ウッケケケッケッ♪)
 あー。とうとう五百乃大角いおのはら幻聴にせのこえまで、聞こえてきやがったぜ!

 ふぉん♪
『ホシガミー>ミノ太郎さんは馬と同じ〝奇蹄類〟です。そしてファロコさんは、〝偶蹄目〟ですので、羊や豚と同じです。蹄の間も空いているので、生息圏がまるで違います』
 わからんし――ミノ太郎たろうわぁ星神ほしがみのぉ半身はんしん片割れ・・・みたいなもんだろうが!

 けどその手は、普通ふつうひとのそれだった。
 魔物まものよりは、人の方・・・ちかなりをしている。
 女将おかみさんも負けじと、まえに大講堂だいこうどうで見た――小剣しょうけんみたいな短刀たんとうを抜いた!

「コラッ! サッサトショウキニ、オモドリヨ!」
 ヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリパリリィィィィィィィィッ――――!!
 ほとばしる――雷光ひかり
 画面がめんなか女将おかみさんのからだに沿って、回転かいてんする古代魔法こだいまほう

「ゴワルルゥ、モヴヴォォォォォォーーーーゥ!」
 いなな細身ほそみの――二股娘ファロコ

 彼女かのじょが〝ファロコ〟と呼ばれた、尋ね人チラシぬしだ。
 つの小剣たんとうはじかれた、片角かたつの魔物まものむすめが――
 目のまえに、落ちてきた!

ーーー
奇蹄類/蹄がひとつ。馬、シマウマ、ロバなど。ウマ科・サイ科・バク科。
偶蹄目/蹄が分かれている。ウシ、カバ、キリン、シカ、イノシシ、ブタ。ラクダ、リャマなどだけで無くクジラも含まれる。イノシシ亜目、ラクダ亜目、鯨反芻亜目。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん
ファンタジー
捨て子のアコルは、元Aランク冒険者の両親にスパルタ式で育てられ、少しばかり常識外れに育ってしまった。9歳で父を亡くし商団で働くことになり、早く商売を覚えて一人前になろうと頑張る。母親の言い付けで、自分の本当の力を隠し、別人格のキャラで地味に生きていく。が、しかし、何故かぽろぽろと地が出てしまい苦労する。天才的頭脳と魔法の力で、こっそりのはずが大胆に、アコルは成り上がっていく。そして王立高学院で、運命の出会いをしてしまう。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界ラーメン

さいとう みさき
ファンタジー
その噂は酒場でささやかれていた。 迷宮の奥深くに、森の奥深くに、そして遺跡の奥深くにその屋台店はあると言う。 異世界人がこの世界に召喚され、何故かそんな辺鄙な所で屋台店を開いていると言う。 しかし、その屋台店に数々の冒険者は救われ、そしてそこで食べた「らーめん」なる摩訶不思議なシチューに長細い何かが入った食べ物に魅了される。 「もう一度あの味を!」 そう言って冒険者たちはまたその屋台店を探して冒険に出るのだった。

【全12話/完結】リタイア勇者たちの飲み会

雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
◇12/20:::HOT90位ありがとうございました!RPGで言うところの全クリをした後、富も名声も女も時間も何もかもを満喫しつくした「元勇者=リタイア勇者」たちと、設定上やられ役=悪役キャラの魔王や魔女たちが繰り広げる、ほのぼの居酒屋同窓会。 自己中神様にハレンチ女神。不倫二股ヒロインたちも登場して、毎夜毎夜飲みまくる、胃袋ブレイク。 (いろいろ増えるよ。登場するよ) ※加筆修正を加えながら、ゆっくり更新中です。 ※第二回お仕事コン楽ノベ文庫賞の受賞候補作品でした。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...