608 / 734
5:大森林観測村VSガムラン町
608:大森林探索行、静まる森
しおりを挟む
「おぉーい、ファロコやぁーい!」
青年と言う程には若くないジューク氏が、声を張り上げた。
村長と言うには若すぎるし、覇気のねぇ声が――実に頼りなく。
(どうしても、ニゲル感が漂いますね)
おう、言ってやるな。それでもあのじゃじゃ馬を曲がりなりにも、御する才覚の持ち主だぜ。
ニゲル共々、立派なもんだ。たとえ尻に、敷かれてようがぁなぁ。
「おぉーい、ファロコやはぁーっけっほけほけほっ!」
とはいえ――こうも締まらんと。
ふぉん♪
『シガミー>ミスロット・リンデが尻や頭を、ひっぱたきたくなるのもわからんでもねぇ』
ふぉん♪
『ホシガミー>クスクス。シガミーさん、女性の敬称に齟齬がみられます』
ふぉん♪
『リオレイニア>気になってはいたのですが。正しくは〝ミス〟です。私でしたら〝ミス・リオレイニア〟となります。〝ミスロット〟ではありません』
ふぉん♪
『シガミー>そうなのか? 本人が〝ミスロット・リンデ〟っていうもんだからよぅ』
そういや一瞬、ヒントが出てたな。
ふぉん♪
『ヒント>ミス¹/誤り。間違えること。
ミス²/独身女性のこと。ひいては女性全般を示す敬称』
またでた。
迅雷おい、返事をしやがれやぁ!
相棒を叩いてみるが、返事は無かった。
「をををーぅい!!」
「おほほーいぅ!!」
「ぅおおぉおぉーぅい!!」
子供らや鬼の娘が、うるせぇ。
「むぅをっふぉぉん♪ ずっがぁぁぁぁん――どごーん――どごすーん♪」
やい、おっさん。やかましぃやぁ!
「んいやっふぉっふっはぁぁぁぁっ――♪」
大岩や大木めがけ、道具を突き刺していく〝針刺《はりさ》し男〟。
コカコカカカガッ――スコココォォン♪
太針だか杭だかを打ち込む騒音は拍子木みてぇで、聞いていられなくもねぇがなぁ。
「にゃみゃふぎゃにゃぁぁぁぁん――――♪」
「ひひひっぃぃーん――――?」
おにぎり騎馬も、ややうるせぇ。
こんだけ騒いでりゃ、迷子の角娘の耳にも届くだろう。
「しばらくは、服に揺られて、のんびりするかな♪」
おれを抱える11番に、全力で身を預けた。
ぽきゅぽきゅぽきゅきゅむ♪
歩く音はうるせぇが、なかなか快適だぞ。
これなら町馬車がわりに、なるかもしれん。
街道だけじゃなく、野を越え山を越えて――
そのうえたぶん、川まで歩いて渡れるしな。
けど茅野姫には、言わないでおこう。
これ以上、猪蟹屋の仕事を増やされたら、おれの目が行き届かなくなっちま――すやぁ♪
ぽきゅぽ――――――――。
んぁ、列が止まったか!?
目を開ける。
連なる猫の魔物風どもは、ちゃんと歩いてやがるぞ!?
どういうこった!? 足音が聞こえなくなったぞ。
こんな深い森では急に、虫や鳥の鳴き声が聞こえなくなるときがある。
本当なら大きな獣か魔物か、盗賊か天狗を疑わねぇといけねぇが。
風にそよぐ葉擦れの音や、「(――――、――!?)」
こちらを振り返るリオレイニアの声まで、聞こえねぇぞ!?
「(――――!?)」
おれの声まで、出なくなったぜっ!
立ち止まる一列縦隊。静寂に気づいた先頭が、止まったんだろう。
おれは11番の頭に飛び乗り、四方八方を見渡した!
わさわさゆらゆらっ!
音も無く、大きく揺れる木々。
何かが死角である〝申〟の方角から、出てこようとしてるぜ。
おれは――ヴッ。くるん、ぱしん。
鉄輪も鳴らさず、静かに錫杖を構えた。
ボッボッボッボッボッ――――――――!
茂みから飛び出してきたのは、五つの黒影。
それは足が速ぇ――猪のような、魔物だった。
ただし、日の本や神域惑星で狩ったのとは――
その大きさが違っていた!
「――!」
兎に角、真ん中の一番、大きな奴を止める!
四つ足の奴らを止めるには、手数で圧倒するに限らぁな。
「――、――――。」
(ヒュヒュヒュヒュッヒュヒュヒヒヒュフォオン!)
ぅぬぉ!? 風音がねぇだけで、重心がずれやがる。
未熟だ。この打てば響く、体を持ってしても――
「――――――――――!!)」
(―――ギャラララッ!)
両端に二カ所ある、打突の先端。
それをまるで、苦無や手裏剣のように四方からとばす。
(――ガキッ―――ギュキッ!)
(ガッガッ――ゴン!)
急所である眉間を狙ったんだが、角に当てるので精一杯だった。
おれは長い棒を水平にかまえ――――印を結ぶ。
これに真言はのらねえが、あるのとないので威力がなんでか変わる――
「――!」
(ドッズズズズズズズムン!)
一番大きな奴は、倒した。
文言に巻き込まれた、もう1匹にも止めを刺しておく。
あとは小せぇから、おにぎり辺りが気づいてくれりゃ――
ふぉん♪
『シガミー>悪い、2匹しか倒せなかった!』
ふぉん♪
『ホシガミー>心配いりませんわ。タターさんが残りを、倒してくれましたので♪』
何言って――振り返れば、特撃型改の群れに飛び込んだ、残りの3匹が――
全部、ひっくり返ってる。
タターを見れば――
高々と掲げた長銃から、白煙を立ち上らせていた。
青年と言う程には若くないジューク氏が、声を張り上げた。
村長と言うには若すぎるし、覇気のねぇ声が――実に頼りなく。
(どうしても、ニゲル感が漂いますね)
おう、言ってやるな。それでもあのじゃじゃ馬を曲がりなりにも、御する才覚の持ち主だぜ。
ニゲル共々、立派なもんだ。たとえ尻に、敷かれてようがぁなぁ。
「おぉーい、ファロコやはぁーっけっほけほけほっ!」
とはいえ――こうも締まらんと。
ふぉん♪
『シガミー>ミスロット・リンデが尻や頭を、ひっぱたきたくなるのもわからんでもねぇ』
ふぉん♪
『ホシガミー>クスクス。シガミーさん、女性の敬称に齟齬がみられます』
ふぉん♪
『リオレイニア>気になってはいたのですが。正しくは〝ミス〟です。私でしたら〝ミス・リオレイニア〟となります。〝ミスロット〟ではありません』
ふぉん♪
『シガミー>そうなのか? 本人が〝ミスロット・リンデ〟っていうもんだからよぅ』
そういや一瞬、ヒントが出てたな。
ふぉん♪
『ヒント>ミス¹/誤り。間違えること。
ミス²/独身女性のこと。ひいては女性全般を示す敬称』
またでた。
迅雷おい、返事をしやがれやぁ!
相棒を叩いてみるが、返事は無かった。
「をををーぅい!!」
「おほほーいぅ!!」
「ぅおおぉおぉーぅい!!」
子供らや鬼の娘が、うるせぇ。
「むぅをっふぉぉん♪ ずっがぁぁぁぁん――どごーん――どごすーん♪」
やい、おっさん。やかましぃやぁ!
「んいやっふぉっふっはぁぁぁぁっ――♪」
大岩や大木めがけ、道具を突き刺していく〝針刺《はりさ》し男〟。
コカコカカカガッ――スコココォォン♪
太針だか杭だかを打ち込む騒音は拍子木みてぇで、聞いていられなくもねぇがなぁ。
「にゃみゃふぎゃにゃぁぁぁぁん――――♪」
「ひひひっぃぃーん――――?」
おにぎり騎馬も、ややうるせぇ。
こんだけ騒いでりゃ、迷子の角娘の耳にも届くだろう。
「しばらくは、服に揺られて、のんびりするかな♪」
おれを抱える11番に、全力で身を預けた。
ぽきゅぽきゅぽきゅきゅむ♪
歩く音はうるせぇが、なかなか快適だぞ。
これなら町馬車がわりに、なるかもしれん。
街道だけじゃなく、野を越え山を越えて――
そのうえたぶん、川まで歩いて渡れるしな。
けど茅野姫には、言わないでおこう。
これ以上、猪蟹屋の仕事を増やされたら、おれの目が行き届かなくなっちま――すやぁ♪
ぽきゅぽ――――――――。
んぁ、列が止まったか!?
目を開ける。
連なる猫の魔物風どもは、ちゃんと歩いてやがるぞ!?
どういうこった!? 足音が聞こえなくなったぞ。
こんな深い森では急に、虫や鳥の鳴き声が聞こえなくなるときがある。
本当なら大きな獣か魔物か、盗賊か天狗を疑わねぇといけねぇが。
風にそよぐ葉擦れの音や、「(――――、――!?)」
こちらを振り返るリオレイニアの声まで、聞こえねぇぞ!?
「(――――!?)」
おれの声まで、出なくなったぜっ!
立ち止まる一列縦隊。静寂に気づいた先頭が、止まったんだろう。
おれは11番の頭に飛び乗り、四方八方を見渡した!
わさわさゆらゆらっ!
音も無く、大きく揺れる木々。
何かが死角である〝申〟の方角から、出てこようとしてるぜ。
おれは――ヴッ。くるん、ぱしん。
鉄輪も鳴らさず、静かに錫杖を構えた。
ボッボッボッボッボッ――――――――!
茂みから飛び出してきたのは、五つの黒影。
それは足が速ぇ――猪のような、魔物だった。
ただし、日の本や神域惑星で狩ったのとは――
その大きさが違っていた!
「――!」
兎に角、真ん中の一番、大きな奴を止める!
四つ足の奴らを止めるには、手数で圧倒するに限らぁな。
「――、――――。」
(ヒュヒュヒュヒュッヒュヒュヒヒヒュフォオン!)
ぅぬぉ!? 風音がねぇだけで、重心がずれやがる。
未熟だ。この打てば響く、体を持ってしても――
「――――――――――!!)」
(―――ギャラララッ!)
両端に二カ所ある、打突の先端。
それをまるで、苦無や手裏剣のように四方からとばす。
(――ガキッ―――ギュキッ!)
(ガッガッ――ゴン!)
急所である眉間を狙ったんだが、角に当てるので精一杯だった。
おれは長い棒を水平にかまえ――――印を結ぶ。
これに真言はのらねえが、あるのとないので威力がなんでか変わる――
「――!」
(ドッズズズズズズズムン!)
一番大きな奴は、倒した。
文言に巻き込まれた、もう1匹にも止めを刺しておく。
あとは小せぇから、おにぎり辺りが気づいてくれりゃ――
ふぉん♪
『シガミー>悪い、2匹しか倒せなかった!』
ふぉん♪
『ホシガミー>心配いりませんわ。タターさんが残りを、倒してくれましたので♪』
何言って――振り返れば、特撃型改の群れに飛び込んだ、残りの3匹が――
全部、ひっくり返ってる。
タターを見れば――
高々と掲げた長銃から、白煙を立ち上らせていた。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる