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5:大森林観測村VSガムラン町

591:大森林観測所への道、悪逆令嬢あらわる

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 ごちん――なにかが落ちた?
 見れば浮かぶプロジェクションbOTが、はなれたところに落ちてやがるぜ。
 おい、五百乃大角いおのはら巫山戯ふざけてる場合ばあいじゃねぇぞ!
 ルリーロやニゲルに次いで、3人目にんめの日の本生もとうまれのお出ましだぜ!

 (――自身じしんふくめれば、四人目よにんめなのでは?――)
 ばかやろう、それを言うなら五百乃大角いおのはらを入れて五人目ごにんめだろうが。
 〝神々かみがみ世界せかい〟というのはおれが死んだ、ずっとあとの日のもとだと聞いている。

 ふぉん♪
『シガミー>迅雷、五百乃大角どこやった!?』
「(迅雷ジンライぃ?)」
 返事へんじがねぇ?
 こんなことは、まえにもあった。
 神域惑星しんいきわくせいはじめて、吹っ飛ばされたときとか――

「みぃつけぇーましたわぁー♪」
 おれの肩口かたぐちから、そんなこえがした。

 ヴヴヴヴヴッッ――――ゴドンガチャンガランガシャガチャッ!!!!!
 くそっ、指輪ゆびわ腕輪うでわなか得物えものを――
 全部ぜんぶ、ばら撒いちまったぜ!

 おれは木のえだを、どんと蹴り――
 山道やまみち反対側・・・へ飛んだ!
 くるったにせのシシガニャンたちとちがって、さっきのこえぬしは――
 ほんのちょっと姿すがたを消し一瞬いっしゅんで、すうメートルはなれた反対側はんたいがわ姿すがたあらわしたところで――
 おれを見失みうしなってくれやしねぇだろうが。

「あら、これまさか? 日本刀・・・?」
 おれが落とした、つくったばかりのかたな
 木のうえまで一瞬いっしゅんのぼってきた魔術師まじゅつしおんなが、落ちたソレ・・に飛びついた。

 おれはシシガニャンどもに切りたおされた、木のみきうしろにかくれる。
 迅雷式隠じんらいしきかくみの昼日中ひるひなかに、何処どこにでもかくれられるような代物しろものでは無い。
 それでももりひそめるがらに変えてあったから、もうこのままやり過ごす。

 ガチャ――持ち上げられる小太刀かたな
 おれは木のみきと、地面じめんあいだの――。
 ささくれ立った切りあとのせいで出来できた、わずかな隙間すきまから――
 細身ほそみのドレスに身をつつむ、おんな姿すがたを見た。

 かかとが、えらくたけ細靴ほそぐつが――カッカカン♪
 こっちを向いた・・・・・・・

「あら居ない? 淑女しゅくじょまえから挨拶あいさつもなしに姿すがたを消すなんて――よっと、わたくししつけて差し上げても――」
 暗器あんきのようにとがったかかとで、落ちていた錫杖しゃくじょう鉄輪てつわを跳ね上げる――
 そのあしほうがぁ、行儀ぎょうぎわるぃんじゃねぇのかぁ?

 しかし小太刀こだちだけじゃなく、錫杖しゃくじょうまで取られたぜ。
 木のみきうらよこたわらせたからだ一切いっさいうごかせん。
 うごいたら殺られる。
 かおを地に突っ伏し、つちにおいをひたすら嗅ぐ。
 予備よび錫杖えものを出そうにも、たぶん全部ぜんぶばら撒いてきた・・・・・・・

 カツコツッ――!
 彼奴あいつがこっちへ寄ってきたら、もう一度いちど――
 向こうのはしまで裏側から戻り・・・・・・錫杖しゃくじょう回収かいしゅう――
 いや、あそこに落としてきた全部ぜんぶを、回収かいしゅうするかっ――!?

「びぃぃぃえっくしょひょほぉーい!」
 木の葉がはなあなはいっ――ひょほぉーい!
 畜生ちくしょうめっ!

 ぎゅるっ――ズザザザッ!
 四つあし姿勢しせいのまま、からだまわし――ドガッ!
 かくれていた倒木とうぼくを、蹴り飛ばした!

 そのまま、脇目わきめも振らず――ズザッ、バッ!
 山道やまみち横端はしへ飛び込んだ!
 フォワッ――目のまえかすみおおわれる。
 みちはしからはしへ、一瞬で飛んだ・・・・・・証拠しょうこだ。

 背中せなかから横端よこへ飛び込んだから――ガッ!
 いまおれたちは、背中合わせに・・・・・・対峙たいじしてる。

 ドンッ――蜻蛉とんぼを切った!
 チャリリン、ガッシャッ――――!
 草履ぞうりあしで、落ちていた錫杖しゃくじょうを跳ね上げる!

 鳴る鉄輪じゃっりぃん。ぐるんぐるるんと、回る錫杖じゃりりぃん
 「ウカカッ♪」――ゆっくりとまわるおれ。

 さかしま山道さんどうさかしま魔術師ごれいじょうが――そのほそい背をさらしてる。
 この鉄輪てつわを、ぐるるん、ぱっしぃん!

 ぎらり――――――――――――――――――――――――――――――矢鱈やたらなが鉄棒てつぼう
 一切いっさい躊躇無ちゅうちょなく、そんなもんが突き込まれた!
 フォォォォンッ――!

 ッジャッリィィィン♪
 ながさもとげかずも負けてるが、かたちとしちゃ迅雷ジンライと――独鈷杵どっこしょと、そう変わらん!
 ガッギャキキィィィィィインッ――――――――ぎらり!
 斬りむす刹那せつな、振りかえおんなの――くるった双眸そうぼうに照らされた。

 ひゅぼぼぼぼぼぼごごごおごぅわぁぁぁぁぁっ――――――――――――――――――――!!
 赤青緑橙紫いろとりどり爆煙ばくえんが、さらに爆煙ばくえんを吐き――――ばっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぅん!!!
 炸裂さくれつする空中ちゅう

 爆発それうしろにたおれることで、かわし――
 ちっ、けむりが追って来やがる!
 迅雷ジンライせん赤い甲冑しゅぎつねとか、妖弧ばけぎつねで見た四つ足の足運び・・・・・・・
 脳裏あたまをよぎる――そのひく姿勢しせい

 ぼごぁ、ぼごごぁ、ぼっごわわわわわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
 ころがり、ころがり――錫杖しゃくじょう縦横・・にして跳ね・・必死ひっし這いつくばった・・・・・・・

「あら、素早すばやいですのね。まるで小猿こざるのようではなくって♪」
 おんなわらし姿すがたのおれを本気ほんきで、焼き尽くそうとしてやがるぜ!
 細腰こし道具どうぐをぶら下げる革紐かわひもに差し込まれた、おれの小太刀かたながガチャリと揺れる。

 さっきおれのかたなを、「日本刀にほんとう」って言ってやがったよな?
 つまり悪逆令嬢このやろうさまは、おれが死んだ元和げんなから、ずっとあと時代ときを生きていたことになる。

「くすくすくすすっ、もっともっと、お逃げなさいな♪ なんだかたのしくなってきましたわっ♪」
 やべぇ、こいつぁ――何時いつの……いや、何処の日の本生まれだどこ・・・・・・・・!?

「五のかま――――」
 爆発ばくはつが伸びなくなったすきに、錫杖しゃくじょうを突き立て――
 からだを起こす!
 かた捌合はちごうわざせんによる打突だとつ体捌たいさばきによる攻防一体こうぼういったい体現たいげんする。
 突き込まれる鉄棒まほうつえを、両手りょうてをついてかわし――
 ギャッリィィィィンッ!
 立てた錫杖しゃくじょうじくにし、さかしまになる!
 おれを見下みおろす悪逆令嬢ロットリンデと、ふたたび目が合った。

 ギャシャン♪
 鉄輪てつわ鉄棒ぼうさきを、からめ取った!
 そのまま体重たいじゅうを掛け、ぐるんと一回ひとまわり。
「きゃぁっ――!?」
 姿勢しせいくずした魔術士まどうしから、てつ棘棒とげぼうをぶんどった!
 ブォオン――――ガラガララァン♪

「――――フフフフフフッ、さ・す・が・は・宮廷魔導師きゅうていまどうし、バレちゃぁ仕方しかたが有りませんわっ! そうよわたくしが、かの悪名高あくみょうだかい〝悪逆令嬢あくぎゃくれいじょう吸血姫きゅうけつきロットリンデ〟よーー!」
 ようやくその姿すがたを、観察出来じっくりとみれた。
 女将おかみさんほど、としはいってねぇか?
 えらく綺麗きれいおんなだが、かおつきが――
 喧嘩けんかを売るときの某母娘ぼうははむすめごとき、様相ようそうをしてやがる。
 つまり……ニゲルが好きそうなつらってことだ。

「おれぁ、宮廷魔導師きゅうていまどうしなんかじゃねぇやい!」
 ご令嬢ロットリンデ口調くちょうは、どこか芝居しばいじみてる。

「聞くみみなど、持ちませんわぁ――!」
 ――――ボムボムボボボボボボォム、ボボボムッワン!
 彼女かのじょの手から噴き出す、大爆煙だいばくえん
 ゆびあいだから出る爆煙それには、ひとつひとつちがったいろが付いていた。
 しまほしに( ͡ᵔ ͜ʖ ͡ᵔ ひとのかお)。

 この色味いろみというか絵柄がらは、おれが知らんやつだ。
 もしまんいちクエストこと上手うまはこんだなら――
 あの色味がらつくかたを、おそわりてぇもんだぜ。

「このわたくし爆発魔法ばくはつまほうかわすだなんて……小猿こざるのように、かわいらしいメイドさんですわね♪」
 ほほに手を当て――チーン♪
 値踏ねぶみをされた。

「おはつに、お目に掛かるぜ。おれぁガムランちょうで、あきないをするシガミーだっぜ!」
 錫杖しゃくじょう小脇こわきかかえ、こしを落とし――前掛けエプロンをつまむ。
 練習れんしゅうしておいて、良かったぜ!

「これはこれは、ご丁寧ていねいに。わたくしは、ロットリンデ・ナァク・ルシランツェル・・・・・・・もうしますわ♪」
 こしを落とし細身ほそみのドレスのすそを、かるく持ち上げる仕草しぐさ
 その所作しょさは、リオレイニアなみどうっていて――

「さすがは、ご令嬢れいじょうさまだぜ。おれの付け焼き刃の行儀ぎょうぎとわぁ、雲泥うんでいの差だ」
 ただただ、圧倒あっとうされた。

「よしてくださる? わたくしも良いとしですので、ミス・ロットリンデと呼んで下さいな」
 落ちた鉄棒まほうつえまであるいて行く、、御簾路頭厘手ミスロットリンデ
 あれも魔法まほうが出るってことは、魔法杖まほうつえなんだろうが――
 無くても平気へいきで、大爆発だいばくはつはなってた。
 リオレイニアでさえ、ちいせぇ魔法杖まほうつえ使つかうってのによ。

 鉄棒まほうつえはしとげを、かかととげで――ガチィィン♪
 踏みつけられた鉄棒つえが、ぐるんと跳ね上がる。
 ガンッ――ガラランッ♪
 粉砕ふんさいされた椅子いすあし蹴飛けとばされ、小石こいしうえに乗る。

 ゴッドッンッ!
 椅子いすあしふちに乗った鉄棒てつぼうたおれること無く――ぴたり。

 片足かたあし相当重そうとうおもい、てつ魔法杖つえを蹴り上げ――
 地面じめんに落ちてた、椅子いすあしうえで――
 釣り合いを、取りやがったっ!

 くそう、こいつも剣豪並けんごうなみの、体捌たいさばきを習得しゅうとくしてやがるのか。
 あなどれねぇぜ! こういう、しゃらあしゃらの境地きょうちにいるおんなどもわぁ!
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