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5:大森林観測村VSガムラン町

589:大森林観測所への道、シシガニャンと級友たち?

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 それはあきらかに、ご令嬢れいじょうではなかった。
 みじか夏毛なつげおおわれた、寸胴ずんどうからだ手足てあし
 おおきなあたまに、目鼻口めはなくちが無い、のっぺりとしたかお

 不意ふいあらわれたのは、おにぎり――でもない。
 むらさきがかったあざやかな紅色べにいろ
 女子生徒おんなのわらしかかえた、特撃型改シシガニャン躑躅色つつじいろ)だった。

 かかえられているのは、眼鏡めがね女子生徒じょしせいと
 教室きょうしつ大講堂だいこうどうでレイダたちのそばに居ることのおおい、この生徒わらしには――
 いつだか饅頭まんじゅうを、くれてやったことがある。

「よう! 良かったぜ、合流出来またあえてよぉ!」
 名前なまえは、なんと言ったか?
「(〝眼鏡太郎めがねたろう〟じゃなくてよぉ……ほらアレだぜ)」
 生徒わらししりかくれて、特撃型改シシガニャンはらが見えやしねぇ。

 スッ――『――――・ルリミット』
 女子生徒じょしせいとが持ち上げられ、はらに書かれた生徒名なまえの、下半分したはんぶんが見えた。

 ふぉん♪
『人物DB/レトラベラ・ルリミット
      初等魔導学院1年A組生徒
      出席番号13』
 礼虎れとらか。そんな名だったかぁ?
 日の本ぜんせじゃ、ひとの名をおぼえられねぇことなんざ、滅多めったに無かったぞ。

 ふぉん♪
『イオノ>太郎は無いでしょ』
 ふぉん♪
『>眼鏡も大概では?』
 ふぉん♪
『シガミー>やかましい。根菜太郎に棒太郎は黙っとけや』
 ふぉん♪
『イオノ>カニ太郎乙』
 ふぉん♪
『>坊主太郎乙』
 うるせぇ、ちょううるせぇ。

「おおーい! こっちだぁ!」
 礼虎れとらへ向かって、手を振った。

 ぐるん――んぁ?
 こっちに気づかねぇのか、眼鏡れとらあやつ特撃型改シシガニャンが――背を向けやがった。
 背中せなかには『1∋』と書かれてる。
 んあぁ? なんだぜ、あの『3』の字わぁ?
 随分ずいぶん下手へたくそじゃねぇかぁ?

「プププゥー、うけるー♪ アレ書いたのわぁ、あんたでしょぉがぁ
 女子生徒れとらを手の上に立たせ、たかく持ち上げる特撃型改とくげきがたかい――?
「うるせぇ。それより彼奴あいつら、なんかおかしくね?」

 ぐるんと回転かいてんする『1∋』ばん
 無造作むぞうさに振りまわされる、出席番号しゅっせきばんごう13ばん
 やべぇ! おれは飛び出した。

 ヴ、ヴヴヴ、ヴッ――ふるえる棒太郎ジンライ
緊急停止きんきゅうテいしコード、機能きノうしマせん
 ヴォヴォゥゥゥン♪
 寄ってきた、ぼうをつかむ。

外仁ャぞゅ苾みにゃぎゃぁ――♪」
 どこかいびつな鳴きこえはっする、特撃型改シシガニャン1∋ばん
「…………」
 四方八方しほうはっぽうへ振りまわされる、出席番号しゅっせきばんごう13ばん
 どうかんがえたっておかしい。あんな目に遭わされてるのに――
 子供こどもが、うめきごえひとつあげねぇのが、異常いじょうだった!

 ゴッ――バキャン!
 木のえだにぶつかる礼虎れとら

「うわぁぁぁぁっ!? ばかやろう、死んじま――!?」
 やべぇ、気でも触れたか1∋ばんわぁ?
 ヴッ――蘇生薬エリクサーを取り出すが――
 礼虎れとらあたまは……まだちゃんと、くっ付いてた。

 バギバギ、ドサドサササッ!
 むしろ落ちたのは、木のほうだった。
 そこそこのふとさのえだが、切りぐちさらしている。
 それはおので、切りつけられたよう・・・・・・・・・で。

「ポポポォオーーーーン♪ 乙種セカンドクラス物理検索フィジカルサーチ開始致かいしいたします。論理封鎖態勢ロジカルブロッケード解除かいじょされるまでは、白線内はくせんないに下がってお待ちくyださい」
 五百乃大角いおのはらとはちがおんなこえが、あたまなかに鳴りひびく!
 此奴こいつぁ〝普通じゃねぇ物・・・・・・・ちかくに有る〟と、聞こえてくるこえだぜ。

「ぎゃぁぁ――迅雷ジンライクーン、これさぁ! あきらかに、バグってる・・・・・わよねぇん!?
 おのの五百乃大角いおのはらアイコンさまが、向かって正面しょうめん画面奥がめんおくから目をそらし、手前こっちを見た。

「はイ。女子生徒じょしせいと生命反応バイタルに、異常いじょうは見られませんので――彼女かのじょ形状けいじょう模倣もほうされただけの、模倣体もほうたいかんがえられま)」
 五百乃大角アイコンは、よほどおそろしいのか――さっきつくった『あたくしさま』フォルダに、御神体からだをよいしょと仕舞しまい込んだ。
 ふぉん♪
『ヒント>模倣/形を真似ること。二番煎じや偽物』

偽物にせものだとぉう? そういやぁ、女将おかみさんの手下てしたっぽいのがぁ――そんなことを言ってやがったな?」
 ふぉん♪
『シガミー>体は本物で、操られてる可能性は?』
 ふぉん♪
『>ありません。呼吸運動も、まばたき反射も有りませんので』

 ボッ――――ォオッ!
 まるで長刀なぎなたヤリのようにりょううでを伸ばし、突き込まれる――礼虎レトラベラ
 間近まぢかで見りゃあ――
 切っ先てあしうごいていようが、感情こころの無い目でおれを見つめていようが――
 ひとじゃねぇのが――すぐにわかった!

 スパスパスパパパッ――――!
 舞う木の葉が、礼虎レトラベラ手刀しゅとう眼鏡めがねふちや、編み込まれたかみのほつれ毛で――細切こまぎれになる。

 おれはちかづいてくる、そのあたまを――
 一切いっさい躊躇無ちゅうちょく、渾身こんしんちからで――ガァァァァン!
 蹴り飛ばしたが、くびかすかにねじれただけだった。

 もしこれが、レイダかリオだったなら――――
 最初さいしょのひと突きで、からだつらかれていたかもしれん。

「(どうやら、偽物にせものみちというのは――分断ぶんだんされた仲間なかまに化けた何者なにものかにより攻撃こうげきするための、わなという解釈かいしゃくで良いとおもわれま)」 
「(仲間なかまだとぉ? 礼虎レトラベラが、まるでやりみてぇだぞっ!?』
 特撃型改シシガニャン足音けはいも、礼虎レトラベラ呼気けはいかんじられん。

 スゥワッ――「んぐっ!?」
 まばたきをしたら、目の前ふところはいり込まれた。
 特撃型改1∋ばんがまるで幽霊ゆうれいか、リオレイニアのような隠形おんぎょうじゅつ使つか――
 ボッ――――ォオッ!
 ボッ――――ォオッ!
 ボッ――――ォオッ!
 やべぇ。マジ・・ちょうやべぇ!

 ギャッリィィィン、ギャギャ――リィィン!!
 火花ひばなを散らす迅雷ジンライ
 念話ねんわのおかげしのげちゃいるがぁ、あのかて礼虎やりを――
 こう連続れんぞくで、突き込まれたら――

 ふぉん♪
『>容姿スキャン後の構造判別に、原初的なアルゴリズムが使用されていると思われます』
 それはつまり?
 ふぉん♪
『>抱えた生徒を〝強化服特撃型改が持つ、手持ち武器〟と、識別したようです』
 それでぇ!?

「(この化生けしょう偽強化服相手にせシシガニャンあいてに、おれぁどうすりゃ良いんだぜ?)」
「(とにかく情報じょうほうが足りません。攻撃こうげきを食らわないよう、攻撃こうげきを当ててくだ)」

   §

「やったぜ! にせ強化服シシガニャンは、突きゃ砂になって崩れちまう・・・・・・・・・・ぜ!」
 ドザザザァ――ガララァン♪
 地にことたわる出席番号しゅっせきばんごう『1∋ばん』が、目を閉じた。
 ドザザァッ――――ファサラララァァッ♪

「はぁはぁ、ふぅひぃ――!」
 や、やっとのことで、にせみちてきたおせた。
 迅雷ジンライはなしてやる。

「(シガミーッ)」
 ヴヴヴヴッ――♪
 おれの相棒ジンライ興奮こうふんすると、こうしてルガばちうごきをする。

 スッ、スササッ、スサササアッ、ガサガサアッ――――――――――――
 ふぉん♪
『>取り囲まれました』
「(わかってらぁ!)」
 おれはこしに差した日本刀かたなを、かまえる。

 四方八方しほうはっぽうから飛び出してきたのは――
 男子生徒おとこのわらしかかえた露草色つゆくさいろ
 手持ち武器おとこのわらしを、袈裟懸けさがけにかまえ――
 ぐるりとまわって、背中せなかを向ける。
 『丿』『∋』『ヰ』『g』『q』『1G』の特撃型改とくげきがたかい

 背中せなかを向けて、どういうつもりだぜ!?
 ゆっくりとおれのまわりをまわり出した、あざやかであわ青色あおいろのシシガニャンたち
 ふぉん♪
『>幻惑させるつもりのようです。注意して下さい』

 ボッ――――ォオッ!
 ボッ――――ォオッ!
 ボッ――――ォオッ!
 まわねこ魔物風まものふう隙間あいだから、突き込まれる――
 女子生徒たちてもちぶき

 そのなかには――
 『レイダ・クェーサー』
 『リオレイニア・サキラテ』
 『ヴィヴィエラ・R・サキラテ』
 その姿すがた……なり真似まねたのが有って!

 ギィン、どたたたっ!
 あぶねぇ! 流石さすがに、これには面食めんくらったぜ。
 一端引いったんひくぞ、迅雷ジンライ

「(では、〝男子生徒だんしせいとかかえたシシガニャンの模倣体もほうたい〟を、真っさき攻撃こうげきしてくだ)」
 背中せなかからか!?
 そんな卑怯ひきょう真似まねを――ふぉん♪
『>しないと23秒後に、完全に取り囲まれます』

「出てこないならぁ、こちらからぁー、行ーきーまーすーわーよぉー♪」
 ぼっごごごわぁぁぁぁぁぁぁぁん――――♪
 ご令嬢れいじょうも、目とはなさきだ。

   §

 おれは一匹いっぴきにせシシガニャンを突いて、かこみを抜け出しだ。
 ずぼん、がさがささっ!
 茂みしげみに飛び込み、山道横やまみちよこへ突きすすむ――フッ!

 反対側はんたいがわからあらわれたおれは――ぶわさっ!
 迅雷式隠じんらいしきかくみので、全身ぜんしんおおい――どっがっ!
 即座そくざに木に駆けのぼり――ガサササッ♪
 枝葉えだはまぎれた。

 その後、ひと教室分現きょうしつぶんあらわれた特撃型改シシガニャンどもは――
 ありとあらゆる手持ち武器・・・・・で、武装ぶそうしていて――
 居なくなったおれをさがし、縦横無尽じゅうおうむじん下草したくさを刈りはじめた!

「(うえへ跳んで良かったですね、シガー)」
 その武器ぶきなかには、くびが飛んで爆発ばくはつする大筒おおづつみたいなものまであって――
「(ああ。あんなの・・・・とやり合うほどの胆力たんりょくは、とても練れねぇ)」
 おれは木から落ちねぇように、身震みぶるいするからだを押さえ込んだ。
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