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4:龍撃の学院

572:龍撃の学院、対人鑑定とコッヘル商会

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辺境伯へんきょうはく名代みょうだいルリーロ・イナリィ・コントゥルとぉ――」
「ガムラン町冒険者ちょうぼうけんしゃ代表だいひょうにしてコントゥル家次期当主けじきとうしゅルカルル・リ・コントゥルの名において、タター・ネネルドを上級鑑定じょうきゅうかんていすることをここにみとめます」
 大講堂だいこうどう木霊こだまする、コントゥル母娘ははむすめ宣言せんげん

 ちなみに「ただの」少女しょうじょタターに家名かめいは無く、正式せいしき冒険者登録ぼうけんしゃとうろく都合つごうで〝出身地ネネルド〟があてがわれた。
 「ただの」シガミーが〝シガミー・ガムラン〟と登録とうろくしたのと、おな理由りゆうだ。

本当ほんとうに良いのですね、タター?」
 もはやどこから見ても、蜂女の魔神ルガレイニアには見えない。
 やや見目麗みめうるわしくも――目隠し・・・常時着用じょうじちゃくようする、不審なメイドリオレイニア

「はい、よくわかりませんが、おまかせします」
 元上司もとじょうしにしてあこがれる、メイドの中リオレイニアのメイド・サキラテへの全幅ぜんぷく信頼しんらい
 アダマンタイトはあばれること無く、小柄こがらからだに抱きかかえられている。

「1かい300パケタですニャァ♪」
 はじける笑顔えがお。そしてたけぇ!
「プーックスクス、おだいはこちらへおねがいいたしますね♪」
 すかさず湧いて出る、ただの星神ホシガミ茅野姫カヤノヒメ
 まさ守銭奴しゅせんど面目躍如めんもくやくじょだが、その下卑げび顔止かおやめろ。

 ニャフフプークス♪
 守銭奴しゅせんど猫耳族ねこみみぞくと、おなじく守銭奴しゅせんど星神ほしがみさま。
 その一糸乱いっしみだれぬ下卑げび視線しせんに耐えられなくなった、れい詰問官こやくにんが――
「なっ、なんだというのかね!?」と、こえあらげた。

本来ほんらい上級鑑定じょうきゅうかんてい他人たにんたいしておこなうのは、マナー違反いはんだニャァ♪」
 けっして守銭奴しゅせんどではないが、安上がりでもない・・・・・・・・顧問氏ミャッド言葉ことばかさねる。

「それをこの鑑定魔法具箱かんていまほうぐばこで、お見せして差し上げようというのですニ゛ャァー?」
 親指おやゆび人差ひとさゆびをこすり合わせる、小銭こぜにあらわ仕草しぐさ

 300パケタは、ちいきめの革袋かわぶくろならふたぶんにもなる。
 けっして小銭こぜにではない。

渦中かちゅうである龍撃りゅうげきあかしを、その目でたしかめられるのです。けっして、おたかくはないとおもうのですけれど、ウフフフ
 ププークスクスクス♪

「「さぁ、どういたしますの?」」
 クツクツクツクツ、こぉん♪
 ことは王制存続おうせいそんぞくかかわる、重大じゅうだいごとである……らしい。

 二対の狐耳コントゥルおやこから詰め寄られ、「で、では少々しょうしょう、お待ちいただきたく――」
 いくら上級貴族じょうきゅうきぞくとは言え、嵩張かざば金貨パケタを持ち合わせているわけは無い。

 ドヤドヤドヤドヤ――ギギィーィ、バタン!
 大講堂だいこうどう大扉おおとびらが閉じられ、立てかけてあった何枚なんまいものいたたおれた。

   §

 ゴガチャリッ♪
 何台なんだいもの馬車ばしゃからかきあつめて来たらしく、銀貨ヘクク銅貨キーヌも混じっていた。

「じゃぁ鑑定かんていするニャァ♪」
 チーン♪
 かねが鳴り――――かしゃん♪
 はこうえ隙間すきまから、いたが飛びだした。

『タター・ネネルド LV:25
 盗賊★★★ /俊敏/呼■隠蔽/罠解除/龍殺し
  追加スキル/風読み/アダマン■■ト祖型概論/魔法具操■術
 ――所属:なし』

「なっ、なんだね、このていレベルはっ!?」
 おどろ上級貴族じょうきゅうきぞく
 ばか言うな。タターは巨木きょぼくを刈るまで、LVレベル2だったんだぞ!

「そもそも建国けんこくあかしとも言える、りゅうたおしたというのは本当ほんとうなのかねっ?」
 小役人こやくにんが、因縁いんねんを付けてくる。

「それは間違まちがいないよ。ここをよーく見て、あげて下さい♪」
 じっとタターのそばに張り付いていた、大柄な麗人オルコトリアうごいた。
 片手かたて少女タターをまるで、お猫さまケットーシィのように軽々かるがると抱きかかえ――
 壇上だんじょうつくえまであるいて行き、そこに置かれた上級じょうきゅう鑑定結果《かんていけっか》を――
 とがった爪先つめさきで、とん。

 鬼族オーガ屈強くっきょうからだ。そしておそろしくととのったかお
 今日きょう受付嬢うけつけじょう制服せいふくに、身をつつんでいる。
 一瞬いっしゅん緊張きんちょう

「うむ、どうやら本当ほんとうのようだが」
 政敵派閥せいてきはばつとやらの頭領かしら構成員こぶんどもが、食い入るように鑑定結果きのいたにかじり付いた。

「ですが閣下かっか。このむすめが〝建国けんこくあかし〟を立てられるほど傑物けつぶつであるとは、到底思とうていおもえませぬ」
 『龍殺し』の文字もじを見て素直すなおに引き下がったなら、あんなこと・・・・・にはならなかったのだと――
 かれらはこの直後ちょくご、悔やむことになるのだが。

 長銃アダマンタイトかかえオロオロするだけの小娘タターを見て、納得なっとくするくらいなら。
 こうして怒鳴どなり込んで来ては、いないのだ。

「ご納得なっとくしていただけてないようですので、ルコラコル!」
 パチリとゆびを鳴らす、派手はでなドレス姿すがた
「こちらにコォン!」
 ふすっ――狐耳きつねみみ少年かれはまたもや、ゆびを鳴らせなかったが――

「にゃぁっふっふっふふのふふふふっ――♪」
 猫耳娘ねこみみむすめがやってきた。
 うすわらいをつづける、その手には――
 上級鑑定魔法具箱・・・・・・・・が、たずさえられており――

「もう一枚いちまい、お撮りしてもよろしいでしょうか? クスクスプー
 星神ほしがみが手にするのは、ちいさなはこ
 またかねを入れろというのだろうが――

「「「「「「「「も、もう持ち合わせがない!」」」」」」」」
 だろうな。

「でしたら家名かめい名乗なのったうえで、紋章払もんしょうばらいでも――」
 お貴族きぞくさまは、そんなのが出来できるのか。
 派手はでなドレスがひるがえり、カツカツコツコツ!
 詰め寄られた頭領かしらほうが、因縁いんねんを付けられてるみたいになってきたぞ。

「なら、儂個人わしこじん冒険者ぼうけんしゃカードで決済けっさいしてくれ!」
 政敵派閥せいてきはばつ頭領とうりょうさまが、冒険者ぼうけんしゃカードを取り出す。
 いろきん――てことは、LVレベル40越えだ。
 あのお貴族きぞくさま、ああ見えて普通ふつうつよくね?

一番近いちばんちか女神像めがみぞうは……魔導騎士団まどうきしだん訓練場くんれんじょう東屋あずまやにあっただろ」
 すこしとおいか。大講堂ここにもひとつ欲しいな。

 ふぉん♪
『イオノ>女神像決済™ならあたくしさまが、出来るますわよ?』
 はぁ?
 じゃぁ、やってみろ。

「おにぎりっ
「みゃにゃぎゃにゃぁー♪」
 おれにぶつかるように、突進とっしんしてくる猫の魔物風きみどりいろ

あぶねっ!」
 飛び退いたおれの頭上ずじょうから飛び降りた、妖怪丸茸御神体いおのはらさまが――がっちゃり♪
 おにぎりがかかえてるのは『ギルド支部臨時しぶりんじ出張所しゅっちょうじょ』の〝台座・・〟とやらだ。
 猪蟹屋予定地ししがにやよていちはしらに取り付けてあったやつを、まあ便利べんり使つかってる。

「ぷるるルるぷるるルる――――こチら女神像めがミぞうナンバー10286デす。ゴ用件ようけンヲどうぞ
 ふぉん♪
『>女神像ネットワークへ接続しました。女神像決済™、使用出来ます』

「ふむ、白目しろめをむいてて、ちぃと気色悪きしょくわりぃがぁ。ちゃんと使つかえるぞ……ますわぜ」
 政敵てき頭領かしら美の女神さまいおのはらを、どうぞと差し出した。

   §

毎度まいどありニャァ♪」
 追加ついかでもう一枚いちまい――かしゃん♪
「プークス
 上級鑑定チーン♪される渦中かちゅう少女しょうじょ

『タター・ネネルド
 装備/魔銃オルタネーター【物理】
    コントゥル家の簡■インナーアーマー
    猪蟹屋標準制服女性用
    猪蟹屋支■■時計
    猪蟹屋標準靴女性用』
 いつだか、リオレイニアをのそき見て、どえらいおこられたやつか。
 ふぉん♪
『>はい。同じ人物を続けて鑑定した場合、装備一覧を簡易的にリストアップするようです』
 完成かんせいした長銃ちょうじゅうを、上級鑑定じょうきゅうかんてい魔法具箱まほうぐばこで見た結果けっかは――
 学者方がくしゃかただれかが持ってる。
 政敵てきを名乗る奴らに、おいそれと見せるわけにいかねぇから――
 この装備一覧リストとやらたしかに、うってつけだった。

「このアダマンタイトはおどろくことに、打ち直しをしていない・・・・・・・・・・。つまり正真正銘しょうしんしょうめい、このながさの鉱石こうせきからつくられたものだニャァ――♪」
 そんな顧問氏ミャッド言葉ことばに、派閥連中はばつれんちゅう少女タターではなく――
 辺境伯名代ルリーロかおを見た。

「え、なぁに?」
 照れる奥方おくがたさま。よわい200歳超さいごえの化けぎつね……日の本生もとうまれの、五穀豊穣ルリーロ・イナの神の眷属リィ・コントゥル
 ヴォヴォゥン♪
 そのかたわらに浮かぶ、希代きだい魔法杖まほうつえ
 ルードホルドの魔法杖まほうつえ悪名あくみょう……名声めいせいはここ央都おうとでこそ、とどろいているようで――

「「「「「「「「〝蒼焔そうえんの……亡霊姫おばけひめ〟」」」」」」」」
 上級貴族じょうきゅうきぞくたちが畏怖いふねんからか、二つ名あざなをつぶやいた。

「ココォォォン? いまなにかぁ、聞こえましたかぁ――?」
 その手が得物えものへ触れ――ヴォォヴォヴォヴォゥヴォヴォゥン♪
 魔法杖ルードホルドが、うなりを上げる。

「「「「「「「「いえっ、なにも!」」」」」」」」
 上級貴族じょうきゅうきぞく畏怖いふねんからか、目を必死ひっしに逸らした。

「(これだから、ふた名持なもちは)」
 これ最初さいしょから奥方さまルリーロ噛みついてもらやぁ・・・・・・・・・、済んだはなしじゃね?
 ふぉん♪
『ホシガミー>それですと、どうしても遺恨が残るのでしょう。ププーッ♪』
 わらってやるな。おまえさまのほしの、出来事はなしだろうがよ。

「そういうことですので、この長銃ちょうじゅう威力いりょく聞かなくたって・・・・・・・、おわかりいただけますよね?」
 おにむすめ受付嬢うけつけじょう
 にたりとわら表情かおに、ますますちぢみ上がる上級貴族おきぞくさまたち。

「こ、この平民へいみん小娘こむすめ実力じつりょくみとめよう。だが、くにつくるつもりだとして――そんな手続てつづきは、央都重鎮おうとじゅうちん我々われわれでさえ、み、見たことも聞いたことも無いのだが?」
 くにつくる?
 なんでまた、そんなはなしになってるんだぜ?

 ふぉん♪
『>王家のうしろ盾をもつ少女の〝国家新規作成権〟を、王制の正当性へとすり替えたようです』
 さっき相談そうだんしてたはなしか。聞いてなかった。

建国けんこく手続てつづきならウチの商会しょうかいで、まえ一度立いちどたち会ったことがあるさね」
 随分ずいぶん綺麗きれいな身なりの女将おかみさんが、はなしに割ってはいった。

 建国けんこく龍撃戦たたかいてのは、央都おうと出来できたときのはなしだろ?
 女将おかみさんは1000さいを、超えているようには見えない。
 なんかはなしが、おかしい?

 ボバボーンなからだつきにはなしたを伸ばしていた、上級貴族おっさんなか一人ひとりが――
商会しょうかい? え、あれコッヘル商会しょうかい? なんだかすごく、聴きおぼえがあるんじゃが――」
 そんなことを言い出した。

なにぃっ、コッヘル商会・・・・・・じゃとぉぉぅ!?」
 女将おかみさんの実家じっかおそれをなす、政敵派閥せいてきはばつ頭領とうりょう

「あ、あのうひょっとしてあなたさまは、し、神罰しんばつ拳闘士グラディエータートゥナじょうでは?」
「あっはははははっ、おじょうさまあつかいされるとしじゃぁないさねっ!」
 なんだぜ、仏罰ぶつばつ庫泥衛徒ぐらでいえいとてなぁ?

 ふぉん♪
『>剣闘士もしくは拳闘士。シガミーに似たタイプの接近戦闘を生業とする冒険者のようです』
 女将おかみさんは宮廷きゅうてい料理人りょうりにんじゃ、なかったのかぁー!?
 まぁ、あのつよさは料理人りょうりにんのそれじゃ、なかったけどよぉ。
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