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4:龍撃の学院
570:『おうさまと、りゅうのまもの』
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おうさまはいいました。
「ちょっとそこの、おしょうゆとってくれなぁい?」と。
すると、りゅうのまものはいいました。
「はぁ? めだまやきには、ソースでしょ?」と。
「「ええー? それはちょっとちがうんじゃないかい?」」
なかのよいふたりは、こえをそろえていいました。
そしておうさまはソースを。
りゅうのまものはおしょうゆを。
ものはためしと、めだまやきにたらしてみたのです。
「「んんー? これはおいしいけど、いつものあじのほうがすきだなぁ?」」
なかのよいふたりは、こえをそろえていいました。
「はい、おうさま。おしょうゆ」
「ありがとう、りゅうのまもの」
ふたりはいつものようになかよく、ちょうしょくをたべました。
§
あるひ、りゅうのゆうじんであるきつねは、こういいました。
「ふたりともおくれてるわね?
めだまやきには、マヨネーズでしょ?」と。
それはだいいちじめだまやきろんそうの、ぼっぱつでした。
しゅういのむらむらをまきこんだ、めだまやきになにをかけるのかししょくかいは――
だいせいこうをおさめました。
それでも、おしょうゆが85にん。
ソースが83にん。
マヨネーズが97にん。
しおが98にん。
しおこしょうが33にん。
かけないが104にん。
ふたりのだいすきな、おしょうゆとソース。
それよりもにんきがあったのは、こともあろうか――
なにもかけないはだったことに、ふたりはおどろきをかくせませんでした。
きつねがまたやってきて、こういいました。
「ねぇねぇ、いちばんおいしいたべかたを、きめるんじゃなかったのぉ?」
りゅうのまものは、こうこたえます。
「きめるよ。でもだいじょうぶだよ。ねぇおうさま♪」
おうさまはさいごに、こうこたえました。
「そうだね。たまごはまだこんなにたくさん、あるんだから♪」
そういってふたりは、たのしそうにわらいました。
おしまい。
§
「ちょっとまてやぁ! 何の解決も、しとらんじゃないか!」
おい、先をめくれや。
おれは借りた絵本を、浮かぶ棒にめくらせたが、続きはなく――
目玉焼きの絵が、描かれているだけだった。
「そうデすネ。ストーリーヲ通シ、教訓とナる要素が希薄デす」
機械腕で持つ絵本を、パタリと閉じ――チチィィィィー♪
本分ページや表紙内部をスキャンし解析したが、何も仕掛けは無いようだ。
「何言ってんの? 目玉焼きわぁ、そのまま食べてもぉ意外といけるって言う、重大な真実に到達しちゃってるじゃないのよさっ♪」
浮かれた様子の女神御神体。
「お前さまこそ、何言ってやがる? 毎朝、赤い実の野菜垂れを、たっぷりと掛けとるじゃないか!」
ぎゃいぎゃい、ぎゃぎゃぎゃい!
「激しくどうでも良いお話を、していますわね? 私はビネガー派ですけれど」
派手なドレスのご令嬢が現れた所を見ると、ニゲル青年は力比べに負けたと見える。
どうせぞんざいな色仕掛けに、引っかかったんだろうが。
「まったくですね、目玉焼きには香草を一枚乗せが、理想ですのに」
そういやリオレイニアが作ってくれる朝飯は、いつもそんなだったな。
「ウチの店じゃ、魔山椒と刻んだマンドラゴーラの葉を、ほんの少し掛けるけど?」
宮廷料理人まで話しに混じる、事態となり。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あれは凄くおいしいけど、高級すぎて邪道!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
」――ですわ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」――ららぁん」」」」」」」」」」」
やかましい、朝飯に正道はねぇ!
砦に詰めていた兵士たちも巻き込んだ――
第二次目玉焼き論争の、勃発である。
そして大講堂で開催された木龍撃破の祝宴は、どういうわけか大量の目玉焼きが出される事態となった。
もちろん主役であった例の〝お茸さまを使った料理〟も、相当に上手くおいしく出来たんだが――
§
ふぉふぉふぉん♪
『モルト・トリュフリュ【木陰の宝石】
ちいさな茸。鍋に入れるととてもおいしく、
あまりのおいしさに天啓を授かるとか授からないとか。
<NEW>味は干してなくても、干し椎茸のグアニル酸系。
追加効果>適切な調理をすれば、食後一時的にMPが減らなくなり、
INT、AGR、LUKのいずれかが恒久的に上昇する。
ただし調理には熟達の料理人による、最高の仕事が必須。
失敗した料理を食した場合、HP最大値が大幅に減少する。』
「うん、おいしい。干し椎茸の味だ♪」
前世も今世も平民を自負するニゲル青年も、知ってるような味らしい。
何か知らんが神々の世界じゃ、有りふれた食材だったってことか?
ふぉん♪
『>どうも、そのようです。期待が大きかったため、意気消沈したと思われます』
鍋の小皿をまえに難しい顔で、黙々と薄く切った小さな丸茸を食む、丸茸御神体さま。
ふぉん♪
『シガミー>まあ、元気出せや。今日の所は他の料理で満足しとけ。ほら、目玉焼きもあるしよ』
それが食い道楽の、心意気ってもんだろが――ずずずずぅー♪
「かぁー、うめぇじゃねぇか♪」
何を隠そう椎茸なぁ。おれたち僧兵は、道無き山を駆けることが多かったから――
そこそこ採れることがあった。それでも年に数回だ。
その上、ここまで旨い料理を作れる奴も霊刺秘も、猪蟹が生きた日の本には無かった。
ふぉん♪
『>星の巡りが悪かったのでしょう。イオノファラー、気を落とさないでください』
「しかしこれよぉ、なんか意味があるのかぁ?」
おれが箸で指した黒板に書かれているのは、『目玉焼きに何をかけるのか試食会』。
細分化された薬味や調味料に対し――
『何も掛けない』が票を獲得していく。
「楽しければ良いニャァ♪」
「そうですね♪」
魔導騎士団を従える二人も、目玉焼きに舌鼓を打っている。
「第四の童と第一のと、爺さまに他の師団長さま。皆に卵の礼を、言っておいてくれ」
この大量の卵は、魔導騎士団の明日明後日の朝食分から、出してくれた物だ。
「「「深遠の囁き♪」」」
ちっ、あいつらめ。また性懲りもなく、大受けしてやがるぜ。
轟雷で居合いでも、してやろうかな。
「えーそれってぇ、ルガ蜂みたいっすよね? っておれっちは言ってやったんですよぉねぇー、ひぃっく♪」
酔い潰れ――
「ぅあなた、飲み過ぎです――ッパァァァンッ♪」
白煙を立ち上らせる魔法杖。
霊刺秘を提供してくれた、モソモソ家と使用人の方々も呼んだし――
立役者タターの家族も呼んだ。
「どうも、父のルースターです」
「うふふ、母のイフターです」
「えへへ、妹のジターだよ」
「タター。今日は、ご馳走ですよ♪」
「やったね、お姉ちゃん♪」
「えぇーっ!? みんな違うよ、それは茸じゃないよ? イオノファラーさまだよ!?」
前にも見たぜ、このやり取り。
「おう、食えるもんなら、遠慮なく食ってくれ!」
「こら、シガミー! 不敬ですよぉーん?」
茸鍋は丸茸の口に、合わねぇわけじゃねぇらしい。
元気が出たようで、安心した。
世界の安寧は、おれたちが守るぞ。
ふぉん♪
『>はい、シガミー』
「それはそうと、私ぃー。ひとつーだけ不可解なことがぁー、あるのーですららぁぁん?」
何だぜ? 王女殿下も飲みすぎだぜ。
仲の良いタターの晴れの舞台に、浮かれるのもわかるがな。
……ニゲルに嫌われる理由なら、〝ゴーレム〟の一言で足りるだろ?
「フォチャカさんのユニークスキル〝炎曲の苗木〟はどうして、木龍の卵の発芽プロセスに酷似しているの――らららぁぁん?」
舞台上の三人を眺め、その首を傾ける王女殿下。
「――それは当然の帰結――我輩の尻尾――我輩の両耳――我輩の毛並み――目玉焼き――おうさま――ニャァ♪」
お猫さまの言葉が、又わからん。「おーい、おにぎりー!」
「みゃぎゃ(略)♪」
ぱたん♪
『「〝炎曲の苗木〟と良く似たスキルを巨木の苗か、木龍の卵が持っていたってことだものニャァ♪」って言ってるんだもの♪』
そりゃそうか。魔物……火吐きオオカミだって、火弾のスキルを持ってるわけだし。
木の魔物と考えたら、あり得る話だったぜ。
「ふぅ、〝ミノタウロース〟に続いて、央都発祥の〝建国の戦い〟までも、事実だったとは――」
顔の良い新婚男エクレアが、そんな風に話を締めた。
「え? まてまて、あの話は目玉焼きを食うだけの話だっただろうが?」
それがどうして建国の龍撃戦の話と、繋がるんだぜ!?
おい迅雷――ふぉん♪
『>解析を開始します。トッカータ大陸共用語の形態素エンジンを再構築する必要があり、解析終了まで<38年と10ヶ月>』
やめろ。
おい解析指南――ふぉん♪
『解析指南>〝おうさま〟と〝りゅうのまもの〟の〝未設定項目〟をよてなうしてください』
わからんし、なんかうまくいかん。
「ポポポォオーーーーン♪ 乙種物理検索を開始致します。論理封鎖態勢が解除されるまでは、白線内に下がってお待ち下さい」
流麗な声が告げたのは、訳のわからない事で――
この声は、おれにしか聞こえていないようで――
「前にも聞いた気がするが、いまの声は何だぜ?」
「リファレンスによルと、空間異常検疫でス。私にモ理解しかねマす」
迅雷がわからんことを、おれが気にしても意味はない。
素直に聞くに限る。
「え、またそのお話ですか?」
何度聞いてもわからんおれに、リオレイニアも顔をしかめ――
これに関して、おれは未だに理解出来ていない。
これと比べたら、神々のややこしい話の方がまだわかる。
「はっ!? 何か見える、ビジョンがっ!」
茸鍋に舌鼓を打ってた丸茸が、跳びはねた。
「どーしたぁ。まさか生煮えだったか?」
ガシリとつかんで顔を見たら――『(@_@)』
「おい、その顔やめろ!」
気色悪ぃだろうが!
ふぉん♪
『(@_@)>ウケッケケッ、来ます。数日以内に』
一行表示が狂って、気色悪ぃ面になってやがる。
ふぉん♪
『シガミー>何がだ?』
ふぉん♪
『(@_@)>この地に鉄花、大量の菜箸、丸い六つ月、落とされる薬菜、いあいあ、プギュフュフヒハァ♪』
やべぇ、何を言ってるかわからん。
「お猫さまの、片言みたいだぞ!?」
それに、〝大量の丸いもの〟だとぉ?
巨木・木龍を倒したばかりだってのにぃ、不吉なことを言うな
おにぎりの顔を見たが、「みゃにゃぎゃぁー?」と――
首を傾げられた。翻訳は出来ねぇらしい。
「ちょっとそこの、おしょうゆとってくれなぁい?」と。
すると、りゅうのまものはいいました。
「はぁ? めだまやきには、ソースでしょ?」と。
「「ええー? それはちょっとちがうんじゃないかい?」」
なかのよいふたりは、こえをそろえていいました。
そしておうさまはソースを。
りゅうのまものはおしょうゆを。
ものはためしと、めだまやきにたらしてみたのです。
「「んんー? これはおいしいけど、いつものあじのほうがすきだなぁ?」」
なかのよいふたりは、こえをそろえていいました。
「はい、おうさま。おしょうゆ」
「ありがとう、りゅうのまもの」
ふたりはいつものようになかよく、ちょうしょくをたべました。
§
あるひ、りゅうのゆうじんであるきつねは、こういいました。
「ふたりともおくれてるわね?
めだまやきには、マヨネーズでしょ?」と。
それはだいいちじめだまやきろんそうの、ぼっぱつでした。
しゅういのむらむらをまきこんだ、めだまやきになにをかけるのかししょくかいは――
だいせいこうをおさめました。
それでも、おしょうゆが85にん。
ソースが83にん。
マヨネーズが97にん。
しおが98にん。
しおこしょうが33にん。
かけないが104にん。
ふたりのだいすきな、おしょうゆとソース。
それよりもにんきがあったのは、こともあろうか――
なにもかけないはだったことに、ふたりはおどろきをかくせませんでした。
きつねがまたやってきて、こういいました。
「ねぇねぇ、いちばんおいしいたべかたを、きめるんじゃなかったのぉ?」
りゅうのまものは、こうこたえます。
「きめるよ。でもだいじょうぶだよ。ねぇおうさま♪」
おうさまはさいごに、こうこたえました。
「そうだね。たまごはまだこんなにたくさん、あるんだから♪」
そういってふたりは、たのしそうにわらいました。
おしまい。
§
「ちょっとまてやぁ! 何の解決も、しとらんじゃないか!」
おい、先をめくれや。
おれは借りた絵本を、浮かぶ棒にめくらせたが、続きはなく――
目玉焼きの絵が、描かれているだけだった。
「そうデすネ。ストーリーヲ通シ、教訓とナる要素が希薄デす」
機械腕で持つ絵本を、パタリと閉じ――チチィィィィー♪
本分ページや表紙内部をスキャンし解析したが、何も仕掛けは無いようだ。
「何言ってんの? 目玉焼きわぁ、そのまま食べてもぉ意外といけるって言う、重大な真実に到達しちゃってるじゃないのよさっ♪」
浮かれた様子の女神御神体。
「お前さまこそ、何言ってやがる? 毎朝、赤い実の野菜垂れを、たっぷりと掛けとるじゃないか!」
ぎゃいぎゃい、ぎゃぎゃぎゃい!
「激しくどうでも良いお話を、していますわね? 私はビネガー派ですけれど」
派手なドレスのご令嬢が現れた所を見ると、ニゲル青年は力比べに負けたと見える。
どうせぞんざいな色仕掛けに、引っかかったんだろうが。
「まったくですね、目玉焼きには香草を一枚乗せが、理想ですのに」
そういやリオレイニアが作ってくれる朝飯は、いつもそんなだったな。
「ウチの店じゃ、魔山椒と刻んだマンドラゴーラの葉を、ほんの少し掛けるけど?」
宮廷料理人まで話しに混じる、事態となり。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あれは凄くおいしいけど、高級すぎて邪道!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
」――ですわ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」――ららぁん」」」」」」」」」」」
やかましい、朝飯に正道はねぇ!
砦に詰めていた兵士たちも巻き込んだ――
第二次目玉焼き論争の、勃発である。
そして大講堂で開催された木龍撃破の祝宴は、どういうわけか大量の目玉焼きが出される事態となった。
もちろん主役であった例の〝お茸さまを使った料理〟も、相当に上手くおいしく出来たんだが――
§
ふぉふぉふぉん♪
『モルト・トリュフリュ【木陰の宝石】
ちいさな茸。鍋に入れるととてもおいしく、
あまりのおいしさに天啓を授かるとか授からないとか。
<NEW>味は干してなくても、干し椎茸のグアニル酸系。
追加効果>適切な調理をすれば、食後一時的にMPが減らなくなり、
INT、AGR、LUKのいずれかが恒久的に上昇する。
ただし調理には熟達の料理人による、最高の仕事が必須。
失敗した料理を食した場合、HP最大値が大幅に減少する。』
「うん、おいしい。干し椎茸の味だ♪」
前世も今世も平民を自負するニゲル青年も、知ってるような味らしい。
何か知らんが神々の世界じゃ、有りふれた食材だったってことか?
ふぉん♪
『>どうも、そのようです。期待が大きかったため、意気消沈したと思われます』
鍋の小皿をまえに難しい顔で、黙々と薄く切った小さな丸茸を食む、丸茸御神体さま。
ふぉん♪
『シガミー>まあ、元気出せや。今日の所は他の料理で満足しとけ。ほら、目玉焼きもあるしよ』
それが食い道楽の、心意気ってもんだろが――ずずずずぅー♪
「かぁー、うめぇじゃねぇか♪」
何を隠そう椎茸なぁ。おれたち僧兵は、道無き山を駆けることが多かったから――
そこそこ採れることがあった。それでも年に数回だ。
その上、ここまで旨い料理を作れる奴も霊刺秘も、猪蟹が生きた日の本には無かった。
ふぉん♪
『>星の巡りが悪かったのでしょう。イオノファラー、気を落とさないでください』
「しかしこれよぉ、なんか意味があるのかぁ?」
おれが箸で指した黒板に書かれているのは、『目玉焼きに何をかけるのか試食会』。
細分化された薬味や調味料に対し――
『何も掛けない』が票を獲得していく。
「楽しければ良いニャァ♪」
「そうですね♪」
魔導騎士団を従える二人も、目玉焼きに舌鼓を打っている。
「第四の童と第一のと、爺さまに他の師団長さま。皆に卵の礼を、言っておいてくれ」
この大量の卵は、魔導騎士団の明日明後日の朝食分から、出してくれた物だ。
「「「深遠の囁き♪」」」
ちっ、あいつらめ。また性懲りもなく、大受けしてやがるぜ。
轟雷で居合いでも、してやろうかな。
「えーそれってぇ、ルガ蜂みたいっすよね? っておれっちは言ってやったんですよぉねぇー、ひぃっく♪」
酔い潰れ――
「ぅあなた、飲み過ぎです――ッパァァァンッ♪」
白煙を立ち上らせる魔法杖。
霊刺秘を提供してくれた、モソモソ家と使用人の方々も呼んだし――
立役者タターの家族も呼んだ。
「どうも、父のルースターです」
「うふふ、母のイフターです」
「えへへ、妹のジターだよ」
「タター。今日は、ご馳走ですよ♪」
「やったね、お姉ちゃん♪」
「えぇーっ!? みんな違うよ、それは茸じゃないよ? イオノファラーさまだよ!?」
前にも見たぜ、このやり取り。
「おう、食えるもんなら、遠慮なく食ってくれ!」
「こら、シガミー! 不敬ですよぉーん?」
茸鍋は丸茸の口に、合わねぇわけじゃねぇらしい。
元気が出たようで、安心した。
世界の安寧は、おれたちが守るぞ。
ふぉん♪
『>はい、シガミー』
「それはそうと、私ぃー。ひとつーだけ不可解なことがぁー、あるのーですららぁぁん?」
何だぜ? 王女殿下も飲みすぎだぜ。
仲の良いタターの晴れの舞台に、浮かれるのもわかるがな。
……ニゲルに嫌われる理由なら、〝ゴーレム〟の一言で足りるだろ?
「フォチャカさんのユニークスキル〝炎曲の苗木〟はどうして、木龍の卵の発芽プロセスに酷似しているの――らららぁぁん?」
舞台上の三人を眺め、その首を傾ける王女殿下。
「――それは当然の帰結――我輩の尻尾――我輩の両耳――我輩の毛並み――目玉焼き――おうさま――ニャァ♪」
お猫さまの言葉が、又わからん。「おーい、おにぎりー!」
「みゃぎゃ(略)♪」
ぱたん♪
『「〝炎曲の苗木〟と良く似たスキルを巨木の苗か、木龍の卵が持っていたってことだものニャァ♪」って言ってるんだもの♪』
そりゃそうか。魔物……火吐きオオカミだって、火弾のスキルを持ってるわけだし。
木の魔物と考えたら、あり得る話だったぜ。
「ふぅ、〝ミノタウロース〟に続いて、央都発祥の〝建国の戦い〟までも、事実だったとは――」
顔の良い新婚男エクレアが、そんな風に話を締めた。
「え? まてまて、あの話は目玉焼きを食うだけの話だっただろうが?」
それがどうして建国の龍撃戦の話と、繋がるんだぜ!?
おい迅雷――ふぉん♪
『>解析を開始します。トッカータ大陸共用語の形態素エンジンを再構築する必要があり、解析終了まで<38年と10ヶ月>』
やめろ。
おい解析指南――ふぉん♪
『解析指南>〝おうさま〟と〝りゅうのまもの〟の〝未設定項目〟をよてなうしてください』
わからんし、なんかうまくいかん。
「ポポポォオーーーーン♪ 乙種物理検索を開始致します。論理封鎖態勢が解除されるまでは、白線内に下がってお待ち下さい」
流麗な声が告げたのは、訳のわからない事で――
この声は、おれにしか聞こえていないようで――
「前にも聞いた気がするが、いまの声は何だぜ?」
「リファレンスによルと、空間異常検疫でス。私にモ理解しかねマす」
迅雷がわからんことを、おれが気にしても意味はない。
素直に聞くに限る。
「え、またそのお話ですか?」
何度聞いてもわからんおれに、リオレイニアも顔をしかめ――
これに関して、おれは未だに理解出来ていない。
これと比べたら、神々のややこしい話の方がまだわかる。
「はっ!? 何か見える、ビジョンがっ!」
茸鍋に舌鼓を打ってた丸茸が、跳びはねた。
「どーしたぁ。まさか生煮えだったか?」
ガシリとつかんで顔を見たら――『(@_@)』
「おい、その顔やめろ!」
気色悪ぃだろうが!
ふぉん♪
『(@_@)>ウケッケケッ、来ます。数日以内に』
一行表示が狂って、気色悪ぃ面になってやがる。
ふぉん♪
『シガミー>何がだ?』
ふぉん♪
『(@_@)>この地に鉄花、大量の菜箸、丸い六つ月、落とされる薬菜、いあいあ、プギュフュフヒハァ♪』
やべぇ、何を言ってるかわからん。
「お猫さまの、片言みたいだぞ!?」
それに、〝大量の丸いもの〟だとぉ?
巨木・木龍を倒したばかりだってのにぃ、不吉なことを言うな
おにぎりの顔を見たが、「みゃにゃぎゃぁー?」と――
首を傾げられた。翻訳は出来ねぇらしい。
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