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4:龍撃の学院
563:おとぎ話と龍撃戦、王族と目玉焼き
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「ッチィィィィィィィィイィィィッェェェェェェェェッィィィィィィィイィィィィィィィィィッ――――!!!」
青年の姿が消え――伝説の建国の龍撃戦が、開始された。
ここに居る全員に猪蟹屋装備を着せられたのは、ソレまでの色んな経緯が無ければ不可能だった。
そういう意味では、伝説の龍との戦いを余儀なくされたことは――僥倖であったのかもしれない。
「――ではシガミー。私たちは邪魔になるといけないので、魔物境界線の砦へ退避しますが――」
耳栓経由の、しっとりとした落ち着いた声。
確かに予想していたよりも、巨木が生え茂る動きが激しくて、子供たちを側に置いておけない。
「――この絵本、置いていきましょうか?――」
薄くて大きな本を、高く掲げて見せる――蜂の魔物のような、ギラリ!
「はぁ? 要らん!――ニャァ♪」
ガッキュゥゥン――バッゴォォン、バギバキョメキョ!
青年を追って跳ね上がった木の根を、拳で粉砕する。
「――ですがヒーノモトー生まれのシガミーは〝建国の戦い〟の、お話を知らないのでは?――」
パラパラと捲られる本。
「確かに知らんがぁ、子供向けの物わぁ、読む必要ねぇだろうがぁ! おれぁガキじゃねぇーんだぜっ!――ニャァ♪」
ヒュヒィィィィィィイィィィィィィィ――――――――ドガァァァァァァアンッ!!!!
勢いよく背中の大筒を、点火する。
シュゴゴォォォォォッ――ォォォォォッ!
大筒の勢いをせばめると、轟雷の重い鉄鎧が――ゴコンと浮いた。
「「――子供だよねー?――」」
うるせぇぞ、子供らめ。
ふぉん♪
『>伝承の中に強敵攻略のヒントが隠されていることは、往々にしてあります』
ふぉん♪
『イオノ>そうわね。この世界はVRMMORPGだしね』
五百乃大角がうまい飯を食うための、世界だって言うんだろ。
「ルガレイニアちゃん! 折角だしさ、それぇ読んでぇ聞かせてよー♪」
丸茸さまめ、顔のまえで喚くなや。うるせぇぞ。
こちとら巨木の蛸みてぇな、蔓や根や太枝を躱すので精一杯だぜっ!
「――構いませんが。では魔物境界線の砦までの道中、お聞かせいたしましょう♪――」
§
ぱらり♪
『おうさまはいいました。
「ちょっとそこの、おしょうゆとってくれなぁい?」と。』
リオレイニアも魔法杖に座り、本を読み始めた。
ふぉん♪
『>ベースはイオノファラーの居る現代日本の様ですね』
ふぉん♪
『>そうわね♪ なにかヒントでも見つかれば、良いのだけれど?』
ははは、意味わからん!
どの道、ガムラン町に程近い、こんな場所に〝木龍〟を置いておけねぇだろうが!
おれは――ヴッ♪
超極太の錫杖を取り出した――――ギュルルルルン、ジャギリリリン♪
「かかって来やがれ……やぁ?――ニャァ♪」
ガッキュキュゥゥゥゥンッ――――あれ?
「ココォォォォォン!? ボッゴォウワワワワワッ――――♪」
「な、なんで僕に絡みついてくるんだっぁぁあぁっぁっぁっ!」
巨木木龍はどうやら、赤い淑女と――安物の青年を敵視している。
一番図体のでかいおれには、目もくれなくなったぞ?
ふぉん♪
『>類推の域を出ませんが、リカルルの聖剣の柄と、ニゲルの安物の聖剣の刃を狙っているようです』
子細わからんがひょっとして――「(巨木は二つに分かれた聖剣を、狙ってるんじゃね?)」
ふぉん♪
『イオノ>坊主(略)』
うる(略)。
ぱらりと絵本を、めくる音。
『すると、りゅうのまものはいいました。
「はぁ? めだまやきには、ソースでしょ?」と。』
ほんと意味わからん。
〝目玉焼き〟にゃ、塩だろがょ?
世の理だぜ。
§
「ニィゲェルゥーさまぁぁっおぉおぉ-、目の敵にするなんてぇー! このぉ木のぉ魔物めぇぇぇぇっ!!!!」
離脱するルガレイニアと入れ替わるように、こっちへ向かってくる馬車程度の大きさ。
それは巨木の根に絡め取られることも無く、土砂と土煙をまき散らし――接近してくる。
新たに現れたメイド姿。
その頭には、白いヒラヒラじゃなくて――宝石が付いた頭飾り。
ふぉん♪
『ヒント>ティアラ/婦人用の頭飾り。正装に用いられ、宝石や花などがあしらわれる』
彼女が駆る四つ足の、蜘蛛みたいな奴は――
おれが央都でぶった切った、壁を歩く巨大なゴーレムに似ていた。
ニゲルの窮地に駆けつけたのは、まさかのラプトル第一王女殿下だった。
怒り心頭に発し、いつもの「ららぁん」が抜けてやがる。
「ぅぎゃっ!? ラプトル王女――さまっ!?」
巨木の執拗な追跡に、肩で息をしていたニゲル青年。
その両目が見開かれ――
こともあろうか〝鍵剣セキュア〟を、ポロリと落としやがった!
迫る太枝。
猪蟹屋標準装備を重ね着までしてるんだから、そうそう死ぬようなことにはならんと思うが――
「ららぁぁん――最優先ららぁん! ニゲルさまを、お守りするらららぁぁんっ!!!」
今度は逆に、ららぁぁんばっかりか。
彼女は猪蟹屋標準装備の給仕服に身を包み、前掛けや袖に色んな形の――
ふぉん♪
『ヒント>ぬいぐるみ/動物や人の形の布に綿を詰めた、おもちゃの人形』
そう、そんなのを矢鱈と沢山、ぶら下げていやがる。
そして背中には、それの超特大の奴を背負ってた。
見た目はまるで勇ましくねぇ。
けどそれが合戦へ臨む、戦装束だとわかる。
あのふわふわした……ぬいぐるみてのは、むしり取って投げると――
身の毛がよだつ姿をした、魔導人形に変わるからな。
「1番から3番までっ、一斉射撃ららぁん!」
ぬいぐるみをむしり取り、ぽいぽいぽぽいと投げ捨てた!
人形の姿が――――異形に変わる。
目を形作る、円らな宝石。
口からは、銃口の空いた黒金の銃身。
ぬいぐるみは馬のような奴に、変化した!
長首の先端に一対の角が、生えているから――
鹿のつもり……なのかもしれない。
ふぉん♪
『>まだまだ完全ではありませんが、多少の緩和が見られるのでは?』
元の〝目が尖り天を衝く〟狂気の姿形は、鳴りをひそめていた。
おうよ。軍用全天球レンズを日々、納品してきた甲斐も有るぜ!
角付きの四つ足は、太く不格好だが――ドキャドキャドキャキャ♪
とんでもなく、足が速ぇ――!
王女の杓子が、びっと示す先。
標的となったニゲル青年の顔が、恐怖に歪む。
ドッゴゴッドドッゴゴッドォォン!!
一斉に放たれたのは――大筒か?
碌に当たらんなら撃つな、危ねぇ――――ぬぅ!?
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
大筒の弾が破裂して――ガキュッ♪
ガキュ、ガキュッゥゥン♪
大筒の弾が破裂した後に、頭の無い四つ足が――
それぞれ4匹程度、湧いた。
今度の魔導人形は、小さな蜘蛛……いや蟹か?
ドッゴゴッドドッゴゴッドォォン!!
鹿ゴーレムは口から、弾を撃ち続ける!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
ワサワサササッ、キャチャキャチャチャッ♪
何十体もの四つ足が、青年へ突進していく。
大きさこそ〝握り飯の包み〟位しか無いが、あの数に集られると――
「うっわぁぁぁぁっ――――!?」
ニゲルが高く飛んだ!
ばかやろう、足場がねぇ空に踏み込んだら――逃げられなくて、木龍に捕らえられちまうだろがっ!
だがニゲルは遠くの岩の上に、無事着地した。
わらわらわらららっ――巨木の先端に群がる、四つ足の群れ。
ガギガギガギガギ、ギュギギギッ――――ズガガゴォン!
蠢く太枝が為す術も無く――それこそ蛸足のようにすぱすぱと、切り落とされていく。
「はぁはぁはぁっ――――!」
よし、ニゲルが一休みしている。
そもそも、あのニゲルが何で窮地に陥っているのかと言えば――
ニゲルの速い足は――敵に挑むときに発揮される。
厳密には敵じゃなくても、「挑む相手が居れば、誰でも良い」って言ってたけど。
つまりは、これだけの大きさの木龍を相手にすると、いくら素早く動けたところで――分が悪ぃってことだ。
なんせ太枝の正面が、別の太枝の背後になる。
これで巨木の根が分かれていたなら、此処まで不利には、なってなかったんだろうが――
「(多分いつもの〝敵と打ち合うための、速さ〟が、打ち消し有ってる。そういうことだろう?)」
ふぉふぉん♪
『イオノ>『>坊主|(略)』』
ふぉん♪
『シガミー>うる|(略)』
「おい、仮にも一国の姫さんがよぉ。あまりやり過ぎねぇ方がぁ、あとあと良いんじゃぁねぇのかぁぁっ!?――ニャァ!?」
王女が乗る大きな四つ足の足下をすくいに来た、青々と茂る太枝を――ドガバキィン!
踏みつけて粉砕する。
「ぎゃっ――鬼族!? じゃなくて、シガミーさん! 助かりましたけれど――」
安物の青年と、赤い四つ足の令嬢を狙っていた木龍の矛先が――
めきめきめきめきょっ!
今度は王女殿下へ向いた。
ぱらりと絵本を、めくる音。
『りゅうのゆうじんであるきつねは、こういいました。
「ふたりともおくれてるわね?
めだまやきには、マヨネーズでしょ?」と。
それはだいいちじめだまやきろんそうの、ぼっぱつでした。』
青年の姿が消え――伝説の建国の龍撃戦が、開始された。
ここに居る全員に猪蟹屋装備を着せられたのは、ソレまでの色んな経緯が無ければ不可能だった。
そういう意味では、伝説の龍との戦いを余儀なくされたことは――僥倖であったのかもしれない。
「――ではシガミー。私たちは邪魔になるといけないので、魔物境界線の砦へ退避しますが――」
耳栓経由の、しっとりとした落ち着いた声。
確かに予想していたよりも、巨木が生え茂る動きが激しくて、子供たちを側に置いておけない。
「――この絵本、置いていきましょうか?――」
薄くて大きな本を、高く掲げて見せる――蜂の魔物のような、ギラリ!
「はぁ? 要らん!――ニャァ♪」
ガッキュゥゥン――バッゴォォン、バギバキョメキョ!
青年を追って跳ね上がった木の根を、拳で粉砕する。
「――ですがヒーノモトー生まれのシガミーは〝建国の戦い〟の、お話を知らないのでは?――」
パラパラと捲られる本。
「確かに知らんがぁ、子供向けの物わぁ、読む必要ねぇだろうがぁ! おれぁガキじゃねぇーんだぜっ!――ニャァ♪」
ヒュヒィィィィィィイィィィィィィィ――――――――ドガァァァァァァアンッ!!!!
勢いよく背中の大筒を、点火する。
シュゴゴォォォォォッ――ォォォォォッ!
大筒の勢いをせばめると、轟雷の重い鉄鎧が――ゴコンと浮いた。
「「――子供だよねー?――」」
うるせぇぞ、子供らめ。
ふぉん♪
『>伝承の中に強敵攻略のヒントが隠されていることは、往々にしてあります』
ふぉん♪
『イオノ>そうわね。この世界はVRMMORPGだしね』
五百乃大角がうまい飯を食うための、世界だって言うんだろ。
「ルガレイニアちゃん! 折角だしさ、それぇ読んでぇ聞かせてよー♪」
丸茸さまめ、顔のまえで喚くなや。うるせぇぞ。
こちとら巨木の蛸みてぇな、蔓や根や太枝を躱すので精一杯だぜっ!
「――構いませんが。では魔物境界線の砦までの道中、お聞かせいたしましょう♪――」
§
ぱらり♪
『おうさまはいいました。
「ちょっとそこの、おしょうゆとってくれなぁい?」と。』
リオレイニアも魔法杖に座り、本を読み始めた。
ふぉん♪
『>ベースはイオノファラーの居る現代日本の様ですね』
ふぉん♪
『>そうわね♪ なにかヒントでも見つかれば、良いのだけれど?』
ははは、意味わからん!
どの道、ガムラン町に程近い、こんな場所に〝木龍〟を置いておけねぇだろうが!
おれは――ヴッ♪
超極太の錫杖を取り出した――――ギュルルルルン、ジャギリリリン♪
「かかって来やがれ……やぁ?――ニャァ♪」
ガッキュキュゥゥゥゥンッ――――あれ?
「ココォォォォォン!? ボッゴォウワワワワワッ――――♪」
「な、なんで僕に絡みついてくるんだっぁぁあぁっぁっぁっ!」
巨木木龍はどうやら、赤い淑女と――安物の青年を敵視している。
一番図体のでかいおれには、目もくれなくなったぞ?
ふぉん♪
『>類推の域を出ませんが、リカルルの聖剣の柄と、ニゲルの安物の聖剣の刃を狙っているようです』
子細わからんがひょっとして――「(巨木は二つに分かれた聖剣を、狙ってるんじゃね?)」
ふぉん♪
『イオノ>坊主(略)』
うる(略)。
ぱらりと絵本を、めくる音。
『すると、りゅうのまものはいいました。
「はぁ? めだまやきには、ソースでしょ?」と。』
ほんと意味わからん。
〝目玉焼き〟にゃ、塩だろがょ?
世の理だぜ。
§
「ニィゲェルゥーさまぁぁっおぉおぉ-、目の敵にするなんてぇー! このぉ木のぉ魔物めぇぇぇぇっ!!!!」
離脱するルガレイニアと入れ替わるように、こっちへ向かってくる馬車程度の大きさ。
それは巨木の根に絡め取られることも無く、土砂と土煙をまき散らし――接近してくる。
新たに現れたメイド姿。
その頭には、白いヒラヒラじゃなくて――宝石が付いた頭飾り。
ふぉん♪
『ヒント>ティアラ/婦人用の頭飾り。正装に用いられ、宝石や花などがあしらわれる』
彼女が駆る四つ足の、蜘蛛みたいな奴は――
おれが央都でぶった切った、壁を歩く巨大なゴーレムに似ていた。
ニゲルの窮地に駆けつけたのは、まさかのラプトル第一王女殿下だった。
怒り心頭に発し、いつもの「ららぁん」が抜けてやがる。
「ぅぎゃっ!? ラプトル王女――さまっ!?」
巨木の執拗な追跡に、肩で息をしていたニゲル青年。
その両目が見開かれ――
こともあろうか〝鍵剣セキュア〟を、ポロリと落としやがった!
迫る太枝。
猪蟹屋標準装備を重ね着までしてるんだから、そうそう死ぬようなことにはならんと思うが――
「ららぁぁん――最優先ららぁん! ニゲルさまを、お守りするらららぁぁんっ!!!」
今度は逆に、ららぁぁんばっかりか。
彼女は猪蟹屋標準装備の給仕服に身を包み、前掛けや袖に色んな形の――
ふぉん♪
『ヒント>ぬいぐるみ/動物や人の形の布に綿を詰めた、おもちゃの人形』
そう、そんなのを矢鱈と沢山、ぶら下げていやがる。
そして背中には、それの超特大の奴を背負ってた。
見た目はまるで勇ましくねぇ。
けどそれが合戦へ臨む、戦装束だとわかる。
あのふわふわした……ぬいぐるみてのは、むしり取って投げると――
身の毛がよだつ姿をした、魔導人形に変わるからな。
「1番から3番までっ、一斉射撃ららぁん!」
ぬいぐるみをむしり取り、ぽいぽいぽぽいと投げ捨てた!
人形の姿が――――異形に変わる。
目を形作る、円らな宝石。
口からは、銃口の空いた黒金の銃身。
ぬいぐるみは馬のような奴に、変化した!
長首の先端に一対の角が、生えているから――
鹿のつもり……なのかもしれない。
ふぉん♪
『>まだまだ完全ではありませんが、多少の緩和が見られるのでは?』
元の〝目が尖り天を衝く〟狂気の姿形は、鳴りをひそめていた。
おうよ。軍用全天球レンズを日々、納品してきた甲斐も有るぜ!
角付きの四つ足は、太く不格好だが――ドキャドキャドキャキャ♪
とんでもなく、足が速ぇ――!
王女の杓子が、びっと示す先。
標的となったニゲル青年の顔が、恐怖に歪む。
ドッゴゴッドドッゴゴッドォォン!!
一斉に放たれたのは――大筒か?
碌に当たらんなら撃つな、危ねぇ――――ぬぅ!?
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
大筒の弾が破裂して――ガキュッ♪
ガキュ、ガキュッゥゥン♪
大筒の弾が破裂した後に、頭の無い四つ足が――
それぞれ4匹程度、湧いた。
今度の魔導人形は、小さな蜘蛛……いや蟹か?
ドッゴゴッドドッゴゴッドォォン!!
鹿ゴーレムは口から、弾を撃ち続ける!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
チチチピピピピッ――――ばっがぁぁん!
ワサワサササッ、キャチャキャチャチャッ♪
何十体もの四つ足が、青年へ突進していく。
大きさこそ〝握り飯の包み〟位しか無いが、あの数に集られると――
「うっわぁぁぁぁっ――――!?」
ニゲルが高く飛んだ!
ばかやろう、足場がねぇ空に踏み込んだら――逃げられなくて、木龍に捕らえられちまうだろがっ!
だがニゲルは遠くの岩の上に、無事着地した。
わらわらわらららっ――巨木の先端に群がる、四つ足の群れ。
ガギガギガギガギ、ギュギギギッ――――ズガガゴォン!
蠢く太枝が為す術も無く――それこそ蛸足のようにすぱすぱと、切り落とされていく。
「はぁはぁはぁっ――――!」
よし、ニゲルが一休みしている。
そもそも、あのニゲルが何で窮地に陥っているのかと言えば――
ニゲルの速い足は――敵に挑むときに発揮される。
厳密には敵じゃなくても、「挑む相手が居れば、誰でも良い」って言ってたけど。
つまりは、これだけの大きさの木龍を相手にすると、いくら素早く動けたところで――分が悪ぃってことだ。
なんせ太枝の正面が、別の太枝の背後になる。
これで巨木の根が分かれていたなら、此処まで不利には、なってなかったんだろうが――
「(多分いつもの〝敵と打ち合うための、速さ〟が、打ち消し有ってる。そういうことだろう?)」
ふぉふぉん♪
『イオノ>『>坊主|(略)』』
ふぉん♪
『シガミー>うる|(略)』
「おい、仮にも一国の姫さんがよぉ。あまりやり過ぎねぇ方がぁ、あとあと良いんじゃぁねぇのかぁぁっ!?――ニャァ!?」
王女が乗る大きな四つ足の足下をすくいに来た、青々と茂る太枝を――ドガバキィン!
踏みつけて粉砕する。
「ぎゃっ――鬼族!? じゃなくて、シガミーさん! 助かりましたけれど――」
安物の青年と、赤い四つ足の令嬢を狙っていた木龍の矛先が――
めきめきめきめきょっ!
今度は王女殿下へ向いた。
ぱらりと絵本を、めくる音。
『りゅうのゆうじんであるきつねは、こういいました。
「ふたりともおくれてるわね?
めだまやきには、マヨネーズでしょ?」と。
それはだいいちじめだまやきろんそうの、ぼっぱつでした。』
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