562 / 740
4:龍撃の学院
562:火山ダンジョンふたたび、建国の戦いもふたたび
しおりを挟む
崩れ落ちる岩肌。
結局おれは、ノヴァドの金槌で発掘されたんだが。
その穴から、ダンジョンの入り口は崩落した。
ドッゴゴゴオッ、ゴオゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、ガララッラッ、ガンゴンゴゴガガン――――――――!!!
揺れる地面に、もんどり打ちながらも――
火山から離れ、振り返った。
火口を広げ溶岩を吹き上げ、現れるのは――うねる太足。
それは――
「組成ヲ検出、解析終了しマした。巨木ト99・99999%同質デす」
おれの後ろ頭から、相棒の声がする。
「このやろーぉ、とうとう生えちまったかぁ!――ニャァ♪」
めきめきと生え伸びる所は、普通の木にも思えるが――
普通の木は、おれたち目掛けて幹や太枝を、振り下ろしたりしねぇ!
「まるで蛸之助じゃねぇーかよっ!?――ニャァ♪」
吸盤もないし、太枝は直ぐに炭になる。
だが崩れるそばから、新たな太枝が芽吹き――
バキバキョ、メキョキョギッと何処までも、這い進んでくる。
「逃げろぉ!――ニャァ♪」
「まったくもう、大方、迷路まえの通路で転びでもしで、〝木龍の卵〟を落っことしたのですわっ!」
腰の赤ベルトから、小さな取っ手を引き出し――ヴォヴゥゥン!
「音声入力、朱狐シリーズ装着!」
リカルルが取っ手を押すと、彼女の合成音声がして――
パァァァァッ――――カシャカシャしゅるるるっパチパチン♪
「――ふぅ、さっぱりしましたわっ!」
身につけていた狐面の甲冑一式を、一瞬で派手なドレス姿に着替え――
更にもう一度、甲冑に着替えたのだ。
つまり変身ベルトに甲冑一式を、軽く整備し直し――
汗や土草で汚れた甲冑と、小袖に袴に褌も――
綺麗さっぱりした、というわけで。
「おーぉーい! おれたちも全員、猪蟹屋装備を着てくれやぁ――!」
着替え方は口を酸っぱくして、何度か教えた。
パァパァパパパッパッァァァッ――しゅるん、しゅるるるるうるるるるっ♪
子供たちを含む、いつもの連中が――猪蟹屋装備へと着替えていく。
ノヴァドやエクレアは、甲冑姿に。
ニゲルはどういうわけか、給仕服に。
ふぉん♪
『>どうやら服を取り違えたようです。ある程度のサイズ変更は自動で行われるので――破けたりすることは無いと思われますが』
メキメキョ、ウゾゾゾゾゾッ――――ぽきゅごむんっ♪
おにぎりが片足を巨木の根に払われそうになり、盛大にこけた。
「ぶはハっはははッ、ニゲル君。良いわネ、想像以上ニ似合ってル!」
ウケケケッケケッと白目を剥いたまま、青年をからかう丸茸が――
ガチャッリィィン♪
抱えていた女神像の土台から、すっぽ抜けた。
「あら本当ですわね、サイズが小さいですけれど、似合っていますわね?」
良かったなニゲル、姫さんがことのほか喜んでくれてるぞ?
そして、サイズが〝小さい〟ってことは――
取り違えた相手は、おそらく少女メイド・タターだ。
「格納する服を間違えたな。悪ぃ、ひとまずソレで戦ってくれやぁ――ニャァ♪」
これで青年が素足を晒していたら、蜂女が即死してた所だが――
収納魔法具付きの腕時計は、良い仕事をした。
元々ニゲル青年が着ていた、黒い細身の制服。
その上から給仕服を、一式着込んだ形になってる。
「なんか妙に、様になってやがるな?」
見方によっちゃ羽織みてぇにもみえるしな。
もともとニゲルは、猪蟹屋二号店の店長をしてる間は――
ずっとあんな、ひらひらした白いの(しかも猫耳族の耳型が付いてる)を、頭の上に乗せてたし――
「ひゅぅ、びっくりしたけど……結構動けるし、このメイド服はちゃんと、もの凄く頑丈なんだろ?」
スタンスタタァンと、後ろ走りでおれを見る青年。
おれたちは崩れた火山から離れ、森へ侵入する。
ヴォヴォヴォヴォォォォゥン――――♪
ルガレイニアはレイダとビビビーを乗せた、大きな魔法杖を飛ばしている。
本人は金剛力もなしに地を、すべるように駆けている。
顔の良い〝盾男(新婚)〟は姫さんが背に乗せ、四つ足で――先行する。
甲冑の四つ足は、相当やべぇ。
ふぉん♪
『シガミー>迅雷おまえ、よくあれを捌ききったな?』
ふぉん♪
『>対魔王結界という限定空間での一騎打ちでなければ、翻弄されていたと思われます』
だなぁ。
「ぅぉぉおぉぉぉぅうっわぁぁぁぁぁっ――――!?」
ヴォヴォヴォヴォオヴォヴォヴォヴォオヴォヴォ――――♪
「うるさのい――――?」
ノヴァドは第四師団長の童が、頭が太い魔法杖に付いた金具に引っかけて、運ばれてる。
「シガミー、どうせ走ったら脱げちゃうから、これは返しておくよ!」
ヒラヒラした前掛けを、青年に突っ返された。
それを受け取り、すぽんと仕舞う。
「それを言ったら、その頭の上のも落っこち――ねぇな?――ニャァ♪」
ニゲルはずっと、後ろを向いたままだ。
横から突き出た木の枝を、振り返りもせずに背をそらせて避けた。
いま彼は〝勇者の歩み〟を使っていない。
敵に立ち向かうときに限り、彼は何処までも加速する。
今おれたちは巨木の蛸足から、逃げている。
多分だが青年は今、急激に成長してるんじゃね?
「「ふふ、プリムは最初の身だしなみで――」」
右手にルガレイニア。
左手にニゲル。
「「こほん、可憐さと実用を兼ね備えた――」」
声が被ってやがる。
片方は魔法杖に童二人を乗せ、風より早く走ってる。
もう片方も後ろ走りで風より早ぇし、後ろの様子が見なくてもわかってる。
既にLV100のおれの方が、強え筈なんだが。
この二人の体捌きに並ぶ自信は、まだまだねぇ。
「メイドの神髄とも言え――」
「メイドさんの精神的規範とも言え――」
やっと、違う言葉が出てきたが――
けどよぉ――ニゲルよぉ。
お前さんは、給仕じゃねぇーだろうが。
§
蓋を開けると、煉獄の炎を吹き出す。
ならその炎に、高等魔術を掛けてもらう。
いくぞぉ――いちにのさぁん!
いまだぜ、フッカァ!
樹木と化していく、長大な炎。
かくして央都に、平和が訪れ――
そんな予定で冒険者パーティー〝深遠の囁き〟の三人を、呼んだりもしたんだが。
唯一無二のユニークスキル、〝炎曲の苗木〟の出番は無くなった。
何故なら温泉卵にしようと茹でたら、バカのように大火を吹き出した対魔王結界は――
超長ぇ長銃を作る算段で――どういう訳か、調伏出来ちまった。
ふぉん♪
『イオノ>それねー、煉獄って書いて〝ゲヘナ〟って読むのよん♪』
拾って懐に突っ込んだ、丸茸さまが――すっぽこぉん♪
またおれの顔の横に、てちりと顕現した。
対魔王結界〝煉獄《ゲヘナ》〟は、既に売り物にする算段を顧問秘書と第一王女殿下が、進めると言っていた。
基本的には工房長ノヴァドに、アダマンタイト特化の鍛冶工房として使ってもらうだけだ。
それだけで、いつか炎は弱まり、毎度ルガレイニアの手を、煩わせなくて済む。
そして炎の魔術師フッカに〝煉獄番《ゲヘナばん》〟として、詰めてもらえば万一が有っても――
巨木が生えるだけで済む。
メキョメキョメキョキキキキキッ――――ゴドッガァン!!
まるで蛸の脚のような、太枝がおれをかすめて、うしろへ流れた。
強化服シシガニャンを着ておいて、良かった――迅雷!
ふぉん♪
『>轟雷を着用しますか? Y/N』
やらいでかぁ!
目のまえに現れた轟雷の鉄鎧の体が、バッシャ――ガシャガシャガシャ!
背中から開いた〝外部装甲・轟雷〟の、背部ハッチへ飛び込む――ぽぎゅごむん♪
カヒューィ、ガゴゴンッ!
隔壁が閉じられ――ヴュパパパパパパパパッ♪
真っ暗だった目のまえが、明るくなった!
メキョメキョメギギギギギャッ――――太枝が背後から迫る。
無数の目が、全部の方向を一度に見せてきた。
一瞬の目眩。
ガッチャゴッ、チキッ――――ビィィィィィッ!
おれは振り向きざまに、太刀を抜く!
ギュルルルルルルッ――――――――――――――――ガリリリリリリリリィィィィィンッ!!!
鞘の歯車が、火花を散らす!
撃ち出される太刀――パッコォォォォォオォンッ!
ふざけた音を立てて、振るわれた巨大な太刀は――
巨木・木龍に垂れ柳が如く、するりと躱された。
太枝が分かれる所に――ギョロッ!?
強化服程度の大きさの目玉が、芽吹いた!
動きも速ぇし、こいつぁ――植物系の魔物じゃなさそうだぜ。
少なくともネネルド村の巨木みたいに、生え揃ってない――
今の若木の状態はなぁ――――!
「お嬢さま。我々は足手まといのようですので、距離を取ります!」
そう言って自分も杖に乗り――轟雷と姫さんと勇者から、大きく距離を取るルガレイニア。
轟雷の無数の、外部カメラが捉えるのは――チチチィィッ、ヴュヴュユユゥ♪
四方八方から群がる、巨木の蛸枝。
ソレを細切れにしていく、一組の男女。
そしてルガレイニアが前掛けの物入れから取り出したのは――薄くて大きな本。
大陸中の子供が必ず、読み聞かされる伝承。
彼のミノタウロースと双璧をなす、伝説のなかの伝説。
それは正に〝龍〟と呼ぶべき対象で――
『おうさまと、りゅうのまもの』
その本には、そんな表題が付けられていた。
結局おれは、ノヴァドの金槌で発掘されたんだが。
その穴から、ダンジョンの入り口は崩落した。
ドッゴゴゴオッ、ゴオゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、ガララッラッ、ガンゴンゴゴガガン――――――――!!!
揺れる地面に、もんどり打ちながらも――
火山から離れ、振り返った。
火口を広げ溶岩を吹き上げ、現れるのは――うねる太足。
それは――
「組成ヲ検出、解析終了しマした。巨木ト99・99999%同質デす」
おれの後ろ頭から、相棒の声がする。
「このやろーぉ、とうとう生えちまったかぁ!――ニャァ♪」
めきめきと生え伸びる所は、普通の木にも思えるが――
普通の木は、おれたち目掛けて幹や太枝を、振り下ろしたりしねぇ!
「まるで蛸之助じゃねぇーかよっ!?――ニャァ♪」
吸盤もないし、太枝は直ぐに炭になる。
だが崩れるそばから、新たな太枝が芽吹き――
バキバキョ、メキョキョギッと何処までも、這い進んでくる。
「逃げろぉ!――ニャァ♪」
「まったくもう、大方、迷路まえの通路で転びでもしで、〝木龍の卵〟を落っことしたのですわっ!」
腰の赤ベルトから、小さな取っ手を引き出し――ヴォヴゥゥン!
「音声入力、朱狐シリーズ装着!」
リカルルが取っ手を押すと、彼女の合成音声がして――
パァァァァッ――――カシャカシャしゅるるるっパチパチン♪
「――ふぅ、さっぱりしましたわっ!」
身につけていた狐面の甲冑一式を、一瞬で派手なドレス姿に着替え――
更にもう一度、甲冑に着替えたのだ。
つまり変身ベルトに甲冑一式を、軽く整備し直し――
汗や土草で汚れた甲冑と、小袖に袴に褌も――
綺麗さっぱりした、というわけで。
「おーぉーい! おれたちも全員、猪蟹屋装備を着てくれやぁ――!」
着替え方は口を酸っぱくして、何度か教えた。
パァパァパパパッパッァァァッ――しゅるん、しゅるるるるうるるるるっ♪
子供たちを含む、いつもの連中が――猪蟹屋装備へと着替えていく。
ノヴァドやエクレアは、甲冑姿に。
ニゲルはどういうわけか、給仕服に。
ふぉん♪
『>どうやら服を取り違えたようです。ある程度のサイズ変更は自動で行われるので――破けたりすることは無いと思われますが』
メキメキョ、ウゾゾゾゾゾッ――――ぽきゅごむんっ♪
おにぎりが片足を巨木の根に払われそうになり、盛大にこけた。
「ぶはハっはははッ、ニゲル君。良いわネ、想像以上ニ似合ってル!」
ウケケケッケケッと白目を剥いたまま、青年をからかう丸茸が――
ガチャッリィィン♪
抱えていた女神像の土台から、すっぽ抜けた。
「あら本当ですわね、サイズが小さいですけれど、似合っていますわね?」
良かったなニゲル、姫さんがことのほか喜んでくれてるぞ?
そして、サイズが〝小さい〟ってことは――
取り違えた相手は、おそらく少女メイド・タターだ。
「格納する服を間違えたな。悪ぃ、ひとまずソレで戦ってくれやぁ――ニャァ♪」
これで青年が素足を晒していたら、蜂女が即死してた所だが――
収納魔法具付きの腕時計は、良い仕事をした。
元々ニゲル青年が着ていた、黒い細身の制服。
その上から給仕服を、一式着込んだ形になってる。
「なんか妙に、様になってやがるな?」
見方によっちゃ羽織みてぇにもみえるしな。
もともとニゲルは、猪蟹屋二号店の店長をしてる間は――
ずっとあんな、ひらひらした白いの(しかも猫耳族の耳型が付いてる)を、頭の上に乗せてたし――
「ひゅぅ、びっくりしたけど……結構動けるし、このメイド服はちゃんと、もの凄く頑丈なんだろ?」
スタンスタタァンと、後ろ走りでおれを見る青年。
おれたちは崩れた火山から離れ、森へ侵入する。
ヴォヴォヴォヴォォォォゥン――――♪
ルガレイニアはレイダとビビビーを乗せた、大きな魔法杖を飛ばしている。
本人は金剛力もなしに地を、すべるように駆けている。
顔の良い〝盾男(新婚)〟は姫さんが背に乗せ、四つ足で――先行する。
甲冑の四つ足は、相当やべぇ。
ふぉん♪
『シガミー>迅雷おまえ、よくあれを捌ききったな?』
ふぉん♪
『>対魔王結界という限定空間での一騎打ちでなければ、翻弄されていたと思われます』
だなぁ。
「ぅぉぉおぉぉぉぅうっわぁぁぁぁぁっ――――!?」
ヴォヴォヴォヴォオヴォヴォヴォヴォオヴォヴォ――――♪
「うるさのい――――?」
ノヴァドは第四師団長の童が、頭が太い魔法杖に付いた金具に引っかけて、運ばれてる。
「シガミー、どうせ走ったら脱げちゃうから、これは返しておくよ!」
ヒラヒラした前掛けを、青年に突っ返された。
それを受け取り、すぽんと仕舞う。
「それを言ったら、その頭の上のも落っこち――ねぇな?――ニャァ♪」
ニゲルはずっと、後ろを向いたままだ。
横から突き出た木の枝を、振り返りもせずに背をそらせて避けた。
いま彼は〝勇者の歩み〟を使っていない。
敵に立ち向かうときに限り、彼は何処までも加速する。
今おれたちは巨木の蛸足から、逃げている。
多分だが青年は今、急激に成長してるんじゃね?
「「ふふ、プリムは最初の身だしなみで――」」
右手にルガレイニア。
左手にニゲル。
「「こほん、可憐さと実用を兼ね備えた――」」
声が被ってやがる。
片方は魔法杖に童二人を乗せ、風より早く走ってる。
もう片方も後ろ走りで風より早ぇし、後ろの様子が見なくてもわかってる。
既にLV100のおれの方が、強え筈なんだが。
この二人の体捌きに並ぶ自信は、まだまだねぇ。
「メイドの神髄とも言え――」
「メイドさんの精神的規範とも言え――」
やっと、違う言葉が出てきたが――
けどよぉ――ニゲルよぉ。
お前さんは、給仕じゃねぇーだろうが。
§
蓋を開けると、煉獄の炎を吹き出す。
ならその炎に、高等魔術を掛けてもらう。
いくぞぉ――いちにのさぁん!
いまだぜ、フッカァ!
樹木と化していく、長大な炎。
かくして央都に、平和が訪れ――
そんな予定で冒険者パーティー〝深遠の囁き〟の三人を、呼んだりもしたんだが。
唯一無二のユニークスキル、〝炎曲の苗木〟の出番は無くなった。
何故なら温泉卵にしようと茹でたら、バカのように大火を吹き出した対魔王結界は――
超長ぇ長銃を作る算段で――どういう訳か、調伏出来ちまった。
ふぉん♪
『イオノ>それねー、煉獄って書いて〝ゲヘナ〟って読むのよん♪』
拾って懐に突っ込んだ、丸茸さまが――すっぽこぉん♪
またおれの顔の横に、てちりと顕現した。
対魔王結界〝煉獄《ゲヘナ》〟は、既に売り物にする算段を顧問秘書と第一王女殿下が、進めると言っていた。
基本的には工房長ノヴァドに、アダマンタイト特化の鍛冶工房として使ってもらうだけだ。
それだけで、いつか炎は弱まり、毎度ルガレイニアの手を、煩わせなくて済む。
そして炎の魔術師フッカに〝煉獄番《ゲヘナばん》〟として、詰めてもらえば万一が有っても――
巨木が生えるだけで済む。
メキョメキョメキョキキキキキッ――――ゴドッガァン!!
まるで蛸の脚のような、太枝がおれをかすめて、うしろへ流れた。
強化服シシガニャンを着ておいて、良かった――迅雷!
ふぉん♪
『>轟雷を着用しますか? Y/N』
やらいでかぁ!
目のまえに現れた轟雷の鉄鎧の体が、バッシャ――ガシャガシャガシャ!
背中から開いた〝外部装甲・轟雷〟の、背部ハッチへ飛び込む――ぽぎゅごむん♪
カヒューィ、ガゴゴンッ!
隔壁が閉じられ――ヴュパパパパパパパパッ♪
真っ暗だった目のまえが、明るくなった!
メキョメキョメギギギギギャッ――――太枝が背後から迫る。
無数の目が、全部の方向を一度に見せてきた。
一瞬の目眩。
ガッチャゴッ、チキッ――――ビィィィィィッ!
おれは振り向きざまに、太刀を抜く!
ギュルルルルルルッ――――――――――――――――ガリリリリリリリリィィィィィンッ!!!
鞘の歯車が、火花を散らす!
撃ち出される太刀――パッコォォォォォオォンッ!
ふざけた音を立てて、振るわれた巨大な太刀は――
巨木・木龍に垂れ柳が如く、するりと躱された。
太枝が分かれる所に――ギョロッ!?
強化服程度の大きさの目玉が、芽吹いた!
動きも速ぇし、こいつぁ――植物系の魔物じゃなさそうだぜ。
少なくともネネルド村の巨木みたいに、生え揃ってない――
今の若木の状態はなぁ――――!
「お嬢さま。我々は足手まといのようですので、距離を取ります!」
そう言って自分も杖に乗り――轟雷と姫さんと勇者から、大きく距離を取るルガレイニア。
轟雷の無数の、外部カメラが捉えるのは――チチチィィッ、ヴュヴュユユゥ♪
四方八方から群がる、巨木の蛸枝。
ソレを細切れにしていく、一組の男女。
そしてルガレイニアが前掛けの物入れから取り出したのは――薄くて大きな本。
大陸中の子供が必ず、読み聞かされる伝承。
彼のミノタウロースと双璧をなす、伝説のなかの伝説。
それは正に〝龍〟と呼ぶべき対象で――
『おうさまと、りゅうのまもの』
その本には、そんな表題が付けられていた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる