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4:龍撃の学院

557:央都猪蟹屋跡地、長銃の名とオルコトリアとタター

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「こいつはこいつで、武器ぶきになりそうだぜ?」
 つるんとした丸棒まるぼう工房長ノヴァドおそおそる、つかみ上げた。

 長銃じゅう長穴あなかたち
 それはレイダざいで染められておらず、アダマンタイトいろの――長棒ながぼうだった。

 〝長いこと・・・・〟が、アダマンタイトの〝価値かち〟を決める。
 それはつまり金銭的きんせんてきに、素材的そざいてきに、学術的がくじゅつてきに、SSSRレアなおたからである――
 超特選ちょうとくせんアダマンタイト鉱石こうせきが、もうひと出現しゅつげんしたことにほかならない。

 どやどやどやどや、がやがやがやがやや♪
 猪蟹屋予定地ししがにやよていち安全あんぜんになったと知るや、押し寄せた学者方がくしゃかたたち。
 先陣せんじんを切る頭突き女モゼルはしってきたところまでは、見えたんだが――

「ぐはぁ――!?」
 工房長こうぼうちょう断末魔だんまつまのこし、去って行く学者方がくしゃかたたち。
 あとにはなにのこらず、おれは無常むじょうかんじた。

   §

あお長銃ちょうじゅうオルタタネネイターSPスペシャルニャッ♪」
 上機嫌じょうきげん顧問氏ミャッド
 早速さっそく、タター測定所そくていじょ学者方がくしゃかたたちの玩具おもちゃにされる、〝あお長銃ちょうじゅうオルタタネネイターSPスペシャル〟とやら。

なげぇぜ!」「クカカッ――♪」
 おれは手甲てっこうを付け手先てさきかくし、迅雷ジンライにはもう一度いちど烏天狗役からすてんぐやくもどってもらった。

「えっ、それがこのロングレンジライフルのぉ、お名前なまぇー!? ダサくね?」
 ごったがえ測定所そくていじょなかじゃ一番安全いちばんあんぜん判断はんだんしたのか、丸茸御神体まるきのこごしんたい辺境伯令ルカルルじょうあたまうえに乗ってる。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ダサい?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」――ござる?」
 ござるじゃねぇよ。
 一人ひとりだけ、聞き間違まちがってるのが居るが――
 ダサいってなぁ、なんだぜ?

 ふぉん♪
『ヒント>ダサい。洗練されていない様を表す俗語』
格好なりわりぃってことで、合ってるかぁ?」
「そうわよ。だっさっ!」
 よくわからんが、あまり言ってやるな。

「みゃにゃぁ――!?」
 顧問氏こもんししぶつらをして両耳りょうみみを、ぺたりと伏せちまっただろ。
 折角せっかく上機嫌じょうきげんみずを差すこともねぇだろ。

「ふぅ、そもそも名付なづけようたって、好きに付けられるもんでもねぇだろうが」
 どれどれ、上級鑑定しめしめうっひっひ
 おれはレイダがかおをしかめるほどのわるつらをして、台座だいざに置かれた長銃ちょうじゅうを見た。
 チーン♪
 ここには上級鑑定じょうきゅうかんてい出来できやつ何人なんにんも居るから、そこかしこでかねが鳴る。
 うん、うるせぇ。

 ふぉふぉふぉぉん♪
『魔銃オルタネーター【物理】
 魔法攻撃力830(+∞)。全属性使用可能なライフル型魔法杖(新造アーティファクト)。
 追加効果/STR-50/VIT-20/INT+180
 追加スキル/【主観ロックオン】発射された弾体は、
       スコープで捉えた物を必ず穿つ。
 装備条件/メイド服、ネネルド村出身』

 長銃つえ上級鑑定じゅきゅうかんてい結果けっかが、表示ひょうじされた。

「ほうほう、なるほど?」
 わからん。見たことがない数字すうじも、書いてあるしよ。
 しかし、相当字面そうとうじづらが似てるのは――ふぉん♪
『>はい。流石は研究者たちを、束ねているだけのことはあります』

 おれは鑑定結果かんていけっか黒板こくばんに貼り付けて、「みんなにも見せてや」ろうとしたら――
 「にゃやーっ!?」ってかおの、猫耳族ねこみみぞくむすめと目が合った。

 ニャミカだ。
 彼女かのじょ烏天狗からすてんぐ友人ゆうじんで、貴族きぞくであるルコル少年しょうねん経営けいえいする喫茶店きっさてん従業員じゅうぎょういんだ。
 手に持つのは、〝上級じょうきゅう鑑定箱かんていばこ〟。
 薄板うすいた上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっか書き出せる・・・・・便利べんり道具どうぐだ。
 また金儲け・・・を、目論もくろんでやがったな。
 1まい1キーヌだったか?
 蛸串程度たこくしていどなら、はらってやっても良いが。

 ふぉん♪
『>その後、上級鑑定箱に使用する板が十枚で30パケタすることが発覚しましたので、恐らく現在は1枚で数パケタ要求されると思われます』
 ぐ、地味じみたけぇなぁ。だが出番でばんがなさそうな気配けはいに――
 口元くちもとをわなわなとふるわせ、みみを垂らしてやがる。

「そっちのほうが、いつでも見られて良さそうだ。やってくれ、かねはおれが出す」
 涙目なみだめになられちゃ、仕方しかたねぇ。
「わかったミャ♪ 一枚いちまい10パケタミャ、ぼったくりじゃないニャ?」
 ぼったくりだろうが……まあ良いが。
 しばらくルコルやニャミカの、相手あいてをしてやれなかったからな。

 ――チーン!
 長銃ちょうじゅう箱越はこごしに見つめ――かしゃん♪
 飛びでたいたを、スポンと引っこぬき――シュゴッ♪
 鑑定結果かんていけっかが、いたに焼きついた。

毎度まいどありがとうニャーァ♪」
 手渡てわたされたいたには、ちゃんと鑑定結果かんていけっかが書かれていたが――

『魔銃オルタネーター【物理】
 魔法攻撃力830(+∞)。全属性使用可能なライフル型魔法杖(新■■ーティファクト)。
 追加効果/STR-50/VIT-20/INT+180
 追加スキル/【主観ロックオン】発射された弾体は、
       スコープで捉■■物を必ず穿つ。
 装備条件/メイド服、ネネル■村出身』
 いくつか文字もじつぶれているのは、なにかがふるいから仕方しかたないらしい。
 肝要かんようところには掛かってないから、問題もんだいねーだろ。

 すっと突き出される、りょうてのひら
 迅雷ジンライかねはらってや……っていうか、烏天狗役からすてんぐやくをしてるんだったな。

「ちいと待てやぁ――ごそごそ」
 おれは腕輪うでわから――ヴッ♪
 ゴチャガチャ、ガチャリン♪
 かねはらってやった。

   §

てんという意味いみの〝オル〟――」
「アダマンタイト祖型適合者そけいてきごうしゃ測定対象そくていたいしょう……タターじょう――」
「ネネルドむらの名もかんした――」
「ソレを全部繋ぜんぶつなげた――」
魔銃まじゅうオル……タター?」
 薄板うすいた学者方がくしゃかたたちがむらがる。

「オル太郎たろうちゃんとタターちゃんを、足したみたいな語感ごかんわね♪」
 丸茸めがみのそんな言葉ことばを聞いたひめさんが、丸茸ごしんたいあたまうえに乗せたまま――
 どこかへ掛けだした。

   §

「ふふふ、ご提案ていあんですわ♪」
 姫さんリカルルが連れてきたのは、鬼の娘オルコトリアだった。
「もーなんなのよ。折角せっかく騎士団きしだん連中れんちゅうけん手ほどき・・・・を受けてたのに――」
 文句もんくを言いつつも鬼娘おにむすめおな受付嬢うけつけじょうであり、おな冒険者ぼうけんしゃパーティーでもある同僚どうりょうの手を振りほどこうとはしない。

 鬼娘オルコ基本的きほんてきやさしい。
 やや大柄おおがらで、その膂力りょりょくを持てあま気味ぎみではあるが――
 「オル太郎たろう」とか「鬼太郎おにたろう」とか、呼ばれた程度ていどじゃおこらない。
 ゴーブリンと一緒いっしょにされたらそく、キレてたけど。

 そういや彼奴あいつつよてきが出なくてレベルを上げられない・・・・・・・・・・とか、言ってなかったか?
 〝手ほどき〟ってまさか、魔導騎士団まどうきしだん連中れんちゅうで――
 レベル上げ・・・・・してねぇだろうな。

「ひゃっ、おじょうさまっ!?――ニャァ♪」
 群れる学者方がくしゃかたに割ってはいり、おおきな猫の魔物風シシガニャンを「ちょっと、うちの子をお借りするわよ」と借り受け――
 連れてこられた猫の魔物風シシガニャンごう、ピンクいろ
 その背中せなか金具かなぐをつかんで――ジッジジジジジィーーーーーーッ!
 と引き下ろすと、すぽんと少女タターが飛び出してきた!

「どうぞ、お受け取りなさいな!」
 使用人しようにん同僚どうりょう手渡てわたす、伯爵令嬢はくしゃくれいじょう
 まるで手荷物てにもつのように、小脇こわきかかえられるタター。

「さすがにそれは、乙女おとめがされるあつかいでは無いとおもいますが――ヴヴヴヴヴッ?」
 その蜂真似はちまねも、乙女おとめがするようなこっちゃねーがな。

「ならこれでどう? おじょうちゃん♪」
 少女しょうじょ軽々かるがると、両手りょうてで抱き上げる鬼族の娘オルコトリア

「「「「「「「「きゃぁあぁぁぁぁぁぁぁ♪ お姫様抱ひめさまだっこ!?」」」」」」」」
 やかましい。ここタター測定所そくていじょ学者方がくしゃかたは、さっきまで男子禁制だんしきんせいだったからかおんなばかりだ。
 そして鬼の娘オルコトリアは、とんでもなくつらが良い。
 かおの良いおとこエクレアとならんでも、オルコのほうがモテるくらいには。

「あら、それ良いんじゃんか? 鬼太郎おにたろうちゃんがかかえてはしってくれるなら、機動力きどうりょく防御力ぼうぎょりょくおぎなえるしさ
 満足まんぞくげな、丸茸御神体いおのはら
 ソレをあたまに乗せる、ご令嬢リカルルもご満悦まんえつだぜ。

「ではあなたたち、二人ふたりでチームを組みなさいな♪」
 かたや〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟の隊員たいいん
 かたや、いえつかえる使用人しようにん
 二人ふたりたいする指揮権しきけんは、ご令嬢リカルルが持っている。
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