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4:龍撃の学院
543:央都魔導騎士団訓練場、ガラクタと猫のなまえ
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「喚びましたか――ヴヴッ?」
呼んでねぇぞ。
迅雷が蜂真似をして挨拶をしたら、魔神蜂女がやってきた。
すっかり蜂女が、板について来たとみえるが――
ギラリと光る、形が鋭い眼鏡。
見慣れりゃ、すげぇ格好が良いぜ。
蜂の魔物と恐れられなけりゃ、おれも掛けてみたいくらいだ。
「――神域食堂の扉と、同じだっ♪」
どたどたばた!
「もう、央都!?」「すごく便利ですね♪」
キャッキャッ!
「狐耳の奥方の背に、しがみ付かなくても良いとは僥倖!」
「速のい!」
蜂女は子供たちを、引き連れて来たようだ。
「よぉ、レイダ。まず〝装備を作るための装備〟てのを作らねぇといけなくてな――」
危ねぇから離れててくれ、と言おうとしたら――
「違うでしょ! まずやることと言ったら新しいお友達にっ、お名前を付けてあげることでしょ!」
シガミーはこれだからと、「はぁー、やれやれ」された。
§
「両親たちはケットーシィと呼んでいましたが、「本猫が良いなら、どうぞ名付けてあげてくださいな」と言付かりました」
若草色の羽織が揺れる。
あれは呪われていた外套を、おれが二つに叩っ斬って――
コントゥル家家宝に匹敵する、レア装備に作り替えてやった物だ。
ふぉん♪
『>ケットシー/ケットーシィという名称は、精霊の分類名であり個体名ではないようです』
迅雷が因照減簾って言うのと、同じって訳だな。
「こっちは父からシガミーちゃんにって、預かりました」
渡された袋の中には。
「蹴鞠と水盆と、これは毛布だな?」
「はい。ケットーシィちゃんが使っている物らしいです」
そうか、今日中に装備を作れるとは限らんのか。
根を詰めて央都で仕事をしないと、いけないかもしれんしな。
「んぅ? こりゃ四角い石……じゃなくて、箱か?」
水盆の中には、見覚えがある箱が三つも入ってた。
おい迅雷。
ふぉん♪
『>はいシガミー。既に何個か収集済みの、〝☆〟付きの魔法具と同等の物と思われます』
この箱は方々で見つかるものの、装備条件がLV100というガラクタだった。
しかも既にLV100に達しているおれが手にしても、何も起きないという。
「それは、ダンジョンの通路に落ちていて邪魔……央都の学者さんたちに鑑定していただいてはどうかと、持たせられました」
フッカの口端が、引きつってやがる。
「おっさんめ、要らん物を押しつけやがったな……じゃぁ、貰っとくけど――」
ヴッ――どさっ、ガチャン♪
「きゃっ――何ですか、これっ!?」
太めの革ベルトを、フッカに手渡した。
「猪蟹屋の売り物で悪ぃけど、詰め合わせだ。中身を空にすれば収納魔法具として使える」
これは実はさっきツツィア子爵と揉めたときに、袖の下になればと思って拵えた物だ。
「えっ、猪蟹屋の商品詰め合わせっ!? 映えるー♪」
はぁ? 場得るぅ?
その収納魔法具はシガミー邸(物置小屋)が丸ごと入るくらいの大きさがあるから、嵩張る荷物を入れちまえば――
確かに場所が空くだろうが。
「ちょっと、なによそれっ!」
やや嗄れた声に、振り返ると――
「みたわよ、みたわよぉぅ!」
おっとりした声も、飛んでくる。
薄着の奴と厚着の奴が、物欲しそうな顔で立っていた。
いつの間に来たのか、〝深遠の囁き〟のメンバー達だ。
「えへへへぇー♪ これは我が家から出たゴミ……じゃなくって、発掘品の対価として、シガミーちゃんがくれた物でぇーす。深遠の囁きの共有財産には、なーりーまーせーんーのーでー♪」
何故か頭を高くする、フッカ嬢。
「「ずるいっ! チャッカばっかり、うらやましいっ!」」
本当に喧嘩してるわけじゃねぇーだろうが、一応。
「じゃぁ、討伐クエストが始まるまえに装備を調えておいて欲しいから、二人にも渡しておくよ」
ヴヴッ――どさどさっ、ガチャガチャン♪
「「やった! うれしいっ♪」」
大喜びの二人と、意気消沈するフッカ。
「もちろんフッカの分も、もう一つくれてやらぁ」
ヴッ――どさっ、ガチャン♪
「わっ、やったぁ♪」
太めの革ベルトを抱え大喜びの、冒険者パーティー〝深遠の囁き〟。
その目が――ギィン、ガッキィン!
辺りへ響く金音へ、釘付けとなった。
「所でさ、あれ放っといて良いの? 迅雷さまと何かカワイイ人たちが、やり合ってるけど」
革ベルトを腰に巻き、眉に手を当て遠くを見つめる。
「今更だけど、お客人。いや、お客猫さん。私は魔導騎士団ギ術開発部顧問技師のミャッドだニャ。歓迎するニャァ♪」
その手には、しなる長草。
その先端には――フサフサモコモコした毳毳が、生えていた。
薬効成分のない、ただの雑草だが――
さっと横に振られる毳毳。
ヴゥォォォォォォォゥン♪
唸るアダマンタイト!
「コれは本当に、アダマンタイトノ特性ヲ推し量るタめに、必要なことなノですか?」
ヴォヴォヴォヴォヴォゥゥゥン――――ギャリガリギャキィィン!
迅雷とアダマンタイトが、火花を散らしている。
どっちも傷一つ、つかんだろうが。
お猫さまは稗粟みてぇな長草に、翻弄されている。
「おーい、ミャッドー! その辺で止めてやれやぁ!」
おれも寺に遊びに来たどら猫を塵払いで、あやして遊んだりしたことがある。
だから気持ちは、わからんでもないが――
お前さまも、猫だろうがよ。
自分で振った長草に、目を奪われてるしな。
「定番だけどぉー、〝タマ〟よっねぇー♪」
レイダの頭の上で物見気分の五百乃大角が、何か言ってる。
「ミャーちゃん」「パトリオット」
「モソソモソ」「ネコチャン」「ケトン」
敷いた茣蓙の上を、子供たちが寝転がる。
振り落とされた丸茸御神体が、どこまでもコロコロコロコロと転がっていく。
奴ぁ、丸いからな。
「ヴィヴィエラ2号」「では3号で――ヴヴヴヴ?」
姫さんたちまで参加してんのか?
「ルコル1号は、どうコォン?」「ニャミカ7号ミャ♪」
見れば、いつの間にか、ルコルたちまで来てやがるし。
「ネコレイニアにゃん」「樽酒」
鬼娘に工房長。
「ルィノ」「ウェレ」
「ナジの排他原理」
学者方の連中。
「ボスケテ」「ノストロモ」
魔導騎士団の連中まで居やがる。
おいおいお前ら、考えるまでもねぇだろうが。
「ばかやろう、蛸は〝蛸之助〟。ならあいつは、〝猫之助〟に決まってるじゃ――」
簡単な話だぜ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「却下っ!」」」」」」」」」」」」」」」」」
却下された。
「絶対だめぇー、格好悪い!」
絶対だと、言われた。
「なんだとっ、蛸之助がかわいそーじゃねーか!」
「蛸之助は、似合ってるから良いのぉー!」
「じゃぁ、どーするんだぜ?」
わいわいわいわいわいわいのわい♪
うるせぇ。人が増えてきやがった。
がやがやがやがやや、どやどやどやどややや♪
超うるせぇ。どこまで増えやがる。
「ひひひひぃぃぃん?」
そういや天ぷら号は、〝馬之助〟じゃなかったかー。
「みゃにゃぎゃぁー♪」
猫の魔物扱いされてるおにぎりも、〝おにぎり〟だったなー。
まったく、決まりゃぁしねぇ!
「おーい、お猫さまどもやーい。何かねぇのかぁー? 猫を言い表すのに、ちょうど良い言葉わぁよぉー?」
勝負(?)に熱が入り肩で息をする猫たちに、そう声を掛けたら――
「――「猫って言ったら、ヴァロルフォグル・オルネコーだニャァ♪」――」
やり合ってる最中に、よそ見をした――
小さな猫と大きな猫が、迅雷の一閃を食らい、なぎ倒された。
呼んでねぇぞ。
迅雷が蜂真似をして挨拶をしたら、魔神蜂女がやってきた。
すっかり蜂女が、板について来たとみえるが――
ギラリと光る、形が鋭い眼鏡。
見慣れりゃ、すげぇ格好が良いぜ。
蜂の魔物と恐れられなけりゃ、おれも掛けてみたいくらいだ。
「――神域食堂の扉と、同じだっ♪」
どたどたばた!
「もう、央都!?」「すごく便利ですね♪」
キャッキャッ!
「狐耳の奥方の背に、しがみ付かなくても良いとは僥倖!」
「速のい!」
蜂女は子供たちを、引き連れて来たようだ。
「よぉ、レイダ。まず〝装備を作るための装備〟てのを作らねぇといけなくてな――」
危ねぇから離れててくれ、と言おうとしたら――
「違うでしょ! まずやることと言ったら新しいお友達にっ、お名前を付けてあげることでしょ!」
シガミーはこれだからと、「はぁー、やれやれ」された。
§
「両親たちはケットーシィと呼んでいましたが、「本猫が良いなら、どうぞ名付けてあげてくださいな」と言付かりました」
若草色の羽織が揺れる。
あれは呪われていた外套を、おれが二つに叩っ斬って――
コントゥル家家宝に匹敵する、レア装備に作り替えてやった物だ。
ふぉん♪
『>ケットシー/ケットーシィという名称は、精霊の分類名であり個体名ではないようです』
迅雷が因照減簾って言うのと、同じって訳だな。
「こっちは父からシガミーちゃんにって、預かりました」
渡された袋の中には。
「蹴鞠と水盆と、これは毛布だな?」
「はい。ケットーシィちゃんが使っている物らしいです」
そうか、今日中に装備を作れるとは限らんのか。
根を詰めて央都で仕事をしないと、いけないかもしれんしな。
「んぅ? こりゃ四角い石……じゃなくて、箱か?」
水盆の中には、見覚えがある箱が三つも入ってた。
おい迅雷。
ふぉん♪
『>はいシガミー。既に何個か収集済みの、〝☆〟付きの魔法具と同等の物と思われます』
この箱は方々で見つかるものの、装備条件がLV100というガラクタだった。
しかも既にLV100に達しているおれが手にしても、何も起きないという。
「それは、ダンジョンの通路に落ちていて邪魔……央都の学者さんたちに鑑定していただいてはどうかと、持たせられました」
フッカの口端が、引きつってやがる。
「おっさんめ、要らん物を押しつけやがったな……じゃぁ、貰っとくけど――」
ヴッ――どさっ、ガチャン♪
「きゃっ――何ですか、これっ!?」
太めの革ベルトを、フッカに手渡した。
「猪蟹屋の売り物で悪ぃけど、詰め合わせだ。中身を空にすれば収納魔法具として使える」
これは実はさっきツツィア子爵と揉めたときに、袖の下になればと思って拵えた物だ。
「えっ、猪蟹屋の商品詰め合わせっ!? 映えるー♪」
はぁ? 場得るぅ?
その収納魔法具はシガミー邸(物置小屋)が丸ごと入るくらいの大きさがあるから、嵩張る荷物を入れちまえば――
確かに場所が空くだろうが。
「ちょっと、なによそれっ!」
やや嗄れた声に、振り返ると――
「みたわよ、みたわよぉぅ!」
おっとりした声も、飛んでくる。
薄着の奴と厚着の奴が、物欲しそうな顔で立っていた。
いつの間に来たのか、〝深遠の囁き〟のメンバー達だ。
「えへへへぇー♪ これは我が家から出たゴミ……じゃなくって、発掘品の対価として、シガミーちゃんがくれた物でぇーす。深遠の囁きの共有財産には、なーりーまーせーんーのーでー♪」
何故か頭を高くする、フッカ嬢。
「「ずるいっ! チャッカばっかり、うらやましいっ!」」
本当に喧嘩してるわけじゃねぇーだろうが、一応。
「じゃぁ、討伐クエストが始まるまえに装備を調えておいて欲しいから、二人にも渡しておくよ」
ヴヴッ――どさどさっ、ガチャガチャン♪
「「やった! うれしいっ♪」」
大喜びの二人と、意気消沈するフッカ。
「もちろんフッカの分も、もう一つくれてやらぁ」
ヴッ――どさっ、ガチャン♪
「わっ、やったぁ♪」
太めの革ベルトを抱え大喜びの、冒険者パーティー〝深遠の囁き〟。
その目が――ギィン、ガッキィン!
辺りへ響く金音へ、釘付けとなった。
「所でさ、あれ放っといて良いの? 迅雷さまと何かカワイイ人たちが、やり合ってるけど」
革ベルトを腰に巻き、眉に手を当て遠くを見つめる。
「今更だけど、お客人。いや、お客猫さん。私は魔導騎士団ギ術開発部顧問技師のミャッドだニャ。歓迎するニャァ♪」
その手には、しなる長草。
その先端には――フサフサモコモコした毳毳が、生えていた。
薬効成分のない、ただの雑草だが――
さっと横に振られる毳毳。
ヴゥォォォォォォォゥン♪
唸るアダマンタイト!
「コれは本当に、アダマンタイトノ特性ヲ推し量るタめに、必要なことなノですか?」
ヴォヴォヴォヴォヴォゥゥゥン――――ギャリガリギャキィィン!
迅雷とアダマンタイトが、火花を散らしている。
どっちも傷一つ、つかんだろうが。
お猫さまは稗粟みてぇな長草に、翻弄されている。
「おーい、ミャッドー! その辺で止めてやれやぁ!」
おれも寺に遊びに来たどら猫を塵払いで、あやして遊んだりしたことがある。
だから気持ちは、わからんでもないが――
お前さまも、猫だろうがよ。
自分で振った長草に、目を奪われてるしな。
「定番だけどぉー、〝タマ〟よっねぇー♪」
レイダの頭の上で物見気分の五百乃大角が、何か言ってる。
「ミャーちゃん」「パトリオット」
「モソソモソ」「ネコチャン」「ケトン」
敷いた茣蓙の上を、子供たちが寝転がる。
振り落とされた丸茸御神体が、どこまでもコロコロコロコロと転がっていく。
奴ぁ、丸いからな。
「ヴィヴィエラ2号」「では3号で――ヴヴヴヴ?」
姫さんたちまで参加してんのか?
「ルコル1号は、どうコォン?」「ニャミカ7号ミャ♪」
見れば、いつの間にか、ルコルたちまで来てやがるし。
「ネコレイニアにゃん」「樽酒」
鬼娘に工房長。
「ルィノ」「ウェレ」
「ナジの排他原理」
学者方の連中。
「ボスケテ」「ノストロモ」
魔導騎士団の連中まで居やがる。
おいおいお前ら、考えるまでもねぇだろうが。
「ばかやろう、蛸は〝蛸之助〟。ならあいつは、〝猫之助〟に決まってるじゃ――」
簡単な話だぜ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「却下っ!」」」」」」」」」」」」」」」」」
却下された。
「絶対だめぇー、格好悪い!」
絶対だと、言われた。
「なんだとっ、蛸之助がかわいそーじゃねーか!」
「蛸之助は、似合ってるから良いのぉー!」
「じゃぁ、どーするんだぜ?」
わいわいわいわいわいわいのわい♪
うるせぇ。人が増えてきやがった。
がやがやがやがやや、どやどやどやどややや♪
超うるせぇ。どこまで増えやがる。
「ひひひひぃぃぃん?」
そういや天ぷら号は、〝馬之助〟じゃなかったかー。
「みゃにゃぎゃぁー♪」
猫の魔物扱いされてるおにぎりも、〝おにぎり〟だったなー。
まったく、決まりゃぁしねぇ!
「おーい、お猫さまどもやーい。何かねぇのかぁー? 猫を言い表すのに、ちょうど良い言葉わぁよぉー?」
勝負(?)に熱が入り肩で息をする猫たちに、そう声を掛けたら――
「――「猫って言ったら、ヴァロルフォグル・オルネコーだニャァ♪」――」
やり合ってる最中に、よそ見をした――
小さな猫と大きな猫が、迅雷の一閃を食らい、なぎ倒された。
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