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4:龍撃の学院
539:トリュフ橋近くの町、超高高度プラットフォーム技術について
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「それでどう対処するか、相談に来たってわけか?」
どうしたもんだぜ?
「いや、それがさぁ――」
ニゲルが何か言い淀んでやがるから――
「水でも飲んで、落ち着くか」
ひとまずは応接室へ。
「リカルルさま、ずるいっ!」
生意気な子供筆頭のレイダが、お貴族さまに文句を言ってやがるぜ。
そのリカルルはといえばガシリと、お猫さまを抱きかかえ――
「みゃに゛ゃーん♪」
ででで、ででででっ♪
頬ずりする顔を、うしろ足で蹴られてやがる。
どこ行ったと思ってたら、まだとっ捕まってやがったのか。
「うふうふうふふ、痛たた。くすくすくす、痛いですわよ♪」
蹴られてるのに、すげぇ嬉しそうだぜ。
「リカルルさま、ずるい! 私も!」
やや生意気な子供ビビビーが、レイダとは反対側から手を伸ばしている。
「仕方有りませんわねぇ♪ 順番ですわよぉ?」
長椅子中央に陣取る彼女は、まるで我が家のように寛いでいた。
家宝の甲冑は仕舞われ、普段町で着ているような派手目なドレス姿に着替えている。
早着替えの変身ベルトは、ちゃんと使えているようだ。
「侍女長。猫の魔物は初めて見ましたけどっ、かわいらしぃですねぇー♪」
「本当ですね、うふふふ♪」
荒れ果てた応接室の片付けをしながら、給仕服姿の二人が口元を綻ばせている。
「うぬぅ、小さき者に会うのは150年ぶりだ」
「かわのい、かわのい♪」
火龍少年ゲイルと第四師団長が、お猫さまを撫でる列に並ぶ。
「あまり構うと、引っかかれますよ」
と言いつつもフッカ母は、満更でもない様子だった。
「ソレなんだけどニャァ――♪」
ややガサガサした声に振り向くと――
転移扉を抜けてきたのか、顧問技師ミャッドが戸口に立っていた。
ソレって何だぜ。突然出てくるなよ、驚くだろーが!
ふぉん♪
『>先ほどのニゲルとの会話、央都で発見された〝巨木の果実〟のことと思われます』
「辺境伯名代……元魔導騎士団総大将さまが、抱えてどこかへ飛んで行ったニャァ♪」
口元に手を当てる顧問技師。
その顔が青ざめている気もするけど、緑色の毛皮に阻まれて本当の顔色はわからん。
「はぁ――!? そーいうことか。それならついさっき、この上を飛んで行きやがったぜ? うるせぇのうるさくねぇのってよ!」
片耳を押さえ、罅の入る天井を指さしてやる。
「あら、そうでしたの? ならこの先の大渓谷最奥の火山にでも捨てに行ったんでしょうね」
ふうぃ。さっき飛んでったのはそういうことか。
危険な木の実を、火山に捨てに行ったと。
おれはガムラン町最寄りの、火山の主だった少年を見た。
その目は、小さき者の揺れる尾に注がれている。
ふぅん……なるほど?
「火山なぁ……」
さすがの巨木の種だって、火に焼べられりゃ――
ふぉん♪
『>シガミー。央都の神木の果実は、卵と勘違いしたイオノファラーが茹でたことで、発火したのをお忘れですか?』
やっぱ駄目か。
「はっははは――早く、奥方さまを呼び出せやぁー!」
丸茸をつかんで、怒鳴った。
「ぎゃっ――ルリーロちゃん? 別に良いけど……あれ? スマホどこやったっけ?」
「おれが持ってらぁ――ほらよ」
ヴッ――薄桜色の薄板を取り出して、ムギュリと押しつけた。
ピポポン――♪
「あらら? 『現在電波が届かない所――』になっちゃってる?」
ふぉん♪
『>女神像ネットワークを利用した通信チャンネルは、音速で移動する対象との通話を維持出来ません』
ふぉん♪
『イオノ>ぅふーん? じゃぁ超高速移動体通信用に基地局ドローンでも上空に飛ばしてよん』
ふぉん♪
『>ドローンでは追跡不可能です。どのみち相対速度が音速を超えた時点で、回線経路が切断されます』
ふぉん♪
『イオノ>なら、あたくしさまが音速で追いかけないと無理ってことね?』
ふぉん♪
『>現状では。2222年現在、成層圏で使用されている、超高高度通信技術を導入出来るなら、マッハ14までスマホによる通話が可能になりますが』
ふぉん♪
『イオノ>ばかね。一介の非常勤講師に、そんな軍事技術が開示されてるわけ無いでしょ』
「お手上げわよ。早すぎて捕まらないわっ、ウケッケケケケケッ♪」
すぽんと薄板を仕舞う、丸茸御神体。
「ちっ、神々の技術も大したこたぁねぇなぁ!」
貰っといた薄板を取られちまったが、まあ良いか。
迅雷が居るおれには、やっぱり必要ねぇ。
ふぉん♪
「何言ってんのさっ、女神像わぁー万能の神器じゃ有りまっせぇぇーん! ファンタジー世界で超高高度プラットフォーム技術がぁ必要になる方が、お・か・し・い・でしょーがぁ!」
「知らんし、わからん。じゃあ、しかたがねぇ――」
おれはとんと長椅子に近寄り――
お猫さまの外套の頭巾を、つかみ上げた。
「ふにゃぁー?」
前回と同じく、もの凄く気の抜けた面をしてやがる。
「お猫さまよぅ、例のアダマンタイト製の装備。〝どんな炎系にも勝てる奴〟ってのを一つ、作ってくれや!」
ーーー
超高高度プラットフォーム技術/成層圏環境で運用される空中プラットフォームを支える技術群。HAPSとも呼ばれ、高高度における通信インフラだけでなく、成層圏を自律航行する航空機体のための母艦としても運用されている。地球低軌道を視野に入れた発射台としても期待されていたが、謎の発光現象により実現には至っていない。
どうしたもんだぜ?
「いや、それがさぁ――」
ニゲルが何か言い淀んでやがるから――
「水でも飲んで、落ち着くか」
ひとまずは応接室へ。
「リカルルさま、ずるいっ!」
生意気な子供筆頭のレイダが、お貴族さまに文句を言ってやがるぜ。
そのリカルルはといえばガシリと、お猫さまを抱きかかえ――
「みゃに゛ゃーん♪」
ででで、ででででっ♪
頬ずりする顔を、うしろ足で蹴られてやがる。
どこ行ったと思ってたら、まだとっ捕まってやがったのか。
「うふうふうふふ、痛たた。くすくすくす、痛いですわよ♪」
蹴られてるのに、すげぇ嬉しそうだぜ。
「リカルルさま、ずるい! 私も!」
やや生意気な子供ビビビーが、レイダとは反対側から手を伸ばしている。
「仕方有りませんわねぇ♪ 順番ですわよぉ?」
長椅子中央に陣取る彼女は、まるで我が家のように寛いでいた。
家宝の甲冑は仕舞われ、普段町で着ているような派手目なドレス姿に着替えている。
早着替えの変身ベルトは、ちゃんと使えているようだ。
「侍女長。猫の魔物は初めて見ましたけどっ、かわいらしぃですねぇー♪」
「本当ですね、うふふふ♪」
荒れ果てた応接室の片付けをしながら、給仕服姿の二人が口元を綻ばせている。
「うぬぅ、小さき者に会うのは150年ぶりだ」
「かわのい、かわのい♪」
火龍少年ゲイルと第四師団長が、お猫さまを撫でる列に並ぶ。
「あまり構うと、引っかかれますよ」
と言いつつもフッカ母は、満更でもない様子だった。
「ソレなんだけどニャァ――♪」
ややガサガサした声に振り向くと――
転移扉を抜けてきたのか、顧問技師ミャッドが戸口に立っていた。
ソレって何だぜ。突然出てくるなよ、驚くだろーが!
ふぉん♪
『>先ほどのニゲルとの会話、央都で発見された〝巨木の果実〟のことと思われます』
「辺境伯名代……元魔導騎士団総大将さまが、抱えてどこかへ飛んで行ったニャァ♪」
口元に手を当てる顧問技師。
その顔が青ざめている気もするけど、緑色の毛皮に阻まれて本当の顔色はわからん。
「はぁ――!? そーいうことか。それならついさっき、この上を飛んで行きやがったぜ? うるせぇのうるさくねぇのってよ!」
片耳を押さえ、罅の入る天井を指さしてやる。
「あら、そうでしたの? ならこの先の大渓谷最奥の火山にでも捨てに行ったんでしょうね」
ふうぃ。さっき飛んでったのはそういうことか。
危険な木の実を、火山に捨てに行ったと。
おれはガムラン町最寄りの、火山の主だった少年を見た。
その目は、小さき者の揺れる尾に注がれている。
ふぅん……なるほど?
「火山なぁ……」
さすがの巨木の種だって、火に焼べられりゃ――
ふぉん♪
『>シガミー。央都の神木の果実は、卵と勘違いしたイオノファラーが茹でたことで、発火したのをお忘れですか?』
やっぱ駄目か。
「はっははは――早く、奥方さまを呼び出せやぁー!」
丸茸をつかんで、怒鳴った。
「ぎゃっ――ルリーロちゃん? 別に良いけど……あれ? スマホどこやったっけ?」
「おれが持ってらぁ――ほらよ」
ヴッ――薄桜色の薄板を取り出して、ムギュリと押しつけた。
ピポポン――♪
「あらら? 『現在電波が届かない所――』になっちゃってる?」
ふぉん♪
『>女神像ネットワークを利用した通信チャンネルは、音速で移動する対象との通話を維持出来ません』
ふぉん♪
『イオノ>ぅふーん? じゃぁ超高速移動体通信用に基地局ドローンでも上空に飛ばしてよん』
ふぉん♪
『>ドローンでは追跡不可能です。どのみち相対速度が音速を超えた時点で、回線経路が切断されます』
ふぉん♪
『イオノ>なら、あたくしさまが音速で追いかけないと無理ってことね?』
ふぉん♪
『>現状では。2222年現在、成層圏で使用されている、超高高度通信技術を導入出来るなら、マッハ14までスマホによる通話が可能になりますが』
ふぉん♪
『イオノ>ばかね。一介の非常勤講師に、そんな軍事技術が開示されてるわけ無いでしょ』
「お手上げわよ。早すぎて捕まらないわっ、ウケッケケケケケッ♪」
すぽんと薄板を仕舞う、丸茸御神体。
「ちっ、神々の技術も大したこたぁねぇなぁ!」
貰っといた薄板を取られちまったが、まあ良いか。
迅雷が居るおれには、やっぱり必要ねぇ。
ふぉん♪
「何言ってんのさっ、女神像わぁー万能の神器じゃ有りまっせぇぇーん! ファンタジー世界で超高高度プラットフォーム技術がぁ必要になる方が、お・か・し・い・でしょーがぁ!」
「知らんし、わからん。じゃあ、しかたがねぇ――」
おれはとんと長椅子に近寄り――
お猫さまの外套の頭巾を、つかみ上げた。
「ふにゃぁー?」
前回と同じく、もの凄く気の抜けた面をしてやがる。
「お猫さまよぅ、例のアダマンタイト製の装備。〝どんな炎系にも勝てる奴〟ってのを一つ、作ってくれや!」
ーーー
超高高度プラットフォーム技術/成層圏環境で運用される空中プラットフォームを支える技術群。HAPSとも呼ばれ、高高度における通信インフラだけでなく、成層圏を自律航行する航空機体のための母艦としても運用されている。地球低軌道を視野に入れた発射台としても期待されていたが、謎の発光現象により実現には至っていない。
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