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4:龍撃の学院

532:猫の魔物はケットーシィ、ネコチャンとモソモソ家その2

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 おっさんのかたりはつづく。
 どれくらいくるしくてつらかったのかを、迫真はくしん演技えんぎ再現さいげん
 子供こどもたちがわらころげたところで――魔法杖一閃ハリセンいっせん

 はらこわ昏倒こんとうした、おっさんが見た悪夢あくむ
 ゆめのお告げで見たのは――

「とある木のうろだぁとぉー? そんなどこにでもあるもんおぉーさがそうったって、そうそう見つからんだろーが?」
「そうでスね。我々わレわれ装備そうビやスキルヲモってしテも、難航なんコうすルとおモわれマ
 だろぅ――おれはおっさんを、モソモソ家当主けとうしゅにらみつけてやった。

「ふぅ、それがですね。うちのちち冒険者ぼうけんしゃとしてはカス……ん゛んっ、た、たたかいにはまるで向かないのですが――」
 そうだな。ダンジョンしたで、ひどい目に遭わされたしな。

「このひと唯一ゆいいつの取り柄でもありますが、〝土地勘とちかん〟スキル持ち……なのですわっ、ふぅ」
 魔法杖ハリセンで、痩せこけたわりにてっぷりとしたはらを、ぐいぐいと。
 よめにつつかれる旦那おっさん

「へぇー。だれにでも取り柄はあるもんだぜ」
「でス」「むぐわぱ――むぐぐ!?
 なぁー。はなしが進まねぇから丸茸まるきのこは、もうすこだまってろや。

「取り柄はあるものですねぇ」
 しみじみと言う顧問秘書こもんひしょ
本当ほんとうですね。プークスクス
 相槌あいづちを打つ茅野姫かやのひめ

「「そーだねっ、うひひっ♪」」
 たのしそうな子供こども
「取り柄のないわたしからしたら、うらやましいかも」
 有るだろうが取り柄。子馬こうま尻尾しっぽそでからまれるし――
 王女おうじょ鋭角好き・・・・を、見事みごといさめただろうが。

「取り柄は、あるホウが良いとオモう――ぼろぼろ」
 黙々もくもく菓子かしを食い、カスをこぼす火龍かりゅうゲイル少年しょうねん

地図作ちずづくりの才能さいのう? 魔導騎士団まどうきしだんに欲しい人材じんざい――てな?」
 おっさんの値踏ねぶみをはじめた、魔導騎士団まどうきしだん第四師団長だいよんしだんちょう
 その小首こくびかたむき――ねこの背を撫ぜた。
「にゃぁ♪」
 にゃぁと鳴く、ねこ
 ねこはアダマンタイトに、ご執心しゅうしんで――
 師団長こどもの手を、させるがままにしている。

「みゃにゃぎゃぁー
「ひひぃぃん?」
 満場一致まんじょういっちで出た、そんな言葉ことばに――

「「「よく言われます」」――ぉっほほぉん♪」
 モソモソ一家が、元気げんきよくこたえた。

   §

 おっさんは、地勢ちせい地理ちり情勢じょうせい把握はあくに長けた〝地図作ちずづくり〟のうでで――
 ちょっとは名の知れた、冒険者ぼうけんしゃだったらしく。
 きのこ本来ほんらい効能こうのうである天啓てんけい
 それとはほどとおかった、かすかなかすかな悪夢あくむ記憶きおく
 そんないとのようなせんをたどりさがし当てた――お告げ・・・
 それがしめしたさきには、とてもふるほこらがあったという。

 子供こどもたちはおっさんのはなし……かおに飽きたのか、ねこを撫でに行った。

「みゃにゃやーん♪」
 子供こどもの手も三倍さんばいになるとわずらわしいのか、ねこ魔物まものケットーシィが「やめろー」と鳴いた。
 おにぎりの通訳やくがなくても、それくらいはわかった。

「それでねこはなしは、どこに行っちまったんだぜ?」
「まさにそのはなしをしていまっすぅー。ぅおっほほほぉん♪」
 スパァーン♪
 さきうながされるおっさん。

「そのほこらなかに居たのは――ななななああなぁんとぉ――そこに居るケットーシィだったのです!」
 なぬ?
 だれも見たことのないねこだか決闘死ケットーシィだかに、たどり着いたっていうのか。
 だれも見たことのねぇ度合い・・・でいやぁ――天狗てんぐミノタウ・・・・も似たようなもんだ。

 子供こどもたちを蹴散けちらし――話題はなし中心ちゅうしんであるおねこさまが足下あしもとまでやってきた。

「みゃぎゃにゃぁーぁん♪」
 なんか言ってるな。長文過ちょうぶんすぎてわからんが。
 モソモソ一家いっかを見るも、古代猫語(?)はなし出来できんらしい。

 ヴッ――かたん。
 おにぎりが自分じぶんくびに、木のいたを提げた。

「みゃんにゃぎゃみゃにゃぁぁー、みゃんみゃみゃみゃんぎゃにゃにゃぎゃやーぁ
 なんだ、おまえまで。なげぇ。

 じっとおにぎりを見てたら、木のいた文字もじが書かれた。
『「モソモソ家に、ご厄介になるお礼として、ミギアーフ卿が欲しがってた〝えんきょくのなえぎ〟を進呈したにゃん♪」って言ってるんだもの』

 有った。有りやがった。
 予想よそうもしねぇところから、ひょっとこたえが出てきやがったぜ。

 まさかの、マジック・スクロールの出所でどころは――
 モソモソ家このいえで飼われている、おねこさま。
 ねこ魔物まものケットーシィーだった。

   §

「ふゃにゃ、にゃみゃなーん♪」
 翻訳ほんやく木板きいたは、猫共用語ねこきょうようごにしか使つかえんらしい。
「みゃにゃにゃにゃやーん、にゃにゃぎゃやぎゃにゃやーぁ
 通訳やくしてるおにぎりの、口数くちかずおおい。
 つまりなげぇぜ。

『「〝えんきょくのなえぎ〟はユニークスキルだよ。あの高等魔術を覚えられるのは一人だけだにゃぁ」って言ってるもの』
 結局けっきょくだめかぁー。

「にゃにゃにゃにゃ、ぎゃにゃみゃぁぁぁご♪」
「みゃにゃやにゃにゃみゃにゃにゃぎゃにゃぎゃやややぁぁー、みゃぎゃみゃぎゃやーあぁぁぁあぁぁご
 なげぇ。

『「けどあの貴重なアダマンダイトがあれば、どんな炎系の攻撃にも対抗出来る装備が作れるけど、制作費が張るにゃぁ。
 希少な素材や、加工するための超高熱の青い炎さえあるなら、今すぐにでも作れるけど」って言ってるもの』
 なげぇ――けど、希少素材レアそざいてのがどういうものかによっては、みちが見えてきたぜ。
 青白あおじろほのおには、心当こころあたりが有るしな。

   §

 モソモソ邸あばらやを出たら、まちもんどり打つような・・・・・・・・・うねった地面じめんがほぼたいらになってやがった。

「つマり、地下チか出来でキたダンジョンノボスヲ放置ほウちすル――」
 ヴォヴォォォン♪
「はい、こうして我が家のかべ亀裂きれつが、おおきくなります」
 はいった亀裂きれつなおりはしないが、ほぼ隙間すきまはなく――
 雨風あめかぜふせげそうだな。

 やっと合点がてんがいった。
 つまり、どうせすぐこわれるからと――
 いえの建て替えをこばんだってわけか……納得なっとくしたぜ。

はじめまして、ケットシィーちゃん。あなたがあのマジックスクロールをくれたのね? ありがとう♪」
 ねこを抱き上げ、いつくしむフッカじょう
「にゃみゃぁーん♪」
 尻尾しっぽを振る、お猫さまケットーシィ

「ふぅん、そ・れ・でぇ――
 ギュリッ!
 丸茸まるきのこ一回転いっかいてん

「で、ですからねっ! 冒険者ぼうけんしゃさまの修行しゅぎょうとぉーん当家とうけ都合つごうがぁーん、見事みごとなまでに合致がっちした結果けっかぁーん――こ、このようなことになっている次第しだいでっしてぇーん、まったくもうっどうにもこうにもっいやはやっははははぁぁふん♪」
 ギュリリッ!
 あたまうえ丸茸まるきのこ二回転にかいてんされ、ひざをつくおっさん。
 おいそれかみからまると、結構痛けっこういたいからな。

「ボス部屋べやしっかないーん、寸足すんたっらずなダンジョッンでっぇーん、ボッスのおぉーちからおぉー削っいでいたっーぁと? ふっうっーん、へっーえーん、ほっーぉーん、な・る・ほ・どぉ……
 ギュリリリッィン!
 丸茸まるきのこ四回転よんかいてん。おっさんは地にくずれ落ちた。
 おまえさまはその場・・・に居なかったんだから、どうしようもねぇじゃねーかよ。

「なんだか、一息ひといき状況じょうきょうが……整理せいりされてしまいましたね」
 顧問秘書こもんひしょ真剣しんけんかおで、手帳メモをつけている。

「――そんなわけ無いでしょ! ぜんぜんまったく整理整頓せいりせいとんされてないでしょっ! おきのこさまおぉー無下むげにしたぁー罰当ばちあたりわぁー、おまえくわぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――ウッケケケケッケケケケケケケケケケケケケエケッケケッ

 いかりまだ覚めやらぬ丸茸まるきのこが、むしいきのおっさんの頭上ずじょうで――ギュギュギュリギュギュギュギャリィィィィィィィンッ♪
 盛大せいだい大回転祭だいかいてんまつりを開催かいさいしている。
 いい加減許かげんゆるしてやれや、フッカ奥方フッカはは手前てまえもあるだろうが、なっ?

「そのへんにしてやれ、なんならもう日が落ちちまうから――央都おうとかえるぞ?」
 かえったらなんでも好きなめしを、つくってやるからよ。

「みゃにゃぎゃぁー
 猫の魔物おにぎりが来た。
「あーっ、今忙いまいそがしいからっ! 向こうであそんでなさいわよぜ!」
 いそいで五百乃大角いおのはらをなだめねえとならねぇ。

「あのーぅ、シガミーちゃぁん?」
 フッカのこえだ。かおを上げると――
 黄緑色きみどりいろ夏毛猫なつげねこに抱きかかえられ、かおを真っ赤にする妙齢みょうれい女性じょせい姿すがた

「そりゃまた、どうしてそうなった?」
 おにぎりがかかえているのはフッカじょうだった。
 そして――「みゃおぉーぅん、みゃにゃぎゃにゃんにゃんにゃみゃぁん♪」
 フッカにかかえられたお猫さまケットーシィが、おれや大回転祭だいかいてんまつりを開催中かいさいちゅう御神体いおのはらへ向かって――
 ちいさな手を伸ばして、ニギニギする。

「みゃにゃぎゃにゃみゃぁ――、――――。――――――
 なげぇし、うるせぇぞ、おにぎりぃ。

『「その茸の話は聞いたにゃ。それはママさんが調べたレシピ通りに作ったら、多分美味しく食べられたにゃー♪」って言ってるんだもの』
 木板きいたはちゃんとおにぎりの言葉ことばを、翻訳ほんやくしてくれているが――
 やいおねこさま、余計よけいなことを言うな。

「え? なにぃーいまのおはなしぃー? ひょっとしておきのこさまのレシピの、おはなしぃぃいぃぃぃ!?
 ほれみろ、食いついちまった・・・・・・・・じゃねぇーか。
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