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4:龍撃の学院
525:ツツィア子爵領紀行、子馬エンジニアリング
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ウォオゥン、ニョワァァン――♪
顧問秘書が貸してくれた、眼鏡の魔法具。
それ越しに見た物置小屋は――ピカカカカッ!
とても眩しかった。
ひっくりかえった子馬が目玉を、眩しいくらいに光らせていたからだ。
「なるほど。おれが作った全天球レンズに、活力が大量に奪われてしまってるのか」
おれは眼鏡の魔法具を返した。
「ひぃん?」
すっかり諦め、四つ足を伸ばす子馬。
「だからお腹が減って力が出ない、ということのようですね」
そんな子馬を撫でる顧問秘書。
そういやぁ天ぷら号は後ろを見るのに、わざわざ首を回してたっけ。
「動けん理由はわかったが――」
おれもかがみ込んで、子馬の腹を撫でてやる。
こいつの設計は、ラプトル王女だ。
つまり、分解してみないとわからねぇ。
「ふふーん――アニマトロニクスわぁ門外漢だけどぉ――、王女さまの設計思想わぁ――中々どうしてぇ――理にかなってたみたいねぇん♪」
おれの頭の上から、素っ頓狂な声がする。
「知ったふうな口を利くんじゃありませんわぜ……何かわかったのか?」
糸紡ぎはやめた。もう一生しねぇつもりだ。
また体が勝手に歩き出したら、今度はどこに行くかわからんからな。
「うん。あの凄まじく鋭利に尖った目玉わぁ、みぃーんなに恐れられてたけどさぁ。〝超高燃費〟っていうぅ良いところもぉー、有ったんだなぁーって♪」
古畝皮てなぁ、何だぜ?
ふぉん♪
『ヒント>高燃費/油が燃えて火を灯すときの効率。燃料費』
「うむぅ? つまり王女が作った目玉のほうが、出来が良かったってことかぁ?」
そいつぁなんか、ものすごく悔しいなあ?
「出来はともかく、天ぷら号に最適化されてたのわぁ――間違いないわねぇーん♪」
顧問技師や王女殿下に話を聞けば直ぐに、わかったことではあるが――
「そうだぜ。このゴーレム馬にわぁ、王女がなんかの……なんだっけ、ドルイドの自然力……だとか言うスキルも使ってるんだったぜ」
五百乃大角の言葉で思い出したが――
「ドルイドの自然力……王女殿下はゴーレム姫と恐れられる以前は、たしかに〝自然を愛するドルイド姫〟と慕われていましたが」
いつもの手帳に何かを、書き記す顧問秘書。
「その自然力てのわぁ、何でぇい?」
もう訊く、超訊いてみる。
轟雷を着るたびに身についてきた〝神々や、この世界の理〟を、今こそ役立てるときだろ。
【地球大百科辞典】とかいうスキルもあるしな。
「それが、王女ご自身も「よくは、わからないですらららぁぁん♪」と、よく嘆いていました……はぁぁあぁ」
顔を八の字にするマルチヴィル。
自身も学者方である学者方のまとめ役が、でかい息を吐いた。
「なんだぜ、わからねーのかよ!」
つい、怒鳴ると――
「ひひっひいぃぃん?」
一瞬ジタバタして、またすぐ四つ足をピンと伸ばす天ぷら号。
この子馬が、おにぎりほどではないにしても、こうして自分で考えて動いているのは――
間違いなくラプトル王女の、スキルか魔法のおかげだ。
現在、猪蟹屋が総力をあげて探している――
神々の世界で使われていた……太古のアーティファクト?
迅雷を作るための、酢蛸……SDKというなんか、そんなやつ。
それと似たことが出来るのが、おにぎりの元になった――
廃棄された女神像の中から採れた、三角の箱で。
それは二つ合わせると、SDK代わりになる。
くっつけるのにコツが要るが、五百乃大角が得意だから――
三角の箱さえ有りゃぁ、無人工房や裏天狗に使えて便利なんだが。
ふぉん♪
『シガミー>おい、五百乃大角よ』
ふぉん♪
『イオノ>なによ、一行表示なんて使って?』
ふぉん♪
『シガミー>例のおにぎり型の箱のことを、秘書さんに話しても良いか?』
ふぉん♪
『品代として――1,500パケタ
廃棄された古代の女神像から回収した謎の遺物』
〝おにぎり型の、おにぎりの元〟を買ったときの内訳が、表示された。
ミャッドから買った、三角形の箱は二つ。
出所は魔導騎士団の倉庫で、それ以上の詳しい話は――
ミャッドたちにも、まだわかってないらしいが。
ふぉん♪
『イオノ>なんで、どうして?』
ふぉん♪
『>天ぷら号の動かし方の参考になるだろ』
ふぉん♪
『イオノ>そうわね。そうしましょ。けど、〝着ぐるみ〟に中の人なんていたら興ざめだし、広く知られたら〝おにぎり〟を作ろうとする人が現れないとも限らないから』
「秘書子ちゃぁん、ちょぉーっとお耳を貸してくださらないかしるぁーん?」
マルチヴィルの肩に飛び乗る、御神体。
「実はなぁ、此処だけの話にして欲しいんだけど……ミャッドは、たぶん気づいてると思うが――」
おれたちは子馬の陰に隠れ、内緒話をする。
「あのぉーう? そろそろ助けてくれませんかぁー?」
子馬の尻尾に絡まった少女メイド・タターが、顧問秘書のすぐ後ろで助けを求めている。
「きゃぁっ、私も絡まっちゃったぁー♪」
こともあろうか子供・レイダが、内緒の話をするおれと秘書の間に――割って入ってきやがった。
とんでもなく邪魔だが、相手をするといつまでも話が進まねぇから、この際放っとく。
顧問秘書が貸してくれた、眼鏡の魔法具。
それ越しに見た物置小屋は――ピカカカカッ!
とても眩しかった。
ひっくりかえった子馬が目玉を、眩しいくらいに光らせていたからだ。
「なるほど。おれが作った全天球レンズに、活力が大量に奪われてしまってるのか」
おれは眼鏡の魔法具を返した。
「ひぃん?」
すっかり諦め、四つ足を伸ばす子馬。
「だからお腹が減って力が出ない、ということのようですね」
そんな子馬を撫でる顧問秘書。
そういやぁ天ぷら号は後ろを見るのに、わざわざ首を回してたっけ。
「動けん理由はわかったが――」
おれもかがみ込んで、子馬の腹を撫でてやる。
こいつの設計は、ラプトル王女だ。
つまり、分解してみないとわからねぇ。
「ふふーん――アニマトロニクスわぁ門外漢だけどぉ――、王女さまの設計思想わぁ――中々どうしてぇ――理にかなってたみたいねぇん♪」
おれの頭の上から、素っ頓狂な声がする。
「知ったふうな口を利くんじゃありませんわぜ……何かわかったのか?」
糸紡ぎはやめた。もう一生しねぇつもりだ。
また体が勝手に歩き出したら、今度はどこに行くかわからんからな。
「うん。あの凄まじく鋭利に尖った目玉わぁ、みぃーんなに恐れられてたけどさぁ。〝超高燃費〟っていうぅ良いところもぉー、有ったんだなぁーって♪」
古畝皮てなぁ、何だぜ?
ふぉん♪
『ヒント>高燃費/油が燃えて火を灯すときの効率。燃料費』
「うむぅ? つまり王女が作った目玉のほうが、出来が良かったってことかぁ?」
そいつぁなんか、ものすごく悔しいなあ?
「出来はともかく、天ぷら号に最適化されてたのわぁ――間違いないわねぇーん♪」
顧問技師や王女殿下に話を聞けば直ぐに、わかったことではあるが――
「そうだぜ。このゴーレム馬にわぁ、王女がなんかの……なんだっけ、ドルイドの自然力……だとか言うスキルも使ってるんだったぜ」
五百乃大角の言葉で思い出したが――
「ドルイドの自然力……王女殿下はゴーレム姫と恐れられる以前は、たしかに〝自然を愛するドルイド姫〟と慕われていましたが」
いつもの手帳に何かを、書き記す顧問秘書。
「その自然力てのわぁ、何でぇい?」
もう訊く、超訊いてみる。
轟雷を着るたびに身についてきた〝神々や、この世界の理〟を、今こそ役立てるときだろ。
【地球大百科辞典】とかいうスキルもあるしな。
「それが、王女ご自身も「よくは、わからないですらららぁぁん♪」と、よく嘆いていました……はぁぁあぁ」
顔を八の字にするマルチヴィル。
自身も学者方である学者方のまとめ役が、でかい息を吐いた。
「なんだぜ、わからねーのかよ!」
つい、怒鳴ると――
「ひひっひいぃぃん?」
一瞬ジタバタして、またすぐ四つ足をピンと伸ばす天ぷら号。
この子馬が、おにぎりほどではないにしても、こうして自分で考えて動いているのは――
間違いなくラプトル王女の、スキルか魔法のおかげだ。
現在、猪蟹屋が総力をあげて探している――
神々の世界で使われていた……太古のアーティファクト?
迅雷を作るための、酢蛸……SDKというなんか、そんなやつ。
それと似たことが出来るのが、おにぎりの元になった――
廃棄された女神像の中から採れた、三角の箱で。
それは二つ合わせると、SDK代わりになる。
くっつけるのにコツが要るが、五百乃大角が得意だから――
三角の箱さえ有りゃぁ、無人工房や裏天狗に使えて便利なんだが。
ふぉん♪
『シガミー>おい、五百乃大角よ』
ふぉん♪
『イオノ>なによ、一行表示なんて使って?』
ふぉん♪
『シガミー>例のおにぎり型の箱のことを、秘書さんに話しても良いか?』
ふぉん♪
『品代として――1,500パケタ
廃棄された古代の女神像から回収した謎の遺物』
〝おにぎり型の、おにぎりの元〟を買ったときの内訳が、表示された。
ミャッドから買った、三角形の箱は二つ。
出所は魔導騎士団の倉庫で、それ以上の詳しい話は――
ミャッドたちにも、まだわかってないらしいが。
ふぉん♪
『イオノ>なんで、どうして?』
ふぉん♪
『>天ぷら号の動かし方の参考になるだろ』
ふぉん♪
『イオノ>そうわね。そうしましょ。けど、〝着ぐるみ〟に中の人なんていたら興ざめだし、広く知られたら〝おにぎり〟を作ろうとする人が現れないとも限らないから』
「秘書子ちゃぁん、ちょぉーっとお耳を貸してくださらないかしるぁーん?」
マルチヴィルの肩に飛び乗る、御神体。
「実はなぁ、此処だけの話にして欲しいんだけど……ミャッドは、たぶん気づいてると思うが――」
おれたちは子馬の陰に隠れ、内緒話をする。
「あのぉーう? そろそろ助けてくれませんかぁー?」
子馬の尻尾に絡まった少女メイド・タターが、顧問秘書のすぐ後ろで助けを求めている。
「きゃぁっ、私も絡まっちゃったぁー♪」
こともあろうか子供・レイダが、内緒の話をするおれと秘書の間に――割って入ってきやがった。
とんでもなく邪魔だが、相手をするといつまでも話が進まねぇから、この際放っとく。
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