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4:龍撃の学院
514:ギ術開発部研究所、INTシガミーふたたび
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「滅せよ♪ 滅せよ♪」
見よう見まねの、刀印を結ぶレイダ。
「滅せよ? 滅せよ?」
背後の二人へ「おいで」と、手招きしてから――
組んだ手を鼻に、押し当てるビビビー。
「滅せよゥ? 滅せよゥ?」
顎の下で両手を、にぎにぎするゲイル。
「滅すを? 滅すを?」
長さ的には1シガミーの魔法杖を、顔のまえでつかみ――
やたらと先端が太いそれを、がらがらぐわらんと鳴らすミラカルカ。
どうなってやがんだ、あのにんじんの尻尾みてぇな杖わぁ?
やかましい子供たちが、来た道を戻っていく。
途方に暮れる大人連中を、残して。
§
「やっぱり、轟雷を着るかぁ」
皆うんうん唸っちまって、地上へ戻る足取りが重い。
けどなぁ、「おい、頓知の効きはどうせ、お前の足下にも及ばねぇんだろう?」
たしかおまえの演算単位が5で、轟雷が1ってやつ。
なら最初から迅雷が、すとんと――「答えを導き出せや」
ふぉん♪
『>演算単位は大規模な試行数を誇りますが、その精度は入力モデルの正当性に左右されるきらいがあります』
はは、そうやって煙に巻こうったって、そうはいかねぇぞ。
説明しろや。
「轟雷ヲ着てくだサい。ソの方が、よろシいかと思われマす」
「もう一個の木の実が、どこから来たのか? そんなのがおれに、わかるわけが有るめぇよ」
ふぉん♪
『解析指南>INTシガミーの使用を推奨します』
はぁあぁあぁー? なんだそいつぁー?
ふぉん♪
『>レイド村で、轟雷を着て行った禅問答と思われ』
§
謎が尽きることは無さそうなので、倉庫一階横。
演習場の隅で――カヒュゥーイ――がちん♪
汎用強化服10号改を着た。
「みゃにゃぁー。にゃごみゃ♪」
片腕が模様違いの化け猫が、両手を使って――ドゴズズゥゥン!
さらに鉄鎧である轟雷を取りだし、背中から潜り着込む。
カヒューィ、ガゴゴンッ!
隔壁が閉じられ――ヴュパパパパパパパパッ♪
積層化された巨大モニタが、目のまえに広がった!
「よし来い迅雷、考えるぜ――ニャァ♪」
ガッシャ、ガッキュゥーン♪
上空から降りてきた、爪楊枝みてぇな相棒をつまんだ。
ヒュヒュヒュィィィーン、チチチィーピピッ、カチカチカチ♪
研ぎ澄まされていく、轟雷。
わわわわっわいいいいわい♪
がややややっやいやややい♪
ニゲルが言うところの〝鉄鎧鬼〟を、初めて見た学者方たちに、まとわり付かれる。
落ちて怪我されても、面倒だからなー。
「一旦ちょっと離れとけ今、座ってやるから――ニャァ♪」
ドゴズゥン――ガッキュゥゥゥゥゥン♪
この体にも慣れたから、胡座をかけるようになった。
「えぇえぇっ――プラモが胡座をかいてるっ!? 何その驚異の可動域ゥー!?」
学者方を押しのけ、轟雷の膝に乗るニゲル青年。
轟雷の視界はすぐに、よじ登る青年や学者方の手足でふさがれた。
まあいいや、考える邪魔にはならん。
「ええと……まずリオレイニアの魔法が暴発し、三日三晩央都を照らし続けた――ニャァ♪」
体を揺すると危ねぇから、微動だにせずに――
考えを巡らせていく。
「その光は、あの木の実を封印してた宝箱の鍵を開け放った――ニャァ♪」
思考に呼応するように積層化画面が、めまぐるしく色や形を、変えていくが――
それは煩わしく感じず、おれの頭が冴え渡る手助けをしてくれている。
ヒュパパパュゥ♪
央都の地図が立体的に表示され、央都猪蟹屋地下・対魔王結界中心から――ビロロロロォォ♪
矢印がまっすぐ伸びていく。
ビロロロロォォ♪
ギ術開発部第一倉庫、龍の巣の地底湖を過ぎ――
一本線はドコまでもまっすぐに、北上を続ける。
ヒュパヒュヒュパァ――地図が縮小され、表示範囲が拡大されていく。
央都北北東。荒れた土地の更に先に有る湿地帯。
ぽこん♪
『ネネルド村』を表すアイコン表示が出現した。
こうしてみるとかなりの距離が有るのに、本当に一直線に繋がってる。
「――その後、木の実は壁を壊し地中を突き進み、龍の巣へ到達したニャァ♪――」
声をした方を視ると――ヴュァ。
倉庫一階で、収納魔法具から取りだした戦利品(?)を仕分けする猫頭の顧問氏だった。
辺りの声は全部拾って、全部を聞き分けられるが――
耳栓(ケモノ耳用)を通して話された言葉は、優先的に轟雷の耳に届いた。
「ミャッドか、その耳栓はどうした――ニャァ?」
「――イオノファラーさまにもらったんだニャァ♪ 人耳のを100個と、ケモノ耳のを50個もニャァ♪――」
迅雷が作った〝カナル型イヤホン〟は、猪蟹屋で大活躍の魔法具だ。
獣人も付けられるが、落ちないように獣の耳を軽くはさむ必要があった。
長く付けていると痛くなるのが評判が悪かったので、無人工房で量産するときに改良した。
改良型なら耳栓から伸びたマイクが、とおくなることもないから――
「ぃやったニャァ♪ 嬉しいニャァ♪」
かわいい、かわいい、うるせぇ!
耳元でわめくなぁ――あ?
些末なことに気を取られていても、轟雷の思考は止まらず。
ネネルド村の森のようなアイコンを、気に留めた。
「泥濘におちると巨木化する……んだとしたら、龍の巣の地底湖へ落ちて巨木化しなかったのは何故だ?
水には落ちなかったのか?
これはあとで飛ばしっぱなしの、城の城壁上空からのドローン映像を見て確認し――ヴュパッ♪
パパパパパパッ――ヴューゥン♪
上空からの映像が勝手に映し出され、拡大された。
真っ暗な画面の輝度が調節され、昼間のような映像になった。
「んぅう? 地底湖には落ちてねぇのか」
果実の勢いは凄まじく――その事実を一瞬で確認した。
お湯を掛ければ炎を吹き出し、水に沈めれば巨木を生やす。
そしてそれは、封印の宝箱から飛び出した木の実の他に――もう一個ある。
「ネネルド村を壊滅させた木の実を、投げた奴は誰だ――ニャァ?」
リオレイニアが放った央都大結界で、たまたまその辺にも埋まってた木の実が――
同じ軌道で弾き飛ばされでも、したっていうのか?
轟雷を着てもなお、尽きない謎。
やはり龍の名を冠したもんは、一筋縄じゃいかねぇ。
ふぉふぉん♪
『解析指南>INTタレット迅雷を、最大長まで伸ばしてください』
ぐさりっ、ガッキュゥーン♪
上空から降りてきた、爪楊枝みてぇな相棒が――
轟雷の複合アンテナの隙間に、突き刺さった!
カシャカシャカシャカシャ、シュッカァァン――――!!!
細く長い針金のように、独古杵が伸びた瞬間。
「そもさん――ニャァ!」
そんな言葉が、口をついて出た。
§
〝迅雷が轟雷の長さまで伸びる〟。
それはつまり轟雷、ひいてはINTシガミーが――
迅雷のサブシステムとして機能したということで――
その演算単位は、計測不能なほどに膨れあがった。
「説破デす、INTシガミー)」
てなわけで、おれの交感神経系が唸りを上げ――ヴォヴォオヴォッヴォン。
積層化された画面の一画が、奥行きを増し――ガッキュゥゥーン、ガシィン♪
おれの鉄鎧の体が、ひとりでに刀印を結んだ。
最奥の0番レイヤーに描画される――理想の真円。
〝アドレナリン受容体へのハッキング〟ってのは二回目だが――轟雷を着てもまるでわからん!
ピィ――――――――♪
生命反応が赤に染まる。
「全方位、全法位ィ――ニャァ♪」
ぐぎぎぎぎっ――――体の震えが止まらねぇ!
ふぉふぉふぉふぉふぉぉん♪
『龍(火炎ひいては神木)の殲滅方法:解析結果1/
灼熱の果実と巨木の関連性を発見。
解析結果2/
>フォチャカ・モソモソが放つ〝炎曲の苗木〟との親和性を発見。
>B級冒険者パーティー〝深遠の囁き〟の招喚を提案。
>〝炎曲の苗木〟を修得したマジックスクロールの重要性を算出。再入手を提案』
前回同様、真言を唱えるまでもねぇ――轟雷は吠えた。
「フッカを、〝深遠の囁き〟おぉー、今すぐ呼べやぁ――――――――ニャァ!!!」
大声に驚いた学者方とニゲルたちが、ぼとぼととと落ちた。
見よう見まねの、刀印を結ぶレイダ。
「滅せよ? 滅せよ?」
背後の二人へ「おいで」と、手招きしてから――
組んだ手を鼻に、押し当てるビビビー。
「滅せよゥ? 滅せよゥ?」
顎の下で両手を、にぎにぎするゲイル。
「滅すを? 滅すを?」
長さ的には1シガミーの魔法杖を、顔のまえでつかみ――
やたらと先端が太いそれを、がらがらぐわらんと鳴らすミラカルカ。
どうなってやがんだ、あのにんじんの尻尾みてぇな杖わぁ?
やかましい子供たちが、来た道を戻っていく。
途方に暮れる大人連中を、残して。
§
「やっぱり、轟雷を着るかぁ」
皆うんうん唸っちまって、地上へ戻る足取りが重い。
けどなぁ、「おい、頓知の効きはどうせ、お前の足下にも及ばねぇんだろう?」
たしかおまえの演算単位が5で、轟雷が1ってやつ。
なら最初から迅雷が、すとんと――「答えを導き出せや」
ふぉん♪
『>演算単位は大規模な試行数を誇りますが、その精度は入力モデルの正当性に左右されるきらいがあります』
はは、そうやって煙に巻こうったって、そうはいかねぇぞ。
説明しろや。
「轟雷ヲ着てくだサい。ソの方が、よろシいかと思われマす」
「もう一個の木の実が、どこから来たのか? そんなのがおれに、わかるわけが有るめぇよ」
ふぉん♪
『解析指南>INTシガミーの使用を推奨します』
はぁあぁあぁー? なんだそいつぁー?
ふぉん♪
『>レイド村で、轟雷を着て行った禅問答と思われ』
§
謎が尽きることは無さそうなので、倉庫一階横。
演習場の隅で――カヒュゥーイ――がちん♪
汎用強化服10号改を着た。
「みゃにゃぁー。にゃごみゃ♪」
片腕が模様違いの化け猫が、両手を使って――ドゴズズゥゥン!
さらに鉄鎧である轟雷を取りだし、背中から潜り着込む。
カヒューィ、ガゴゴンッ!
隔壁が閉じられ――ヴュパパパパパパパパッ♪
積層化された巨大モニタが、目のまえに広がった!
「よし来い迅雷、考えるぜ――ニャァ♪」
ガッシャ、ガッキュゥーン♪
上空から降りてきた、爪楊枝みてぇな相棒をつまんだ。
ヒュヒュヒュィィィーン、チチチィーピピッ、カチカチカチ♪
研ぎ澄まされていく、轟雷。
わわわわっわいいいいわい♪
がややややっやいやややい♪
ニゲルが言うところの〝鉄鎧鬼〟を、初めて見た学者方たちに、まとわり付かれる。
落ちて怪我されても、面倒だからなー。
「一旦ちょっと離れとけ今、座ってやるから――ニャァ♪」
ドゴズゥン――ガッキュゥゥゥゥゥン♪
この体にも慣れたから、胡座をかけるようになった。
「えぇえぇっ――プラモが胡座をかいてるっ!? 何その驚異の可動域ゥー!?」
学者方を押しのけ、轟雷の膝に乗るニゲル青年。
轟雷の視界はすぐに、よじ登る青年や学者方の手足でふさがれた。
まあいいや、考える邪魔にはならん。
「ええと……まずリオレイニアの魔法が暴発し、三日三晩央都を照らし続けた――ニャァ♪」
体を揺すると危ねぇから、微動だにせずに――
考えを巡らせていく。
「その光は、あの木の実を封印してた宝箱の鍵を開け放った――ニャァ♪」
思考に呼応するように積層化画面が、めまぐるしく色や形を、変えていくが――
それは煩わしく感じず、おれの頭が冴え渡る手助けをしてくれている。
ヒュパパパュゥ♪
央都の地図が立体的に表示され、央都猪蟹屋地下・対魔王結界中心から――ビロロロロォォ♪
矢印がまっすぐ伸びていく。
ビロロロロォォ♪
ギ術開発部第一倉庫、龍の巣の地底湖を過ぎ――
一本線はドコまでもまっすぐに、北上を続ける。
ヒュパヒュヒュパァ――地図が縮小され、表示範囲が拡大されていく。
央都北北東。荒れた土地の更に先に有る湿地帯。
ぽこん♪
『ネネルド村』を表すアイコン表示が出現した。
こうしてみるとかなりの距離が有るのに、本当に一直線に繋がってる。
「――その後、木の実は壁を壊し地中を突き進み、龍の巣へ到達したニャァ♪――」
声をした方を視ると――ヴュァ。
倉庫一階で、収納魔法具から取りだした戦利品(?)を仕分けする猫頭の顧問氏だった。
辺りの声は全部拾って、全部を聞き分けられるが――
耳栓(ケモノ耳用)を通して話された言葉は、優先的に轟雷の耳に届いた。
「ミャッドか、その耳栓はどうした――ニャァ?」
「――イオノファラーさまにもらったんだニャァ♪ 人耳のを100個と、ケモノ耳のを50個もニャァ♪――」
迅雷が作った〝カナル型イヤホン〟は、猪蟹屋で大活躍の魔法具だ。
獣人も付けられるが、落ちないように獣の耳を軽くはさむ必要があった。
長く付けていると痛くなるのが評判が悪かったので、無人工房で量産するときに改良した。
改良型なら耳栓から伸びたマイクが、とおくなることもないから――
「ぃやったニャァ♪ 嬉しいニャァ♪」
かわいい、かわいい、うるせぇ!
耳元でわめくなぁ――あ?
些末なことに気を取られていても、轟雷の思考は止まらず。
ネネルド村の森のようなアイコンを、気に留めた。
「泥濘におちると巨木化する……んだとしたら、龍の巣の地底湖へ落ちて巨木化しなかったのは何故だ?
水には落ちなかったのか?
これはあとで飛ばしっぱなしの、城の城壁上空からのドローン映像を見て確認し――ヴュパッ♪
パパパパパパッ――ヴューゥン♪
上空からの映像が勝手に映し出され、拡大された。
真っ暗な画面の輝度が調節され、昼間のような映像になった。
「んぅう? 地底湖には落ちてねぇのか」
果実の勢いは凄まじく――その事実を一瞬で確認した。
お湯を掛ければ炎を吹き出し、水に沈めれば巨木を生やす。
そしてそれは、封印の宝箱から飛び出した木の実の他に――もう一個ある。
「ネネルド村を壊滅させた木の実を、投げた奴は誰だ――ニャァ?」
リオレイニアが放った央都大結界で、たまたまその辺にも埋まってた木の実が――
同じ軌道で弾き飛ばされでも、したっていうのか?
轟雷を着てもなお、尽きない謎。
やはり龍の名を冠したもんは、一筋縄じゃいかねぇ。
ふぉふぉん♪
『解析指南>INTタレット迅雷を、最大長まで伸ばしてください』
ぐさりっ、ガッキュゥーン♪
上空から降りてきた、爪楊枝みてぇな相棒が――
轟雷の複合アンテナの隙間に、突き刺さった!
カシャカシャカシャカシャ、シュッカァァン――――!!!
細く長い針金のように、独古杵が伸びた瞬間。
「そもさん――ニャァ!」
そんな言葉が、口をついて出た。
§
〝迅雷が轟雷の長さまで伸びる〟。
それはつまり轟雷、ひいてはINTシガミーが――
迅雷のサブシステムとして機能したということで――
その演算単位は、計測不能なほどに膨れあがった。
「説破デす、INTシガミー)」
てなわけで、おれの交感神経系が唸りを上げ――ヴォヴォオヴォッヴォン。
積層化された画面の一画が、奥行きを増し――ガッキュゥゥーン、ガシィン♪
おれの鉄鎧の体が、ひとりでに刀印を結んだ。
最奥の0番レイヤーに描画される――理想の真円。
〝アドレナリン受容体へのハッキング〟ってのは二回目だが――轟雷を着てもまるでわからん!
ピィ――――――――♪
生命反応が赤に染まる。
「全方位、全法位ィ――ニャァ♪」
ぐぎぎぎぎっ――――体の震えが止まらねぇ!
ふぉふぉふぉふぉふぉぉん♪
『龍(火炎ひいては神木)の殲滅方法:解析結果1/
灼熱の果実と巨木の関連性を発見。
解析結果2/
>フォチャカ・モソモソが放つ〝炎曲の苗木〟との親和性を発見。
>B級冒険者パーティー〝深遠の囁き〟の招喚を提案。
>〝炎曲の苗木〟を修得したマジックスクロールの重要性を算出。再入手を提案』
前回同様、真言を唱えるまでもねぇ――轟雷は吠えた。
「フッカを、〝深遠の囁き〟おぉー、今すぐ呼べやぁ――――――――ニャァ!!!」
大声に驚いた学者方とニゲルたちが、ぼとぼととと落ちた。
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