滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

５１０：ギ術開発部研究所、第一倉庫二階？

「――王家おうけというか、王政おうせいに異を唱となえる勢力せいりょくを制圧せいあつするのは容易たやすいニャァ」
　そうなの？
　収納魔法具しゅうのうまほうぐの中なかから轟雷ごうらいを出そうとしたら、ミャッドが話はなし始はじめたから聞く。

「けど、それをしてしまっては――魔王討伐まおうとうばつのために締結ていけつされた、央都おうとラスクトール自治領じちりょうとしての正義せいぎが……永遠えいえんに失うしなわれます」
　ミャッドと違ちがって、青あおい顔かおのマルチヴィル。

　だろう、それだぜそれ！
　白いのルガを助たすけるためとはいえ、本丸・・のど真ん中なかで城攻めまがい・・・・・・のことを既すでにしてるんだ。
　そーいう青あおい顔つらをして、事ことに当たるべきだろうがよ！

　そーいう意味いみじゃ魔導騎士団まどうきしだん団長だんちょうたちの、一糸乱いっしみだれぬ脱兎だっとの如ごとき逃げ足あし。
　情なさけねぇが、あれが正ただしい。

「私わたくしに提案ていあんがあります」
　青あおい顔つらの秘書ひしょが、進すすみ出た。
　いつも顧問氏ミャッドのうしろに控ひかえていた、彼女かのじょにしては珍めずらしい。

　どさり。
　彼女ひしょが置いたのは随分ずいぶんと古ふるい、一冊いっさつの本ほんだった。

　　　§

「コチラは簡単かんたんに説明せつめいすると、発掘はっくつの指針ししんとなる古文書こもんじょのひとつなのですが――」
　ぱらぱらと慎重しんちょうに、めくられる古文書それ。

「発掘はっくつって何なんだぜ？」
　仕事柄しごとがら、石いしや鉄てつや土つちを掘りに行く・・・・・ことがある、鍛冶工房長かじこうぼうちょうノヴァドが尋たずねた。

「我々われわれ、魔導騎士団まどうきしだん魔術まじゅつ研究所けんきゅうじょギ術開発部じゅつかいはつぶは、魔導騎士団まどうきしだんの装備そうびや央都防衛おうとぼうえいの魔法具まほうぐや設備せつびを日々開発ひびかいはつしていますが――」
　青あおい顔かおを髭男ノヴァドへ向ける、顧問秘書マルチヴィル。

「――そのうちの何割なんわりかは太古たいこの時代じだいの土壌どじょうから、発掘はっくつされた物ものなのニャァ♪」
「みゃにゃぎゃみゃー♪・」
　たぶん、そうだな。
　その中なかのひとつ・・・が〝おにぎりおまえ〟だ。

「この古文書こもんじょには太古たいこの神かみから神託したまわった、悠久ゆうきゅうの発掘魔法具アーティファクトの埋蔵場所まいぞうばしょが書かれているのですが――」
　ぱらぱら、ぺらりとめくられる古文書こもんじょ。

「その中なかには既に発掘した・・・・・・とされる☑チェックマークが書かれている物ものもあるニャァ♪」
　顧問氏こもんしがぺたりと、手を置いた部分ぶぶんには――『発掘済☑』の図案マーク。

「この〝☑建国《けんこく》の際さいに龍を封印した・・・・・・とされる宝箱たからばこ〟を調しらべれば、今回こんかいの事件じけんの解決かいけつの糸口いとぐちになるのでは、というのが私わたくしの提案ていあんです」
　どうやら、初代しょだいラスクトール王おうが龍を鎮めた・・・・・太古たいこのアーティファクトが、今も・・宝物庫そうこに眠ねむっているらしい。

　魔導騎士団まどうきしだんの敷地しきちの、おれたちが間借まがりしている側がわとは反対はんたい。
　王女ラプトルのゴーレム工房こうぼうに、ほど近ちかいあたり。
　つまり城壁じょうへきを挟はさんで、壊滅かいめつした央都猪蟹屋おうとししがにやがあるあたり。

　それほど大おおきくは無い、魔導騎士団まどうきしだん一号倉庫いちごうそうことやらに行き着いた。

　　　§

　龍撃りゅうげきの戦たたかい。建国けんこくの礎いしずえとなった戦たたかい。
　そのとき封印ふういんに使つかわれた宝箱たからばことやらで、巨木に備えよう・・・・・・・って腹はらなのはわかった。

「何なにもねぇじゃんか？」
　倉庫そうこの中なかには、木箱きばこひとつ置かれてなかった。
「こっちだニャァ」
　すててててと隅にある階段へ・・・・・・・駆けていくミャッド。
　そのあとを追い、おれたちは二階にかいへ上がる。

「何なんだぜありゃ!?」
　何なんだぜありゃ？
　さっき一階隅いっかいすみの階段かいだんを上がるとき一階の天井には・・・・・・・、あんな穴は・・・・・空いてなかったぞ・・・・・・・・。

「この下したニャァ♪」
　不思議ふしぎがるおれたちを置いて、顧問氏ミャッドは降りる階段・・・・・へ飛びこむ。
　秘書ひしょその他魔導騎士団たまどうきしだん所属しょぞくの連中れんちゅうが次々つぎつぎと、天井ゆかの厚あつみを越える・・・奥行きかいだんを降りていく。

「しゃぁねぇ、おれに続つづけやぁー！」
　決死けっしの覚悟かくごで階段かいだんを降りると、下・にあるはずの空からっぽの一階いっかいでは無く、棚たなだらけの倉庫部屋そうこべやが有った。

　　　§

「まだ先さきが、あんのかぁ？」
　はぁひぃ。
「われわれも、ここまで降りてきたのは初はじめてだから確証かくしょうはニャィが――」
　ニャフフゥ。

「パズル大好だいすき！・」
　と豪語ごうごする、根菜さまいおのはらの手先てさきの器用きようさに助たすけられていた。
　階段かいだんや通路つうろをふさぐ鉄格子てつごうしには、歯車はぐるまが付いた板いたが取り付けられていて、下したへ降りるには――
　まるで〝おにぎりの中身なかみ〟を組み合わせたときみたいに――
　〝光ひかる所ところを素早すばやく押していくと、最後さいごに二カ所光にかしょひかるからそれを同時どうじに押す・・〟みたいなことを、しないといけなかった。

　浮かぶプロジェクション球ＢＯＴに乗った根菜こんさいが、球たまから伸びた機械の腕プロダクトアームで――
　コカカカカカッ……コツコツコツコツ……スッタァァン♪
　ガッチャン、ギャリガリカチカチカチッ――――ガコォーン！

　そんな頓知仕掛とんちじかけを解くこと、六むっつ目。
　ふぉん♪
『＞二階の階段から数えて、地下五階になります』

　ぽぅわぽぽぅわわっ――！
　灯あかりの魔法具まほうぐが、ひとりでに灯ともされ――
　現あらわれたのは、ソコソコの広ひろさの部屋へやだった。

　フカフカな座布団ざぶとんが張りついた、寸足すんたらずの長椅子よつあし。
　そのまえには、歪ゆがんだ大机おおづくえが置かれている。

「あらぁん、これわぁん？・」
　五百乃大角いおのはらが近ちかづくと――ガッキョン♪
　大机そのの天板てんばんが、大口おおぐちを開けた二枚貝にまいがいのように開ひらく。

「「きゃぁぁぁぁっ!?」」
　子供こどもたちが逃げていく。

　ヴォヴォヴォォォォォゥン♪
　輝かがやく光ひかりを周囲しゅういに放はなつ、浮かぶ球いおのはら。
　その球たまを覆おおい隠かくすように、姿すがたを現あらわしたのは――
　五百乃大角いおのはらの生身の姿・・・・。

　空中ちゅうに映うつしだされた人ひとの身は――
　いつだか夜会やかいで、浮かぶ球たまが着て見せた・・・・・ドレス姿すがた。
　ああして普通ふつうの人ひとのように歩あるいてると、まるで美の女神めがみのように見えないことも無い。

　五百乃大角いおのはら（映像えいぞう）が長椅子ながいすに座すわると――がったん♪
　歪ゆがんだ大机おおづくえの手前側ながいすがわにも、細長ほそながい口くちが横に・・開ひらいた。
　ズラリと並ならぶ白しろと黒くろの歯を、むき出しにした――
　超古代ちょうこだい、神代しんだいの悠久ゆうきゅうの時代じだいの、そのアーティファクト。

「召喚しょうかんの塔とうにあった祭具さいぐに、似ていますららぁぁん？」
　召喚しょうかんの塔とうにあっただぁ？

「ピアノじゃんか？」
　とはニゲルの言葉ことば。
　青年かれが知ってるってこたぁ、日の本もとの道具どうぐだ。
　但ただし、おれが知らない――おれが死んだ・・・後あとのもの。

　ふぉん♪
『＞はい。これはグランドピアノと呼ばれる楽器のようです。猪蟹没後１８１年のちに、日の本とは別の国で完成しました』