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4:龍撃の学院

506:魔導騎士団寮、魔神ルガレイニア対策本部

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「リカルルさまわぁー、〝対策本部たいさくほんぶ〟が好きだなー」
 長机ながつくえすわる、おれたち。
 そのくび一斉いっせいに、大講堂入だいこうどういぐちへ向けられた。

 『魔神ルガレイニア対策本部』という立て看板いたをまえに、ほくそ笑むリカルル。
 カツコツカツコツカツ――――コツーン!
 颯爽さっそう壇上だんじょうすすみ出る、次期じきコントゥル辺境伯へんきょうはく領当主りょうとうしゅ

本日ほんじつみなさまにおあつまりいただきましたのは、現在げんざい央都おうと恐怖きょうふのどんぞこたたき落としている、ほかでもないれいアレ・・たいする処遇しょぐうについて議論ぎろんを交わすためでしてよ♪」
 ふふんとこしに手。家宝かほうである甲冑一式かっちゅういっしき格納かくのうされた、収納魔法具しゅうのうまほうぐあか)がギラリとかがやいている。

 アレだけの大破壊工作・・・・・をしてきたばかりだってのに、まるでわるびれるところがねぇ。
 あのきもふとさには、すこし感心かんしんするぜ。

「では現在げんざい逃走中とうそうちゅうの、魔神まじん再来さいらい再来さいらい再来さいらい再来さいらいにして――」
 さっき看板かんばんを立て、開けはなしたままの入りぐちへ向かって――手を伸ばすリカルルじょう

「〝再来さいらい〟が……ひそひそ……一個多いっこおおいよね?」
 子供レイダめ、また余計よけいなことを言うな。

 カツコツカツコツン――壇上だんじょうへ怖ず怖ずと上がった、その人物じんぶつ
 猪蟹屋装備ししがにやそうびしろいメイドふくは、見た目は普通ふつうのと変わらないが――
 黒頭巾くろずきんうえからかがみ眼鏡めがねを掛けているから、風体ふうていとしては相当怪そうとうあやしい。

「ど、どうも、魔神まじん……? ルガ……レイニアです。みなさまどうぞよしなに?」
 カンペを棒読ぼうよみの、魔神ルガレイニアさん・・・・・・・・・・あらわれた。

 つい昨日きのうまで、女神の生まれ変わりイオレイニアとか言われて……たのになぁ。
 それでもカンペをエプロンのポケットにしまい――
 こしを落とし、片足かたあしうしろに引く――それだけの仕草しぐさ

 それは彼女かのじょの身のあかし、たり得た。
 ぱちぱちぺちぺちり――――まばらな拍手はくしゅまでもらってる。

「ぎゃっ――魔神まじん!?」
魔神まじんって魔王まおう――!?」
 ざわわわーん、がやややーん!
 それでもやっぱり、あとから駆けつけた学者方がくしゃかたなんかは、すこし、ざわついてるか。
 初見しょけんはどうしてもおどろく、必要がある・・・・・らしいぜ。

「それって、このあいだ緊急配備きんきゅうはいびした〝対魔王結界たいまおうけっかい〟と関係かんけいが?」
 めざとい学者方がくしゃかたが、そんなことを言い当てる。
 そうだぜ、超関係ちょうかんけいがあるぜ。
 はなし前後ぜんごが、ぎゃくだがなぁ!

 星神の奴カヤノヒメをネネルド湖へ置いてきて、良かったかも知れねぇ。
 これほど面白おもしろ……雑然ざつぜんとした状況じょうきょうに、やつを置くと――
 守銭奴気味しゅせんどぎみの血がどれほどさわぐか、予測よそくが付かんからな。

   §

 さっそく議論ぎろんはじめた学者方がくしゃかたたちは、ことさら優秀ゆうしゅうだった。
 いつもおれたちがやってた猪蟹屋会議ししがにやかいぎとは、雲泥うんでいの差。
 物事ものごと次々つぎつぎと〝はこおさまる〟ように、整頓せいとんされて行きやがる。

直上ちょくじょうたまご……いや巨木きょぼく果実かじつがある場所ばしょで、破邪はじゃ高等魔術こうとうまじゅつ使つかうと果実かじつ落ちてくる・・・・・。ここまでは良いかニャァー?」
 議論ぎろんをまとめるのは、学者がくしゃどものおさである顧問氏ミャッド

 カリカリカリッ――ピッ♪
 猪蟹屋おれ支給しきゅうした黒板タブレットを、即使そくつかいこなす顧問秘書マルチヴィル
 その原因たてじく結果よこじく相関図チャート背後はいご黒板こくばんにも、おおきくうつし出されている。

「じゃぁ、ひょっとしてネネルドむら巨木きょぼくは、むらだれかが破邪はじゃ高騰魔術こうとうまじゅつ使つかって――」
 がやややや。
「――タネとなる果実かじつを、撃ち込まれた・・・・・・!?」
 わやややや。
 白熱はくねつする議論ぎろん

 ポポポポッ――チチチッ♪
 ヒュパパパ――ピィー♪
 教卓きょうたくうえひろげた黒板タブレット特大とくだい)へ、学者がくしゃどもの手が伸びる。
 あれよという間に、ネネルドむらへ飛んでいく果実たね軌道みちが――
 割り出された。

「いやねらわれたのは、飛行中ひこうちゅう火龍かりゅうゲイルだぜ?」
 おれも知ってることは、どんどんくちはさんでおく。
 そういやゲイル少年しょうねんは、どこ行った?

「じゃぁそのとき、リオレイニアさん……魔神まじんルガレイニアさんは、どこに居たんですか?」
 フワフワモコモコの巻き毛が、揺れた。
 ルリーロの山菜魔法杖ルードホルドみたいな双角そうかくを、ギュッとこちらへ向ける頭突き女モゼル

執務官しつむかんにも言いましたが、央都猪蟹屋おうとししがにやに居ました」
 央都側おうとがわから果実たまが撃ち込まれたことは、うたがいようはない。
 それでもねらわれた空路みちは、央都北側おうときたがわ城壁じょうへきを越えた先にある・・・・のだ。

 ピッ――ばこん♪
 黒板こくばん地図ちずが、うつし出された。
 地図上ちずじょうを飛んでいく、弓形ゆみなり果実かじつ

 央都猪蟹屋おうとししがにやから城壁じょうへきを越えて、撃ち出された場合ばあい
 その果実たま到底とうてい、ネネルド村までは届かず――ひゅぼがぁぁんと途中とちゅうで落ちた。

「じゃあそろそろべつの、アプローチをしようニャァ♪」
 そう顧問氏ミャッドが切り出したのは――

結局けっきょくこの〝灼熱しゃくねつほのおを噴き出す果実かじつ〟から、どうやって巨木きょぼくが生えしげったのかニャァ?」
 そりゃネネルドむらやつらに、真っさきに聞いたが――

「ドーンて揺れたら、ズゴーンと生えてたって言ってたよね」
 子供ビビビーくちはさんだ。

巨木きょぼくねぇーん。魔王城まおうじょうからも見えたくらいの、あの大きな木・・・・おな植物しょくぶつかんがえるのがぁー妥当だとうよねぇーん?」
 ビビビーの手のひらのうえ寝転ねころがってた御神体ごしんたいさまも、くちはさむ。

 召喚しょうかんとうだかがあった場所ばしょ
 マナや地下水ちかすい源流げんりゅうらしい、今思いまおもえば神聖しんせいな地。
 あまりソッチへはなしを、持って行くなよ。
 あれを壊滅かいめつさせたのは、わざとじゃねぇがまさに――
 猪蟹屋おれたちだからな。

「けど、〝火を吐く木〟なんて燃えちまうに決まって――あっ!」
 はなし逸らそうと・・・・・したら、あることに思い至った・・・・・

 〝火を吐く木〟ではないが〝火に強い木・・・・・〟なら、心当こころあたりがあったのだ。
 火山ダンジョンかりゅうのねどこおもむいた、魔王城まおうじょうクエスト参加者さんかしゃが、かおを見合わせる。

「フッカの火を消す木・・・・・っ!」
 今彼女いまかのじょはガムランちょうで、温泉宿おんせんやど手伝てつだいをしてると聞いている。
 いそしいだろうなぁ。
 それにおれたちが知りたいのは、やっぱり――
 〝火から生いしげる木〟じゃなくて。
 ほのおを吐く果実たねから、〝木が生える仕組み・・・・・・・・〟なわけで。

 あれ、どういうわけだか……まさに。
 〝フッカのスキルだか、高等魔術こうとうまじゅつだかのはなしをしてる〟気がしてきた気がしないでもなくね?

「けど下手へたに呼びつけたら今度こんどわぁ、ネネルド村壊滅むらかいめつ犯人はんにんにされそうな気が……してきたぜ」
 王家おうけ蹴落とそう・・・・・としてる連中れんちゅうの、はらづもりからして――
 ほのおから大木たいぼくなんて生やしたが最後さいご、言いがかりを付けないわけがない。

「あら、それ良いですわねっ♪ 央都おうとを火のうみに変え、最果さいはてのむら壊滅かいめつさせた――猪蟹屋一味ししがにやいちみ!」
 すてきっ♪ じゃねぇーだろうが!
 このガムランのひめさんわぁ、一体何いったいなにを言い出したがったんだぁ――!?
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