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4:龍撃の学院

495:ネネルド村奇譚、奇祭タコゥパ準備開始

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「タコパ、タコパァッ
 おれたちはおど根菜こんさいに、朝飯あさめしも抜きではたらかされていた。

「おい、シガミー。タコゥパってなんなんだぁー!?」
 こえを張る工房長こうぼうちょう――ゴガガァン!
 金槌かなづちを振るうおとがうるせぇが、工房長かれ五百乃大角いおのはらが「つくってぇ♪」とねだった……なんだっけ?

 ふぉん♪
『>鋤鍋の一種、調理用の鉄板です』
 そう、そんなやつをつくらされてるのだ。

 文句もんくは――ゴガガァァン!
 心《こころ》のなかだけにとどめて――ゴゴッゴガガァァン!!
 うるせぇっ――まるで火縄ひなわ大筒おおづつだぜ!

「知らんがぁ蛸足たこ使つかっためしを、ひたすら喰う奇祭きさいだってはなしだぜぇー!?」
 可憐かれんたたずまいをぶちこわす――横柄おうへい口調くちょう大股開おおまたびらき、気の抜けた表情かお
 まさに残念ざんねん権化ごんげ
 猪蟹屋店主ししがにやてんしゅにして、じつLVレベル100カンスト冒険者ぼうけんしゃの――
 シガミー・ガムラン。

 ただの・・・シガミーでは登録上とうろくじょう厳密げんきつには都合つごうわるいということで――
 生まれ落ちた最果さいはての地、ガムラン・・・・ちょうの名をいただいた。
 ちなみに、ただの・・・レイダ(と言いたがる子供こども)には、〝クェーサー〟という立派りっぱ家名かめいがある。

 そういや、おれとおなじくただの・・・タターだった彼女かのじょなん家名かめいを、付けたんだろうな。
 日の本勢もとぜいのルリーロには、立派りっぱなコントゥル家という家名かめいが有り。
 ニゲルだって、西計にしかずなんていう家名持かめいもちだ。
 五百乃大角いおのはらにすら、なんだっけ?

 ふぉん♪
『人物DB>斧原イオノ
      シンシナティック・ニューロネイション現行プレイヤー
      牛霊正路御前大学大学非常勤講師』
 そうだ斧原おのはらだ。子供がきみたいな内面なかみ――
 美の女神いおのはらとはべつの、神々かみがみとしての側面あのやろうには――
 またべつ肩書かたがきがあって……なげぇ。

 ふぉん♪
『人物DB>美の女神イオノファラー
      イオノフ教開祖
      ガムラン町食育理事会代表取締役
      猪蟹屋御神体
      ニゲル専用恋愛相談所所長
      猪蟹屋筆頭味見役
      タコヤキパーティー主催者』
 美の女神こっち肩書かたがきは……多過おおすぎだろ。
 消せ消せ邪魔じゃまだ、出さんで良い。

美の女神イオノファラーさまにも、色々いろいろあるのかも知れねぇが……おそろしいぜぇー!」
 ガタブルガタブルルと身をすくませる、筋力きんりょく権化ごんげ

「ああまったく、世もすえだぜぇー!」
 どどどどだだだだっ――――!
 鍛冶仕事ノヴァドほどではないが、おれもかなりの騒音そうおんかなでている。
 どこどこだかだかっ――――!
 くだん蛸足たこ細切うすぎりにして、れいしろ大根だいこんたたいて伸ばしているのだ。

「あんたたち! くちうごかさずにぃ、手ぇおぉーうごかしなさぁいな
 厨房おれノヴァド作業台いおのはら
 三人おれたちはそれぞれ、間仕切まじきりの向こうで仕事しごとをしているが――
 まどとびらも開いてるから、大声おおごえを出せは聞こえる。

「そう言うおまえさまは、なにをしてるんだぜぇー!?」
 どどどどごごごごごっ――うな大根あおくび
「そぉーだぁぜぇぇぇぇっー!?」
 ガガァーン、ドッゴォォンッ――とどろ鉄塊かなづち

「ケタケタケタァッ――――シガミーと工房長ノヴァドしゃべかたがぁ、まぁるでぇーご一緒いっしょですわぁねぇぇー♪」
 したっ足らずなこえが、開いたとびらの向こうからとどいた。

 おえらいさんたちや学者方がくしゃかた昨夜ゆうべ王都おうともどったと聞いたんだが――
 また神域惑星しんいきへのとびらとおって……朝一番あさいちばん物見遊山あそびに、駆けつけたんだろうなぁ。
 王女ラプトル王子サウルース顧問ミャッド秘書マルチヴィルと、護衛ごえい連中れんちゅうだけじゃなくて――

「ふっふっふ、まったくだね。ルリーロ♪」
 今日きょうはなんと、コントゥル伯爵はくしゃくまで来てやがる。
 奥方おくがたさまの〝面白おもしろおかしい報告はなし〟を聞いて、居ても立っても居られなくなったんだろう。
 実際じっさいいまネネルドむらは、〝この世で一番面白いちばんおもしろ場所ばしょ〟と化しているしな。

「いやいや、奥方おくがたさまと五百乃大角いおのはら瓜二うりふたつっぷりにはかなわねぇでごぜぇますわぜよぜ!?」
 似てると言うなら、そっちのほうがよっぽどだ。
「そうだなぁ、ガハハハハッ♪」
 わら鍛冶職人かじしょくにん
「た、たしかに似ておるのぅ――ふっあっはっはっ♪」
 つられる辺境伯へんきょうはく

「ふぅ、声質こえしつなら奥方おくがたさまとイオノファラーさまに軍配ぐんばいが上がりますが、瓜二つな所は・・・・・・どっちもどっちではありませんか?」
 しろ布袋ぬのぶくろあたまからかぶった――給仕服姿きゅうじふくすがた
 そのたたずまいに、ギョッとするおれたち。

 まるでぞくのような格好かっこう彼女かのじょは、コントゥル辺境伯家へんきょうはくけつかえる名門貴族めいもんきぞくサキラテ家令嬢けれいじょうだ……とてもそうは見えないが。
 美の権化イオレイニア違和感いわかん権化ごんげもしくは、ただの・・・不審者ふしんしゃと化していた。

 昨晩さくばん蛸壺たこつぼ大跳躍どっぱぁんに巻き込まれ――愛用あいようしていた簡易魔眼殺ししろめがね紛失しなくしてしまったのだ。
 取る物も取り敢えず、かわりの迅雷ジンライ式隠しきかく蓑製みのせいふくろをかぶってもらっている。
 まえに一度作いちどつくったものだから絵で板エディタ使つかえば、すぐ出来できるわけだが――
 こともの見るための魔道具・・・・・・・・でもあるから、調整ちょうせいにはそれなりの手順てじゅん手間てまが要る。

「わ、わるいなぁ。そんな格好かっこうをさせちまって!」
 ネネルドむらで起きた揉めごとを、最終的さいしゅうてき穏便おんびん解決かいけつした立役者たてやくしゃたいして布袋コレはないが。
 おれが寝落ねおちした一晩中ひとばんじゅうほほふくらませ待ちつづけたという――
 食欲しょくよく権化ごんげ手前てまえ蛸飯の奇祭タコゥパとやらの準備じゅんび優先ゆうせんさせてもらってる。

 蛸を大根で叩くのめしのしたくを止めて、五百乃大角いおのはら様子ようすをうかがう。
 さらさらさらっ♪
『お乚ナよカヾき』
 食堂しょくどうにもなる、巨大集会所きょだいしゅうかいじょ片隅かたすみ
 厨房おれめんしたつくえ陣取じんどり、なにかを書く五百乃大角いおのはら

「そりゃなんだぜ?」
 ちかくまで行って見てみたが、わからんので聞いてみる。

「見てわからないのぉー、うぷぷぷっ
 なんだと――
「〝おしなよがべき〟? なんだぜこりゃ?」
 ろくでもねぇことなら、はじめるまえに止めさせねぇと。

「えっ? 〝おしながき〟よ、〝おしながき〟ぃー!」
 驚愕きょうがく根菜こんさいさま。

「〝お品書しながき〟だとぉう? ならちょっと貸してみろ、おれが書いてやらぁ」
 黒板タブレットをとりかえし、『御品書き』と書いてやる。
 こんなのはおやまでも香味庵こうみあんでもやらされてたから、お手のもんだぜ。

「ぐひゅひっ!? すっごい達筆たっぴつ!」
 まぁなぁ、坊主ぼうず仕事しごと四半分よんぶんのいちは、字を書くこと・・・・・・だからな。

「そちらは、日の本ヒーノモトー言葉ことばですか?」
 くびかしげる頭陀袋ずだぶくろじょうリオレイニア。
「おぅ、そうだぜ。やっぱり土地こっち言葉ことばで書かねぇと、意味いみがねぇんじゃぁねぇのか?」
 なぁ五百乃大角いおのはらよぉ?

「あれ? どこ行きやがった、あいつ!?」
 あたりを見わたすが――居ねぇ。
「なんかまるたまに乗って、飛んで行っちまったぞ?」
 空いたまどゆびさす、工房長ノヴァド

「はぁっ!? おれたちにめし支度したくをさせたまま、あそびにでも行っちまったのかぁ――ったく惡神わるがみさまめっ!」
 辺境伯とのさんまで来てるってときに、あまり悪評あくひょうを立てるなよなぁっ!

 ゴドン――ガチャチャリ♪
 集会所しゅうかいじょおく通路側つうろがわから聞こえたのは、神域惑星しんいきつうじるちいさなとびらひらおと
 トコトコトコトコトコトコトコトコ――――♪
 面白おもしろそうな予感よかんがして、来るのはかまわんが――

「あら、カヤノヒメちゃんだぁー♪ ……旦那だんなさまー、あちらの桟橋さんばしに行ってみませんかぁー♡」
 最初さいしょ集会所しゅうかいじょ反対側はんたいがわ姿すがたあらわしたかやひめに向かって、手を振っていた奥方おくがたさまだったが――
 トコトコトコトコトコトコトコトコ――――♪
 あしおせぇなぁ。

「……うむ、そうするか。ではみなもの失礼しつれいするよ」
 一向いっこうちかづいてこないかやひめ興味きょうみを無くしたのか、辺境伯コントゥル夫妻ふさいはスタスタと出て行ってしまう。
「へへははぁー!」
 一人ひとり、まないたあたまを押しつける――おれ。
 長年ながねんかけてつちかった、習慣しゅうかん早々変そうそうかえられん。
 殿とのさんや奥方おくがたが「失礼しつれいする」と言えば、「へへははぁー!」に決まってらぁ。

 トコトコトコトコトコトコトコトコ――――トタン♪
「ふぅー、なにをおこっておられるのですか、シガミー? くーすくす
 かすかにかたいきをする星神ほしがみ
 そのからだ頑丈がんじょうだし根性こんじょうもあるが、体の使い方・・・・・がなっちゃいねぇから――
 あしおせぇしつかれるんだぜ。

おこって? ああそうだぜ聞いてくれよ、星神さまかやのひめよぉ」
 おれはこと次第しだいを、ざっと説明せつめいしてやった。

   §

「ふぅ。シガミーさんは女性じょせいこころというものが、わかっていないようですね
 おれと瓜二うりふたつの姿すがたをしたやつに、かたを落とされた。

「カヤノヒメさまっ! そう、そうなの! シガミーには乙女心おとめごころが、壊滅的かいめつてきに足りてないとおもうのっ!」
 飛びこんできたレイダが、こえを張った。
みぎおなじく」「ひだりおなじく」
 レイダの両脇りょうわきしたがうビビビーと頭陀袋嬢リオレイニアまでが、そんなことを言い出した。

 ふぉん♪
『>シガミー。デバイスID#10286のシステムログを発見しました」
「んあぁ?」
 なんだぜ、やぶからぼうに?

 ふぉん♪
『>随意のメッセージ、つまり書き置きです。
  {<180>2222ー07ー24T06:53:03.
  aosーmanager AOSーSYSTEM
  <aos@10286 comp=”aosーmanager”
  errorCode=”□□ハ□イオ□//さカヾさナよⅵで〈ナごさⅵ。臣ホ〄尢完レ乙ⅵ舌す”
  subcomp=”maneger”>
  Connection verification failed for broker’龍脈言語server01.net’}』

 わからん、読めん。
 昨日きのうみずうみに落としたから……壊れたか・・・・
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