上 下
493 / 739
4:龍撃の学院

493:ネネルド村奇譚、蛸壺VS物理法則

しおりを挟む
「ぷっぎゅぷぎゅ――!」
 カッチャッ、ぶぶぶぉぉんゅ――ごろぉおん♪
 ふたを持ち上げたうでを振り、いきおいを付けてよこになる。

 とっぷんたっぷん、こぽぽぽんと――みずなかに入れていく。
 ちなみに顧問技師ミャッド発案はつあんで、ふた裏表うらおもてに取っ手が付けられた。
 そしてその取っ手は、なんとオリハルコンせい

「良いのかぁ工房長ノヴァド随分ずいぶん気前きまえが良いじゃねぇーかぁ?」
 オリハルコンはまともに買うと、結構けっこうするだろ。
 折れた剣先けんさきとかをあつめたとしても、延板のべいたに打ちなおすのにそれこそ――
 ノヴァドみたいな一流いちりゅう職人しょくにんの手が必要ひつようだ。つまり、そうそうやすくならない。

 ガムランちょう避雷針ひらいしんはオリハルコンせいで、その使つかふるしはジンライこうとして再利用出来さいりようできる。
 ジンライこうおも使つかみちとしては、小太刀こだち錫杖しゃくじょう迅雷ジンライ式隠しきかくみの素材そざい一部いちぶ)がある。

「10ねんくらいまえにたて持ち手・・・にするためにつくったもんだが、とうとうだれえらんでくれなくてなぁ」
 ガシガシとあたまを掻く、屈強くっきょううで
「あの持ち手の材質ざいしつすべてがオリハルコンせいでは、たて主兵装しゅへいそうとするわたしでも躊躇ちゅうちょしますよ」
 屈強くっきょうさでは負けていない、大柄おおがら男性だんせいかおをしかめた。
 新婚さんエクレア色々いろいろ物入ものいりなのだ。

魔物境界線ガムランちょう護衛ごえいにんにつくアナタが買えないのでしたら、ほかに欲しがるひとは居ないでしょうね」
 白眼鏡しろめがねはなからいきを、ふぅーぃ。
 そういやぁリオも、物入ものいりってわけじゃないけど――
 大博打おおばくちやぶれ、いまはたくわえがない身だ。
 央都おうとでかるくはじめたあきないで、学院がくいんへのなんやかんや・・・・・・まかなえつつあるが。
 いろいろ売りに出してる素材そざいが売れれば、まとまったかねわたしてやれる。
 いましばらく、辛抱しんぼうしてくれ。

「がははははっ、そういうことだ。おれはたて使つかわねぇし、折角作せっかくつくったもんをただつぶしちまうのも――なぁ!」
「気が引けるってわけか。そういうことなら、ありがたくもらっとくぜ♪」
 そのうち、目新めあたらしいさけでも出来できたら、とどけてやろう。

 ごっぽぽぽぽぽぽぽぽぽぉん――どっぷん♪
 水桶みずおけどんぶりでも、しずめたみてぇなおと
 どうにかこうにか、ぎりぎり水面下みずのしたしずんだようだが――
 それ以上・・は、どうやってもしずまなくて――

「ぷぎゅるりゅり、ぷっぎゅぎゅりっ♪」
 蛸之助たこのすけは、そのまま湖面こめん徘徊はいかいする。
 あれはあれでたのしそうだが、蛸壺たこつぼ本来ほんらい用途ようとではない。

「ケェーッタケタケタ、ココォン♪」
 少女しょうじょメイド・タターに団扇うちわあおがれる奥方ルリーロさまが――
 出し物たこつぼたのしんでくれている。

スべてノ空気くウき排出はいシゅつし、冠水かんスいしたにモかかわらず――そレ以上いじょウしズまないようデ
 ヴヴッヴヴヴルッ――また、ルガばちうごきをする迅雷ジンライ

 ふぉん♪
『イオノ>さすが異世界わね。蛸之助周辺の湖水比重が類推2・3って、物理法則に喧嘩売ってる?』
 ふぉん♪
『シガミー>どうした、さっきまで吐いてた塩が何かまずいのか?』
 ちがうか……たこが吐こうが、しおに変わりはねぇ。
 となるとだれなにに、喧嘩けんかを売ってやがるんだぜ?

 ふぉん♪
『ホシガミー>ここだけのことか惑星ヒース全域でおこりうることか、まだわからないですけど。星の理に異変が生じています、くすくす♪』
 すたすたすたすた、とん、とん、とととん!
 スサササササササ、カチャン、カチャチャン♪
 王族おうぞく顧問氏こもんしたちだけでなく、学者方がくしゃかた村人むらびとたちのぶんまで――
 つめたいもののおかわり・・・・を、そつなく給仕きゅうじする星神かやのひめ

 ふぉふぉん♪
『シガミー>おい、まるでわからんがそれでも、星神のお前さまが星の理を知ってねぇといけねぇてのはわかるからな?』
 スッとおれにまで差し出されたのは、果物くだものしる
 色々いろいろと、取りそろえてやがるな。
 まるで、おにぎりみたいなこのいろは、はじめて見たぞ?

 ふぉん♪
『ホシガミー>塩分濃度に異常は見られませんので、蛸之助の吐いた塩による溶解質量改竄が深刻と思われます、くすくすす?』
 わかるか。
 わりものならかわいそうだが、やはり退治たいじすっか?
 おれたちのいのち女神めがみ食事めしに、代わるものなどない。

「ごくり――うめぇ!」
 ちょううめぇ。果物汁くだものじるはとんでもなく、うまかった。

 ふぉん♪
『>学者班が近くに居なければ、対処法もあるのですが』
 うーむ?
 つまり、轟雷を着ていないおれ・・・・・・・・・・かんがえる程度くらいのことで、この場を凌げ・・・・・・って言うんだな?

 ふぉん♪
『イオノ>坊主、驚異の理解力』
 根菜メガミは、いまはリオレイニアのあたまうえ
 メイド装束しょうぞく髪留かみどめを、しっかりとつかんで――
 たかみの見物中けんぶつちゅう

「ったくよぉ。ぼんひとつにすわったおれが、軽々かるがると浮くんだぜ? あれだけのおおきさのつぼじゃ、そこまでしずめるのは一苦労ひとくろうなんじゃね?」
 振りかえれば巨木きょぼくをくり抜いたところが、まるへこんでる。
 仕込しこ錫杖しゃくじょうで斬りつけ、おおまかなかたちを切り出し。
 絵で板エデシタつぼかたちを、正確せいかくけずり出した。

 つぼ材料ざいりょうは、いくらでも切り出せる。
 もう一個いっこあつみを減らしたやつつくれば済むなら簡単かんたんだが。

重石おもシがわりノ格子こうシかコめバ、しズめられマすが
 収納魔法しゅうのうまほうなかの、電界鉄でんかいてつ使つかふるしのオリハルコン)の在庫ストックがチカチカする。
「けどそれじゃ、一時凌いちじしのぎだろう?」

「そウですね。でスがレイダザいしンハ木でスので、みズうみ一番深いチばんふかとこロなラやクバい高圧こうアつヲ掛けられマ
「その……こころは?」
 もうわからん。
 はらいせに五百乃大角いおのはらにらみつけたら、諸手もろてを挙げて――すてころろん♪
 真後まうしろへころげ落ちやがった。

「っきゃ――イオノファラーさまっ!?」
 白眼鏡リオレイニアあわてて、根菜メガミさまを――――ポコーン、スカーン♪
 受け止めようとするも、靴先くつで蹴り飛ばしてしまい。
「きゃぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁっ――!?」
 つかを跳ねころがるそれを、必死ひっしに追いかける。

「レイダ材内部ざイないぶノ木がフく空気くウき押シ出せバ・・・・・浮力ふりョく永久的えいきゅうテき調整可能ちょうせイかのうおモわれマ
 わーからーん。

 一度作いちどつくってしまったものを、絵で板エディタ調整ちょうせいするのにも限度げんどがあり――
 かといってもう一個いっこべつつくっても、また蛸塩たこしおを吐かれて――
 もと木阿弥もくあみにならないともかぎらないらしく――
 中々なかなかどうして、うまくいきやがらねぇぜ。

   §

「よしやるぞ。まずおれが、湖を切り裂くから・・・・・・・・――」
「ちょっとまってくださいシガミー。出だしからまずおかしいのですが?」
 かたいきをする白眼鏡リオレイニアから、物言ものいいが。
 その手には根菜メガミひとつ、無造作むぞうさにぎられていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

スター・スフィア-異世界冒険はお喋り宝石と共に-

黒河ハル
ファンタジー
——1つの星に1つの世界、1つの宙《そら》に無数の冒険—— 帰り道に拾った蒼い石がなんか光りだして、なんか異世界に飛ばされた…。 しかもその石、喋るし、消えるし、食べるしでもう意味わからん! そんな俺の気持ちなどおかまいなしに、突然黒いドラゴンが襲ってきて—— 不思議な力を持った宝石たちを巡る、異世界『転移』物語! 星の命運を掛けた壮大なSFファンタジー!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...