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4:龍撃の学院
486:ネネルド村奇譚、迅雷のゆくえ
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「あらまぁ、随分とご立派でぇすぅねぇぇぇえっ♪」
目の色を輝かせる、五百乃大角。
今日最大の大物を譲ってくれた、ノヴァドに大感謝だ。
「こっちは皆の分。そしてこっちの小振りなのは、子供たちの分だぜ! 火傷しないよう、気をつけて食――すやぁ♪」
おれが覚えてるのは、ここまでだ。
相当疲れていたらしくて――すややぁ♪
そんな感じで、つぼ焼きを出した直後に、眠り落ちちまったもんだから――
すっかり忘れてたんだよなぁ――すややややぁ♪
「シガミー。そロそろ仕掛けを、交換してみませンか?」
Yの字に切った小枝に、立てかけておいた――
相棒のことをよぉ。
§
釣れなかったときの策として、迅雷は先端から細黒い機械腕を湖へ垂らしていた。
カシャカシャカシャカシャンッ――――♪
機械腕を、どこまでも伸ばすことによって――
複雑な地形や湖流を掌握しようという、目論見もあった。
なんなら直接、未確認生物〝魚の卵〟を捕獲せしめようという――
雑な計画は功を奏した。
ごぼぼぼぼぼぼぼぼぉ――――モゴッファ♪
機械腕に装備された、光学装置に映る影。
「シガミー、未確認生物を発見しまシ――」
どれだけ高性能な釣り竿であっても、それを持つ釣り人がいなければ宝の持ち腐れだ。
ググググゥン――ヴォヴォヴォヴォゥゥンッ♪
引っぱられた白金の棒は、宙を飛んだ。
だが力が、拮抗したのは一瞬で――ばっちゃぁん♪
小さな水音は、食事の喧騒にかき消され――
気づかれることはなかった。
§
夢を見ていた。
それが夢だとわかるのは――
目のまえを巨大な海老が、横切ったからだ。
焼いたらうまそう……いや、鍋にすりゃ出汁が取れる。
鍋だな鍋。
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
なんだぜここわぁ、水の中かぁ?
どうりで、体がふわふわしてるぜ。
ふわふわすややぁ、ごぽぽぽぽとぷん♪
ギュギギギギギャ――――ガッチャッ!!
体を引っぱられる感覚に続いて、硬ぇ岩に体を打ち付けられる感覚。
痛った……くはねぇが何かに引っぱられて、自由が利かねぇ。
ガッ、するん――ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
暗く狭い細穴を、どこまでも落ちていく。
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャッ――――伸びていく黒くて細い紐。
あの紐におれぁ、引っぱられているらしいぜ。
ガキイィィィィィンッ――――!!
あ、穴の曲がり角を、通れずに引っかかった。
カシッ――体を縮めると、また凄い力で引きずり込まれる。
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
水は澄んでいて見通しは良かったが、夕日だか朝日だかが届かなくなって――辺りの様子が、まるで窺えねぇ!。
ヴユゥゥウゥッ――――――――パッ。
急に目のまえが、明るくなった。
ごぼぼぼぉぉんっ――――!
流れが行き着いた先は、そこそこ広い場所で――
先客が居た。
なんだぜ、こいつぁ?
ねじれた足先、いや腕か?
全身は赤黒く、JΘqΘしをしてやがる。
そいつは何本もの腕を伸ばし、絡みついてきた。
§
――ゥズウズズン♪
それはシガミーが事切れてから、約5分後。
どぼっぱぁぁぁぁぁんっ!
ぶっぎゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ!
水柱と共に姿を現したのは――巨大な胴体。
無数の手足を持つ、軟体動物門頭足綱鞘形亜綱八腕形上目タコ目。
俗に〝蛸〟と呼ばれている、水棲生物だった。
「あらまぁ、随分と面白い形の魔物でーすーねーぇ♪」
計算魔法具を弾きだし、まだ獲れてもいない獲物の皮算用を始める者。
「まさか!? ひょっとしてぇー、蛸ぉー?」
蛸の足ほどの数ではないが、枝分かれした尾をくねらせ、舌なめずりをする者。
「「「「「「「「ぅわっ、気色悪っ!?」」」」」」」」
蛸の不気味な姿に慄くのは子供たちや、ガムラン町関係者や、央都関係者たちだ。
「おかしくなぁい? この湖は淡水でしょ、蛸なんて棲んでるわけがぁ……でぇもぉー、えっへへ、おいしそーねぇん♪」
首を曲げつつも、涎を垂らすのに余念の無い女神御神体。
「イ、イオノファラー、救援ヲ求……ム」
水面から突き出た棒が、SOSを発した。
カシャカシャカシャララッ!
ぶぎゅりゅりゅるっ!!!!!!!!
絡み合う黒く細い腕と――吸盤が並ぶ太い腕。
「ぎゃっ、迅雷!? なんでそんな所に居るのよ!?」
テーブルの上を、駆け出す御神体。
魚の卵に瓜二つらしい、丸っこい輪郭が――てちてちてちり♪
ヴァヴァヴァリリッ!
青白い放電が、白金の棒から放たれる。
ぶぎゅばぁぴゃーずざざざぁ!
蛸のとがった口器から、大量の水……というより白砂が吐き出された!
「さ、魚の卵がぁ出おったぞぉぉぉぉ――――!!!」
「うおおぉぉぉぉぉっ――――!!」
「銛、持ってこーいっ!!!」
「ひぃやぁっはぁぁぁぁぁぁっ――――!!!!!」
色めき立つ、ネネルド村。
「ええええっ!? 魚の卵ってぇ――――〝蛸《たこ》〟のことだったぁのぉぉぉぉおっ!?」
驚愕の、美の女神御神体……魚の卵さまが、勢いあまってテーブルから落ちた。
目の色を輝かせる、五百乃大角。
今日最大の大物を譲ってくれた、ノヴァドに大感謝だ。
「こっちは皆の分。そしてこっちの小振りなのは、子供たちの分だぜ! 火傷しないよう、気をつけて食――すやぁ♪」
おれが覚えてるのは、ここまでだ。
相当疲れていたらしくて――すややぁ♪
そんな感じで、つぼ焼きを出した直後に、眠り落ちちまったもんだから――
すっかり忘れてたんだよなぁ――すややややぁ♪
「シガミー。そロそろ仕掛けを、交換してみませンか?」
Yの字に切った小枝に、立てかけておいた――
相棒のことをよぉ。
§
釣れなかったときの策として、迅雷は先端から細黒い機械腕を湖へ垂らしていた。
カシャカシャカシャカシャンッ――――♪
機械腕を、どこまでも伸ばすことによって――
複雑な地形や湖流を掌握しようという、目論見もあった。
なんなら直接、未確認生物〝魚の卵〟を捕獲せしめようという――
雑な計画は功を奏した。
ごぼぼぼぼぼぼぼぼぉ――――モゴッファ♪
機械腕に装備された、光学装置に映る影。
「シガミー、未確認生物を発見しまシ――」
どれだけ高性能な釣り竿であっても、それを持つ釣り人がいなければ宝の持ち腐れだ。
ググググゥン――ヴォヴォヴォヴォゥゥンッ♪
引っぱられた白金の棒は、宙を飛んだ。
だが力が、拮抗したのは一瞬で――ばっちゃぁん♪
小さな水音は、食事の喧騒にかき消され――
気づかれることはなかった。
§
夢を見ていた。
それが夢だとわかるのは――
目のまえを巨大な海老が、横切ったからだ。
焼いたらうまそう……いや、鍋にすりゃ出汁が取れる。
鍋だな鍋。
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
なんだぜここわぁ、水の中かぁ?
どうりで、体がふわふわしてるぜ。
ふわふわすややぁ、ごぽぽぽぽとぷん♪
ギュギギギギギャ――――ガッチャッ!!
体を引っぱられる感覚に続いて、硬ぇ岩に体を打ち付けられる感覚。
痛った……くはねぇが何かに引っぱられて、自由が利かねぇ。
ガッ、するん――ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
暗く狭い細穴を、どこまでも落ちていく。
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャッ――――伸びていく黒くて細い紐。
あの紐におれぁ、引っぱられているらしいぜ。
ガキイィィィィィンッ――――!!
あ、穴の曲がり角を、通れずに引っかかった。
カシッ――体を縮めると、また凄い力で引きずり込まれる。
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
ごぼごぼがばがべ――――ごっぽぽぽぽん♪
水は澄んでいて見通しは良かったが、夕日だか朝日だかが届かなくなって――辺りの様子が、まるで窺えねぇ!。
ヴユゥゥウゥッ――――――――パッ。
急に目のまえが、明るくなった。
ごぼぼぼぉぉんっ――――!
流れが行き着いた先は、そこそこ広い場所で――
先客が居た。
なんだぜ、こいつぁ?
ねじれた足先、いや腕か?
全身は赤黒く、JΘqΘしをしてやがる。
そいつは何本もの腕を伸ばし、絡みついてきた。
§
――ゥズウズズン♪
それはシガミーが事切れてから、約5分後。
どぼっぱぁぁぁぁぁんっ!
ぶっぎゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ!
水柱と共に姿を現したのは――巨大な胴体。
無数の手足を持つ、軟体動物門頭足綱鞘形亜綱八腕形上目タコ目。
俗に〝蛸〟と呼ばれている、水棲生物だった。
「あらまぁ、随分と面白い形の魔物でーすーねーぇ♪」
計算魔法具を弾きだし、まだ獲れてもいない獲物の皮算用を始める者。
「まさか!? ひょっとしてぇー、蛸ぉー?」
蛸の足ほどの数ではないが、枝分かれした尾をくねらせ、舌なめずりをする者。
「「「「「「「「ぅわっ、気色悪っ!?」」」」」」」」
蛸の不気味な姿に慄くのは子供たちや、ガムラン町関係者や、央都関係者たちだ。
「おかしくなぁい? この湖は淡水でしょ、蛸なんて棲んでるわけがぁ……でぇもぉー、えっへへ、おいしそーねぇん♪」
首を曲げつつも、涎を垂らすのに余念の無い女神御神体。
「イ、イオノファラー、救援ヲ求……ム」
水面から突き出た棒が、SOSを発した。
カシャカシャカシャララッ!
ぶぎゅりゅりゅるっ!!!!!!!!
絡み合う黒く細い腕と――吸盤が並ぶ太い腕。
「ぎゃっ、迅雷!? なんでそんな所に居るのよ!?」
テーブルの上を、駆け出す御神体。
魚の卵に瓜二つらしい、丸っこい輪郭が――てちてちてちり♪
ヴァヴァヴァリリッ!
青白い放電が、白金の棒から放たれる。
ぶぎゅばぁぴゃーずざざざぁ!
蛸のとがった口器から、大量の水……というより白砂が吐き出された!
「さ、魚の卵がぁ出おったぞぉぉぉぉ――――!!!」
「うおおぉぉぉぉぉっ――――!!」
「銛、持ってこーいっ!!!」
「ひぃやぁっはぁぁぁぁぁぁっ――――!!!!!」
色めき立つ、ネネルド村。
「ええええっ!? 魚の卵ってぇ――――〝蛸《たこ》〟のことだったぁのぉぉぉぉおっ!?」
驚愕の、美の女神御神体……魚の卵さまが、勢いあまってテーブルから落ちた。
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