上 下
481 / 739
4:龍撃の学院

481:ネネルド村奇譚、村の繁栄とムシュル貝

しおりを挟む
「ふんぬぅぅうぅぅぅぉおおおおおおおりぃぃぃぃぃいゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
 工房長ノヴァド黒騎士エクレアが、ネネルド村復興むらふっこう……繁栄はんえいに、尽力じんりょくしている。

 おれと迅雷ジンライとおにぎりで、一気いっきけずることも出来できるが――
 ふぉん♪
『>巨木の伐採は慎重に行ってください。
  ただでさえ未知の植物であることに加え、
  巨大質量の倒壊や落材の危険があります』
 そうだな、いくらかたくてもだしな。
 男衆あいつらけずらせて、様子ようすを見るぞ。

 ふぉん♪
『>それと樹心に近い部分へ埋もれた際に、轟雷や私の神力が奪われた可能性があります』
 そうだな。木に突き刺さったとき、一気いっきに神力ちからうばわれた。

 いまは平気へいきか?
 いちおう迅雷ジンライには、神力棒しんりょくぼうつないだままにしてある。
 ふぉん♪
『>はい。巨木の外縁部、いま居る〝木の生きた部分〟に触れる分には神力を奪われることはないようです』

 ふぉん♪
『ヒント>樹心/形成層である外樹皮を支える、木の幹や枝の芯の部分。活発な生命活動は行われない』
 んぅ? そりゃ初耳はつみみだが、そういうもんか。

 ふぉん♪
『>はい。水分や養分を吸い上げるには、管状の通り道が有れば良いので、必ずしも生きた細胞を必要としません』
 むぅ、わからん。
 けど、おやまに生えてた大樹たいじゅには、ひとはいれるほどのうろがあった。
 しかもてんまでぼっかりと大穴おおあなが空いてたのに、春先はるさきにははなを咲かせてなぁ。

 〝外側そとがわだけ〟生きてりゃ、木はそだつってのは……わからんでもねぇ。
 そうなると、この巨木きょぼくの死んだ部分ぶぶんさわると、神力を奪われる・・・・・・・ってことか。
「うむむ、人間生にんげんいきてりゃまなぶことが、いくらでもあらぁな」
 じゃぁおまえは、あまり内側・・へ行くなよ。
 ふぉん♪
『>了解しました』


 ちなみに村人むらびとに聞いてみたところ、〝業火ごうかを吐くたまご〟も〝投げたやつ〟も見なかったらしい。

 夜中よなか巨木きょぼくが生えたからあかるくなるのを待ち、こうして巨木きょぼく上陸じょうりく
 みきを掘って開拓開始かいたくかいしし、ようやく足場あしば確保かくほしたころ巨木きょぼくなにかがぶち当たったと。
 なにかってのは、もちろん轟雷おれのことだ。

 「まずわぁ、ムシュルがいでしょぉ?」と言う御神体メガミ一声ひとこえで、おれたちはめし支度したく……むら整備せいびはじめたわけだが――
 そろそろ日も大分だいぶかたむいてきた。

「シガミーも本気ほんきだして良いですからねぇ? 5ふん村人全員むらびとぜんいんのおうちとぉ、みんなで食卓しょくたくかこめるぅ、巨大きょだい集会所しゅうかいじょつくってくださいなぁー
 気取きどるな根菜こんさい……いやさかなたまごさまめ!

無理難題むりなんだいを当たりまえのように、めいじるんじゃねぇよ。けど……温泉街おんせんがいつくったときの造形ぞうけいデータが、のこしてあった気がするぞ――」
 おれは絵で板エディタから、記録ブクマを呼び出して――
 ノヴァドとエクレアが開拓かいたくした、巨木きょぼくへりへあてがう。

 ヴュパァ――――ギュィィィィィイィィィィン、ガタガタゴドン♪
 数階建すうかいだての住居いえつくり、それを記録きろくして――
 かさねるように配置はいち配置はいち配置はいち
 このへんは、〝央都おうとの立ちならんだ宿泊施設しゅくはくしせつ〟も参考さんこうにした。
 出来できいえのあいだを、行き来できるように階段かいだんつくって――
 あぶなくねぇように、ジンライ鋼製こうせいの手すりも組み付けた。

 轟雷ごうらい使つかったときのすげ頓知とんち名残なごりが、いくらかのこってたらしく――
 かんがえるそばから、仕事しごとが終わっていくぜ。
 おれに神力しんりょく必要ひつようないし、〝木工彫刻もっこうちょうこく〟スキルだけで済む。
 こまかなところ小太刀こだちさわるだけで、仕上しあがった。

「いよぉし、こんなもんだろぉ――――♪」
 最後さいごつくり付けの巨大きょだいテーブル付きの、巨大きょだい集会所しゅうかいじょけずり出
して終了しゅうりょう
 ひろさは、レイド村集会所むらしゅうかいじょくらいか。
 ただし大講堂だいこうどうみたいな、すり鉢状ばちじょう

 いまは女神メガミ神託しんたくによって、行動こうどうしている。
 大義名分たいぎめいぶんかさに着て、やり過ぎた気もするが――
 とがめられるいわれはねぇや。

「な、なんと言うことでしょう! 一瞬いっしゅんむら出来できてしもうたわい!」
 感涙かんるいにむせび泣く村長そんちょう。名はわすれた。
 ふぉん♪
『人物DB/プランター
      ネネルド村村長』
 あー、そんなか。
 タターとおなじで、家名かめいは無いんだな。

「たったいま水揚みずあげげされたばかりの――」
 ドガシャッ!
「このムシュルがいくらいしか――」
 ゴドガシャッ!
「おかえしするものが無いよ!?」
 ゴドガシャラッ!
 山積やまづみにされる、濡れたあみ
 中身なかみはもちろん、ムシュルがいだ。

「いやいや、それが一番いちばんありがてぇ♪」
 いよいよ取って置きの、紫色の大根野郎マンドラゴーラを――
 すり下ろす・・・・・ときが、来たぜ!

「やい、おにぎり……ありゃ? 女神メガミさまの御使いさま・・・・・野郎やろうは、どこ行きやがった!?」
 居ねぇ。アイツのなか取って置きマンドラゴーラを、仕舞しまってあるってのに。
 気づけば、レイダとビビビーも居ねぇ。

「おにぎりなら、レイダたちに連れられて、タターのご家族かぞくのところに行くといって、木のみきのぼっていきましたよ?」
 白眼鏡リオが見あげるさき
 木肌きはだけずってつくった梯子はしごが、ずっとうえまで伸びていた。
 その両側りょうがわにはちいさいが、いえみたいなのが点在てんざいしている。
 水面近すいめんちかくだけじゃなくてうえにも、鉄砲虫てっぽうむしじゃなかった……村人むらびとがいるらしい。

 〝木工関連もっこうかんれんスキル〟持ちが居るんだろうが、それにしてもだぜ。
 夜中よなかに生えた巨木きょぼくから、木っ葉のような物置小屋ものおきごやまもり――
 あまつさえ、それを寄せあつ足場・・にし――
 果敢かかんにも巨木きょぼく開拓かいたくし、むら拡大かくだいしていく。

 切れもののリオレイニアの仕込み・・・に耐えるだけの、可能性かのうせいを秘めた少女しょうじょ
 ネネルドむらからはたしかに、彼女タター血統ちすじかんじた。
「ここまで出来る・・・なら、もっと住みやすいところに住みゃぁ、大成たいせいするだろうによぉ」
 ひとにはひとむらにはむらの、本懐ほんかいがあるんだろうが。

   §

「さて、したごしらえをやっちまうか――あれ、もうねぇ?」
 おにぎりたちがもどるまえに、ムシュルがい殻剥からむきでもするかと包丁ほうちょうを取りだしたが――

「「「シガミーちゃんわぁ、そのとし女神めがみさまの料理番りょうりばんなんだってねぇー♪」」」
 むら女連中おんなれんちゅうがいつのまにか、そばに立ってると気づいたときには、もうおそかった。
 かぞえ切れないほど沢山たくさんならべて置いた大皿おおざら
 そのすべてに剥き身のムシュルがいが、こんもりと山積やまづみにされていた。

 これ名産めいさんってんなら、殻剝からむきがはえぇのもうなづける。
 じゃぁ、マンドラゴーラ以外いがい野菜やさいを切っとくか――
 ヴッ――どさどさごろろろろっ♪

「「「「「「まだそんなにちいさい手をしてるのに、えらいねぇー♪」」」」」」
 ちっ、また一瞬いっしゅんしたごしらえされちまったぜ。
 人数にんずうもなんか、増えてるしよ。

 ふぉん♪
『>シガミー。我々に出来る仕事を探しましょう。央都への連絡のために女神像の設置状況を確認してはいかがでしょうか』
 そうだな。ソッチをやるか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売しています!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...