滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４７５：大陸間弾道卵の謎、ゲーミング馬車

　ヒュヒィィィィィィイィィィィィィィ――――――――ドガァァァァァァアンッ!!!!
　轟雷ごうらいを着るのも・・・・、久ひさしぶりだぜ。
　勢いきおいよく背中の大筒スラスターを、点火てんかする。

　シュゴゴォォォォォッ――ォォォォォッ！
　大筒おおづつの勢いきおいをせばめて、より強つよくすると――
　鉄てつで出来できたおれの鉄鎧からだが――ゴコンと浮かび上がった。

　ギュギ、ガコ、ガコココン。
　さっき空中ちゅうを漂ただよってた妖狐ルリーロみたいに、脱力だつりょくしてバランスを取る。
 　ボゴゴオゴォ――！
　よし、ふらつくが浮くぞ。

　ピピピチィー、ピピピピーッ♪
　黄緑色きみどりいろの鎧武者よろいむしゃを模した絵に、重かさななる無数むすうの警告表示きをつけろが――
　よし、『ジャイロマスター・オンライン』。
　緑色にシステムなって消えたオールグリーン。

　ふぉん♪
『＞轟雷用の超特大神力棒を装着中は、背面ハッチが開きませんので注意してください』
　おう。おにぎりが背負せおう収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこみたいなもんだろ。
　おれは背中の大筒スラスターへの、神力供給スロットルをしぼり――ボフッ♪
　ドッズズゥゥン、ガッチャンッ！
　地面じめんに降りたった。

「「「「「「「「「「「「うきゃぁぁぁぁっ!?」」」」」」」」」」」」
　ドガチャン、パリィン♪

「悪わりぃ・――ニャァ♪」・
　雨あまよけの店頭テントに置かれた竈かまどや食器棚しょっきだなを、揺らしちまったぜ。

　巨大きょだいなな鉄鎧てつよろい〝轟雷ごうらい〟を着るための・・・・・強化服シシガニャン１０号ごうは、ビビビーから返かえしてもらった。
　それでもどうしても付いてくると、ごねるビビビー。
　おにぎりの真似まねをするだけの特撃型とくげきがたに、抱かかえさせることも考かんがえたが――

「でもまたぁ卵たまごの直撃ちょくげきでもぉー喰らったりしたらぁさぁー、危あぶなくなくなくなくなくなぁいぃー？・」
　危あぶねえのか危あぶなくねぇのか、はっきりしろいっ！
　けど五百乃大角いおのはらの言うことも、もっともだ。

「さぁ、ここで皆さんの出番・・・・・・ですわぁーん。提案ていあんが採用さいようされた研究班けんきゅうはんにぃー、私わたくしから特別報奨金バウンティ……そうですわね研究資金けんきゅうしきんとしては少すくないけどぉ、２００パケタを進呈しんていいたしますわぁー♪」
　辺境伯名代おくがたさまによって、掲かかげられた紙かみぺら一枚いちまい。
　それは、冒険者ぼうけんしゃギルドの正式せいしきな書式しょしきだった。

「やった！　これで研究けんきゅうが続つづけられるっ！」
「くふふふふ♪」「おれが――」「わたしが――」
　ざわがやわやや。
　学者方がくしゃかたどもが、色いろめき立つ。
　なんでぇい、随分ずいぶんと世知辛せちがらくね？
　自身じしんが魔導工学まどうこうがくに足あしを突っ込んでるどころか、最先端さいせんたんの研究けんきゅうに没頭ぼっとうしている王女殿下おうじょでんかのお膝元ひざもとだろ？
　学者方がくしゃがたにもっと金かねが、掛けられてるもんだと思おもっていたが。

　なんだか薬草師やくそうしとして仕事しごとを始はじめた途端とたんに、いきなり仕事しごとがなくなって途方とほうに暮れたときのことを思おもいだした。

「馬鹿ばかねシガミー。いつの世も、どこの世界せかいでも、１００年後ねんごのためにお金かねを出してくれる人ひとは、なかなか居ないのよぉん」
　御神体ごしんたいが急きゅうに真面目まじめな面つらで、そんなことを言う。

「まぁ、そうだニャァ♪　今いますぐ使つかえる物ものを、みんな欲しがるからニャァ」
「そう言う点てんでは、猪蟹屋ししがにやの製品群せいひんぐんは驚異的きょういてきなまでに〝いま欲しいもの〟で溢あふれていますね」
　顧問こもんと秘書ひしょが逃げ込んだ店頭テントという大おおきな雨あまよけも、五百乃大角いおのはらが言ったとおりの物ものを、おれが迅雷ジンライと協力きょうりょくして作つくったもんだ。

「その割わりには〝阿門戸粔籹アモンドバー〟以外いがいは、さっぱり売れてねぇけど・――ニャァ♪・」
　ガッキュゥンと大首おおくびを、大講堂だいこうどうへ向けた。

「それは、こんな学者畑がくしゃばたけの真ん中なかで、物ものを売ろうとするからだニャァ♪」
「学者がくしゃたちはみんな、お金かねがないですからねぇ」
　顧問と秘書こいつらから仕事しごとのような物ものを受けたときの報酬ほうしゅうは、とんでもない大金たいきんだったが――
　直後ちょくごに女神像めがみぞうＳＤＫのなかみを売りつけられて、すぐに巻き上げられちまったっけな。

　ふぉん♪
『＞上に立つ彼らが資金を隠匿しているのではなく、基礎研究に従事する為に必要な魔法具や魔導書が、飛び抜けて高額なのだと思われ』
　だなぁ。こいつらは、あのときみたいな手口・・で、こういう学者向がくしゃむけの設備せつびを維持いじしてるんだろう。

「ど、どれだけ金かねがねぇんだぜ。講堂こうどうに並ならべた商品しょうひんはお高たかい物ものでも、せいぜい数すうパケタだぞ・――ニャァ？・」
　じつに世知辛せちがらい。

「へ、辺境伯へんきょうはく名代みょうだいさま――！」
　手を上げてルリーロの気を、真っ先さきに引いたのは――
　垂れた耳みみの上うえから生えた、立派りっぱな角つの。
　人ひとの顔かおに人ひとの手、手の甲こうにうっすらと白しろい柔毛やわげが生えた――

　ふぉん♪
『ヒント。羊／ウシ科ヤギ亜科の鯨偶蹄目。渦を描く角、縮れた羊毛をもつ。草食で明るい所を好み、追い詰められると頭突きをする』
　ヴュパッ♪
　ヒントと同時どうじに表示ひょうじされた映像えいぞうには――
　やたらとモコモコフワフワした奴やつららの群れが、「めえめえ」言いながら移動いどうしていくのが映うつし出されていた。

「へぇ、なんだかカワイイ奴やつだ・――ニャァ♪・」
　年齢的ねんれいてきには、リオレイニアよりも年上としうえだろうが。
　ルコルの忙しない・・・・カワイさとも、すこし違ちがくて。
　おれのまわりには、居ないヤツだ。

「はぁい。お名前なまえとぉ、ご提案ていあんをどぉうぞぉ♪」
「も、モゼル・マトンです。みんなを馬車ばしゃに乗せて、空飛そらとぶ鎧よろいを着たシガミーちゃんに……運はこんでもらってはいかがでしょうか？」
　手を上げたまま提案ていあんを述べる、モゼル嬢じょう。
　おれみたく焼け焦げたわけでもないのに、クルクルグネグネした髪型かみがたが揺れる。

「どうかしらぁ、イオノファラーちゃん？」
　奥方さまルリーロの首くびが店頭テントで菓子かしを貪むさぼる御神体めがみに、ぐりんと向けられた。
「うぅーん。推進力すいしんりょくの観点かんてんからぁ、さらにぃーアイデアを募つのりますがぁ……部分的ぶぶんてきに採用さいよおぉー！　いぇーい♪・」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぃやったぁぁ――いぇーい！」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
　モゼル嬢じょうに群むらがる学者がくしゃたち。
　おなじ研究班けんきゅうはんとやら……なのだろうが。

　ドゴガガッ――「「ぎゃぁ！」」
　ガゴゴガッ――「「痛ってぇ！」」
　ボゴゴガッ――「「ひぃぃぃっ！」」
　距離感きょりかんを間違まちがえた研究班けんきゅうはんの仲間なかまたちを、次々つぎつぎに――
　〝ルードホルドの魔法杖まほうつえ〟のようにねじれた角つのの、餌食えじきにしていく。

　あー、どうやら勘違かんちがいだったみてぇだ。
　居る居る、居るよああいう奴やつ。
　おれのまわりに、ゴロゴロ居るぜ。

　　　§

　ガッシャァァァンッ――ドスン！
　金網かなあみで囲かこった馬車ばしゃを作つくり、その中なかに８人分にんぶんの座席ざせきを用意よういした。

「いやぁ、攻略本こうりゃくぼんにゲーミングチェアとかの広告入こうこくはいってて、助たすかったわぁ。いくらあたくしさまが天才てんさいでもぉ写真しゃしんがなかったらぁ、細こまかい所ところまで伝つたえきれなかったからねぇーん♪・」
　この座席・・には驚おどろいた。

　天守閣リカルルのところやギ術開発部ミャッドのところで、ふっかふかの椅子いすに座すわったときも驚おどろいたが――
　こりゃ、その比じゃねぇ・・・・・。

　おれが馬車ばしゃの持ち手もちてをつかんで、みんなを運はこぶ手はずを整ととのえるのに――
　なんと三時間さんじかんも、掛かってしまった。
　ほとんどは、この椅子いすを作つくるための時間じかんだ。

「ふっかふかですね♪」
　甲冑かっちゅうを脱いだエクレアが、体からだを椅子いすに預あずけた。
「そいつぁ良かったぜ・――ニャァ♪・」
　しかも柔やわらかいのにまるで、すべり落ちねぇときた。

「体からだが楽らくでコレなら山積やまづみの書類仕事しょるいしごとも、軽々かるがるとこなせそうです」
　腕うでを置く手すりを、しきりにさすってる。
　秘書の人マルチヴィルにも、お墨付すみつきをもらえた。

「なら卵騒動たまごそうどうにけりが付いたら、あんたらの分ぶんを作つくって届とどけるぜ・――ニャァ♪・」
　二人ミャッドたちには迷惑めいわくをかけ続つづけだったから、せめてもの詫び・・だ。

「くすくす、うふふふ？・」
「（やめろ茅の姫おまえさま。計算魔法具けいさんまほうぐを弾はじいて舌したなめずりをするな）」
　いまおれぁ、神々かみがみが使つかうマルチタスク対応・・・・・・・・だ。
　周囲しゅういの警戒けいかいをしつつ、こうして座席ざせきに座すわるやつらの相手あいてもできる。

　魔物まものと思おもわれて攻撃こうげきされても困こまるから、轟雷おれには――
　コントゥル家の旗章きしょうと、橙色オレンジの襷たすきを掛けた。

　馬車ばしゃの底そこにも王家おうけの紋章もんしょうを、灯あかりの魔法具まほうぐと同おなじ構造こうぞうで――
　チカチカ、ギラギラと光ひかるようにした。
　赤あかから青あお、緑みどりから黄色きいろ。ギョッとするほど派手はでだ。
　近ちかくで見ると、かなり眩まぶしいし。

「まぶしっ、くひゅん♪」
　近ちかくで手伝てつだってくれてた馬車の発案者ふわふわもこもこが、くしゃみをした。

「ニゲルも乗せてやりたかったな。轟雷ごうらいの鎧よろいを〝炉端麩羅面ロボトプラモ〟って呼んでえらく、ご執心しゅうしんだったからな・――ニャァ♪・」
　その割わりに本気ほんきで轟雷おれに、斬りかかってきたけど。

「ニゲル君くんかぁー、最近会さいきんあってないわねー♪・」
　そうだなぁ。レイド村むらから戻もどってから、ずっとガムラン町ちょうの猪蟹屋ししがにや二号店にごうてんで働はたらきづめだろうからなぁ。

「一昨日おととい、例れいのお姫ひめちゃんと迅ジン……天狗てんぐの立ち会いの映像えいぞうを送おくってあげたけどさぁ・」
「何なに!?　送おくっちまったのか・――ニャァ!?・」
「何なによ、駄目だめなの？・」
　高高度用馬車こうこうどようばしゃの最前列さいぜんれつ。
　御神体ごしんたい専用台せんようだいに鎮座ちんざしていた根菜こんさいが、室内カメラおれのしせんを振りかえる。

「だってよぉ（あの姫さんリカルルの姿すがたわよぉ……なんていうか、来てる・・・って言うかヤバイ・・・って言うか、もう本物ほんものの四つ足あしの獣けものみてぇだったじゃんか）？・」
　さすがにニゲルでも、あれを見せられたら――
　姫さんリカルルへの思おもいに、影かげを刺しちまうだろうよ。

「うん？・」
　ふぉん♪
『イオノ＞そこがまた良かったって、言ってたけど？』
　あー、えー、そうなの？

「やっぱりニゲルは……凄すげぇ男おとこだったぜ・――ニャァ♪・」
　そう確信かくしんしたおれは――シュゴゴォォォォォォォォォォッ！
　央都おうとの空そらへ昇のぼっていく。