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4:龍撃の学院
470:央都猪蟹屋壊滅、まさかのネネルド村
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「しかし――この焦げ臭さは、たまらんな。レイダ悪ぃけと、この辺一帯燃えたの全部。レイダ材で塗り替えてくれるか?」
そう声を掛けるなり、猫の魔物(薄桜色)が駆けよってきた。
「「「みゃにゃが、にゃぁみゃにゃにゃん♪」」――♪」
なんて言ってるかは、わかった。
「任せてよ、すぐに終わらせるにゃん♪」だ。
ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪
ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪
ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪
黒焦げの猪蟹屋へ飛びこんでいく、猫の魔物たち。
迅雷と黄緑色と、ちぐはぐな柄の強化服も居るし、任せといて良いだろ。
「ひっひひひぃぃぃんっ?」
待て子馬。おまえは図体がでかいんだから、外で待ってろ。
手綱をつかんたら、少し引きずられた。
「どうどう、どどう。それにしても一体、何の卵だったんでしょうか?」
おっちゃんが、天ぷら号を押さえてくれた。
エクレアが「そうですねー」と相槌を打ち、おっちゃんと一緒に子馬の相手をしてくれる。
「火の魔物っていったら、やっぱり火龍でしょ♪」
ルリーロの視線にみんなが、膝を抱えた少年を見つめる。
「魔界に同種の龍は居るが――魔王亡きいま、こちら側に来ているのは、ワレだけのハズだ」
火龍ゲートルブは、魔物境界線付近の魔物を統括していたらしいから――
その情報は、信用して良いと思う。
「ううむ。空から落ちてきたってんならよ。空の上に棲んでる魔物ってのは、どんな奴が居るんでぇい?」
おれは少年のまえに屈みこんで、素直に聞いた。
「ぬぅ、あの高さまで上がれる魔物は、魔王さまくらいだ」
どうも居ないっぽい。
「じゃぁ、誰かが地上からゲイル目掛けて、卵をぶん投げたってことぉー?」
五百乃大角の馬鹿話におれたちは笑ったが、やがて口を閉じた。
どうも、それが一番、正しいらしい。
§
「み゛ゃに゛ゃぁー♪ 緊急連絡網を使った知らせを、央都全域へ出すまえで良かったニャァ!」
ダミ声で鳴く、顧問氏。
「ふぅ。念のため、火柱が上がった現場を見に来て……大正解でしたね」
おれたちを満遍なく見わたす、顧問秘書。
ふぉん♪
『人物DB/ミャニラステッド・グリゴリー
ラスクトール自治領王立魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部顧問技師』
ふぉん♪
『人物DB>マルチヴィル・エリミネフ
ラスクトール自治領ギ術部顧問秘書官』
長ぇ、しばらく人物DBは切っとけ。
深夜の猪蟹屋。
開店前にもかかわらず、店舗は燃え落ち――
王城からの先遣隊や魔導騎士団、その他もろもろ――
まさに満員御礼。
「馬の魔物がいるぞ?」
「馬の魔物なんて、いないだろう?」
「だが現に目のまえに、居るではないか?」
子馬の形を見て王女のゴーレムだと、気づく奴はいない。
「っくしゅんっ♪」
みんながみんな〝ひかりのたま〟で辺りを照らすもんだから――
眩しくて仕方がねぇや。
懐に御神体を仕舞ってやる。
「おれが、央都猪蟹屋の店主だ! みんなついてきてくれ!」
ギルド支部長クラスの人員に取り囲まれ――
おれは倉庫の二階へ、場所を移した。
ヴュパパパァァッ♪
巨大なテーブルに王都周辺の地図を、映しだした。
「「「「「うぉおおぉぉぉおおぉお!?」」」」」」
神々や猪蟹屋に慣れていない連中が、慄く。
「ルードホルドで本気で飛ぶと、地面の町から苦情がぁ来るのぉ。だぁからぁ央都への進入は、いつも大きく回り込んで岩壁側からになるわぁ♪」
辺境伯名代ルリーロが、城の絵の横辺りを指し示した。
「そのルートに入った途中で、卵が飛んできたと?」
タウリンが央都側から、指を向ける。
ビロロロッ♪
ルリーロやゲイルが飛んできた道なりに――太い線が引かれた。
この巨大テーブルは、黒板と同じことができる。
てちてちてちてち♪
その上を小さい足で駆け抜ける、五百乃大角御神体。
「へー、ふぅーん、ほぉーぉ、それで?」
邪魔だが、敬虔なイオノフ教徒の手前、無下に扱えん。
「うむ。魔法杖に振り落とされたのが、たぶんこの辺りで。火龍の姿へ戻ったとたんに、あの卵が頭にぶつかったのだ」
頭を押さえる子供。
その様はどこから見ても、いたいけな少年にしか見えない。
「卵がぶつかったとき、地上に何か見えませんでしたか?」
リオレイニアが、ゲイルの頭をさすってやる。
「そういえば物置小屋のような物が、建ち並んでいたな」
物置小屋ってこたぁ、おれが最初にもらったシガミー邸みたいなのか?
「城壁側……北北東に小屋? 聞いたことがありませんが、何でしょうか?」
北方の生まれらしい、コントゥル騎馬隊隊長が首を傾げる。
「小屋? その近くを、川が流れていませんでしたか?」
地理に詳しいのか、タターがそんなことを言いだした。
「ひひひぃん?」
どうなの?
とでも言いたげな天ぷら号は、工房に押し込んどこうとしたら――
とんでもなく暴れやがったから、仕方なくタターに手綱を持たせ、任せている。
「あったぞ。編み目のように、ものすごく沢山、流れていたな」
編み目のような川?
そんな場所に、人が住んでるのか?
「それは、たぶん……ネネルド村です!」
タターが出身地を告げた。
§
「ネネルド村上空ですと、〝猪蟹屋〟と〝龍の巣〟を結んだ延長線上で、〝卵〟と遭遇したことになりますね」
リオレイニアの指が、大きくテーブルを這う。
ビロロロロロロォン♪
〝猪蟹屋〟の絵から、まっすぐに引かれた線が――
城壁向こうの〝龍の巣〟の絵と、〝ネネルド村〟の絵を繋いだ。
窓から外を見た。
ふたたび人通りがなくなった、深夜の猪蟹屋周辺。
ほとんど吹き飛んだ、店の三階部分。
薄桜色と黄緑色と、ちぐはぐな柄の魔物たちが――
元気に走り回ってる。
ひんやり。
ほとんど空の倉庫の二階を、流れる冷気。
振り向けばリオレイニアの小さな杖が、くるん♪
冷たい魔法が、みんなの体を冷やしてくれる。
「冷たい飲み物をどうぞ、くすくす♪」
全員に冷たい飲み物を配り終え、レイダ材製の盆を小脇に抱える茅の姫。
まだ周囲には熱が立ちこめており、甲冑姿の連中が飛びついた。
味の評判は上々。
「直線で結ばれる、卵の射出経路……?」
「冷たいですな!」「とてもおいしい!」
「投石器のような攻城兵器でも、この遠距離は……」
「む、酒じゃねぇのにうまいじゃねーか! がはは♪」
膝をつき合わせ、あーでもないこーでもないひひひぃん?と――
議論を重ねた結果。
あの卵はやはり、誰かが投げたと言うことになった。
そう声を掛けるなり、猫の魔物(薄桜色)が駆けよってきた。
「「「みゃにゃが、にゃぁみゃにゃにゃん♪」」――♪」
なんて言ってるかは、わかった。
「任せてよ、すぐに終わらせるにゃん♪」だ。
ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪
ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪
ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪
黒焦げの猪蟹屋へ飛びこんでいく、猫の魔物たち。
迅雷と黄緑色と、ちぐはぐな柄の強化服も居るし、任せといて良いだろ。
「ひっひひひぃぃぃんっ?」
待て子馬。おまえは図体がでかいんだから、外で待ってろ。
手綱をつかんたら、少し引きずられた。
「どうどう、どどう。それにしても一体、何の卵だったんでしょうか?」
おっちゃんが、天ぷら号を押さえてくれた。
エクレアが「そうですねー」と相槌を打ち、おっちゃんと一緒に子馬の相手をしてくれる。
「火の魔物っていったら、やっぱり火龍でしょ♪」
ルリーロの視線にみんなが、膝を抱えた少年を見つめる。
「魔界に同種の龍は居るが――魔王亡きいま、こちら側に来ているのは、ワレだけのハズだ」
火龍ゲートルブは、魔物境界線付近の魔物を統括していたらしいから――
その情報は、信用して良いと思う。
「ううむ。空から落ちてきたってんならよ。空の上に棲んでる魔物ってのは、どんな奴が居るんでぇい?」
おれは少年のまえに屈みこんで、素直に聞いた。
「ぬぅ、あの高さまで上がれる魔物は、魔王さまくらいだ」
どうも居ないっぽい。
「じゃぁ、誰かが地上からゲイル目掛けて、卵をぶん投げたってことぉー?」
五百乃大角の馬鹿話におれたちは笑ったが、やがて口を閉じた。
どうも、それが一番、正しいらしい。
§
「み゛ゃに゛ゃぁー♪ 緊急連絡網を使った知らせを、央都全域へ出すまえで良かったニャァ!」
ダミ声で鳴く、顧問氏。
「ふぅ。念のため、火柱が上がった現場を見に来て……大正解でしたね」
おれたちを満遍なく見わたす、顧問秘書。
ふぉん♪
『人物DB/ミャニラステッド・グリゴリー
ラスクトール自治領王立魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部顧問技師』
ふぉん♪
『人物DB>マルチヴィル・エリミネフ
ラスクトール自治領ギ術部顧問秘書官』
長ぇ、しばらく人物DBは切っとけ。
深夜の猪蟹屋。
開店前にもかかわらず、店舗は燃え落ち――
王城からの先遣隊や魔導騎士団、その他もろもろ――
まさに満員御礼。
「馬の魔物がいるぞ?」
「馬の魔物なんて、いないだろう?」
「だが現に目のまえに、居るではないか?」
子馬の形を見て王女のゴーレムだと、気づく奴はいない。
「っくしゅんっ♪」
みんながみんな〝ひかりのたま〟で辺りを照らすもんだから――
眩しくて仕方がねぇや。
懐に御神体を仕舞ってやる。
「おれが、央都猪蟹屋の店主だ! みんなついてきてくれ!」
ギルド支部長クラスの人員に取り囲まれ――
おれは倉庫の二階へ、場所を移した。
ヴュパパパァァッ♪
巨大なテーブルに王都周辺の地図を、映しだした。
「「「「「うぉおおぉぉぉおおぉお!?」」」」」」
神々や猪蟹屋に慣れていない連中が、慄く。
「ルードホルドで本気で飛ぶと、地面の町から苦情がぁ来るのぉ。だぁからぁ央都への進入は、いつも大きく回り込んで岩壁側からになるわぁ♪」
辺境伯名代ルリーロが、城の絵の横辺りを指し示した。
「そのルートに入った途中で、卵が飛んできたと?」
タウリンが央都側から、指を向ける。
ビロロロッ♪
ルリーロやゲイルが飛んできた道なりに――太い線が引かれた。
この巨大テーブルは、黒板と同じことができる。
てちてちてちてち♪
その上を小さい足で駆け抜ける、五百乃大角御神体。
「へー、ふぅーん、ほぉーぉ、それで?」
邪魔だが、敬虔なイオノフ教徒の手前、無下に扱えん。
「うむ。魔法杖に振り落とされたのが、たぶんこの辺りで。火龍の姿へ戻ったとたんに、あの卵が頭にぶつかったのだ」
頭を押さえる子供。
その様はどこから見ても、いたいけな少年にしか見えない。
「卵がぶつかったとき、地上に何か見えませんでしたか?」
リオレイニアが、ゲイルの頭をさすってやる。
「そういえば物置小屋のような物が、建ち並んでいたな」
物置小屋ってこたぁ、おれが最初にもらったシガミー邸みたいなのか?
「城壁側……北北東に小屋? 聞いたことがありませんが、何でしょうか?」
北方の生まれらしい、コントゥル騎馬隊隊長が首を傾げる。
「小屋? その近くを、川が流れていませんでしたか?」
地理に詳しいのか、タターがそんなことを言いだした。
「ひひひぃん?」
どうなの?
とでも言いたげな天ぷら号は、工房に押し込んどこうとしたら――
とんでもなく暴れやがったから、仕方なくタターに手綱を持たせ、任せている。
「あったぞ。編み目のように、ものすごく沢山、流れていたな」
編み目のような川?
そんな場所に、人が住んでるのか?
「それは、たぶん……ネネルド村です!」
タターが出身地を告げた。
§
「ネネルド村上空ですと、〝猪蟹屋〟と〝龍の巣〟を結んだ延長線上で、〝卵〟と遭遇したことになりますね」
リオレイニアの指が、大きくテーブルを這う。
ビロロロロロロォン♪
〝猪蟹屋〟の絵から、まっすぐに引かれた線が――
城壁向こうの〝龍の巣〟の絵と、〝ネネルド村〟の絵を繋いだ。
窓から外を見た。
ふたたび人通りがなくなった、深夜の猪蟹屋周辺。
ほとんど吹き飛んだ、店の三階部分。
薄桜色と黄緑色と、ちぐはぐな柄の魔物たちが――
元気に走り回ってる。
ひんやり。
ほとんど空の倉庫の二階を、流れる冷気。
振り向けばリオレイニアの小さな杖が、くるん♪
冷たい魔法が、みんなの体を冷やしてくれる。
「冷たい飲み物をどうぞ、くすくす♪」
全員に冷たい飲み物を配り終え、レイダ材製の盆を小脇に抱える茅の姫。
まだ周囲には熱が立ちこめており、甲冑姿の連中が飛びついた。
味の評判は上々。
「直線で結ばれる、卵の射出経路……?」
「冷たいですな!」「とてもおいしい!」
「投石器のような攻城兵器でも、この遠距離は……」
「む、酒じゃねぇのにうまいじゃねーか! がはは♪」
膝をつき合わせ、あーでもないこーでもないひひひぃん?と――
議論を重ねた結果。
あの卵はやはり、誰かが投げたと言うことになった。
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