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4:龍撃の学院

469:央都猪蟹屋プレオープン、ホイル焼きと温玉

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「だって、しょうがないじゃないよ。温泉卵おんせんたまごが食べたくなっちゃったんだからさっ
 真っ赤に焼ける・・・御神体ごしんたいが、そんなことをのたまいやがる。

「「だからさ♪」っじゃねーよ! どーすんだこれ!?」
 開店かいてん数日後すうじつごひかえた、央都猪蟹屋おうとししがにやから。
 てんを突く灼熱しゃくねつほのおが、吹き上がる!

 それはまるで、工房長ノヴァド鍛冶場かじば坩堝るつぼから――
 鋳型いがたながし込まれる、溶けたてつのようで。

「「「「「「「「あっちゃっちゃっちゃっちゃっ!」」」」」」」」
 みせのまえに投げ出されたのは、洞窟そうくつカフェに居た全員ぜんいん

 見た目は五百乃大角いおのはらがときどき提案ていあんする、未知みち調理法ちょうりほうなかのひとつ。
 〝火熟るホイル焼き〟そのものだ。
 銀色ぎんいろかがやねこ魔物まもののような、異様いよう姿形すがた
 うごめ鉄猫それらは、全部ぜんぶで8ぴき
 リオレイニア、ルリーロ、ラプトル、そしてタター。
 ノヴァド、エクレア、ヤーベルト、あとタウリンおっちゃん

 使つかい捨て強化服シシガニャン、〝耐熱おもち・・・・・〟をみずかやぶり――
 なかから這い出す大人おとなたちと、少女しょうじょメイドひとり。

 星神ほしがみであるかやひめは、ほのおに巻かれてもすずしいかおをしていたが――
 毛先けさきがすこしちぢれていた。

 火傷やけどを負ったやつはいねぇ。
 それでも、かおすすけ――
 かみはチリチリにちぢまり――
 全員ぜんいんおれみてぇなあたまになりやがったぜ♪

「がははははっ――――まるでとりひなだぜ!」
 ゆびを指してわらってやる。

「ぷふふふ、なに言ってんのっ♪ シガミーなんてまっすます、フワッフワのモッコモコじゃんかっ
 うるせぇ、元凶げんきょう
「ばかやろうめ。おまえさんは、焦げちまったいもきのこみてぇな有りさまじゃねーかっ!」
 ふくすそすすを、拭いてやる。

 みんな無事ぶじならわらうさ、ソレくらいしても良いだろうよ。
 なんせ灼熱しゃくねつ対魔王結界たいまおうけっかいへ飛び込み、全員ぜんいんたすけたのはおれだ。

 それでもゲイル少年しょうねんだけは、やはりほのおに巻かれても毛先けさきほども焦げ付かなかった。
 さすがは火龍かりゅうということなのだろうが――
「あ、アツかった。ワレは死ぬかと……オモったぞ?」
 すずしいかおして、なにを言ってるんだ?
 どうにもひとの世に、馴染なじめていないところがあるが――
 かれ率先そっせんして、馴染なじもうとしてはいるのだ。

   §

 それはおれがいそ仕事そごとを、おにぎりに手伝てつだわせ――
 なんなく終わらせた、直後ちょくご

 どごごぉん――かるい地響じひびき。
 あわてて一階いっかいへあがり、とびらを開けたら――
 央都猪蟹屋おうとししがにや予定よてい)が吹っ飛んだ。

 燃えていく猪蟹屋ししがにやに、こえも出せずにいたら――
 ねこ魔物まもののような、強化服きょうかふくたちが二匹にひき
 猪蟹屋ししがにや二階にかいまどを突きやぶり、飛びおりてきた。

 それはおれやレイダが普段使ふだんづかいにしてた、薄桜色ピンクの2ごうと――
 死んだおれが帰ってくるために・・・・・・・・龍脈りゅうみゃくから顕現けんげんさせた10ごうだった。
 ねこかたちがらえがかれてて、片方かたほう手先てさきだけに文字もじが書かれてる。

「みずのたま、みずのたま、みずのたま、つまたいまほう!」
 ほうけていた元侍女長リオレイニア大雨おおあめを降らし、みんなが濡れねずみになっても――
 猪蟹屋ししがにやから吹き出す一筋ひとすじほのおが、おさまる気配けはいはない。

「聞くまでもねぇが、なんだぜありゃ?」
 やぶり捨てた〝耐熱おもち・・・・・〟を、回収かいしゅうしてまわる。

 ふぉん♪
『>吹き上がる主成分はシリカ48%、低粘度の溶岩と判明しました』
 そう言うことを、言ってるんじゃねーが――
 溶岩ようがん……〝かりゅうのねどこ〟の通路下つうろしたながれていた溶けたいわ
 まっすぐに吹き上がってくれてるから、まわりへ燃えひろがらずに済んでいるが――

「「みゃにゃがにゃぁ、みゃふぎゃ?」」
 みせに居た子供こどもたちは、迅雷ジンライ強化服シシガニャンを着せられ――
 かみが焦げるひまもなく、自分じぶん猫足あしで飛びおりてきた。
 危険きけんから身をまもれるように、そのまま着せて置いたが――

「にゃぎゃ? みゃにゃぁーあ
 それにおにぎりが混じり、あーでもないこーでもないと――
 猫語ねこご会話はなしをしてやがって、じつにうるせえ。
 レイダにビビビーは、ねこ共有語ことばをわかってやがるのか?

 ふぉふぉん♪
『>レイダが着る2号に私が接続されている限りにおいて、リアルタイム翻訳が可能です』
 おにぎりが余計よけいなことを言ったら、ちゃんと伏せとけよ?
 ふぉん♪
『>了解です』


「はぁはぁ。大鍋おおなべわかした湯が一瞬いっしゅん蒸発じょうはつし、白煙はくえんに巻かれたあとはもう――」
 護衛対象ごえいたいしょう小脇こわきかかえ、地面じめんに伏す黒騎士くろきし
 あおかおをしている。

「レーニアちゃんのぉーたてでもぉー、ふせぐのがぁー精一杯せいいっぱいでぇー――」
 地面じめんに伏した黒騎士くろきしに、小脇こわきかかえられた辺境伯へんきょうはく名代みょうだい
 おなじくあおかおをしている。
 自分じぶんが吐く狐火ほのおと巻かれるほのおじゃ、そりゃ勝手かってちがうだろうよ。

「あのねつ駄目だめだぜ。あつくて呼吸いき出来できねぇ!」
 そのねつでも溶けない金槌かなづちを、ゴゴンと地面じめんに下ろす工房長こうぼうちょう
 御多分ごたぶんに洩れずあおかお

わたくしとしたことが緊急時きんきゅうじそなえて、神域惑星しんいきへの緊急避難口きんきゅうひなんぐち用意よういしておくべきでした……もぐもぐ
 そりゃ、もっともだが――焦げた自分じぶんかみ毛先けさきを、食うなよ。

 ふぉふぉん♪
『シガミー>星の土地神のお前さんが付いていながら、どうしてこうなった?』
 ふぉふぉん♪
『ホシガミー>返す言葉も御座いませんわ。鼓動も胎動も検出できなかったので、危険度を見誤りました』
 なら仕方しかたねぇが、あおかおはしてねぇ。

「こめんなさい、シガミー。おみせ大変たいへんなことに――」
 ここまですすで真っくろになっても美しさ・・・が――
 半減してねぇ・・・・・・ことに、恐怖きょうふかんじるぜ。
 うつくしいというのは、こういうやつのことを言うんだ。
 すこしあおかおをさせちまった。

店主殿マスターよ、すまぬ。あんな土産みやげを持ち込んだ、ワレに責任せきにんが有る」
 グワララランッ――――地面じめんに置かれる、焦げた魔法杖まほうつえ小太刀こだち
 大人おとなたちをかつぐのを手伝てつだってくれたゲイルは、目に付いた得物えものを持ってきてくれたらしい。

「いや、ありゃ五百乃大角いおのはらわりぃ、気にすんな。兎にかくみんな無事ぶじで、なによりだぜ♪」
 おれはドカリと胡座あぐらをかいて、燃えさかる猪蟹屋ししがにやを見あげた。

蘇生薬エリクサーためし斬りで使つかってしまっていたし、もう天命てんめいが尽きたかとおもいましたよ」
 突っ伏すおっちゃんは〝耐熱たいねつおもち〟につつまれて、まわりなんて見えねぇハズなのに――
 タターをかかえて、おれのあとを付いてきてくれた。
 やはりからだうごかしかたかんしちゃ、頭一あたまひとつ抜けてやがる。
 いつか手合てあわせをしてみたい。

「ネネルドむらのぉーみんながぁ、手を振っていたのぅー!」
「「「にゃみゃがにゃみゃぎゃにゃがみゃ!」」」
「ひひひひひぃぃぃん?」
 うるせぇ。けどまぁ、タターにはかわいそうなことをしたから――
 ちゃんと、なぐさめてやってくれ。

   §

「あのいし……いやたまご五百乃大角おおぐらいに見せねぇよう、指示しじを出さなかったおれがわりぃ」
 おれは道端みちばた車座くるまざはなし込むみんなに、あたまを下げた。

「レイダざいかべ天井てんじょうがなかったら、あぶないところでした……けどシガミーは自室じしつ就寝しゅうしんしていたはずでは?」
 あー。黒眼鏡くろめがねがジッと、おれを見つめてくる。

「もうねぇ厨房ちゅうぼうかまどっていうか、もうロケットエンジンみたいにほのおを噴いたときわぁ、吃驚びっくりしたわよぉおぉ、ウケケケケケケケッ
 わらってんな、妖怪ようかい

「せめてものすくいはぁたまごを茹でた場所ばしょがぁ、対魔王結界たいまおうけっかいなかだったってことですらぁん。ふぅ、けほこほらぁん!」
 あせぬぐすすを吐く、ラプトル第一王女だいいちおうじょ殿下でんか

 彼女かのじょ万能工具まほうつえ使つかって、どうにかこうにか対魔王結界たいまおうけっかいとびら閉じて・・・――
 ほのおを止められたのは、奇跡きせきだった。

王女おうじょさま、本当ほんとうたすかった。おんに着るぜ」
 おれは合掌がっしょうして、こうべを垂れた。
 もしも、対魔王結界たいまおうけっかい以外いがい場所ばしょで、ほのおを吹き出していたらとおもうとふるえが止まらん。
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