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4:龍撃の学院
465:央都猪蟹屋プレオープン、おっちゃんとレイダ材の実力
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「チィェェェェェェェェイ!。」
シュギギギッギィン!
ぬ、鎧の形の人型。
その上半身が、倒れも崩れもしねぇ。
スゥゥゥゥゥ――チャキン♪
ぷっはぁぁぁ――ぜぇはぁ!
「斬れなかったかぁ?」
ほれみろ、格好悪ぃことになっちまったじゃねぇーか!
「ぷひゃっひゃっひゃっ――――だらしないじゃない、シガミー♪」
うるせぇな、飯神のくせに!
「はぁあ!」
おっちゃんのこえ。
目一杯引いた切っ先と並ぶように――
送り手側の肩口を、人型にぶち当てる。
こっちから見ると、まるで――
自分の喉に剣を、突き刺したようにも見える。
ただそこからが、ちょっとした見物だった。
ゴゴォン――「らぁあ!」
ねじり込まれていた体が少しだけ、まっすぐに戻った。
ゴゴォン――「へえぇ!」
おっちゃんの横顔が見えた。
ゴゴォン――「りぃい!」
ガッ――肩で柄頭を打ち込む!
ゴゴォン――「あぁあ!」
おっちゃんの両肩が、人型に対して正対した。
ゴゴォン――「るぅう!」
やっと、おっちゃんの手元が見える。
ゴゴォン――「うぅう!」
なおも突き出される、両手。
ゴリゴリ、ズザザザザァァァァ!
とうとう剣は、体のまえへ突き出された。
つまり剣が通らねぇ分だけ、おっちゃんの体が後ろに下がってきたのだ。
「「「「ぷふふふ」」♪」」
子供たちと根菜と、伯爵夫人が笑う。
ばかやろう。
ありゃ真芯で剣を突き刺さねぇと、出来ねぇ芸当だぜ。
おっちゃんが息も絶え絶えに――小瓶を取りだした。
ありゃさっき、根菜が配った蘇生薬だ。
うしろの席までよろよろと戻り、つっぷすおっちゃん。
肩を押さえるおっちゃんが、光で満たされた。
蘇生薬だのみの、捨て身の剣か。
おれの二と七の型に匹敵する――
貫くためだけの、捨て身の剣。
押しこむときの力の通し方は、体術そのものだった。
たぶん素手の方が、おっちゃんは強い。
「〝攻城のタウリン〟は健在ですね」
「いやいや〝城郭のエクレア〟こそ――」
エクレアが剣で突き飛ばした人型は、対魔王結界の反対側の壁に突き刺さっている。
ふぉん♪
『>〝攻城のタウリン〟という二つ名から類推するに、
本来は打突のための専用の武器か、道具を使用する技と思われ』
「本当だぜ! おっちゃんの突いた人型、少し斬れてる!」
微かにだが、木の部分が見えていた。
ちょっと傷が付いただけのおれとじゃ、雲泥の差だ。
「私ぃのぉーことわぁー、誰もぉー褒めてぇーくぅれぇなぁいぃのぉー?」
カチリと匕首を収めた、伯爵夫人が――
小指で人型を、突いた。
キィン――――ガラッ、ゴガシャァン!
鋭利な切り口。綺麗に真っ二つになった、試し斬りの人形。
土台に立てたジンライ鋼製の柱まで、スッパリと切られていた。
「「「「〝蒼焔の……亡霊姫〟」」」」
大人連中が畏怖の念からか、二つ名をつぶやいた。
「ココォォォン? いま何かぁ、聞こえましたかぁ――?」
「「「「いえっ、何も!」」」」
大人連中が畏怖の念からか、目を逸らす。
ごっひゅるるるるりゅ――と細く、狐火を吐いたのを見るに。
〝お化け姫〟は、そう呼ばれたくないみたいだが――
「いいな、二つ名持ちは。どういう奴か、一発でわかる」
「くすくす♪」
騎馬隊隊長が、おれを見て微笑んだ。
「隊長さんには、二つ名はないのかい?」
「私は、そんな大層な者ではありません。シガミーさまこそ、二つ名で呼ばれていないのが不思議ですよ?」
彼女の槍はレイダ材に、傷ひとつ付けられなかった。
けど、しなる槍の勢いで檜舞台から、ふっとばすほどの見事な技だった。
「さまは止してくれ。えっと――」
「彼女の名はイラ・グロッグ。央都の区画警邏担当にして、〝北限の歌姫〟と噂されるほどの……」
リオレイニアが説明してくれ――
「えっ、あるじゃねーかっ! 二つ名が!」
嘘つきか。隊長さんは、嘘をついたのかっ?
「やめて、リオレイニア。あなたこそ、〝美の女神の生まれ変わり〟と町で評判ですよ」
「あー、知ってる。〝イオレイニアさま〟でしょ!」
ビビビーが楽しそうに、寄ってきた。
「えぇー、あたくしさまはここに居ますけどぉ? 生・き・てぇ・ますけぇどぉー!?」
少なくともいまその体わぁ御神体で、生きちゃいねぇーだろうが。
「シガミーノ二つ名ハ、〝女神ノ料理番〟デ良いノでは?」
そりゃ、おれが自分で言ってるだけだぜ。
「二つ名じゃねぇが――それで我慢するかぁ」
おれの生きる目的が、ちゃんとわかるからな。
「えっ、〝芸を披露すると、必ず爆発する子供〟じゃないのっ?」
「〝ガサツだけど、根は乱暴者〟では?」
パーティーメンバーだから、遠慮はいらない。
けどおまえら、そりゃただの悪口だろうが。
爆発してねぇのは唱えると、どういうわけだか威力が増す――
〝文言〟を発してねぇからだぜ。
ふぉん♪
『>自重してください』
「じゃぁそろそろ、俺の出番だろ?」
ヴォヴォゥゥウン――――ゴォン!
まるでいつもの鍛冶仕事のように、振りあげられた鉄塊。
キキキキキキキキィィィンッ――――――――ゴッズムン!
淀みのない振りおろし。
金槌は、見たことのない複雑さの――
〝魔法の神髄〟の軌跡を、空中に残し――
グワラララランッ♪
ノヴァドは一体の人型を、うすい盆のようにのしちまった。
工房長ノヴァドの、鉄塊のような巨大な金槌は――
早い話が魔法杖の一種だ。
魔法の神髄で描かれた、複雑な光の文様。
幾重にも折り重なった光が、振りおろされた金槌に追いつくと――
おれの小太刀を跳ね返したほど硬い人型が、ぺしゃんこになった。
「ふぅ、どーでぇい♪ ただ、こいつでも形状を変えただけで、厳密には破壊できてねーけどな!」
わからん。つぶれてるじゃんか?
「シガミー、斬れるかい?」
盆になったそれを、拾いあげるエクレア。
「いーや、無理だぜ」
形が変わっただけというなら、人型表面のレイダ材の層は幾重にも重なってるってこったろ?
ふぉん♪
『>そうなります。構造的には轟雷の複合装甲と同じ物です』
「これは既に私の大盾よりも、堅牢なのでは?」
蒼く輝く盆を、おれに投げて寄こすエクレア。
ヴッ――ドズン!
猪蟹屋謹製の収納魔法具から、いつもの大盾を取りだす顔が良い男(新婚)。
「そうだなレイダ。あの盾に、こいつを塗ることは出来るか?」
おれが持つ盆をココンと叩き、エクレアの大盾を指さす――
小柄で屈強な工房長。
ちなみに工房ってのは、ガムラン町にある鍛冶場のことだ。
同じく小柄な種族の、屈強な男たちにより経営されている。
今日は部下たちを、連れてきてねぇみたいで助かった。
もし全員居たら間違いなく、手持ちの酒じゃ朝まで――
持たなかっただろうからなー。
おれとエクレアとノヴァドから詰めよられ――
「どなの、ジンライ?」
棒へ丸投げする、子供。
「炭化させル必要がありマす」
ふぉん♪
『解析指南>浸炭窒化焼入処理などを行うことで、鉄鋼表面に強固な炭化層を生成可能ですが、その時点でレイダ材を凌ぐ硬度を獲得するため、現実的ではありません』
ふぅん。わからん。
わからんけど――
「炭ってことわぁ……おれの刀ぁ、灰を練り込んであるぞ? なぁ工房長?」
おれは小太刀を、手渡してみた。
「おう確かに、ヒーノモトーの秘伝でジンライ鋼を打ったぞ!」
こうして事あるごとに話題にしてるし、秘伝でも何でもねぇが。
小柄な割に大きな手で、スラリと抜かれる小太刀。
色を漆黒にしてあるから、小太刀の形に穴が空いてるみてぇだ。
「レイダ、これも塗ってみてくれないか?」
ノヴァドが持つ刀を、指さした。
「ええーい♪」
ギラリン――――♪
「「「ほほぉう♪」」」
「「きれい!」」「見事ですね」
湧く大人と子供たち。
刃先から強く、ギラッギラに光る刀。
中子……柄に近くなると蒼色は漆黒に溶けて、違いがわからなくなった。
こらぁ、見た目が凄ぇ綺麗だぜぇ♪
「よし、じゃぁ斬ってみるかぁ♪」
やべぇ、ちぃと楽しくなってきた。
「おひとつどーぞ♪」
ヴッ――ゴドンッ!
茅の姫が置いた人型は、たぶんエクレアが弾き飛ばしたやつだ。
拾って持ってきてくれたらしい。
残念ながらやっぱり、傷一つ付いてなかった。
「チィェェェェェェェェイ!。」
シュギギッザッギッィンッ――――ガギャギンッ!!!
あっぶねっ――すぽん♪
折れた切っ先を、即座に仕舞った!
ぷっはぁぁぁ――ぜぇはぁ!
「ふぅい。折れちまったか!」
しかも、鞘の鯉口が割れちまった。
「硬いレイダ材が斬れるが、折れやすい……のかぁ?」
髭に手を延ばす工房長。
相当、悩んでるときの仕草だ。
人型には大きく、切り込みが入っていた。
「こりゃ、手に負えねぇぞ?」
腕を組んだおれの首が、横に曲がっていく。
これも相当、悩んでるときの仕草だ。
つい、出ちまう。
面白ぇもんにはなりそうだが――ガリガリと頭を掻いてたら。
その手を、茅の姫に止められた。
「シガミーの小太刀の一撃を凌ぐ、木で出来た軽いお盆。それだけで使い道としては、上々かと思いますけれど? プークス?」
手にした蒼盆の上には、出せる料理の一覧――光る黒板が載せられていた。
シュギギギッギィン!
ぬ、鎧の形の人型。
その上半身が、倒れも崩れもしねぇ。
スゥゥゥゥゥ――チャキン♪
ぷっはぁぁぁ――ぜぇはぁ!
「斬れなかったかぁ?」
ほれみろ、格好悪ぃことになっちまったじゃねぇーか!
「ぷひゃっひゃっひゃっ――――だらしないじゃない、シガミー♪」
うるせぇな、飯神のくせに!
「はぁあ!」
おっちゃんのこえ。
目一杯引いた切っ先と並ぶように――
送り手側の肩口を、人型にぶち当てる。
こっちから見ると、まるで――
自分の喉に剣を、突き刺したようにも見える。
ただそこからが、ちょっとした見物だった。
ゴゴォン――「らぁあ!」
ねじり込まれていた体が少しだけ、まっすぐに戻った。
ゴゴォン――「へえぇ!」
おっちゃんの横顔が見えた。
ゴゴォン――「りぃい!」
ガッ――肩で柄頭を打ち込む!
ゴゴォン――「あぁあ!」
おっちゃんの両肩が、人型に対して正対した。
ゴゴォン――「るぅう!」
やっと、おっちゃんの手元が見える。
ゴゴォン――「うぅう!」
なおも突き出される、両手。
ゴリゴリ、ズザザザザァァァァ!
とうとう剣は、体のまえへ突き出された。
つまり剣が通らねぇ分だけ、おっちゃんの体が後ろに下がってきたのだ。
「「「「ぷふふふ」」♪」」
子供たちと根菜と、伯爵夫人が笑う。
ばかやろう。
ありゃ真芯で剣を突き刺さねぇと、出来ねぇ芸当だぜ。
おっちゃんが息も絶え絶えに――小瓶を取りだした。
ありゃさっき、根菜が配った蘇生薬だ。
うしろの席までよろよろと戻り、つっぷすおっちゃん。
肩を押さえるおっちゃんが、光で満たされた。
蘇生薬だのみの、捨て身の剣か。
おれの二と七の型に匹敵する――
貫くためだけの、捨て身の剣。
押しこむときの力の通し方は、体術そのものだった。
たぶん素手の方が、おっちゃんは強い。
「〝攻城のタウリン〟は健在ですね」
「いやいや〝城郭のエクレア〟こそ――」
エクレアが剣で突き飛ばした人型は、対魔王結界の反対側の壁に突き刺さっている。
ふぉん♪
『>〝攻城のタウリン〟という二つ名から類推するに、
本来は打突のための専用の武器か、道具を使用する技と思われ』
「本当だぜ! おっちゃんの突いた人型、少し斬れてる!」
微かにだが、木の部分が見えていた。
ちょっと傷が付いただけのおれとじゃ、雲泥の差だ。
「私ぃのぉーことわぁー、誰もぉー褒めてぇーくぅれぇなぁいぃのぉー?」
カチリと匕首を収めた、伯爵夫人が――
小指で人型を、突いた。
キィン――――ガラッ、ゴガシャァン!
鋭利な切り口。綺麗に真っ二つになった、試し斬りの人形。
土台に立てたジンライ鋼製の柱まで、スッパリと切られていた。
「「「「〝蒼焔の……亡霊姫〟」」」」
大人連中が畏怖の念からか、二つ名をつぶやいた。
「ココォォォン? いま何かぁ、聞こえましたかぁ――?」
「「「「いえっ、何も!」」」」
大人連中が畏怖の念からか、目を逸らす。
ごっひゅるるるるりゅ――と細く、狐火を吐いたのを見るに。
〝お化け姫〟は、そう呼ばれたくないみたいだが――
「いいな、二つ名持ちは。どういう奴か、一発でわかる」
「くすくす♪」
騎馬隊隊長が、おれを見て微笑んだ。
「隊長さんには、二つ名はないのかい?」
「私は、そんな大層な者ではありません。シガミーさまこそ、二つ名で呼ばれていないのが不思議ですよ?」
彼女の槍はレイダ材に、傷ひとつ付けられなかった。
けど、しなる槍の勢いで檜舞台から、ふっとばすほどの見事な技だった。
「さまは止してくれ。えっと――」
「彼女の名はイラ・グロッグ。央都の区画警邏担当にして、〝北限の歌姫〟と噂されるほどの……」
リオレイニアが説明してくれ――
「えっ、あるじゃねーかっ! 二つ名が!」
嘘つきか。隊長さんは、嘘をついたのかっ?
「やめて、リオレイニア。あなたこそ、〝美の女神の生まれ変わり〟と町で評判ですよ」
「あー、知ってる。〝イオレイニアさま〟でしょ!」
ビビビーが楽しそうに、寄ってきた。
「えぇー、あたくしさまはここに居ますけどぉ? 生・き・てぇ・ますけぇどぉー!?」
少なくともいまその体わぁ御神体で、生きちゃいねぇーだろうが。
「シガミーノ二つ名ハ、〝女神ノ料理番〟デ良いノでは?」
そりゃ、おれが自分で言ってるだけだぜ。
「二つ名じゃねぇが――それで我慢するかぁ」
おれの生きる目的が、ちゃんとわかるからな。
「えっ、〝芸を披露すると、必ず爆発する子供〟じゃないのっ?」
「〝ガサツだけど、根は乱暴者〟では?」
パーティーメンバーだから、遠慮はいらない。
けどおまえら、そりゃただの悪口だろうが。
爆発してねぇのは唱えると、どういうわけだか威力が増す――
〝文言〟を発してねぇからだぜ。
ふぉん♪
『>自重してください』
「じゃぁそろそろ、俺の出番だろ?」
ヴォヴォゥゥウン――――ゴォン!
まるでいつもの鍛冶仕事のように、振りあげられた鉄塊。
キキキキキキキキィィィンッ――――――――ゴッズムン!
淀みのない振りおろし。
金槌は、見たことのない複雑さの――
〝魔法の神髄〟の軌跡を、空中に残し――
グワラララランッ♪
ノヴァドは一体の人型を、うすい盆のようにのしちまった。
工房長ノヴァドの、鉄塊のような巨大な金槌は――
早い話が魔法杖の一種だ。
魔法の神髄で描かれた、複雑な光の文様。
幾重にも折り重なった光が、振りおろされた金槌に追いつくと――
おれの小太刀を跳ね返したほど硬い人型が、ぺしゃんこになった。
「ふぅ、どーでぇい♪ ただ、こいつでも形状を変えただけで、厳密には破壊できてねーけどな!」
わからん。つぶれてるじゃんか?
「シガミー、斬れるかい?」
盆になったそれを、拾いあげるエクレア。
「いーや、無理だぜ」
形が変わっただけというなら、人型表面のレイダ材の層は幾重にも重なってるってこったろ?
ふぉん♪
『>そうなります。構造的には轟雷の複合装甲と同じ物です』
「これは既に私の大盾よりも、堅牢なのでは?」
蒼く輝く盆を、おれに投げて寄こすエクレア。
ヴッ――ドズン!
猪蟹屋謹製の収納魔法具から、いつもの大盾を取りだす顔が良い男(新婚)。
「そうだなレイダ。あの盾に、こいつを塗ることは出来るか?」
おれが持つ盆をココンと叩き、エクレアの大盾を指さす――
小柄で屈強な工房長。
ちなみに工房ってのは、ガムラン町にある鍛冶場のことだ。
同じく小柄な種族の、屈強な男たちにより経営されている。
今日は部下たちを、連れてきてねぇみたいで助かった。
もし全員居たら間違いなく、手持ちの酒じゃ朝まで――
持たなかっただろうからなー。
おれとエクレアとノヴァドから詰めよられ――
「どなの、ジンライ?」
棒へ丸投げする、子供。
「炭化させル必要がありマす」
ふぉん♪
『解析指南>浸炭窒化焼入処理などを行うことで、鉄鋼表面に強固な炭化層を生成可能ですが、その時点でレイダ材を凌ぐ硬度を獲得するため、現実的ではありません』
ふぅん。わからん。
わからんけど――
「炭ってことわぁ……おれの刀ぁ、灰を練り込んであるぞ? なぁ工房長?」
おれは小太刀を、手渡してみた。
「おう確かに、ヒーノモトーの秘伝でジンライ鋼を打ったぞ!」
こうして事あるごとに話題にしてるし、秘伝でも何でもねぇが。
小柄な割に大きな手で、スラリと抜かれる小太刀。
色を漆黒にしてあるから、小太刀の形に穴が空いてるみてぇだ。
「レイダ、これも塗ってみてくれないか?」
ノヴァドが持つ刀を、指さした。
「ええーい♪」
ギラリン――――♪
「「「ほほぉう♪」」」
「「きれい!」」「見事ですね」
湧く大人と子供たち。
刃先から強く、ギラッギラに光る刀。
中子……柄に近くなると蒼色は漆黒に溶けて、違いがわからなくなった。
こらぁ、見た目が凄ぇ綺麗だぜぇ♪
「よし、じゃぁ斬ってみるかぁ♪」
やべぇ、ちぃと楽しくなってきた。
「おひとつどーぞ♪」
ヴッ――ゴドンッ!
茅の姫が置いた人型は、たぶんエクレアが弾き飛ばしたやつだ。
拾って持ってきてくれたらしい。
残念ながらやっぱり、傷一つ付いてなかった。
「チィェェェェェェェェイ!。」
シュギギッザッギッィンッ――――ガギャギンッ!!!
あっぶねっ――すぽん♪
折れた切っ先を、即座に仕舞った!
ぷっはぁぁぁ――ぜぇはぁ!
「ふぅい。折れちまったか!」
しかも、鞘の鯉口が割れちまった。
「硬いレイダ材が斬れるが、折れやすい……のかぁ?」
髭に手を延ばす工房長。
相当、悩んでるときの仕草だ。
人型には大きく、切り込みが入っていた。
「こりゃ、手に負えねぇぞ?」
腕を組んだおれの首が、横に曲がっていく。
これも相当、悩んでるときの仕草だ。
つい、出ちまう。
面白ぇもんにはなりそうだが――ガリガリと頭を掻いてたら。
その手を、茅の姫に止められた。
「シガミーの小太刀の一撃を凌ぐ、木で出来た軽いお盆。それだけで使い道としては、上々かと思いますけれど? プークス?」
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