滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ

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4:龍撃の学院

464:央都猪蟹屋プレオープン、居合い合戦ぼっぱつ

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「そらぁ、おもしろそうどすなぁ? せやかて、わては見てるだけというのわぁ、ちぃとつまらんのとちゃいますかぁ?」
 ふろころさぐり、匕首あいくちを取り出す辺境伯夫人へんきょうはくふじん
 ちなみに本日ほんじつのお召しものは、なぜか冒険者ぼうけんしゃギルドの制服せいふく
 腰巻スカートすそなげぇし――
 したくろ細袴ズボンを穿いてるし――
 胸元むなもと飾り帯リボン一本いっぽんきりでほぞまで垂れてるし――
 まるで陣羽織はれぎだ。

「そりゃかまわねぇが――そいつじゃみじかすぎねぇかぁ?」
「ココォォン♪ 寸足すんたらずでもぉ、わて……わたくしのぉいのちおぉー絶てるくらいにわぁ・・・・・・・・・業物わざもので・す・わぁ♪」
 あ、懐刀ふところがたなをつかんだせいで、冷静れいせいになったらしい。
 なまりがひっこんで、いつもの五百乃大角いおのはらみたいな口調しゃべりもどった。

 その場にいた全員ぜんいんの、いきが止まる。
 生意気なまいき有名ゆうめい子供レイダでさえ、いきを詰まらせてやがる。
 そりゃそうだ。辺境伯へんきょうはく名代みょうだい名乗なのり、自由じゆう魔物討伐まものとうばつに出かけては――
 見たこともないような、巨大きょだい獲物えものを持ちかえる。
 そんな御仁ごじんを〝息の根ごと・・・・・制圧可能せいあつかのう武器ぶき所在しょざい〟を軽々かるがるくちにすることは――
 ある意味いみ脅迫きょうはくにちかいものがある。

「あわわわわっ!?」
「やややややっ!?」
 おっちゃんとヤーベルトが、衝立ついたての向こうからころがり出てきた。
 あの沈着冷静ちんちゃくれいせいなおっちゃんまで、あわあわしてる。

「こ、此れは此れは、辺境伯へんきょうはく夫人ふじんルリーロさま。おはつにお目に掛かります。わたくし、ヤーベルト・トングともうします。初等しょとう魔導学院まどうがくいんにて教師きょうしいたしております。おうわさはかねがね」
 そりゃそーだよなぁー。この場に居あわせたものが、身分みぶんを明かさないってことは――
 〝彼女おくがたさま楯突たてつ弓引ゆみひき、寝首ねくびを掻きかねない〟。
 そう言ってるも、おなじだからな。

伯爵夫人はくしゃくふじんさま。いえ、元魔導もとまどう騎士団きしだん総大将そうだいしょうルリーロさま。おひさしぶりで御座ございます。タウリン・ハラヘリアルです。現在げんざいは、初等魔導しょとうまどう学院学舎内がくいんがくしゃないで、ギルド支部出張所しぶしゅっちょうじょ職員しょくいんいたしております」
 っていうか、おっちゃんは顔見知かおみしりか。もと……なんだって?

 すっぽこ――こぉん♪
 てちり。
「あらぁぁん? たのしそうなこと、やってるわねぇん
 やっとかえって来やがったか。
 どこ行ってやがった!
 ルリーロさまが、さきほどからいらっしゃってやがって――
 大変てーへんだったんだからなぁ!

「あらぁん、ルリーロちゃん。おひさー
 おれにひっつかまれた御神体メガミさまが、軽口かるくちたたきやがる。

「イオノファラーちゃぁん。わたくしなのんでぇおきましぃたぁよぉねぇぇ?」
 ごぉ――風向かざむきが変わり、ぼぉうぼぉうぼぼぉう♪
 狐火きつねび空中ちゅうただよい、ながれてくる。

「え、なにがぁ? なんだっけ
 おれの手いおのはらあつまる狐火きつねび
 避けても、あとを付いてくる。

天狗てんぐ野郎やろうさまのぉー、こ・と・で・す・わぁ?」
 ならんだ両の瞳つきのひかりが、おれを――
 おれの手のなかの、御神体ごしんたいを――
 ぎろりと見つめて、はなさない。

「えーっ、天狗てんぐぅー? あぁ、もしも天狗てんぐたたかうようなところに居あわせたら、すぐにお知らせする・・・・・・っておはなしぃー
 いかん。御神体こいつを持ってると、おれまで狐火きつねびに焼かれちまう。
 あつくはねぇけど、怖気おぞけはしる。
 御神体ごしんたいひねり込むように、ほうり投げた。

「ぎゃぃやややややぁぁぁぁっ――――!?
 ぎゅるるると錐揉きりもみで飛んでく、根菜こんさい御神体ごしんたい)さま。

「クゥーッツクツクツ、ケッタケッタケタケタァ――――ぱしん♪」
 短刀あいくち素早すばやこしのベルトに刺し、両手りょうて根菜それをつかむ辺境伯夫人へんきょうはくふじんにして――
 なんだっけ、さっきおっちゃんが言ってたのわぁ?

 ふぉん♪
『>元魔導騎士団総大将です。コントゥル辺境伯領が央都に匹敵する兵力を、私有する理由の一端であると類推します』
 リオからはなにも聞いてねぇ。
 「コントゥル家は央都おうとの成り立ちに、ふかかかわってる」というのは、聞いてたが。
 細顎ほそあごゆびを這わす、あの仕草しぐさ
 どうやらリオも知らないことだったらしい。

「ぎゃぁー! ご、ごめぇんー、すっかりわすれてたわぁぁん! ちゃ、ちゃんとあとで見られるようにしてあるからっ! ねっ、迅雷ジンライクーン!?

 レイダの手をするりと抜け出した、白金の棒ジンライが――ヴォォォォンッ♪
 ぐるんと旋回せんかいすると――ヴュパァァァッ♪
『ぐぅわぉぅるるるるぅ――――!!!』
 岩場いわば火吐ひはおおかみみたいな、うなごえを上げるご令嬢じょうが――
 壁際かべぎわあらわれた。
 そのうごきに合わせ、ヴヴォヴォヴォ――――♪
 厚みを・・・増していく画面がめん

「こいつぁ、まえに見たニゲルせんのと……おな仕組しくみか?」
 この奥行おくゆきがある映像えいぞう伯爵はくしゃく兵隊へいたいたちが見た、かべうつした画面がめんちがって――
 まるでその場・・・に居るように、ひとうごきやいきづかいまでも見える・・・

「じゃぁ迅雷ジンライ。のちほど、ゆっくり見せてぇいただぁけぇまぁすぅかぁー?」
 根菜メガミてのひらうえもてあそぶ、妖狐ようこルリーロ。
「はイ、よロこ
 直立不動ちょくりつふどうからの水平すいへいジンライこうべを垂れているのだ。
 ふぅ、折角せっかくだからおれもあとで、見せてもらうかな。

「さて、小太刀こだちで切れるか? 錫杖しゃくじょうが要るか?」
 レイダざいかたささは、たぶん相当そうとうだ。
 切れるかどうかは、やってみねぇとわからん。

   §

「ずいぶん増えたな……工房長ノヴァドためし切り人形にんぎょうあとふたつ追加ついかしてくれやぁ」
 おれ、ルリーロ、そしてなんとおっちゃんも参加さんかすることになった。

「まさかこんなところで会うとは、おもいませんでしたよタウリン」
 奥方おくがたさまを護衛ごえいしてきた黒い騎士エクレア
「それは、こちらの台詞セリフですよエクレア。アンナはお元気げんきですか?」
 制服せいふくそでをまくり上げる、おっちゃん。
 エクレアはそれなりの地位ちいにのぼりつめた、実力者じつりょくしゃである。
 そのかれ十年来じゅうねんらい友人ゆうじんのように、言葉ことばを交わすおっちゃんは――

 ふぉん♪
『>見た目通りの、ただのギルド支部職員ではなさそうですね』
 そういうことだなー。
 おにぎりを見てもどうじなかったのには、それなりの理由りゆうがあったらしい。

 どかどかどか――『▼▼▼ピピピッ♪
 なんだぁ、まだうえから降りてくるやつが居るぞ。

「ノヴァドわりぃが、もう一体追加いったいついかだ」
 降りてきたのは騎馬隊隊長きばたいたいちょう
「ルリーロさま、リオレイニアさん。子供こどもたちを全員ぜんいんおくとどけてきました」
 彼女かのじょも、おにぎりを見てどうじなかったひとりだ。
 是非ぜひとも参加さんかさせよう。

 檜舞台ひのきぶたいうえならべられたおおきな人型ひとがたは、六体ろくたい
 木で出来でき甲冑かっちゅう上半身じょうはんしん)を、土台どだいに載せてある。
 おれとルリーロとリオレイニアで、手分てわけして焼き目を付けた。
「ええええーい!」
 その全部ぜんぶをレイダが、〝レイダ材・・・・〟に塗り替えていく。
 むらにならないよう、小刻こきざみに独古杵どうぐを振るっている。
 もう慣れたもので、おれがやるよかはやいかもしれん。

「ふぅ、出来できたよ♪ けどシガミーからはじめたら、すぐ勝負しょうぶが付いちゃうんじゃ?」
 小太刀こだちかまえたおれに、よこやりを入れるレイダ材職人レイダ

「そんな曲がったけんで、こんなてつみたいにかたくなった木が、切れるわけないじゃない♪」
 む? ビビビーが居やがる。
 今日きょうも泊まっていく気か?
 サキラテの別邸べっていがあるんだから、ソッチへちゃんとかえらせねぇとなぁ。

「「あはは♪」」
 キィン、カラァン、キラキラァン♪
 子供たちがきどもが三つまた一本箸フォーク細身の匙スプーンで、おもおもいにたたおとは――
 たしかにてつだ。しかも相当硬そうとうかてぇぞ。
 かたつくられた火箸ひばしや、鉄鈴てつすず金剛杵こんごうしょが当たって鳴るときのおとがしてる。
 おれが大道芸だいどうげいをするときに退けてた、かた金物かなものおとだ――

 ふぉふぉん♪
『>シガミー、バイタルに滅の波形が顕在化しています。自重してください?』
「(む? そんなつもりはねぇんだが、こう殺気立さっきだってるやつらにかこまれるとよぉ)」
 だってな、ルリーロの構え・・がもうやべぇ。
 匕首あいくちを抜いたらもうほとんど、ぶつかる間合まあいいだ。

 それと、切るのが仕事しごとやつらに混じる――おっちゃんのかまえがちょっと見たことがなくてな。
 抜き身ぬいたけん逆手さかてにもち、水平よこかまえている。
 引き手はつかにぎってなくて、柄頭つかがしらよこからギュッと押さえ込む始末しまつだ。
 まさか、〝突く・・〟つもりなのか?

 ゴドゴォン――――!
 おもそうなおとに振りかえったら、工房長ノヴァドまで鉄塊かなづちかまえてやがる。
「ガハハハッ! もし斬れねぇ場合ときは、おれがへし折ってやるから安心あんしんしろ!」

「(こりゃ、仕込しこ錫杖しゃくじょう直刀ちょくとう)を使つかったほうが良くね?)」
 ふぉん♪
『>自重してください』
 けどよ。おれだけ斬れねぇなんてことになったら、格好かっこうが付かねぇぞ。
 ふぉん♪
『ホシガミー>自重してください。くすくす?』
 くそう。
 おれは小太刀こだちを、開けた・・・
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