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4:龍撃の学院
451:猪蟹屋四号店(央都拠点)、家宝勝負観戦会場
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対魔王結界を縁取り蹂躙していた、狐火・月輪が――ぽひゅぽわぁん♪
気の抜けた音と共に、霧散した。
リカルルの魔力が尽きると、狐火を維持できなくなるのは当然だ。
だが、今彼女は蘇生薬を使った直後のように――
無傷の状態で、そこに居る。
神力は元に戻らんようだが、〝狐火・仙花〟も〝狐火・月輪〟も撃ち放題だ。
「(なぁ、さっきの光の輪に姫さんが、〝狐火・月輪〟って名付けたんだが――)」
ふぉん♪
『イオノ>狐火・かちりん?
なんか、かわいいわねん♪』
「(〝月輪〟な。月みたいな丸い形のことだ。それで、〝ウィルオーウィスプ・レーザー〟みたいな字は有るか?)」
凹んだ金網を――ヴッ、ゴゴンメキメキャ!
ざっと直しながら、聞いてみた。
ふぉん♪
『イオノ>それって、迅雷が振ったルビでしょ?
閉じた光の輪っかなら、さしずめ、
〝クローズドサーキット・レーザー〟ってとこかしらん?』
「(そいつぁ、どんな意味があんだ?)」
ウィルオーウィスプ・レーザーは〝鬼火怪光線〟だろ。
ふぉふぉん♪
『イオノ>妙に食いつくわね?
粒子加速器だと〝リニアコライダー〟になっちゃうし、
封鎖怪光輪?』
『ヒント>クローズドサーキット/競技を行うための閉じられた周回路のこと』
わからん。「飯を食わせろ」と言い出さねぇように、気をそらす話を振ってみたが。
「〝封鎖怪光輪〟……あんまり格好良くねぇなー」
ヴヴヴッ――――ゴゴンガガンドゴドゴォン!
灯りの魔法具が壊れて薄暗ぇから、足場の下に沢山設置した
パパパパァァァァッ――――!
よし、明るくなった。
赤い狐も天狗役も、なんか狙ってやがる。
洞窟中央寄り、対峙したまま微動だにしなくなった。
これだけ大暴れしたんだしさ――
もう良いよね? 終わりにしよぅよ?
「――ぐっきゅりゅるるっぅ?――」
女神の腹の虫も、そう言っている。
けど余計なことをして、噛みつかれるのは避けたいわけで。
もうすこし、見守ろう。
「カァッ――――――――!」
天狗役の、何の変哲もない――一の構え。
狙いへ打込み、元に戻る。
基本の中の基本だが、あと数回当てるだけなら悪くはない。
「すぅぅぅぅうっぅっ――――――」
狐は中腰、大きく息を吸っている。
手は一本だけ、地につけてる。
天狗は、もうすぐミノタウ装備一式の奥の手が使えるが――
向こうも奥の手を、狙ってる。
差し違える覚悟があるなら、先に打ち込む方が有利だ。
「ココォォォォン、ココォォォォン、ココォォォォォォォッォォォォォォォォォッォンッ――――――――!!!」
先に手を出されたが、また三度の遠吠えだった。
三つの光輪が飛び出し、三つ巴の――――やべぇっ!?
おれは、金剛力ばりの全力で――階段を跳びあがり、上階への扉を開いた!
§
「まさか、縦横に光輪を放つとは、思いませんでしたわ、くすくす?」
おれを出迎えたのは、前掛け姿の可憐なおれ。
星神・カヤノヒメだった。
猪蟹屋の店先になる予定の、土間の横壁。
そこに大きく映し出されているのは、赤い獣のような女性冒険者。
ぶつかり合うのは、墨色の大鎧の男性修験者。
「おまえら……いや、君たち、これは一体?」
呆気にとられるおれ、いや烏天狗。
「家宝を受け取りに来て、家宝を一つ使っていては――はぁ」
「ですが血気盛んな戦いざまは、兵たちには良い息抜きになったようですよ」
伯爵さんと参謀の人。
ふっかふかの長椅子に座って、水……いやありゃ、おれの澄み酒じゃねぇか。
うをおをおををををおをぉおぉぉぉっ――リカルルさまぁー!!!
店の外からも大歓声が轟いてるし、どういうことだい?
パチパチパチイィ――――ジュワァァァッ♪
「にゃみゃがぁー♪」
大量の串揚げを、大皿に盛り――
手近な盆へ載せる、強化服自律型一号おにぎり。
「もらっていきまぁーす♪」
盆を抱え外へ駆けていく、少女メイド・タター。
「ひっひひひぃぃぃぃんっ?」
「あっ、ちょっとまって!? ソッチじゃないでしょ?」
きゃぁぁぁぁっ――――!?
ぽっきゅららと、遠ざかる爪音。
あれはいつものことだ。助けるのは後回しで良いか。
現場責任者の、「リオレイニアさんはどこかな?」
「くすくす♪ 猪蟹屋の倉庫として借り受けた、お向かいへ行っていますわ♪」
ごった返す店先を歩く間にも、茅の姫は空いた食器を片付け――
通りの通行状況を確認し、高貴なお歴々の顔色をうかがい――
仕込んであったらしい大量の串肉を、鍋番のおにぎりに渡したりしている。
この状況は――フェスタの出し物みたいなこれは――お前さんが用意したのか?
ふぉふぉん♪
『ホシガミー>いえ、それが。リオレイニアさんにシガミーの居場所を聞かれたので――地下の様子を盗み見たら――』
目線を横へ放り投げる、星神。
金糸が揺れ、給仕服がはためく。
実に、しゃらあしゃらしてやがるな。
おれが育った姿とは、とても思えん。
「(誰かに、見つかったのか?)」
視線を追うと、そこには。
おにぎりの肩越しに椅子に立ち、串揚げの手際に釘付けの――
ふぉん♪
『ホシガミー>はい。ヴィヴィーさんにいつの間にか背後を取られていて』
星神の目も盗むとは――サキラテ一家、一度、調べておくべきかもしれん。
「おおっ――天狗殿ぉ! 何という離れ業かっ!!」
伯爵さまが、はしゃいじゃってるじゃんか。
せめてもの救いは、この場にルリ……いや考えるな。
想うは縁起。現に換る。
横壁を見たら、追い詰められた天狗が――
ロッドを袈裟懸けに構えてた。
シュッゴオォォォォォォォォォォォッ――――ヴァチガチバチガチッ!
ふぉん♪
『ヒント>魔導伝導効率1300%ということは、抵抗値が極端に少ないため、
光輪のエネルギーに直接触れても、受け流すことが可能です』
だからってなぁ。
縦横に大きくなったり小さくなったりして、切り刻もうとしてくる光輪を――
ロッドの端と端で受け止めるか?
もう飯がなくなるだろ、お前。
ふぉん♪
『>合成光/DCコンバーターの開発に成功しました。
神力給電を開始します』
わからん。
けど、給電ってのは旧シガミー邸に設置した、神力台の――
〝賄屋礼巣充電〟だろ?
ってことは、飯を食いながら戦える……無敵じゃんか。
ふぉん♪
『シガミー>姫さんに怪我をさせるなよ。みんなで見物してるぞ?』
ふぉふぉん♪
『>了解しました』
じゃぁ、こっちはどうするか。
天狗役の手前、弟子である烏天狗が――
シガミー姿に戻るわけにもいかんし。
「あっ、カラテェー君だ! おいでよっ、王女さまも来てるよ!」
レイダに見つかった。
ゴーレムの姫さん……王女殿下もいるのか。
ますます、シガミーに戻れねぇ。
おれが物を作るときの、癖みたいなのを全部見られてるから――
烏天狗のまま凝ったことをすると、シガミーとばれかねん。
「お初に、お目に掛かります。ラプトル王女さま」
「初めまして。お噂はぁ、聞いていますららぁん♪」
勧められるまま、席に着く。
おれの裏天狗は、迅雷に渡しちまったし――
もう、シガミーはさぼってる体裁で、話を進める。
「所で、シガミーちゃんは? 今日は居ないのかい?」
おれ、いやぼくは、厳密には猪蟹屋関係者ではないから、素直に訊いてみた。
「それがねぇー。さっきまで居たんだけど、慌ててどっか行っちゃってそれっきりなんだよ!」
レイダが怒っている。
どうやら、忙しいタターの代わりに、王女のお世話をしているらしいし。
今日のレイダは、偉いな。
いたたまれなくなったおれは、姫さんに好評だったあれを作ってやることにした。
気の抜けた音と共に、霧散した。
リカルルの魔力が尽きると、狐火を維持できなくなるのは当然だ。
だが、今彼女は蘇生薬を使った直後のように――
無傷の状態で、そこに居る。
神力は元に戻らんようだが、〝狐火・仙花〟も〝狐火・月輪〟も撃ち放題だ。
「(なぁ、さっきの光の輪に姫さんが、〝狐火・月輪〟って名付けたんだが――)」
ふぉん♪
『イオノ>狐火・かちりん?
なんか、かわいいわねん♪』
「(〝月輪〟な。月みたいな丸い形のことだ。それで、〝ウィルオーウィスプ・レーザー〟みたいな字は有るか?)」
凹んだ金網を――ヴッ、ゴゴンメキメキャ!
ざっと直しながら、聞いてみた。
ふぉん♪
『イオノ>それって、迅雷が振ったルビでしょ?
閉じた光の輪っかなら、さしずめ、
〝クローズドサーキット・レーザー〟ってとこかしらん?』
「(そいつぁ、どんな意味があんだ?)」
ウィルオーウィスプ・レーザーは〝鬼火怪光線〟だろ。
ふぉふぉん♪
『イオノ>妙に食いつくわね?
粒子加速器だと〝リニアコライダー〟になっちゃうし、
封鎖怪光輪?』
『ヒント>クローズドサーキット/競技を行うための閉じられた周回路のこと』
わからん。「飯を食わせろ」と言い出さねぇように、気をそらす話を振ってみたが。
「〝封鎖怪光輪〟……あんまり格好良くねぇなー」
ヴヴヴッ――――ゴゴンガガンドゴドゴォン!
灯りの魔法具が壊れて薄暗ぇから、足場の下に沢山設置した
パパパパァァァァッ――――!
よし、明るくなった。
赤い狐も天狗役も、なんか狙ってやがる。
洞窟中央寄り、対峙したまま微動だにしなくなった。
これだけ大暴れしたんだしさ――
もう良いよね? 終わりにしよぅよ?
「――ぐっきゅりゅるるっぅ?――」
女神の腹の虫も、そう言っている。
けど余計なことをして、噛みつかれるのは避けたいわけで。
もうすこし、見守ろう。
「カァッ――――――――!」
天狗役の、何の変哲もない――一の構え。
狙いへ打込み、元に戻る。
基本の中の基本だが、あと数回当てるだけなら悪くはない。
「すぅぅぅぅうっぅっ――――――」
狐は中腰、大きく息を吸っている。
手は一本だけ、地につけてる。
天狗は、もうすぐミノタウ装備一式の奥の手が使えるが――
向こうも奥の手を、狙ってる。
差し違える覚悟があるなら、先に打ち込む方が有利だ。
「ココォォォォン、ココォォォォン、ココォォォォォォォッォォォォォォォォォッォンッ――――――――!!!」
先に手を出されたが、また三度の遠吠えだった。
三つの光輪が飛び出し、三つ巴の――――やべぇっ!?
おれは、金剛力ばりの全力で――階段を跳びあがり、上階への扉を開いた!
§
「まさか、縦横に光輪を放つとは、思いませんでしたわ、くすくす?」
おれを出迎えたのは、前掛け姿の可憐なおれ。
星神・カヤノヒメだった。
猪蟹屋の店先になる予定の、土間の横壁。
そこに大きく映し出されているのは、赤い獣のような女性冒険者。
ぶつかり合うのは、墨色の大鎧の男性修験者。
「おまえら……いや、君たち、これは一体?」
呆気にとられるおれ、いや烏天狗。
「家宝を受け取りに来て、家宝を一つ使っていては――はぁ」
「ですが血気盛んな戦いざまは、兵たちには良い息抜きになったようですよ」
伯爵さんと参謀の人。
ふっかふかの長椅子に座って、水……いやありゃ、おれの澄み酒じゃねぇか。
うをおをおををををおをぉおぉぉぉっ――リカルルさまぁー!!!
店の外からも大歓声が轟いてるし、どういうことだい?
パチパチパチイィ――――ジュワァァァッ♪
「にゃみゃがぁー♪」
大量の串揚げを、大皿に盛り――
手近な盆へ載せる、強化服自律型一号おにぎり。
「もらっていきまぁーす♪」
盆を抱え外へ駆けていく、少女メイド・タター。
「ひっひひひぃぃぃぃんっ?」
「あっ、ちょっとまって!? ソッチじゃないでしょ?」
きゃぁぁぁぁっ――――!?
ぽっきゅららと、遠ざかる爪音。
あれはいつものことだ。助けるのは後回しで良いか。
現場責任者の、「リオレイニアさんはどこかな?」
「くすくす♪ 猪蟹屋の倉庫として借り受けた、お向かいへ行っていますわ♪」
ごった返す店先を歩く間にも、茅の姫は空いた食器を片付け――
通りの通行状況を確認し、高貴なお歴々の顔色をうかがい――
仕込んであったらしい大量の串肉を、鍋番のおにぎりに渡したりしている。
この状況は――フェスタの出し物みたいなこれは――お前さんが用意したのか?
ふぉふぉん♪
『ホシガミー>いえ、それが。リオレイニアさんにシガミーの居場所を聞かれたので――地下の様子を盗み見たら――』
目線を横へ放り投げる、星神。
金糸が揺れ、給仕服がはためく。
実に、しゃらあしゃらしてやがるな。
おれが育った姿とは、とても思えん。
「(誰かに、見つかったのか?)」
視線を追うと、そこには。
おにぎりの肩越しに椅子に立ち、串揚げの手際に釘付けの――
ふぉん♪
『ホシガミー>はい。ヴィヴィーさんにいつの間にか背後を取られていて』
星神の目も盗むとは――サキラテ一家、一度、調べておくべきかもしれん。
「おおっ――天狗殿ぉ! 何という離れ業かっ!!」
伯爵さまが、はしゃいじゃってるじゃんか。
せめてもの救いは、この場にルリ……いや考えるな。
想うは縁起。現に換る。
横壁を見たら、追い詰められた天狗が――
ロッドを袈裟懸けに構えてた。
シュッゴオォォォォォォォォォォォッ――――ヴァチガチバチガチッ!
ふぉん♪
『ヒント>魔導伝導効率1300%ということは、抵抗値が極端に少ないため、
光輪のエネルギーに直接触れても、受け流すことが可能です』
だからってなぁ。
縦横に大きくなったり小さくなったりして、切り刻もうとしてくる光輪を――
ロッドの端と端で受け止めるか?
もう飯がなくなるだろ、お前。
ふぉん♪
『>合成光/DCコンバーターの開発に成功しました。
神力給電を開始します』
わからん。
けど、給電ってのは旧シガミー邸に設置した、神力台の――
〝賄屋礼巣充電〟だろ?
ってことは、飯を食いながら戦える……無敵じゃんか。
ふぉん♪
『シガミー>姫さんに怪我をさせるなよ。みんなで見物してるぞ?』
ふぉふぉん♪
『>了解しました』
じゃぁ、こっちはどうするか。
天狗役の手前、弟子である烏天狗が――
シガミー姿に戻るわけにもいかんし。
「あっ、カラテェー君だ! おいでよっ、王女さまも来てるよ!」
レイダに見つかった。
ゴーレムの姫さん……王女殿下もいるのか。
ますます、シガミーに戻れねぇ。
おれが物を作るときの、癖みたいなのを全部見られてるから――
烏天狗のまま凝ったことをすると、シガミーとばれかねん。
「お初に、お目に掛かります。ラプトル王女さま」
「初めまして。お噂はぁ、聞いていますららぁん♪」
勧められるまま、席に着く。
おれの裏天狗は、迅雷に渡しちまったし――
もう、シガミーはさぼってる体裁で、話を進める。
「所で、シガミーちゃんは? 今日は居ないのかい?」
おれ、いやぼくは、厳密には猪蟹屋関係者ではないから、素直に訊いてみた。
「それがねぇー。さっきまで居たんだけど、慌ててどっか行っちゃってそれっきりなんだよ!」
レイダが怒っている。
どうやら、忙しいタターの代わりに、王女のお世話をしているらしいし。
今日のレイダは、偉いな。
いたたまれなくなったおれは、姫さんに好評だったあれを作ってやることにした。
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