上 下
450 / 734
4:龍撃の学院

450:コントゥル家家宝(ジンライ)、状態異常〝♡〟のひみつ

しおりを挟む
「(カチンときたらしいぞ?)」
 天狗役ジンライあおりを受けた、四つ足の獣リカルルが――
 かべをものすごいいきおいではしりだした。

 ガチャガシャガチャガシャ――――バギバガン、ゴロン、ゴドン、バララララッ!!
 当然とうぜん鉤爪かぎづめを突きたてられたかべというかべは割れ、剥がれ落ちる。

「――ガムラン最強さいきょうだけのことは、有るわねぇぇ――」
 ガムラン代表だいひょうにして、名物めいぶつ受付嬢うけつけじょう片割かたわれ。
 四つあしかべはしる、ご令嬢れいじょうは――相当そうとう面白おもしろい。
 その矛先ほこさきが、こっちに向いていなければだが。

 兜頭かおリカルルからはなさない、天狗ジンライ
 拳程度こぶしていどひづめうえ
 立てたロッド先端せんたんに立つ修験者しゅげんじゃ

 それをねらきつねのつまさきが――ゴッバァァァァァッ!!
 かべおおきく割り、力強ちからづよく踏み抜いた。

 視線しせんとおらずくび反対側はんたいがわまわ天狗てんぐ、その刹那せつな

 ィィィィィィィィィィンッ――――――――!!!!
 ドッゴゴゴゴォォォォォォォンッ!
 死角しかくから飛びこむきつね

「カァァァァッ――――二のかま
 かた尖端せんたんわざ遠方えんぽうへの打突だとつ一点集中いってんしゅうちゅう穿うがちを体現たいげんする。
 錫杖しゃくじょう鉄輪てつわこんさきを持って突き出し、うでからかた、背骨《せなか》からこしひざまでを一直線いっちょくせんに。
 自身じしんほねあしで押し出し、錫杖しゃくじょう正確せいかく最速さいそくで突き出すわざだ。

 しんで当てるのに、向いちゃぁいるが――
「(おまえ、石床ゆかを撃つ気か? 背中せなかからひめさんが跳びかってんぞ?)」

「はぁぁぁぁっ――――
 ズドゴォ――――ゴバッキャッ!!
 地を割り、瓦礫がれきが飛び散る!
 まさかその石礫つぶてで、ひめさんを落とそうってのか?

 ギャギギィィン――――駄目だめだぜ。
 上体じょうたいを起こし、瓦礫がれきけんはらう。
 そのまま、突き出されたけんが――天狗てんぐ大鎧おおよろいむねつらぬいた。

 ガガァァンッ――――火縄ひなわのようなおと
 それは二のかた反動はずみで、天井てんじょうに降りたった修験者しゅげんじゃが――
 天井ゆかを踏みしめたおと
 いままさに、眼下がんかとおり過ぎるあかきつね剣士けんしを――
 打ち下ろすための――足の力にのかまえ

 赤い狐リカルル背中せなか
 なが一対いっつい尻尾しっぽが、生えはじめるあたり。
 そこへ的確てきかく命中めいちゅうする――伝説の獣ミノタウロースのこしたひづめ

 ヒュゴォォウ♪
 すさまじい突風とっぷうが巻き起こり、仄暗い炎きつねびを揺らす。

 どっどむ――♪
 それは大太鼓おおだいこのような。
 ヴォン♪
 狐面きつねめんのちょっとうえ
 あらわれる――『♡』。

「――あらかわいい――」
 どうやらあれが、状態異常じょうたいいじょうかたばみ〟らしい。
「(いままで、どんな状態異常じょうたいいじょうになっても、あんなしるしが出たことはねぇぞ?)」

 ゴゴォォォン――――バキャゴッ!
 石床ゆかたたきつけられ――――ガリガリガリギャギィィィ!
 けずれる石床いしゆか
 ごろりと転がり、つめを立て――ドガッシャン!
 さすがは家宝かほうだけのことはあるようで、四つあしこわれた様子ようすはない。

「ぐぅわぉぅるるるるぅ――――!!!」
 岩場いわば火吐ひはおおかみみたいな、うなごえを上げるご令嬢じょう
 これもニゲルにゃ、見せられねぇ。
 そろそろ、終わりにしようぜ。

 ふぉん♪
『天狗 LV57
 HP:■■□□□□□□□□705/3067
 MP:■■□□□□□517/1794
 神力:■□□□□□□□□□8%』
 ふぉん♪
『リカルル・リ・コントゥル LV53
 HP:■■■□□□□□□□684/2208
 MP:■■□□□□□□□□714/3401
 神力:■■□□□□□□□□22%』

 ジンライのめしが、のこり5パーセント
 ひめさんのほうは、効いちゃいるが……なんでしずまねぇんだ?

「(このさい、負けてやれ。目的もくてきは果たせたし――おまえならかじられたところで、いたくもねぇしよ)」
 ふぉん♪
『>ソレは無理なようです』
「――なんでよ? あたくしさまも、お腹空なかすいてきちゃったからぁー、終わりにしましょお――」

 ふぉん♪
『>リカルルからロックオンされています。強力な攻撃が来ます。
  天狗の四肢が粉砕され、体の中から私が転がり出たら――』
「――面倒めんどうなことになるわねぇん。シガミーなんとかしてっ――」
 なんだと、まだおくの手がありやがるのか?
 これだからコントゥル家の、おやつらさまわぁよぉう!

「(なんとかしろったって、どーしろってんだぜ! だからさっき、代わってやるって言ったのによぉ!)」
 姫さんてきをよく見る。よーく見た。
 狐面あたまうえの、状態異常じょうたいいじょう……かたばみ
 これ、すこしかたちへんじゃね?

「――へんってなにがぁ――」
 おまえさんたちが言う、かわいいハートてのは片喰かたばみの葉のかたちをいうんだろ?
「――カタバミぃ――」

 ふぉん♪
『ヒント>カタバミ科の多年草。雑草でハート型の葉を持ち、葉は夜閉じられる』
「(よーく見て見ろ。ハートのよこがほんのすこし欠けちまってるだろうが?)」

「――ほんとだぁ。はぁと3/4よんぶんのさん――」
 ふぉん♪
『>この形状から類推するに、あと三回、的中させれば私の勝ちです』

 ぽこん♪
『亥の目シリーズ一式【片喰・蹄】
 伝説級の魔物を象った武器防具一式。
 攻撃力320。
 防御力3280。
 条件効果/【片喰】この鎧を攻撃した対象に、状態異常〝♡〟を付与。
      ♡状態となった対象への魔法攻撃は、一切通らなくなる。
 追加攻撃/戦闘状態が解除されるまでに、文様を完成させることで、
      対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』

 おれと五百乃大角いおのはらの目のまえ。
 画面がめんなかに貼りつけられたのは、ミノタウ装備そうび上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっか

 スタタタットトォォン――――ガッシャタタタタッ――――ココォォォンッ♪
 天狗てんぐのまわりを跳ねながら、なみかをねら狐耳きつねみみ
 時折ときおり二本足にほんあしで(けん使つかうぞと)牽制けんせいすることもわすれてねぇ。
 一発食いっぱつらわせたら、6000越えの攻撃力こうげきりょくたたき出すはずのミノタウ武器ぶき
 それに耐える、ひめさんもひめさんだが――

 この『文様を完成させることで、対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』ってのはなんだぜ?

 ぽここん♪
『蹄のロッド【全属性・片喰】
 伝説級の魔物を象ったロッド。
 常軌を逸した魔導伝導率を誇り、
 芯で当てると無詠唱で魔術(小)が発生。
 攻撃力1300/追加攻撃力100/追加魔法攻撃力3200。
 条件効果/【片喰】芯で当てた場合は状態異常〝♡〟を進行させる。
 追加攻撃/戦闘状態が解除されるまでに、文様を完成させることで、
      対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』
 装備条件/なし』
 もう一枚表示いちまいひょうじされる、上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっか

 どっどむ♪
 ふたたびの、大太鼓おおだいこのようなおと
 交差こうさする、四つ足リカルル修験者ジンライ
 ひめさんのすきを突いて、迅雷ジンライ二発目にはつめ的中・・させたらしい。

「あっ――!?」
 狐面きつねめんの少し上。
『♡୧』
 酢漿草ハートの葉は、一枚いちまい半分はんぶん
「(『文様もんよう』てのは、こいつ・・・のことで間違まちがいなさそうだな)」

「ぎゃふんっ――!!」
 くずれ落ちるひめさん。

 『対象の残存HPに応じた一撃』てのを、当てるまでもなかったか。
 蘇生薬エリクサー使つかって、なおしてやらねぇと――ヴッ♪
 おれが蘇生薬エリクサーを、取り出したとき――

 カチャカチャカチャッ――――ん?
 機械きかい尻尾しっぽうごいてる?
 カシャーンッ!
 尾のさきが振りおろされ、甲冑かっちゅう首元くびもとを薙いだ。

 ブッシャァァァァッ――――!
 吹きあがる血――――ォォォォッ、ブツン。
 なにかが、断ち切られるようなおと
 シュバァァァッ――――♪
 緑色みどりいろひかりあわのようにあらわれて、赤い獣リカルルからだもぐり込む。
 ツォァッ、タパタタタッ。
 血がふたたび空中ちゅうを跳び、首元くびもともどっていく。

「こほこほけほん、ここぉん?」
 跳びおき、いきととのえるひめさん。

 ふぉん♪
『リカルル・リ・コントゥル LV53
 HP:■■■■■■■■■■2208/2208
 MP:■■■■■■■■■■3401/3401
 神力:■■□□□□□□□□22%』

 生きててくれて、助《たす》かったが――全部ぜんぶもともどりやがったぜ。
 あれか――コントゥル家の、またべつ家宝かほう
 おれのくびにも掛かってる(おれにはなぜか、効かなかったが)――

 ふぉぉん♪
『追憶の結び紐【消費アイテム】
 身につけた者の命を一度だけ保護する』
 そんな表示ひょうじが出た。

「(だから、お貴族きぞくさまはこええんだ)」
 蘇生薬エリクサーの持ち合わせくらい、有っただろうによ。

 からだうごかねぇまま、負けるのがいやだからって――
 こんなためし斬りで、手前てめぇくびを落とすなってんだぜ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...