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4:龍撃の学院

423:初等魔導学院、詠唱魔法具と拠点その6

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「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」
 なんだぜ、このこえ

 気づけば、まわりに子供がきどもが。
 とおくに、大人おとなどもが。

「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ―――――――!?!?」
 きぬを裂くような。
 美の権化ごんげリオレイニアの。
 あられもない、こころからのさけび。

 学院長がくいんちょう秘書ひしょひとが――猫頭顧問ミャッドをひっぱたく。
 王女おうじょがゴーレムにまたがり――リオレイニアを引っぱっていく。

「(ミャッドが、なんかしたのか?)」
「(わかりませんが、敵性てきせい検出けんしゅつされていませ)」

 ヴォヴォヴォヴォオヴォゥゥゥウンッ――――♪
 なんだぜ?
 大人おとなたちが、居たあたり。
 テーブルのはしに、何かが置いてある・・・・・・・・
 橙色の・・・革袋かわぶくろ

「逃げてくださいららぁぁん!」
「きぃやぁぁぁぁ――――!?!?」
 とがった目玉めだまのゴーレムが、おれのよことおり過ぎる。
 王女おうじょはおれもつかもうと、手を伸ばしてきたが――
 おれはその手を避け、ぎゃくに踏み込む。

 なんかが居る。

 テーブルのはし
 いす子がたおれている。

「(迅雷ジンライ、こっちに集中しゅうちゅうしろ)」
 茅の姫ほしがみさまも、ヴァリバリすんの止めろ。
 御神体いおのはら子供こどもらを、たのむ――ぜっ!?

「――っ!?」
 テーブルも椅子いすも――
 からになったさらさかずき酒瓶さかびんも――
 まばたきをしたら全部ぜんぶが――
 まぶたうらに、消えちまった。

 なにもねぇ場所ところに、かげが落ちている。
 それ呼吸いきをするように、脈動みゃくどうし――
 ウォウォォウォォォン♪
 揺れるたびに、そのかず増やしていく・・・・・・

 あるものは、かぜに吹かれた薄衣うすぎぬのような――おんな姿すがた
 あるものは、野を駆けるおおかみのような――けもの姿すがた
 あるものは、背びれを揺らし水底みなそこしずむ――さかな姿すがた
 あるものは、つばさひろ虚空そらへ溶ける――とり姿すがた
 あるものは、きばを剥き咆哮ほうこうする巨躯きょく――おとこ姿すがた
 あるものは――あるものは――あるものは。

 すべてがうつろで――止め処がなく。
 尋常じんじょうならざるものどもは――そこには居ない。

 ひたひたと、とたたたと、ごぼごぼと、ばさばさと、ごぉぉぉぉおと。
 ぞぉぞぉぞぉぉ、ずるるるぅ――――!

 それらは、一点いってんから遠ざかろうと・・・・・・――
 ゆかに落ちた革袋かわぶくろから、逃れようとしていた・・・・・・・・・

 わからん。
「(迅雷ジンライ、ありゃなんだ!?)」
「(あれとは)」
 ばかやろう、ふざけてる場合ばあいじゃねーぞ。

 ぎこちなかった、それらの動きが・・・――
 歩をすすめるごとに洗練せんれんされ、加速かそくしていく!

 そのなかのひとつ――薄衣うすぎぬおんなが、目のまえにせまる!
 くぼんだ双眸そうぼうかおはない。

 ヴッ――じゃりぃぃんっ♪
 錫杖しゃくじょうつらぬく。

ぁーーーーーーーーーーっ!!」
 はつをくれてやったが――ひたひたひたっ。
 足音あしおとは止まらない――すぽん♪

 錫杖しゃくじょう仕舞しまい――「ひのたまぁー!」
 ぼぅわ――――ぷすん♪
 おんな薄衣からだは、そよぎもせず。
 小さな火ひのたまが、かき消える。

 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ。
 足音あしおとがうるせぇ!

「(くそう、狐火きつねびなら燃やせたかもなぁ――――!?)」
 薄衣おんながとうとう、おれのからだを突き抜けた。

「(シガミーのバイタルに、異常いじょう検知けんち――何を見ている・・・・・・のですか!?)」
 いかん。こいつぁ――坊主ぼうず領分りょうぶんらしいぜ!

 おれを突き抜けたおんなを、振りかえった!
 居たのは、ひかりのない双眸くぼみ

 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ。
 足音あしおとが止まらず、そこに居て――
 おれを見てやがる。

 ぶちっ、ぐるぅん。
 ゆびかじしたたる血で、空中ちゅうえんえがく。
 ぎちり――――――――シュッボゥ!
ONオォン――キリキリバサラウンハッタ!」
 瀑布火炎ばくふかえんじゅつとなえた。

 ぼごぅわぁっ――――うでに火が付いたが、あつくねぇ。
 〝自爆耐性じばくたいせい〟スキルは、ちゃんと効いてる。

 ぼっごっごぉぉぉぉぉうっわぁぁぁぁぁ――――!
 おれがえがいた真円しんえんから、ながれ出るほのお

 薄衣おまえがどんなものでも――日輪にちりんしずめやぁ!

 ぼっごっごぉぉぉぉぉうっわぁぁぁぁぁ――――ぶすぶすぶすすすっ!
 脳裏のうりをよぎる、ひかりのない双眸くぼみ

 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!
 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!
 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!
 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!

 足音あしおとかさなり、陽光ほのおが――おんな姿すがたに削られていく!

「(ちぃっ、どういうことだぁ!? おれの血で薄衣おんなかおを、切り取ってやったってのによぉ――!)」
 坊主ぼうずの血はソレだけで、外法げほう調伏ちょうぶく使つかえるはずだ。

 ふぉん♪
『イオノ>ちょっと、何してんの?』
 ふぉふぉん♪
『ホシガミー>楽しそうですね、くすくす?』
 そんな呑気のんき一行表示ティッカーをよこす、女神メガミ星神かみ

「(ばかやろう! おまえらには、見えてねぇのかぁ!?)」
 おれのからだに、まとわり付き――
 おれから吹き出るほのおを、かき消す――
 かおのない薄衣おんながぁよぉう!?

 ふぉふぉん♪
『シガミー>おい、虎の巻出せっ!
      リオの〝ひかりのたて〟の使い方を教えろやぁ!』
 火龍ゲールが吐いた火弾ブレスすら、ふせいだあれなら。
 必要ひつようなスキルがあるなら、いますぐ全部取ぜんぶとれぇ――――――――!!

 ふぉふぉん♪
『解析指南>シガミーの認識している対象は、この世界に存在していません』
 とうとう解析指南かいせきしなんまで、さじを投げやがった。

 ひたひたひたっ、ひたっ――――ぶすんっ♪
 おれのいのちかぎりにおいて、無尽むじんのはずのほのおが尽きた!
 止まった足音あしおとを見たら、くぼんだ口元くちもとが――にたぁり♪
 かすかにゆがんだ。

「やべぇ、死ぬ。死んじまう! なんかねぇかぁ!?」
 必死ひっしふところさぐると――
 それは入れっぱなしだった、〝魔力量MPを10だけ増やせる鉢巻きリボン〟。

「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!?」
 半狂乱はんきょうらんになり、それを投げ捨てると――
 なにおもったか――シュルル、カチャカチャキャチャッ――きゅっ♪
 迅雷ジンライ野郎やろうがおれのかみを、総髪そうはつにくくりやがった。

 ひたひたひたっ、にたぁり♪
「ひぃぃぃぃぃいぃぃっ――――!?」
 為すすべがなくなったおれは――

「シガミー
 よってきた虚け者ジンライを、ひっつかんだ!

ーーー
総髪/男性の髪型。俗に言うポニーテール。オールバックも、こう呼ぶこともある。
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