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4:龍撃の学院

422:初等魔導学院、詠唱魔法具と拠点その5

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むずしいはなしは、お夜食やしょくのあとにしましょぉ、ウケケケッケッ♪」
 食卓テーブルに解きはなたれた五百乃大角いおのはらが、一目散いちもくさんに駆けていく。

「そーだなぁー、子供がきどもは寝ちまったことだし――♪」
 さりげなく手を伸ばした、つもりだったが――

「いけませんシガミー。おさけ成人せいじんの儀を過ぎてからです」
 仮面かめん美女びじょが、おれから酒瓶さかびんとおざける。

「ちっ、しゃぁねーな。やい五百乃大角いおのはら、そのとりおれにも寄こせや」
 とり丸焼まるやきに添えられた根菜いおのはらに向かって、手をのばす。
 ぺちり――生意気な根菜びのめがみが、おれのゆびたたきやがった。

「よぉし、さらから降りろやぁ!」
 ヴッ――――じゃっりぃぃん♪

「あの、リオレイニアさん?」
「なんでしょうか、学院長がくいんちょう?」
 酒瓶さかびんをテーブルのはしへ置く、給仕服姿メイドすがた

大変聞たいへんききづらいのですが……シガミーさんのマナーについて・・・・・・・、どのようにおかんがえですか?」
 そんな問いかけにかたふるわせる、美の化身リオレイニア

「い、一度いちど年相応としそうおうの……おとこの子のようなはなしかたをさせてみたのですが、このところ変異種バリアントつづきで荒事あらごとが増えて――」
 彼女的かのじょてき痛い所・・・を突かれたようで――
 ほそいあごを、冷やあせがつたう。

「くすくす、すっかりもどってしまいましたわ
 大人おとなたちへ小振りの杯ショットグラスくばってまわる、カヤノヒメ。

「あなたはカヤノヒメさんと、おっしゃいましたね。シガミーさんは、天涯孤独てんがいこどくと聞いていたのですが……」
 矛先ほこさきはつぎに、謎の縁者カヤノヒメへ向いた。

「ええまぁ、そのはずだったのですが……くだん変異種騒動へんいしゅそうどうで、色々いろいろありまして、くすくす
 酒瓶さかびんのフタをきゅぽんと開け、「おひとつどうぞ

   §

「それは……ひっく……イオノファラーさまにかんする、内密ないみつなおはなししですかぁ?」
 ほほあかみが差した様子ようすの、学院長かのじょのまえには――
 さかずきと言うには、巨大きょだい丼鉢どんぶりばち

外観がいかんから算出さんしゅつした内容量ないようりょうが、誤差ごさ範囲はんいを超えています」
 いぶかしげなかおをした顧問秘書こもんひしょ酒瓶さかびんかたむけけ、学院長がくいんちょうしゃくをする。
収納魔法しゅうのうまほうというより、まるでこのなか酒造しゅぞうされているようニャ♪」
 真剣しんけん猫顔ねこがお開発部顧問かいはつぶこもんが、手帳てちょうにメモ書きをしている。

「くわしぃおはなししわぁー、我々人類われわれじんるいにわぁー……ひっく……しはかれないのです――ららぁん♪」
 王女殿下おうじょでんかさかずきよりはおおきな小鉢こばちを、手にしている。

「ふぅ、キリがありませんね。迅雷ジンライあとは、おまかせしてもよろしいでしょうか?」
 串焼くしやきのくしだけになったさらをかさね、丸い盆トレーにのせる。
 ややつかれた様子ようす給仕きゅうじが、戦線離脱せんせんりだつ宣言せんげんした。

 ヴォヴォォォォンッ――うな神力しんりょく
「ではここからはリオレイニアに変わり、わたしがおこたえ――」
 飛ぶぼうが、クルリと回転かいてん――

「いいえ、迅雷ジンライさん。ここはほし……いえシガミーさんの血縁である・・・・・わたくし――」
 おともなく立ちふさがり眷属棒ジンライむかえ撃つ、猫耳ねこみみメイド・カヤノヒメ。
 その指先ゆびさきに――――パリパリッ♪
 神力しんりょくがきらめいた。

敵対行動てきたいこうドうとミなします。プロダクトアーム接続部せつぞくブニ、フライバックトランス回路かいロ形成けいセい神力しンりょくヲ15mAミリアンペア昇圧しょうアつ放電ほうデんしマ
 キュキュン――――ヴァリッ♪
 無数むすう黒腕かいなを生やし、先端せんたん神力しんりょくみなぎらせる、女神の眷属そらとぶぼう

つえ使つかわず、生活魔法以外せいかつまほういがい魔術まじゅつ行使こうしできるのは――鬼族オーガか、女神めがみ眷属けんぞくくらいのものだニャァ♪」
 たのしそうに小競こぜり合いを見つめる、ギじゅつ開発部顧問かいはつぶこもん

 猫耳メイドカヤノヒメが、おおきくひらいたてのひらあいだを――――ヴァリヴァリリィッ!
 幾重いくえもの雷光スパークが、ほとばしった。

 あたまから木の枝・・・を生やしてはいるが、シガミーは鬼族オーガではない。
 その事実じじつすくなくとも、カヤノヒメとの血縁関係けつえんかんけい成立せいりつしないことを物語ものがたっている。

「も、もうっ! これ以上いじょう、どうっ説明せつめいしたら良いのですかっ――!?」
 トレーをかかえた仮面かめんしたかおが、青ざめた・・・・

「リオレイニアさんは……ひっく……魔術以外まじゅついがいは、まだまだ・・・・ですねぇ」
 立ちあがり、ふらつく足取あしどりで――
 給仕服リオレイニア近寄ちかよ学院長ロサロナ
 ぽんとあたまに乗せられた指先ゆびさきが――
 やさしく左右さゆうに揺れうごく。

「が、学院長がくいんちょう!? わ、わたくしはもう子供こどもでは――」
 ふらつく学院長がくいんちょうを突きはなすことは出来できないのか――
 硬直こうちょくするメイド姿すがた

「カヤノヒメさんの魔術まじゅつ淵源えんげんや、シガミーさんとの血縁関係けつえんかんけい……ましてやシガミーさん本人ほんにん資質ししつ気質きしつなどは……ひっく……まったく気にしておりませんよ、かわいい、かわいい♡」
 あたまに乗せられた指先ゆびさきが――
 やや強めに左右さゆうに揺れうごく。

「ええっ!? そ、それではなにを、心配しんぱいされているのですか!? こんな対魔王結界たいまおうけっかいまで持ち出してっ――?」
 驚愕きょうがく猜疑さいぎにまみれた仮面かおが、巨大きょだい空間くうかんあおいだ。

単刀直入たんとうちょくにゅうに、おはなしするならば……ひっく……あのじゃじゃうま――じゃなくって、跳ねっかえり――でもなくて……こほん♪」
 元教もとおしえ子の見習みなら教師きょうしから手をはなし、姿勢しせいただす酔っぱらい。

「コントゥル家の令嬢れいじょう立派りっぱ、とは言いがたいですが……ひっく……すくなくとも淑女しゅくじょへとそだて上げた、あなたのおちからをお借りしたいのです……ひっく、うい♪」
「あぶないっ――!」
 ガチャラランッ!
 トレーをほうりだし、ふらつく女性じょせい(やや大柄おおがら)を受け止める、仮面かめん女性じょせい(やや細身ほそみ)。

「「「「むにゃん?」」」」
 まだ、うとうとしてた子供こどもたちとメイドの一人ひとりが、むくりと起きた。

「そうだニャァ♪ このまま行けばシガミーは間違まちがいなく、ガムランちょうだけでなく――」
 ぱたんと手帳てちょうを閉じる、猫頭顧問ねこあたまこもん
「――央都おうとまつりごとへかり出されるに、決まってますからねぇー?」
 ぎゅきゅっと酒瓶さかびんに、フタをする秘書ひしょ

「ばっきゃろー! せめてこっちのうまそうなさかなくらい、半分はんぶんよこせやぁ!」
 そんなこえのしたほうを、一斉いっせいに見つめる大人組おとなぐみ

「ひのたまぁ――
 ぼぅわ。
「あっぶねーな! めしが燃えたら、どーするつもりでぇい!?」
 そんなこえのしたほうを、一斉いっせいに見つめる子供組こどもぐみ

 「なんかやってるよ?」、「やってますね?」、「おもしろそう!」
 御神体メガミ料理番シガミーの、一騎討いっきうち。
 完全かんぜんに目を覚ました子供こどもたちと見習みならいメイドが、魔法杖つえを取りだし――
 食卓中央だしものへ向かって、駆けていく。

「シガミーちゃんは、魔導工学まどうこうがくについての先見せんけんがあります。マナーでしたら王家直属おうけちょくぞく指南役しなんやくに、おまかせくださいませらぁぁん!」
 取り出される杓子しゃくし万能工具まほうつえ)。

「たしかに才能さいのうについては、うたがいようもないニャァ♪」
 『魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部入団の手引き』
 そんな冊子さっしけんのように、かかげられる。

「はい。あの才能さいのうをひとり占めされたら、内乱ないらんが起きます」
 『魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部入団届』
 そんな複写式ふくしゃしき書類しょるい羽根はねペンが(りゃく)。

「えっ、なんできゅうに、こんな本題ほんだいに切り込んでくるのですか!? 駄目だめです、シガミーはうちの子です。冒険者ぼうけんしゃとして、ガムランの次代じだいになっていただくことになっていますので(キッパリ)!」
 カシャラララッ――エプロンのポケットから取り出されたのは、初心者用しょしんしゃよう魔法杖まほうつえ×6。

「ふぅ……ひっく……リオレイニアさんとリカルルさんが、入学にゅうがくしてきたときのことをおもい出してしまいますね」
 よっこいしょと、ちかくの椅子いすすわ学院長がくいんちょう

「にゃははははっ♪ いまの状況じょうきょうは、〝魔神まじん再来さいらい〟にそっくりだ・・・・・ニャァ♪」
 猫頭顧問ねこあたまこもんふところから取りだしたのは、派手はでいろ革袋かわぶくろ

 ずざざざっ――大人組おとなぐみ一斉いっせいに、革袋それから距離きょりを取った。
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