滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４１８：初等魔導学院、詠唱魔法具と拠点その１

「なにごとです――ね、猫ねこの魔物まもの!?」
　ややこしいドアが開ひらいて、学院長がくいんちょうが現あらわれた。

「あらぁん!?　ケットーシィーららぁん!?」
　なんでか、某第一王女ぼうだいいちおうじょを引きつれて。

　　　§

「くそう、三日みっかも外出がいしゅつを禁きんじられるとは――」
　頭あたまをガリガリ掻かいてたら、手をひっぱたかれた。

「シガミー、そんな風ふうにしたら髪かみが傷いたみますよ」
　手をつかんで、膝ひざの上に戻もどされる。

「こんな程度ていどで話はなしが済んだのは、王女おうじょさまが取りなしてくれたからですよ？」
　その仮面かおで、睨にらむな睨にらむな。
　ここに来てから、やらかし続つづきなのわぁ――
　「お前めーさんも一緒いっしょだろーがぁ」などとは、言えない。

「わ、わかってる。王女殿下ラプトルひめには感謝かんしゃしてるぜ」
　「へへ」と愛想あいそわらいをする始末しまつだ。

　楚々そそとした風情ふぜいで佇たたずんでるが、この給仕服ふくがひとたびひるがえれば――
　伝説でんせつの火龍かりゅうを降くだし。
　この所支出ところししゅつの多おおかった辺境伯領へんきょうはくりょうの財政ざいせいを、たちどころに再編さいへんし。
　彼かの悪名高あくみょうだかき辺境伯令嬢へんきょうはくれいじょうさえ、手綱たづなの一振ひとふりで御ぎょすのだ。
　そんな有能ゆうのうな彼女リオが、パーティーメンバーに居てくれるのは――
　とてもありがたいことではある。

「そうだねー、シガミーはもう！　しょうがないなぁー♪」
　邪魔じゃまだぜ、抱きつくな抱きつくな。
　ここに来てから、ずっと楽たのしそうで良いなぁ、レイダおまえわぁ。

「ねぇ、レイダちゃんは、どの寮りょうにするの？」
　リオの縁者えんじゃ、えっと――
　ふぉん♪
『人物ＤＢ＞ヴィヴィエラ・Ｒ・サキラテ
　　　　　　初等魔導学院一年生』
　そうだぜ、ビビビーだったぜ。

「まだ決めてないんだよねー、タターさんわぁ？」
　おれにひっついたまま、ぐりんと頭あたまを回まわす。
「私わたしは、皆みなさんと一緒いっしょなら、どこでも構かまいません」
　タターは、特待生制度とくたいせいせいどと従者じゅうしゃ教育制度きょういくせいどと――
　博打好ばくちずきの王子おうじのゴリ押し……好意こういで、学院ここに来ることになった。
　王女おうじょのお世話せわが長続ながつづきした、忍耐力にんたいりょくなども考慮こうりょされてのことだ。

　こんこん♪
「失礼しつれいいたします、お嬢じょうさまがた。ご入浴にゅうよくの準備じゅんびが整ととのいました」
　ここはサキラテ家の央都別邸おうとべってい。
　ドアは開かず、女性じょせいの声こえが聞こえてきた。

　いろいろあって当初とうしょ、宿泊予定しゅくはくよていだった魔導騎士団まどうきしだんの宿泊施設しゅくはくしせつから、こっちへ移うつった。
　王女おうじょが顔かおを見せたことで賓客扱ひんきゃくあつかいされそうになったが、リオレイニアが間あいだを取ってくれた形かたちだ。

「「はぁーい」」
　リオレイニアと、ヴィヴィーが同時どうじに答こたえた。
　この別邸付べっていづきの従者じゅうしゃからすれば、どちらも主人しゅじんには違ちがいない。
　別邸べっていも、ひとつやふたつじゃきかないくらい有るらしいし。

　タターはともかく、お前まえさんは……その給仕服メイドふくを脱いだ方ほうが良いんじゃぁねぇか？
　考かんがえてみたら、ずっと給仕服そいつを着たきりだし。
　もちろん同おなじのを着続きつづけてるわけじゃなくて、同おなじ形かたちのが何十着なんじゅっちゃくも箪笥クローゼットに入はいってる訳わけだが。

「寮住りょうずまいってのわぁ、しねぇといけねぇのかぁ？」
　別べつに困こまることはないが、いろいろと物ものを作つくったり――
　あと、五百乃大角いおのはらの飯めしを作つくったりするのには――
　やっぱり、板場いたばと竈かまどが使つかえる場所ばしょが、欲しいんだよなぁ。

「決まってるわけじゃないけど寮住りょうずまいなら、お金かねは掛からないしぃ……朝夕あさゆうは食堂しょくどうで、ご飯はんが食べられるみたいよ？」
　ぺらぺらり。
　なんかの手引てびき書しょみたいな物ものを、めくるビビビー。

「うーん。聞いた感かんじじゃ、自分じぶんじゃ飯めしを作つくれそうにねぇなぁ？」
　まいったぜ。

「そっれっわぁ、困こまるっわねぇーん♪・」
　素っ頓狂とんきょうな声こえが、大おおきな寝室しんしつのような部屋へやに響ひびきわたる。

　バサパタタタバサドサカシャラララ――――ッ！
　積みあがる板状いたじょうのなにか。
　ぽこ――こぉん♪
　かるい処理落ちひかかり。
　その天辺てっぺんに、てちり・・・と降りたつ五百乃大角いおのはら。

　板状いたじょうの物ものが積みあがった、すぐそばに――
　ドサドサドサドサ、ゴドン！
　書類しょるいの束たば。そして今日きょう、おれが壊こわした――
　測定魔法具そくていまほうぐに似た箱はこが、置かれた。

　ありゃ何なんだぜ、迅雷ジンライ？
「（イオノファラーからは、何なにもきいていません・）」
　まったく今度こんどは、何なにを始はじめる気だぁ？

「何なによシガミー、その顔かおわぁ？・」
　よっぽど渋しぶい顔つらをしてるだろうぜ。
　おれは立ちあがり、五百乃大角いおのはらから離はなれる。

「まったくよぅ。カブキーフェスタからずっと働はたらきづめ、戦たたかいづめで、おれぁ疲つかれたぜ――ふにゃぁ♪」
　やたらとふっかふかで、でかいベッドに、うずくまる。

「（迅雷ジンライィ、いまやらなきゃいけねぇことを、全部ぜんぶだせやぁ――）」
「（働はたらきづめで、嫌気いやけが差しているのでは？・）」
　そうも言ってられねぇだろうが。

　ふぉふぉん♪
『＞では、比較的優先度の高い物から、ＴＯＤＯリストを作成します』
　おう。わからんが、やってくれ。

　ふぉふぉふぉふぉふぉふぉん♪
『１：リオレイニア／金策：修理代Ａ』
『２：シガミー／会談：ギ術開発部への事象聴取』
『３：シガミー／解析：シガミーの魔力について』
『４：シガミー／解析：作成した魔力増強鉢巻きについて』
『５：シガミー／解析：学院長室の転移魔法について』
『６：シガミー／解析：マナキャンセラー発動中の自爆現象について』

　閉じたまぶたの裏うらに、文字もじがあふれた。

　ふぉふぉふぉふぉふぉふぉん♪
『７：リオレイニア／金策：修理代Ｂ』
『８：シガミー／会談：出張所職員へのお見舞い』
『９：シガミー／経営：猪蟹屋経営会議の今後について』
『１０：シガミー／会談：学院長とのリオレイニアに関する取り決めについて』
『１１：リオレイニア／解析：魔術的な高揚感について』
『１２：イオノファラー／質疑：プロマイドカードについて』

　止とめ処どのない羅列られるは、１ページに６項目こうもくずつ。

　ふぉふぉふぉふぉふぉふぉん♪
『１３：シガミー／解析：測定魔法具の作成について』
『１４：リオレイニア／調査：魔神の再来についての事実確認』
『１５：シガミー／イオノファラー／ジンライ／調査：狐耳族の頒布と万一の場合の撤退方法』
『１６：イオノファラー／調査：マジックシールドの収得について』
『１７：――――』

「（おいやめろ！）」
　おいやめろ！

「（優先順ゆうせんじゅん表示ひょうじを停止ていししました。以降いこうも、ご覧らんになりますか？）」
　ひとまず止めろ。
　ここまでの１６件分けんぶんに、いまから取りかかれば、当座とうざはなんとかなるか？
「（はい。学業以外がくぎょういがいの事柄ことがらに関かんしては、滞とどこおらないかと・）」
　むくり――寝床ベッドから顔かおを上げる。

「こぉらぁー！（ふざけるんじゃないわよー。あたくしさまへの供物くもつが、書いてないじゃぁないのよさっ！）」
　くるるるっ――スパコーン♪
　迅雷ジンライを棒ぼうのように操あやつって打ち上げられた根菜いおのはらが、こっちに向かってすっ飛んできた。

「あぶねぇなっ！」
　根菜こんさいをすんでの所ところで、ぱしりとひっつかむ。

「さっきしこたま、食ってたじゃねーか!?」
　根菜こんさいを見ると、上下逆じょうげさかさまだった。

「ふざけるんじゃないわよー。アレは早はやめのディナーでしょ！　遅おそめのディナーにお夜食やしょく。目覚めざめのスイーツも、おわすれなくぅー♪」
　よだれを垂らすんじゃねぇやい！

「こ、これは確たしかに……大おおきな厨房ちゅうぼうが、必要ひつようになりますね」
　リオレイニアの頬ほほが、引きつった。