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3:ダンジョンクローラーになろう

397:美の女神の料理番(シガミー)、温泉と下剋上?

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 トンテンカンテン、ゴガガン、ギチ、ギャギチ♪
 次第しだいにとおくなる騒音そうおんは、つかれたからだ心地ここちよ――すやぁ♪

「(シガミーさ)」
 だれでぇい?
 コントゥル母娘おやこが居るうちわぁ、念話ねんわ使つかうなぁ。
 ぶった切られるぞぉ――むにゃぁー♪

「(シガミーさん、聞こえますか? あなたのこころ直接ちょくせつかたりかけています、ぐすぐす)」
 念話ねんわへんこえ、いや……おれのこえをしていた。
 迅雷ジンライがときどき見せる、おれのリプレイ映像えいぞうで聞きなれた――
 なんでぇい、おまえさまかぁ。

 くびかたむけ、薄目うすめを開ける。
 『猪蟹屋四号店』なんて看板かんばんかかげた、掘っ建て小屋ごや出来できてて――
 レイダとゲイルと、鉢金はちがねあたまに乗せたタターが――
 村人むらびとたちに、みずやガムラン饅頭まんじゅうくばっている。
 おおかた、猪蟹屋ししがにや本店ほんてん収納魔法具しゅうのうまほうぐ全部ぜんぶ、持って来たんだろう。

 そのおく椅子いすすわおれ・・
 正確せいかくにはおれ・・が四、五年育ねんそだった姿すがた
 そとからは、そうみえねぇが――
 まだ「(ぐすぐ)」泣いてやがる。

「(迅雷ジンライ念話ねんわなしではなさせろやぁ)」
 狐耳母娘コントゥルおやこに〝狐火・ウィルオーウィス仙花プ・レーザー〟を、撃たれてもこまるしな。

 ふぉふぉん♪
『>カヤノヒメ、女神像ネットワークへ接続してください。
  ティッカー越しで会話が可能です』

 ふぉん♪
『ホシガミー>わかりました。ぐすぐす』
 どういう理屈りくつかわからんが、五百乃大角いおのはら迅雷ジンライみたいに――
 一行文字ティッカー使つかえるらしい。

 ふぉん♪
『シガミー>おれたちの体が入れかわっちまったことは、
      もう気にしなくて良いぞ。元々こっちがおれのだしな。
      そんなことよりもだ、』
 いつの間にか、おれも使つかえるようになってたから、そういうもんかも知れん。

「(――このからだなにかしたか? えらく素早すばやくてちからつよいんだが?)」
 また目を閉じる。それだけでもいくらからくになる。

 ふぉふぉぉん♪
『ホシガミー>それは、私は存外に非力なもので、
       日常生活が送れるよう必要最低限の、
       チューンナップをさせて頂いたからです。ぐすぐす)」
 目を閉じても動体検知トラッカー一行文字ティッカーは、普通ふつうにまぶたのうらにあらわれる。

 ふぉふぉん♪
『ヒント>体力増強、体感、血流強化、スタミナ増強、身体操作LV3』
 ヒントもまぶたのうらに(りゃく)。

 普段ふだん生活せいかつのために、こんなにスキルを取りやがったのか?
 どれだけ非力ひりきなんだぜ。

「(けどこれよう……ほとんど、おれも持ってるスキルだぞ?)」
 持ってるもんを、さらに取ったところで――

 ふぉふぉん♪
『ホシガミー>おそらく星神スキルポイント(HSP)を使用して、
       その体で使えるようにした物ですので、』
 ふぉん♪
『>重複分も、すべて効果が累積するようです』
 星神ホシガミーはなしを、迅雷ジンライが引き継ぐ。

 するってぇと――なにか?
 LVレベル100で頭打ち・・・だったはずの、おれの身体能力ステータスが――
 さんまわりかよんまわりくらい、化けた・・・ってことかぁ?
 ウチの神さんおおぐらいよか、優秀ゆうしゅうじゃねーかよ。

「シガミー、大体だいたい建物たてもの修理しゅうりが終わったんだけどさぁ――」
 覇気はきのないそんなこえに目をあけると、すきをかついだニゲルが立っていた。

「ふぅ、おちおちやすんでもいられねぇかぁ――おにぎりー、どこに居るー?」
 おれは立ちあがり、おにぎりを呼びつけた。
 ぽっきゅらりぽっきゅらり、にゃみゃがぁ♪
 ほどなくして、あらわれたのは。
 おにぎり騎馬一騎きばいっき

「みゃにゃ?」
 正面しょうめんからだと子馬こうまくぎ邪魔じゃまらしく――
 おにぎりがからだよこにかたむけて、かおを見せた。

「「ぷぐひっ!?」」
 不意打ふいうちちすんじゃねぇ!
 目もはなくちもねぇのに、こいつには表情ひょうじょうがありやがる。
 その真顔まがお、リオレイニアのまえでは絶対ぜったいやるなよ?

「い、一緒いっしょに居たのかおまえら。なら、ちょうどいいや――ニゲルを連れて、温泉掘おんせんほり当ててこいやぁ」
 地面じめんに刺さった迅雷ジンライを引っこ抜き、かたにかつぐ。

「えぇー!? ぼくだって結構けっこうつかれてるんだけど? おにぎりを追っかけはじめてからやすみ無しだしさぁ!?」
 かたを落とし、うなだれる青年ニゲル
 そういやぁ、そうだったぜ。

 けど、ソレを言ったらこっちもだ。
 ミノタウせんからこっちやすみなく、彼岸ひがん此岸しがんかわからねぇところを――
 ぐるぐるぐるぐる行ったり来たりしてた……気がするしな。

「あー、あれだぜ?」
 当てもなく視線しせんを、さまよわせていると――
 とおくのほうからあるいてくる、伯爵令嬢リカルル姿すがたが目に入った。
 ツナギに身をつつみ、顔中泥かおじゅうどろだらけにした彼女かのじょは――
 ニゲルに見せたほうが良いのか、見せねぇほうが良いのか……見当けんとうがつかねぇ。

「どれだよ?」
 じっと、おれを見下みおろす青年せいねん
「リカルルの野郎やろうが――そう、リカルルさまたっての、ご所望しょもうなんだぜ?」
 うそはついてねぇ、みずを向けただけだ。
「リ、リカルルさまは野郎やろうじゃないけど――そうか、温泉おんせんが欲しいのはリカルルさまなのかぁ――」
 よし、餞別せんべつだ。コイツをくれてやろう。

 ぽこん♪
 それは、いつもの木の板・・・
 猫共用おにぎり翻訳ほんやくしてくれる、すぐれものだ。
 ニゲルには、ヘッドセットがた翻訳魔法具ほんやくまほうぐわたしてあるが――
 ほかのむらしゅうにも、おにぎりの言葉ことばつたわったほうが良いだろうしな。

 ぽこかたん♪
 椅子いす騎馬おにぎりたちわきに取りだし、そのうえに乗る。
「うむ――これで良いだろう」
 おにぎりのくびに、木のいたを下げてやった。

「にゃみゃがにゃやーん♪」
「ぷひひひひぃん? ひひぃん?」
 ぽっきゅぽぽきゅきゅら♪
 大喜おおよろこびの、おにぎり騎馬きば

 ふぉふぉん♪
『>じゃぁ、行ってくるんだもの♪』
 子馬こうまにまたがり去って行く、おにぎりとニゲル。
 微笑ほほえましいのか間抜まぬけけなのか、もうわからねぇが――
 つくってやった馬具ばぐは、ちゃんと使つかえてた。

「ふぅ――っこらせっと!」
 おれは物陰ものかげ椅子いすを置き、ドカリとすわる。
 ホシガミーさまよぉう?

 ふぉん♪
『ホシガミー>ぐすぐす?』
 よし、居るな。
 それじゃぁ、はなしを付けるとするぜ。

「(ひょっとしたら、彼岸ひがんもどらねぇといけねぇのは、〝この世界うつつに八百万《マルチプレイ》システムが搭載とうさいされてねえ〟のも、関係かんけいしてんのか?)」
 鉄鎧鬼てつよろいおにだったときの、あたまの冴えと神々かみがみことわり
 それに前世ぜんせ死生観しせいかん総動員そうどういんしたら、そんな結論かんがえたっした。

 ふぉん♪
『イオノ>ちょっとお! 何をこそこそ話してるのかと見に来たら、
     天正生まれのお坊さんが、あたくしさまよりFATSシステムに、
     精通してた件について!』
 余計よけいなヤツまで居やがるな。
 迅雷ジンライれい五百乃大角いおのはら縫い付けるやつ・・・・・・・ぎゃく出来できねぇのか、ぎゃくわぁ?

 ふぉん♪
『>あれは一度限りの奇策ですし、
  どのみち管理者権限をもつ上位アカウントに、
  我々が介入することは出来ません』

 ふぉん♪
『イオノ>なによ、あたくしさまのプレイヤーアカウントを、
     ハッキングでもするつもり?』

 ふぉふぉん♪
『ホシガミー>このままですと乗っ取るまでもなく、
       私が最上位権限を自動的に習得してしまいます。
       ぐすぐすん』

 ふぉん♪
『シガミー>おいおい、穏やかじゃねぇなぁー。
      仲良くしろい、お前ら』
 どうしたぁきゅうに。
 なんだか面倒めんどうなことに、なって来やがったな?
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