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3:ダンジョンクローラーになろう
387:龍脈の回廊、一時休戦
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「よし、退治だぁ! 迅雷っ――ニャァ!」
「お待ち下サい、シガミー!」
惡神退治を止める、相棒。
そのとき、ジタバタしてたタターの肘が――
青年に、ぽかりと当たった。
「むにゃぁ? あれ、僕は一体!?」
あたまに猫耳を付けた彼が、目を覚ました。
「ニゲル。私ガ肩代わりシていた、身体操作ヲ解除しマす。タターヲ落とさないよウに、注意してくだサい」
爪楊枝みてぇな相棒が――ヴォヴォヴォォオオン♪
飛んで来た。
「へっ、はぁぁ? ――――うわっととととと、あぶない!」
しがみ付く少女を、かかえ直す青年。
「きゃぁぁぁぁっ――!?」
いま、彼のスマートフォンは、ビデオ通話が切れている。
もし、今の姿をラプトル王女殿下に見られていたなら――
彼女は、卒倒していたことだろう。
「レイダ、怪我はありませンか?」
爪楊枝が惡神退治そっちのけで、レイダの様子を見に行く。
「大丈夫ー、迅雷わぁー?」
「問題ありまセん」
子供の面倒を見させておくか。
けど、そのまえに――
「(五百乃大角はどうしてる!?)」
あの大飯食らいに、もしものことがあったなら――世界が終わりかねん。
もっとも、辺りのひでぇ有り様は、その終わりが始まってるのかもしれねぇがなぁ!
「うふふ、心配いりませんよ。イオノファラーさまはいまごろ、ガムラン町の超女神像復旧に、ご尽力なさっていると思われますわ♪」
念話もミノタウ語も、姿を変えて見せる大道芸も――すべてが消えた。
愛くるしくて、聡明そうな童女が――
でけぇ子馬が乗った大岩ごと、流されていく。
「やい、惡神め! この有り様わぁ、てめぇの仕業かぁ――ニャァ!?」
とおくに見えてた村が、近づいてきてる。
泥が湧くようなうねりこそ、鳴りをひそめてきたが――
まだまだ辺りは、人が歩ける状態じゃねぇ。
これがこの大陸中で、いやこの惑星中で起きてるなら――
おれたちが帰る場所は、どこにもなくなる。
「まあ、そうですけれど――ここまでしなければシガミーさんを再生出来なかったのですから、致し方ありませんでしょう? くすくす?」
はぁ? お前さまが、おれを元に戻しただぁ!?
何言ってやがる?
「お前さまがぁ、おれの体を奪いやがったからぁ――おれの体がこんなになっちまったんだろーがぁ――ニャァ!」
ガガッキュゥゥン♪
レイダが居ねぇ方の腕を、持ち上げて見せた。
「シガミー。ひとまずレイド村まで、移動しないかい?」
大岩に飛び乗る、青年ニゲル。
正面にニゲルを、捉えた途端――
メキメキメキメキ、バギュバギュゴゴッ――――!!
大角が伸びて枝分かれし、彼を襲う。
「きゃぁぁぁぁ――――!」
喚くメイド・タター。いつだか神域惑星に、付いて来ちまった奴だ。
いつもレイダと遊んでくれるし、助けてえが――
太刀を飛ばすか――
角の大本である、鉄鎧が飛びのくか――
なんて考えてたら、ニゲルが腰の剣に手をかけた。
ザリザリザリ――抜かれようとする鍵剣セキュアに、手を添え止める――
惡神可憐な茅の姫(おれの体)。
大岩に降り立った童女が、目のまえにまで伸びた大角を――
小さな手のひらで、ぺちりと叩いた。
「ギャギャォォオオオォォオォオオォォオォオォォォォッ――――!!!!!!!!」
おれの装甲板が悲鳴をあげ――
シュルシュル、バキバキィン♪
大角が、一瞬で引っ込んだ!
太角が、おれの鉄の体に食い込むんじゃねぇかと身構えたが――
そんなことにはならず。
「ふぅ、助かったよ!」
ニゲルも胸をなで下ろす。
ミノタウロースの厄介さは、生前のおれから聞いて知ってるからな。
「(星神よぉ、お前さんわぁ――ミノタウロースを、押さえられるのか?)」
「(はいはい、可能ですわ、くすくす?」
ルリーロとは又違った感じで、つかみ所がねぇが――
画面の端に映し出されてる地図に、赤い色の三角はない。
敵意を持つ奴が、居ない証拠だ。
「(よし、一時休戦だ。いいな星神?)」
「(はいはい、よしなにですわ。くすくすくすくすくすくす?)」
はいは一回。くすくすも二回までにしとけやぁ。
「あれ、これ村に向かってないかい?」
ゆっくり、じわじわ、ごとごと、がりがりと――
ニゲルが言ったとおりに、街道が村へ向かって流れ始めた。
少女メイドと星神メイドを、でけぇ子馬に乗せてやる青年。
やっぱりニゲルは、良いやつだ。
「(ついさっきまで、「あの野郎、何がなんでも二つにしてやる!」と、考えてたんだが――?)」
そんな気持ちは、すっかりなくなってる。
「じゃぁ、このまま岩に乗って、村まで行くかぁ――ニャァ♪」
おれたちは、レイド村まで流されていくことにした。
「シガミィー、そこに居るぅー?」
かるく握った手の中から、そんな声がした。
レイダをつかんでるのは、おれなんだから――
居るに決まってんじゃぁねーかぁ!
などと言えるわけもなく。
「おウ、どーシたぁ――ニャァ?」
「おにぎりちゃんわぁー、ちゃんと戻せるのぉー?」
おにぎり? あいつもこっちに来てんのか?
いや、「戻せる?」ってなんだ?
「そうだ、おにぎりの卵を、レイド村の神官さまに預かってもらってたんだった!」
ニゲルが、街道沿いの斜めになった木々を足場にして、すっ飛んで行った。
「なんでい、なんでぇぇい!? 一体全体、どーなってやがる――ニャァ!」
迅雷、せつめー。
「話せバ長くなりますノで、まズは手ヲ開いテ下サい」
手を開くと、中から――
迅雷をうしろ頭に貼り付けた子供が、姿を現した。
その手足には、機械腕が巻き付いている。
おい、気ぃー付けろよ?
金剛力わぁ、馴れてねぇと怪我するからな?
「(ご心配なく、私が操作しまスので)」
なら、良いがなぁ。
どんぶらどんぶら、ごとごと、がたがた♪
この調子なら、すぐに村に着きそうだ。
「お待ち下サい、シガミー!」
惡神退治を止める、相棒。
そのとき、ジタバタしてたタターの肘が――
青年に、ぽかりと当たった。
「むにゃぁ? あれ、僕は一体!?」
あたまに猫耳を付けた彼が、目を覚ました。
「ニゲル。私ガ肩代わりシていた、身体操作ヲ解除しマす。タターヲ落とさないよウに、注意してくだサい」
爪楊枝みてぇな相棒が――ヴォヴォヴォォオオン♪
飛んで来た。
「へっ、はぁぁ? ――――うわっととととと、あぶない!」
しがみ付く少女を、かかえ直す青年。
「きゃぁぁぁぁっ――!?」
いま、彼のスマートフォンは、ビデオ通話が切れている。
もし、今の姿をラプトル王女殿下に見られていたなら――
彼女は、卒倒していたことだろう。
「レイダ、怪我はありませンか?」
爪楊枝が惡神退治そっちのけで、レイダの様子を見に行く。
「大丈夫ー、迅雷わぁー?」
「問題ありまセん」
子供の面倒を見させておくか。
けど、そのまえに――
「(五百乃大角はどうしてる!?)」
あの大飯食らいに、もしものことがあったなら――世界が終わりかねん。
もっとも、辺りのひでぇ有り様は、その終わりが始まってるのかもしれねぇがなぁ!
「うふふ、心配いりませんよ。イオノファラーさまはいまごろ、ガムラン町の超女神像復旧に、ご尽力なさっていると思われますわ♪」
念話もミノタウ語も、姿を変えて見せる大道芸も――すべてが消えた。
愛くるしくて、聡明そうな童女が――
でけぇ子馬が乗った大岩ごと、流されていく。
「やい、惡神め! この有り様わぁ、てめぇの仕業かぁ――ニャァ!?」
とおくに見えてた村が、近づいてきてる。
泥が湧くようなうねりこそ、鳴りをひそめてきたが――
まだまだ辺りは、人が歩ける状態じゃねぇ。
これがこの大陸中で、いやこの惑星中で起きてるなら――
おれたちが帰る場所は、どこにもなくなる。
「まあ、そうですけれど――ここまでしなければシガミーさんを再生出来なかったのですから、致し方ありませんでしょう? くすくす?」
はぁ? お前さまが、おれを元に戻しただぁ!?
何言ってやがる?
「お前さまがぁ、おれの体を奪いやがったからぁ――おれの体がこんなになっちまったんだろーがぁ――ニャァ!」
ガガッキュゥゥン♪
レイダが居ねぇ方の腕を、持ち上げて見せた。
「シガミー。ひとまずレイド村まで、移動しないかい?」
大岩に飛び乗る、青年ニゲル。
正面にニゲルを、捉えた途端――
メキメキメキメキ、バギュバギュゴゴッ――――!!
大角が伸びて枝分かれし、彼を襲う。
「きゃぁぁぁぁ――――!」
喚くメイド・タター。いつだか神域惑星に、付いて来ちまった奴だ。
いつもレイダと遊んでくれるし、助けてえが――
太刀を飛ばすか――
角の大本である、鉄鎧が飛びのくか――
なんて考えてたら、ニゲルが腰の剣に手をかけた。
ザリザリザリ――抜かれようとする鍵剣セキュアに、手を添え止める――
惡神可憐な茅の姫(おれの体)。
大岩に降り立った童女が、目のまえにまで伸びた大角を――
小さな手のひらで、ぺちりと叩いた。
「ギャギャォォオオオォォオォオオォォオォオォォォォッ――――!!!!!!!!」
おれの装甲板が悲鳴をあげ――
シュルシュル、バキバキィン♪
大角が、一瞬で引っ込んだ!
太角が、おれの鉄の体に食い込むんじゃねぇかと身構えたが――
そんなことにはならず。
「ふぅ、助かったよ!」
ニゲルも胸をなで下ろす。
ミノタウロースの厄介さは、生前のおれから聞いて知ってるからな。
「(星神よぉ、お前さんわぁ――ミノタウロースを、押さえられるのか?)」
「(はいはい、可能ですわ、くすくす?」
ルリーロとは又違った感じで、つかみ所がねぇが――
画面の端に映し出されてる地図に、赤い色の三角はない。
敵意を持つ奴が、居ない証拠だ。
「(よし、一時休戦だ。いいな星神?)」
「(はいはい、よしなにですわ。くすくすくすくすくすくす?)」
はいは一回。くすくすも二回までにしとけやぁ。
「あれ、これ村に向かってないかい?」
ゆっくり、じわじわ、ごとごと、がりがりと――
ニゲルが言ったとおりに、街道が村へ向かって流れ始めた。
少女メイドと星神メイドを、でけぇ子馬に乗せてやる青年。
やっぱりニゲルは、良いやつだ。
「(ついさっきまで、「あの野郎、何がなんでも二つにしてやる!」と、考えてたんだが――?)」
そんな気持ちは、すっかりなくなってる。
「じゃぁ、このまま岩に乗って、村まで行くかぁ――ニャァ♪」
おれたちは、レイド村まで流されていくことにした。
「シガミィー、そこに居るぅー?」
かるく握った手の中から、そんな声がした。
レイダをつかんでるのは、おれなんだから――
居るに決まってんじゃぁねーかぁ!
などと言えるわけもなく。
「おウ、どーシたぁ――ニャァ?」
「おにぎりちゃんわぁー、ちゃんと戻せるのぉー?」
おにぎり? あいつもこっちに来てんのか?
いや、「戻せる?」ってなんだ?
「そうだ、おにぎりの卵を、レイド村の神官さまに預かってもらってたんだった!」
ニゲルが、街道沿いの斜めになった木々を足場にして、すっ飛んで行った。
「なんでい、なんでぇぇい!? 一体全体、どーなってやがる――ニャァ!」
迅雷、せつめー。
「話せバ長くなりますノで、まズは手ヲ開いテ下サい」
手を開くと、中から――
迅雷をうしろ頭に貼り付けた子供が、姿を現した。
その手足には、機械腕が巻き付いている。
おい、気ぃー付けろよ?
金剛力わぁ、馴れてねぇと怪我するからな?
「(ご心配なく、私が操作しまスので)」
なら、良いがなぁ。
どんぶらどんぶら、ごとごと、がたがた♪
この調子なら、すぐに村に着きそうだ。
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