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3:ダンジョンクローラーになろう
378:龍脈の回廊、新米メイドと古参メイド
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「居た、こらタター」
新米メイドをやんわりと叱りつける、古参メイド。
新ギルド会館最上階コントゥル邸の、玄関から続く大廊下。
「侍女長――!?」
〝あ、やばい見つかっちゃった〟みたいな顔。
新米メイドの傍らには、美の女神を象った彫像。
ギルド支部に置かれている物より、小振りなソレには――
投入口があり――
メイド・タターの手には、財布代わりの――革袋。
「私は正式にはもう、侍女長ではありませんよ」
と言いつつ、通りかかった、邸宅付きの同僚たちへ――
「今月のシフト変更は、今週中にお願いします」
「それと本日の〝晩餐会の予行演習〟は中止して、ニゲル対巨大ゴーレム戦観戦会へ変更します。もし長引くようなら――」
「下ごしらえが済んでいる食材を使って、お料理をお出しします。手配はこちらで致しますが、厨房にも伝えて下さい」
「そして本日、夜8時までに変異種関係の事態が収束しなかった場合、関係各位へ明日の〝式典ならびに晩餐会〟の延期を通達願います」
淀みのない指示。
新米メイドは、やや呆れながら――
「侍女長って役職を退いただけで、実質何も変わってないですよね?」
という事実を口にした。
「ふぅーっ。後任が決まらないのですから、仕方がありません。そんなことより、アナタはどうして、子馬などに掛けたのですか?」
元侍女長は、どうしてもソレを知りたいようだ。
「ええーっと、それはその、な、なんと言いましょうか――」
言い淀む新米メイド、ネネルド村のタター。
「どうして、子馬に掛けたのですか?」
淀みのない追求。
彼女的には、どうしても確認しなければならないようで――
やや緊迫の大廊下。
ぽっきゅらぽっきゅらら♪
一瞬の静寂を打ち破る、騒々しくも間抜けた爪音。
件の子馬に乗った子供が〝なんか面白そう〟みたいな顔で、メイドたちの前までやってきた。
「タターさん、どうしてー?」
屈託のない笑顔。
「ひひっひぃぃん?」
つぶらな瞳。
「だって、私は冒険者カードを持ってないから――女神像からしか掛けられなかったから――」
などという弁明を聞くなり、元侍女長が女神像へ金貨を投入。
ふぉふぉん♪
『現在開催中のイベント
レイド村杯タイトルマッチ
<オッズを見る> <掛ける>』
女神像が持つ箱から、飛びだす光板を――ぽぽん♪
と押す侍女長。
ふぉふぉん♪
『<冒険者ニゲル:2>
<巨大ゴーレム:36>
<子馬ゴーレム:153>』
表示されたのは、三つの掛けの対象。
「この倍率なら、お金がない私でも、夢を見られるとぉ思いましてー♪」
その顔が紅潮する。
「では、タターが〝子馬〟という項目を新設して、BETしたわけではないのですね!?」
念を押す古参メイド。
「え? そんなやり方わぁ、習ってないからわかりませぇん!」
という新米メイドの言葉を聞くが早いか――
「やっぱりっ! イオノファラーさまー!」
慌てた様子で、応接室へ戻っていく鳥の仮面の元侍女長。
「ひぃぃぃん?」
子馬が首を傾げつつ、ぽきゅぽっきゅりと大廊下を戻っていく。
§
「(しかし、どーすりゃ良い? ニゲルの囲いから、逃げられねぇってのに!)」
返事はねぇ。
ふぉふぉん♪
『女神像までの距離、1・6キロメートル』
ふぉふぉん♪
『▲▲▲』
村までの丁度、半分のあたりに――人がいる。
「(どうする?)」
しかしあの、大事そうに抱えてる卵が気になるな?
あれだけでけぇ卵だと、そうとう食いでがありそうだしな。
まずは体を起こして、自抜刀を撃ち出さねぇとイケねぇ。
それをしなけりゃ、背中からニゲルに斬られて――お陀仏だぜ。
「やれるか――ニャ?」
道ばたで芸を披露するときに、何も斬る物がねぇときゃぁ――似たようなことはやってきた。
「剣を捨てて、降参してよ?」
おれを踏んづけたままのニゲル。
その見下ろす表情。
「喝ぁッっーーーーーーーーーーっ、――ニャアッ!!!」
発をくれてやった!
ビリビリと震える鉄鎧の体。
ブッツゥン――――顔のまえに見えていた、地図や文字が一斉に消えた!
「(なんだっ、消えた!? 壊しちまったか!?)」
そういやぁ前にも発をくれたら、何かが壊れたんじゃなかったか?
かまうか!
折れた太刀を、天高く放り投げる!
浮いた肩を――――ドガガァァンッ!
鉄下駄で思い切り、踏みつけられた!
ぐうぅうう!
この細ぇ体のドコに、こんな重さがありやがんだぁ!?
――――ガッキュリッ!
けどその弾みを移用して、おれは左手で鞘を突き上げた!
ヒュルルルルルルッ――――カシュン♪
ギュルッ――――ガァンッ!!!
歯車が逆回転し、折れた太刀が勝手に納まり――ズシャッ、ゴゴァン!
納刀の勢いで半身程度、体が回転した。
折れた剣じゃ、勢いが半減するかと思ったが――
ニゲルを。おれを見下しやがったあんにゃろうを――
かちあげるのには、十分だった!
新米メイドをやんわりと叱りつける、古参メイド。
新ギルド会館最上階コントゥル邸の、玄関から続く大廊下。
「侍女長――!?」
〝あ、やばい見つかっちゃった〟みたいな顔。
新米メイドの傍らには、美の女神を象った彫像。
ギルド支部に置かれている物より、小振りなソレには――
投入口があり――
メイド・タターの手には、財布代わりの――革袋。
「私は正式にはもう、侍女長ではありませんよ」
と言いつつ、通りかかった、邸宅付きの同僚たちへ――
「今月のシフト変更は、今週中にお願いします」
「それと本日の〝晩餐会の予行演習〟は中止して、ニゲル対巨大ゴーレム戦観戦会へ変更します。もし長引くようなら――」
「下ごしらえが済んでいる食材を使って、お料理をお出しします。手配はこちらで致しますが、厨房にも伝えて下さい」
「そして本日、夜8時までに変異種関係の事態が収束しなかった場合、関係各位へ明日の〝式典ならびに晩餐会〟の延期を通達願います」
淀みのない指示。
新米メイドは、やや呆れながら――
「侍女長って役職を退いただけで、実質何も変わってないですよね?」
という事実を口にした。
「ふぅーっ。後任が決まらないのですから、仕方がありません。そんなことより、アナタはどうして、子馬などに掛けたのですか?」
元侍女長は、どうしてもソレを知りたいようだ。
「ええーっと、それはその、な、なんと言いましょうか――」
言い淀む新米メイド、ネネルド村のタター。
「どうして、子馬に掛けたのですか?」
淀みのない追求。
彼女的には、どうしても確認しなければならないようで――
やや緊迫の大廊下。
ぽっきゅらぽっきゅらら♪
一瞬の静寂を打ち破る、騒々しくも間抜けた爪音。
件の子馬に乗った子供が〝なんか面白そう〟みたいな顔で、メイドたちの前までやってきた。
「タターさん、どうしてー?」
屈託のない笑顔。
「ひひっひぃぃん?」
つぶらな瞳。
「だって、私は冒険者カードを持ってないから――女神像からしか掛けられなかったから――」
などという弁明を聞くなり、元侍女長が女神像へ金貨を投入。
ふぉふぉん♪
『現在開催中のイベント
レイド村杯タイトルマッチ
<オッズを見る> <掛ける>』
女神像が持つ箱から、飛びだす光板を――ぽぽん♪
と押す侍女長。
ふぉふぉん♪
『<冒険者ニゲル:2>
<巨大ゴーレム:36>
<子馬ゴーレム:153>』
表示されたのは、三つの掛けの対象。
「この倍率なら、お金がない私でも、夢を見られるとぉ思いましてー♪」
その顔が紅潮する。
「では、タターが〝子馬〟という項目を新設して、BETしたわけではないのですね!?」
念を押す古参メイド。
「え? そんなやり方わぁ、習ってないからわかりませぇん!」
という新米メイドの言葉を聞くが早いか――
「やっぱりっ! イオノファラーさまー!」
慌てた様子で、応接室へ戻っていく鳥の仮面の元侍女長。
「ひぃぃぃん?」
子馬が首を傾げつつ、ぽきゅぽっきゅりと大廊下を戻っていく。
§
「(しかし、どーすりゃ良い? ニゲルの囲いから、逃げられねぇってのに!)」
返事はねぇ。
ふぉふぉん♪
『女神像までの距離、1・6キロメートル』
ふぉふぉん♪
『▲▲▲』
村までの丁度、半分のあたりに――人がいる。
「(どうする?)」
しかしあの、大事そうに抱えてる卵が気になるな?
あれだけでけぇ卵だと、そうとう食いでがありそうだしな。
まずは体を起こして、自抜刀を撃ち出さねぇとイケねぇ。
それをしなけりゃ、背中からニゲルに斬られて――お陀仏だぜ。
「やれるか――ニャ?」
道ばたで芸を披露するときに、何も斬る物がねぇときゃぁ――似たようなことはやってきた。
「剣を捨てて、降参してよ?」
おれを踏んづけたままのニゲル。
その見下ろす表情。
「喝ぁッっーーーーーーーーーーっ、――ニャアッ!!!」
発をくれてやった!
ビリビリと震える鉄鎧の体。
ブッツゥン――――顔のまえに見えていた、地図や文字が一斉に消えた!
「(なんだっ、消えた!? 壊しちまったか!?)」
そういやぁ前にも発をくれたら、何かが壊れたんじゃなかったか?
かまうか!
折れた太刀を、天高く放り投げる!
浮いた肩を――――ドガガァァンッ!
鉄下駄で思い切り、踏みつけられた!
ぐうぅうう!
この細ぇ体のドコに、こんな重さがありやがんだぁ!?
――――ガッキュリッ!
けどその弾みを移用して、おれは左手で鞘を突き上げた!
ヒュルルルルルルッ――――カシュン♪
ギュルッ――――ガァンッ!!!
歯車が逆回転し、折れた太刀が勝手に納まり――ズシャッ、ゴゴァン!
納刀の勢いで半身程度、体が回転した。
折れた剣じゃ、勢いが半減するかと思ったが――
ニゲルを。おれを見下しやがったあんにゃろうを――
かちあげるのには、十分だった!
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