377 / 740
3:ダンジョンクローラーになろう
377:龍脈の回廊、3パケタと3番コンテナ
しおりを挟む
「ひひぃぃん?」
それは大きな子馬の頭上に、ぽこんと現れた。
ふぉん♪
『掛け金総額:3パケタ』
レイダやカヤノヒメよりも少ない、微妙な金額。
「なによこれ、迅雷?」
立体映像が、立体映像を訝しむように、睨みつける。
「照会完了。掛けたのは、ネネルド村のタターでス」
さっきまで子供と子馬の近くを、うろついていたメイドが一人、姿を消している。
「何してるのかしら、あの子はもう――?」
鳥の仮面の女性が給仕服をひるがえし、部屋を出て行く。
§
大道芸が通らねぇなら――
仕込み錫杖の〝滅の太刀〟しか、打つ手がねぇ。
けどさすがに、この鉄の体じゃ、打てる気がせん――
「くそウ、こウ言うトきに相談でキる奴ガ、居タ気がしたンだがぁ――ニャッ?」
何でも良いから、使えるものはねぇか?
あたりには何も無い。
全部ニゲルが更地にしちまった。
ふぉふぉん♪
『ヒント>仕込み直刀、作成できます』
この〝一言、文字が出る奴〟しか、今は居ねえらしい。
「(だめだ、錫杖は出会い頭に、かち割られちまってる)」
頭の中で話しかけてみた。
長い鉄の塊みたいな物じゃ、ニゲルの剣に阻まれる。
「勝負ありだよ、シガミー。降参してよ、イオノファラーさまたちが、きっと元の体に戻してくれるからさ――――あれ、抜けない?」
ニゲルが剣の柄をつかみ、おれの胸板に鉄下駄を突き立てる。
おまえさんは、そんな下駄を持ってたか?
そういや「靴が欲しい」っていわれて、「ひとまずそれ履いとけ」って出してやった気もするな。
けどそれを言ったのは、おれじゃねぇ気もするし……ほんとうに、この世はややこしくていけねぇや。
ふぉふぉん♪
『ヒント>スマート仕込み直刀(ホーミング機能付き)、作成できます』
なんだ?
ふぉふぉふぉぉん♪
『ヒント>※CFWの導入が条件になります。女神像への物理的アクセスによりFWの入手が可能です』
わからん――が、ヒントの言うとおりにすりゃ、ニゲルに一太刀入れられそうなことだけは――わかった。
ドズズズズズゥゥゥウゥゥゥンッ――――!
光り輝く剣が抜け、倒れる巨体。
しかし鉄の鎧も、大したことねぇなぁ。
おれの腹の上に――――ガガァァンッ!
鉄下駄で立つ青年ニゲル。
その顔が、普段の兵六玉みてぇなのと比べて――
どこか精悍に見えた。
「その顔を、いつもしてりゃぁ――姫さんだって、おまえさんのことを見直すだろうによぉ――ニャァ♪」
「う、うるさいよシガミー? けどだいぶ記憶が、戻ってきてるんじゃ?」
ニゲルが、じっとコッチを見てる。
「(おい、おまえ――?)」
頭の中で呼んでみたが、返事がねぇ。
「(女神像ってのはなんだ――?)」
女神像なぁ……聞いたことはある、気がしないでもない。
ふぉん♪
『ヒント>直近の村、レイド村に一体の女神像を検出しました』
女神像までの地図が出た。
何をすればいいのかを聞いて、その答えを答えられるときだけ、返事をしやがるんだな。
まあ、使えるなら、それで良いやな。
「(何とか言うヤツを作るのに、この地図の矢印ん所まで行きゃぁ良いんだな?)」
ふぉふぉん♪
『ヒント>3番コンテナに、コンソールキットが格納されています』
わからん。
いまはひとまず、ニゲルから逃げて――
何とか村まで、たどり着かねぇといけねぇ……らしい。
さて、どうする?
ニゲルが光る刀を、鞘に納めた。
鉄下駄の刃の温度を正確に伝えてくる、この鉄の体は――
血も出ねぇし、もう何回かは切り結べそうだが。
ふぉふぉん♪
『▲▲▲』
『ヒント>動体検知、敵性有りません』
何かが近づいて来てることを、目のまえの画面が伝えてくる。
「御使いさまの、従者さまーぁ!?」
若い女の声だ。
そっちを見なくても、人の輪郭がわかった。
何か卵みたいな物を、大事そうに抱えてる。
ーーー
CFW/カスタムファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムを非公式に改変したもの。ハードウェアに隠された機能や、拡張された機能を有効化する。
FW/ファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムのこと。ソフトウェアよりもハードウェア寄りという意味で〝FIRM(堅固、固定された)〟と呼ばれる。
ホーミング/自動追尾。移動する目標を識別し、自律的に追尾する誘導方法。
それは大きな子馬の頭上に、ぽこんと現れた。
ふぉん♪
『掛け金総額:3パケタ』
レイダやカヤノヒメよりも少ない、微妙な金額。
「なによこれ、迅雷?」
立体映像が、立体映像を訝しむように、睨みつける。
「照会完了。掛けたのは、ネネルド村のタターでス」
さっきまで子供と子馬の近くを、うろついていたメイドが一人、姿を消している。
「何してるのかしら、あの子はもう――?」
鳥の仮面の女性が給仕服をひるがえし、部屋を出て行く。
§
大道芸が通らねぇなら――
仕込み錫杖の〝滅の太刀〟しか、打つ手がねぇ。
けどさすがに、この鉄の体じゃ、打てる気がせん――
「くそウ、こウ言うトきに相談でキる奴ガ、居タ気がしたンだがぁ――ニャッ?」
何でも良いから、使えるものはねぇか?
あたりには何も無い。
全部ニゲルが更地にしちまった。
ふぉふぉん♪
『ヒント>仕込み直刀、作成できます』
この〝一言、文字が出る奴〟しか、今は居ねえらしい。
「(だめだ、錫杖は出会い頭に、かち割られちまってる)」
頭の中で話しかけてみた。
長い鉄の塊みたいな物じゃ、ニゲルの剣に阻まれる。
「勝負ありだよ、シガミー。降参してよ、イオノファラーさまたちが、きっと元の体に戻してくれるからさ――――あれ、抜けない?」
ニゲルが剣の柄をつかみ、おれの胸板に鉄下駄を突き立てる。
おまえさんは、そんな下駄を持ってたか?
そういや「靴が欲しい」っていわれて、「ひとまずそれ履いとけ」って出してやった気もするな。
けどそれを言ったのは、おれじゃねぇ気もするし……ほんとうに、この世はややこしくていけねぇや。
ふぉふぉん♪
『ヒント>スマート仕込み直刀(ホーミング機能付き)、作成できます』
なんだ?
ふぉふぉふぉぉん♪
『ヒント>※CFWの導入が条件になります。女神像への物理的アクセスによりFWの入手が可能です』
わからん――が、ヒントの言うとおりにすりゃ、ニゲルに一太刀入れられそうなことだけは――わかった。
ドズズズズズゥゥゥウゥゥゥンッ――――!
光り輝く剣が抜け、倒れる巨体。
しかし鉄の鎧も、大したことねぇなぁ。
おれの腹の上に――――ガガァァンッ!
鉄下駄で立つ青年ニゲル。
その顔が、普段の兵六玉みてぇなのと比べて――
どこか精悍に見えた。
「その顔を、いつもしてりゃぁ――姫さんだって、おまえさんのことを見直すだろうによぉ――ニャァ♪」
「う、うるさいよシガミー? けどだいぶ記憶が、戻ってきてるんじゃ?」
ニゲルが、じっとコッチを見てる。
「(おい、おまえ――?)」
頭の中で呼んでみたが、返事がねぇ。
「(女神像ってのはなんだ――?)」
女神像なぁ……聞いたことはある、気がしないでもない。
ふぉん♪
『ヒント>直近の村、レイド村に一体の女神像を検出しました』
女神像までの地図が出た。
何をすればいいのかを聞いて、その答えを答えられるときだけ、返事をしやがるんだな。
まあ、使えるなら、それで良いやな。
「(何とか言うヤツを作るのに、この地図の矢印ん所まで行きゃぁ良いんだな?)」
ふぉふぉん♪
『ヒント>3番コンテナに、コンソールキットが格納されています』
わからん。
いまはひとまず、ニゲルから逃げて――
何とか村まで、たどり着かねぇといけねぇ……らしい。
さて、どうする?
ニゲルが光る刀を、鞘に納めた。
鉄下駄の刃の温度を正確に伝えてくる、この鉄の体は――
血も出ねぇし、もう何回かは切り結べそうだが。
ふぉふぉん♪
『▲▲▲』
『ヒント>動体検知、敵性有りません』
何かが近づいて来てることを、目のまえの画面が伝えてくる。
「御使いさまの、従者さまーぁ!?」
若い女の声だ。
そっちを見なくても、人の輪郭がわかった。
何か卵みたいな物を、大事そうに抱えてる。
ーーー
CFW/カスタムファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムを非公式に改変したもの。ハードウェアに隠された機能や、拡張された機能を有効化する。
FW/ファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムのこと。ソフトウェアよりもハードウェア寄りという意味で〝FIRM(堅固、固定された)〟と呼ばれる。
ホーミング/自動追尾。移動する目標を識別し、自律的に追尾する誘導方法。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スター・スフィア-異世界冒険はお喋り宝石と共に-
黒河ハル
ファンタジー
——1つの星に1つの世界、1つの宙《そら》に無数の冒険——
帰り道に拾った蒼い石がなんか光りだして、なんか異世界に飛ばされた…。
しかもその石、喋るし、消えるし、食べるしでもう意味わからん!
そんな俺の気持ちなどおかまいなしに、突然黒いドラゴンが襲ってきて——
不思議な力を持った宝石たちを巡る、異世界『転移』物語!
星の命運を掛けた壮大なSFファンタジー!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
【全12話/完結】リタイア勇者たちの飲み会
雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
◇12/20:::HOT90位ありがとうございました!RPGで言うところの全クリをした後、富も名声も女も時間も何もかもを満喫しつくした「元勇者=リタイア勇者」たちと、設定上やられ役=悪役キャラの魔王や魔女たちが繰り広げる、ほのぼの居酒屋同窓会。
自己中神様にハレンチ女神。不倫二股ヒロインたちも登場して、毎夜毎夜飲みまくる、胃袋ブレイク。
(いろいろ増えるよ。登場するよ)
※加筆修正を加えながら、ゆっくり更新中です。
※第二回お仕事コン楽ノベ文庫賞の受賞候補作品でした。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる