377 / 741
3:ダンジョンクローラーになろう
377:龍脈の回廊、3パケタと3番コンテナ
しおりを挟む
「ひひぃぃん?」
それは大きな子馬の頭上に、ぽこんと現れた。
ふぉん♪
『掛け金総額:3パケタ』
レイダやカヤノヒメよりも少ない、微妙な金額。
「なによこれ、迅雷?」
立体映像が、立体映像を訝しむように、睨みつける。
「照会完了。掛けたのは、ネネルド村のタターでス」
さっきまで子供と子馬の近くを、うろついていたメイドが一人、姿を消している。
「何してるのかしら、あの子はもう――?」
鳥の仮面の女性が給仕服をひるがえし、部屋を出て行く。
§
大道芸が通らねぇなら――
仕込み錫杖の〝滅の太刀〟しか、打つ手がねぇ。
けどさすがに、この鉄の体じゃ、打てる気がせん――
「くそウ、こウ言うトきに相談でキる奴ガ、居タ気がしたンだがぁ――ニャッ?」
何でも良いから、使えるものはねぇか?
あたりには何も無い。
全部ニゲルが更地にしちまった。
ふぉふぉん♪
『ヒント>仕込み直刀、作成できます』
この〝一言、文字が出る奴〟しか、今は居ねえらしい。
「(だめだ、錫杖は出会い頭に、かち割られちまってる)」
頭の中で話しかけてみた。
長い鉄の塊みたいな物じゃ、ニゲルの剣に阻まれる。
「勝負ありだよ、シガミー。降参してよ、イオノファラーさまたちが、きっと元の体に戻してくれるからさ――――あれ、抜けない?」
ニゲルが剣の柄をつかみ、おれの胸板に鉄下駄を突き立てる。
おまえさんは、そんな下駄を持ってたか?
そういや「靴が欲しい」っていわれて、「ひとまずそれ履いとけ」って出してやった気もするな。
けどそれを言ったのは、おれじゃねぇ気もするし……ほんとうに、この世はややこしくていけねぇや。
ふぉふぉん♪
『ヒント>スマート仕込み直刀(ホーミング機能付き)、作成できます』
なんだ?
ふぉふぉふぉぉん♪
『ヒント>※CFWの導入が条件になります。女神像への物理的アクセスによりFWの入手が可能です』
わからん――が、ヒントの言うとおりにすりゃ、ニゲルに一太刀入れられそうなことだけは――わかった。
ドズズズズズゥゥゥウゥゥゥンッ――――!
光り輝く剣が抜け、倒れる巨体。
しかし鉄の鎧も、大したことねぇなぁ。
おれの腹の上に――――ガガァァンッ!
鉄下駄で立つ青年ニゲル。
その顔が、普段の兵六玉みてぇなのと比べて――
どこか精悍に見えた。
「その顔を、いつもしてりゃぁ――姫さんだって、おまえさんのことを見直すだろうによぉ――ニャァ♪」
「う、うるさいよシガミー? けどだいぶ記憶が、戻ってきてるんじゃ?」
ニゲルが、じっとコッチを見てる。
「(おい、おまえ――?)」
頭の中で呼んでみたが、返事がねぇ。
「(女神像ってのはなんだ――?)」
女神像なぁ……聞いたことはある、気がしないでもない。
ふぉん♪
『ヒント>直近の村、レイド村に一体の女神像を検出しました』
女神像までの地図が出た。
何をすればいいのかを聞いて、その答えを答えられるときだけ、返事をしやがるんだな。
まあ、使えるなら、それで良いやな。
「(何とか言うヤツを作るのに、この地図の矢印ん所まで行きゃぁ良いんだな?)」
ふぉふぉん♪
『ヒント>3番コンテナに、コンソールキットが格納されています』
わからん。
いまはひとまず、ニゲルから逃げて――
何とか村まで、たどり着かねぇといけねぇ……らしい。
さて、どうする?
ニゲルが光る刀を、鞘に納めた。
鉄下駄の刃の温度を正確に伝えてくる、この鉄の体は――
血も出ねぇし、もう何回かは切り結べそうだが。
ふぉふぉん♪
『▲▲▲』
『ヒント>動体検知、敵性有りません』
何かが近づいて来てることを、目のまえの画面が伝えてくる。
「御使いさまの、従者さまーぁ!?」
若い女の声だ。
そっちを見なくても、人の輪郭がわかった。
何か卵みたいな物を、大事そうに抱えてる。
ーーー
CFW/カスタムファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムを非公式に改変したもの。ハードウェアに隠された機能や、拡張された機能を有効化する。
FW/ファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムのこと。ソフトウェアよりもハードウェア寄りという意味で〝FIRM(堅固、固定された)〟と呼ばれる。
ホーミング/自動追尾。移動する目標を識別し、自律的に追尾する誘導方法。
それは大きな子馬の頭上に、ぽこんと現れた。
ふぉん♪
『掛け金総額:3パケタ』
レイダやカヤノヒメよりも少ない、微妙な金額。
「なによこれ、迅雷?」
立体映像が、立体映像を訝しむように、睨みつける。
「照会完了。掛けたのは、ネネルド村のタターでス」
さっきまで子供と子馬の近くを、うろついていたメイドが一人、姿を消している。
「何してるのかしら、あの子はもう――?」
鳥の仮面の女性が給仕服をひるがえし、部屋を出て行く。
§
大道芸が通らねぇなら――
仕込み錫杖の〝滅の太刀〟しか、打つ手がねぇ。
けどさすがに、この鉄の体じゃ、打てる気がせん――
「くそウ、こウ言うトきに相談でキる奴ガ、居タ気がしたンだがぁ――ニャッ?」
何でも良いから、使えるものはねぇか?
あたりには何も無い。
全部ニゲルが更地にしちまった。
ふぉふぉん♪
『ヒント>仕込み直刀、作成できます』
この〝一言、文字が出る奴〟しか、今は居ねえらしい。
「(だめだ、錫杖は出会い頭に、かち割られちまってる)」
頭の中で話しかけてみた。
長い鉄の塊みたいな物じゃ、ニゲルの剣に阻まれる。
「勝負ありだよ、シガミー。降参してよ、イオノファラーさまたちが、きっと元の体に戻してくれるからさ――――あれ、抜けない?」
ニゲルが剣の柄をつかみ、おれの胸板に鉄下駄を突き立てる。
おまえさんは、そんな下駄を持ってたか?
そういや「靴が欲しい」っていわれて、「ひとまずそれ履いとけ」って出してやった気もするな。
けどそれを言ったのは、おれじゃねぇ気もするし……ほんとうに、この世はややこしくていけねぇや。
ふぉふぉん♪
『ヒント>スマート仕込み直刀(ホーミング機能付き)、作成できます』
なんだ?
ふぉふぉふぉぉん♪
『ヒント>※CFWの導入が条件になります。女神像への物理的アクセスによりFWの入手が可能です』
わからん――が、ヒントの言うとおりにすりゃ、ニゲルに一太刀入れられそうなことだけは――わかった。
ドズズズズズゥゥゥウゥゥゥンッ――――!
光り輝く剣が抜け、倒れる巨体。
しかし鉄の鎧も、大したことねぇなぁ。
おれの腹の上に――――ガガァァンッ!
鉄下駄で立つ青年ニゲル。
その顔が、普段の兵六玉みてぇなのと比べて――
どこか精悍に見えた。
「その顔を、いつもしてりゃぁ――姫さんだって、おまえさんのことを見直すだろうによぉ――ニャァ♪」
「う、うるさいよシガミー? けどだいぶ記憶が、戻ってきてるんじゃ?」
ニゲルが、じっとコッチを見てる。
「(おい、おまえ――?)」
頭の中で呼んでみたが、返事がねぇ。
「(女神像ってのはなんだ――?)」
女神像なぁ……聞いたことはある、気がしないでもない。
ふぉん♪
『ヒント>直近の村、レイド村に一体の女神像を検出しました』
女神像までの地図が出た。
何をすればいいのかを聞いて、その答えを答えられるときだけ、返事をしやがるんだな。
まあ、使えるなら、それで良いやな。
「(何とか言うヤツを作るのに、この地図の矢印ん所まで行きゃぁ良いんだな?)」
ふぉふぉん♪
『ヒント>3番コンテナに、コンソールキットが格納されています』
わからん。
いまはひとまず、ニゲルから逃げて――
何とか村まで、たどり着かねぇといけねぇ……らしい。
さて、どうする?
ニゲルが光る刀を、鞘に納めた。
鉄下駄の刃の温度を正確に伝えてくる、この鉄の体は――
血も出ねぇし、もう何回かは切り結べそうだが。
ふぉふぉん♪
『▲▲▲』
『ヒント>動体検知、敵性有りません』
何かが近づいて来てることを、目のまえの画面が伝えてくる。
「御使いさまの、従者さまーぁ!?」
若い女の声だ。
そっちを見なくても、人の輪郭がわかった。
何か卵みたいな物を、大事そうに抱えてる。
ーーー
CFW/カスタムファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムを非公式に改変したもの。ハードウェアに隠された機能や、拡張された機能を有効化する。
FW/ファームウェア。電子機器本体に組み込まれたシステムのこと。ソフトウェアよりもハードウェア寄りという意味で〝FIRM(堅固、固定された)〟と呼ばれる。
ホーミング/自動追尾。移動する目標を識別し、自律的に追尾する誘導方法。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる