滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ

文字の大きさ
上 下
360 / 740
3:ダンジョンクローラーになろう

360:龍脈の回廊、二つの乗りもの

しおりを挟む
 ぽっきゅらぽっきゅら、カラカラカララン♪
 おおきな子馬こうままちをゆく。

うま魔物まものだぁ――――あれ? なんか大人おとなしいぞ?」
うま魔物まものよぉ――――そうね? それにいろが、おにぎりちゃん・・・・・・・おなじだわ」
うま魔物まものだけど――――かわいい♪」
 がやがやどやどや。

「ひひひぃん? ひっひひひひぃん?」
 ぞろぞろとついてくる町民ちょうみんたちを気にしつつも、子馬こうまはどこかたのしげだ。
 子供レイダを乗せた荷車にぐるま……荷馬車にばしゃ一人用ひとりよう)は、立派りっぱな建物たてものへ向かってすすんでいく。

 ガムラン中央ちゅうおうからは、ややはずれた一画いっかく
 コントゥルてい関係者かんけいしゃ住居じゅうきょなどが、ひしめき合っている。
 央都おうとからの来賓らいひんのための施設しせつなどもあるため、各種設備かくしゅせつび充実じゅうじつしており――
 とうぜん、庶民しょみん冒険者ぼうけんしゃには、あまり馴染なじみがない。

「なんかまた……猪蟹屋ししがにや面白おもしろいことを、はじめたのかとおもったんだが――」
「――ちがった……みたいねぇー」
「またねぇー、レイダちゃーん」
 どやどやがやがや。
 かえっていく庶民しょみんたち。

「はぁーい♪」
 ぶんぶんと手を振り、荷車にぐるまから落ちそうになる――愛想あいそうの良い子供レイダ

「おっととと、テンプーラゴウ。あそこのあおぬのが垂れ下がってる、おみせだよ♪」
 ぽっきゅらぽっきゅら、カラカラカララン♪
 この子馬こうまの目はまえを向いていても、うしろの様子ようすがみえる。
 子供こどもゆびさすほうへ、まっすぐすすんでいく。

 子馬こうま荷馬車にばしゃ一人用ひとりよう)に、おともなく追従ついじゅうする魔法杖まほうつえ……魔法まほう六角レンチ・・・・・
 あやつるのは眼鏡めがねを掛けた、ラプトル王女殿下おうじょでんか(メイドふく&『監督不行届き』の襷付たすきつき)。
 その背中せなかにしがみ付くのは、少女しょうじょメイド・タター(『監督不行届き』の襷付たすきつき)。

王女おうじょさま、夜会やかいに着ていけるようなドレスをあつかっている洋服店ようふくてんは、あちらの一店舗いってんぽだけです」
 遠目とおめからでも看板かんばんかたち外観がいかんいから、女性用じょせいようの服飾専門店ふくしょくせんもんてんとわかる。
 手で指ししめし、進言しんげんするタター。

「そうらぁん? じゃぁいそがなければ素敵すてきなドレスは、きっと取り合いになりますらぁん!」
 六角ろっかくレンチから、はずみをつけ跳びおりる王女おうじょ

「わきゃっ!?」
 飛びはねる魔法まほう六角ろっかくレンチに、翻弄ほんろうされるメイド。
つえよっ!」
 特大工具レンチ杓子しゃくし変形へんけい、パチンと折りたたむ。

 少女しょうじょメイドの手を取り――ストンと、着地ちゃくちさせてやる王女殿下おうじょでんか
「タターさん、大丈夫だいじょうぶですらぁん?」
「だ、大丈夫だいじょうぶです。ありがとうございます」
 まくれ上がるメイドふくすそを、押さえる少女タター

「ひひひひぃぃぃん?」
 ココで良いのん? といなな子馬こうま
 ぽきゅらら、ギュキィー♪

「コチラのおみせならわたしも見に来たことがあるので、ご案内あんないできます。もちろんこんな高級店こうきゅうてんふくを買ったことなんて無いですけれど、えへへ♪」
 ネネルド村出身むらしゅっしん少女しょうじょタターは、ラプトル王女おうじょ侍女メイドではない。
 王女おうじょが着の身着みきのまま、ガムランちょうへやってきたため――
 コントゥル家から派遣はけんされているのだ。

 荷馬車にばしゃ一人用ひとりよう)から降りる子供こども
 レイダと王女おうじょとタターは、ガムラン唯一ゆいいつ服飾品店ふくしょくひんてんへ――

 ストタタタタタッタッ――――ヴォォォォオォォォォン!
 ――そこへ駆け込んでくる複数ふくすう人影ひとかげ

「ラプトル王女おうじょ、お下がりください――?」
 王女おうじょ子供レイダまもるように、身構みがまえる少女タター
 低空ていくうを飛ぶかげと、地をすべるようにはしかげ

「――なにあれ、椅子いすぅ?」
 彼女タターが手にした得物えものは、魔法杖まほうつえではなく伸縮式しんしゅくしき護身具ごしんぐだ。
 刃は付いておらず、かたちとしてはただのぼう

「ギルド椅子いすだぁ!」
 レイダのいえ新旧問わずいまもむかしも、ギルド屋舎内おくしゃないにあった。
 自宅じたくにも、ギルドで使用しようする規格きかく椅子いすを置いてある。
 その彼女レイダが言うのだからソレは、〝ギルド椅子いす〟で間違いないのだろう。

椅子いす? はし椅子いす? どこかで聞いた気がぁするらん?」
 掃除用そうじように借りたメイド服姿ふくすがた王女おうじょが、眼鏡まるくくする。

 はしるギルド椅子いす
 それは椅子いすではない。
 それは魔法杖まほうつえ分類ぶんるいされるものだ。
 ラプトル王女殿下おうじょでんか万能工具まほうつえと、同一どういつのカテゴリ。

 ヴォォォォォオンッ――――「あっるぇー? ラプトルちゃんじゃないのぉ?」
 コントゥル辺境伯へんきょうはく名代みょうだいルリーロの、したっ足らずなこえが投げかけられた。
 本日ほんじつ町娘まちむすめ格好かっこうで、三つたば巨大魔法杖きょだいまほうつえに乗っている。
 その正体しょうたいは、〝ルードホルドの魔法杖まほうつえ無限属性むげんぞくせい】〟。
 コントゥル家の家宝かほうにして、彼女ルリーロにしかあつかえないじゃじゃうま

 キュキキィッ――――ズザザッ、ガリガリリィッ!
 なめらかな石畳おしだたみうえすべり、停止ていししたギルド椅子いす

「ラ、ラプトルひめだコォン!?」
 猫耳ねこみみ女性じょせい膝に座る・・・・狐耳きつねみみ少年しょうねん

「ニャッ!? ゴーレ……王女おうじょさまニャ」
 ギルド椅子いすすわ猫耳女性ねこみみじょせいが、おどろいている。

「あれ? レイダに王女おうじょさまにタター、どーしたのこんなところで?」
 最後さいご徒歩とほ登場とうじょうしたのは――
 ドレスを着慣きなれていない様子ようすの、一本角いっぽんつの麗人れいじん

 防具ぼうぐを入れた丸箱まるばこや、宝飾品店アイテムショップふくろに、靴箱くつばこがたくさん。
 そんなのを積み上げ、よたよたとバランスを取る鬼族オーガ

「「そっちこそどーしたの、その大荷物おおにもつ?」」
 本職ほんしょく新米しんまいメイドと子供こどもが、たずねた。

「なんかぁひまそーにしてたからぁ、引っ捕ら……登用とうようしましたぁ♪」
 ヴォヴォォォォンッ――――スタタタッ♪
 名代みょうだいつえから飛び降りた。
 つまりは鬼の受付嬢オルコトリアは、荷物持にもつもちをさせられているのだ。

「ルリーロさまわぁ、コチラのおみせに、ごようがお有りですらぁん?」
 世事せじうと第一王女ラプトルとて、夜会会食やかいかいしょく晩餐会ばんさんかい歓迎会的かんげいかいてきなものをひかえたいま
 ここに立つ意味いみは、わかろうというものだ。

 服飾品店ふくしょくひんてん『ガムランのいただき』、店舗前てんぽまえ
 子馬こうま見守みまもなか、3人対にんたいにん対峙したエンカウント

 かたや、辺境伯爵へんきょうはくしゃく夫人ふじんルリーロ・イナリィ・コントゥル。
 かたや、中央都市ちゅうおうとしラスクトール自治領じちりょう第一王女だいいちおうじょラプトル・ラスクトール。
 肩書かたがきとしては、ほぼ互角ごかく

 キィ――ピィンポォォン♪
 いきおいいよくひらかれるドア。
 駆け込んでいく、王女ラプトル名代ルリーロ

たたかいの火ぶたは、切って落とされたのであった――ニャ♪」
 ほそめられる、ねこのようなツリ目――かくしても、ついついほころぶ口元くちもと
 まるでコレから面白おもしろ見世物みせものを、特等席とくとうせきで見るかのような――。

 たのしげなのは猫耳ねこみみ女性じょせい、ただ一人ひとり
 狐耳きつねみみ少年しょうねんと、おに町娘まちむすめかたが落ちる。

 ぽっきゅらぽっきゅら――♪
「こら、テンプーラゴウはそとで待ってて!」
 店内てんないへ、ついてこようとする子馬こうまを――
 子供レイダが押しもどす。

「じゃあ、ぼくつえかばんに仕舞うコォン」
 地面じめんに置いた、おおきなカバン。
 少年のうしろに居た椅子が暴れ出す。

「こらっ、こいつめっ! 大人おとなしくはいるコォン!」
 椅子いすはジタバタしていたが、猫耳女性ねこみみじょせいが手を貸すと――すぽん♪
 途端とたんあたまから、カバンに飲みこまれた。

「へぇー、変わった魔法具まほうぐだね、ルコルくん?」
 一部始終いちぶしじゅう興味深きょうみぶかく見つめるレイダ。

「これはわれの、魔法杖まほうつえだ――コォン!?」
 面白おもしろ見世物・・・見逃みのがすまいと、少年しょうねん小脇こわきかかえ――
「ルコル、我々われわれも急ぐニャ!」
 店内てんなにへ掛け込む、猫耳女性ねこみみじょせい

「タターさん」「レイダちゃん」
 年端としはもいかない少女しょうじょと、メイド少女しょうじょが手をつなぐ。

 そしてはやくも、喧騒けんそうつつまれた店内てんないへ――
 おそおそあしを、踏み入れるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...