上 下
350 / 736
3:ダンジョンクローラーになろう

350:龍脈の回廊、一本角と眼鏡とカフスボタン

しおりを挟む
「オルコトリアッ――!」
 そんな高貴こうき同僚どうりょうこえが聞こえたのか――
 かたを落としてあるいていた、一本角オルコトリアうえを見た。

「ぎっやっ!? なにごと――――!?」
 驚愕きょうがく鬼娘おにむすめ
 いつものギルド制服せいふくや、冒険者姿ぼうけんしゃすがたではなく――
 こざっぱりとした、ドレスのようなふくを身につけている。

 おにくちがいつまでもふさがらないのは、無理むりからぬことだろう。
 降ってくる・・・・・のは、ガムラン最凶さいきょう受付嬢うけつけじょうリカルルと、ギルドちょうむすめレイダ。
 それと見覚えのない・・・・・・大きな子馬・・・・・と、新人しんじんメイドのタター。
 そしてさらに――不規則ふきそく軌道きどうえが魔法杖まほうつえ翻弄ほんろうされる、魔神の再来リオレイニア

「「「「うぉわぁあぁあぁあぁぁ――――!?」」」」
 鬼娘おにむすめに駆けよるのは、驚愕きょうがく鍛冶工房かじこうぼう数名すうめい

 飛び散るガラスは、大気たいきに溶け――
 割れたまど再構成さいこうせいした、窓枠まどわくひかった。

「おおーっ♪ 自己修復じこしゅうふく魔法具まほうぐが、うごいたぞぉー!」
 「「「うぉぉぉおぉー」」」とよろこぶ、小柄こがら職人しょくにんたち。

「こらっ、そんなこと言ってる場合ばあいじゃないでしょ! 蘇生薬エリクサー持ってたら用意よういして!」
 ごきりっ――ごきりっ、ばきばきばきょ!
 ほねの鳴るおと
 両腕両足りょううでりょうあしばいふくれあがり――
 大柄おおがら体躯たいく巨大化きょだいかした!
 一本角いっぽんつのがバキリと伸びる!

 パリパリリッ――――放電ほうでんするつの
 ぐぐぐぐ――どかん!
 かがんだからだ一気いっきに伸ばし、跳躍ちょうやくするおに

「たまの休日きゅうじつに、なにやってんのアンタはっ!」
 おにが、令嬢れいじょうを抱きとめた!

「ふ、不可抗力ふかこうりょくですわよ! それに、そっくり同じ言葉をお返し甚しますわっ! あぁ、もっと向こう!」
 かかえられたガムラン代表だいひょう受付嬢うけつけじょうが、必死ひっしに手を伸ばした。

「よし、つかまえた! もう大丈夫だいじょうぶですわよ♪」
 子供こどもあしつかまえ――たぐり寄せ抱きかかえた。

 おに最凶さいきょう子供こどもの――
 親亀おやがめ背中せなか子亀こがめ子亀こがめ背中せなか孫亀状態まごがめじょうたい

「きゃっ、きゃやぁぁぁぁあぁあぁっ――――り、リカルルおじょうさまぁぁっ!?!?」
 主人リカルルたすけたいものの、不規則なあばれるつえうごきを押さえ込むコントロールするだけで精一杯せいいっぱい

「タターさん!」
 子供レイダ必死ひっしにメイドを抱きかかえようと、手をのばすが――

当家とうけのメイドは、自分じぶんの身は自分じぶんまもれますわ! あまりうごくと落ちてしまいますわよ!?」
 ぎゅっと子供レイダを押さえ込む、甲冑姿リカルル

「ひひひん? ひひひぃん?」
 留め具カフスボタンは、いまだはずれない!
 子馬こうまいななき? ジタバタとあしうごかした。

「ああもう。こら、おうま……てんぷーらごう! アナタ、当家とうけものに擦りきずひとつでも付けてごらんなさい? そのくび、落としますわよ?」
 うまみみ脅しをかける・・・・・・、ご令嬢れいじょう

 かれもしくは彼女かのじょは、とてもお利口・・・だった。

 子馬こうまがさらにおおきく、ジタバタするうちに――ぽすむん♪
 少女しょうじょタターを、背に乗せることに成功せいこう

「きゃぁあぁあぁあぁあっ、あぁあぁぁっ!」
 前後逆ぜんごぎゃくだが、必死ひっしにしがみ付くタター。
「ひひひぃん? ぶるるるるん?」
 落ちていく、子馬こうまとメイド。

「ねえ、リカルルさま、〝テンプーラゴウ〟ってなにっ!?」
 好奇心こうきしんかたまりと化す子供レイダかみが、フワリと持ちあがる。
 ジャンプしたいきおいがなくなり、落下らっかはじめるおに

「アナタたちがギルドじゅうはしまわっているあいだに、カヤノヒメさまから聞きましたのよ」
「カヤノヒメさまと?」
 ごそり、甲冑かっちゅう胸元むなもとから取り出したのは――丸茸まるきのこ……もしくは根菜こんさい御神体ごしんたい
 「まだつながっているようですので、どうぞ」と、レイダのみみに押し当てるリカルル。

「――レイダさんですか? カヤノヒメです。それはおうまさんのお名前なまえですわ、くすくす
「わ!? イオノファラーさまから、シガミーの……カヤノヒメさまのこえ!?」
 目をまるくして面白おもしろがる、子供レイダ

「――おにぎり・・・・にちなんだ名前なまえがよろしいと言うことになって、シガミーさんの故郷こきょうのお料理りょうりてんぷら〟から取らせていただきましたの、くすくすくす
 半開はんびらきなうえ白目しろめまでむいた、御神体メガミ
 〝美の化身けしん〟の化身けしんには、とても見えない。

「アンタたち――そろそろしたに着くから、くちを閉じて!」
 鬼の娘オルコトリア言葉ことばにそっとしたを見る、おじょうさまとお子さま。

 さきに落ちたはずの子馬テンプーラゴウが――ぽっきゅむむぎょぽぉん♪
 と飛びあがり、ふたたそらへ舞いもどる!
「きゃぁぁあっぁあぁぁっ――――!?」
 少女しょうじょタターはさけつづける。

「あっぶなっ――――!?」
 身をよじりかわす、オルコトリア。

「ふう、タターもなんとか無事ぶじですわね。まぁ、おにぎりの親戚しんせきみたいなのでしょうから――心配しんぱいはしていませんでしたけれど――ほっ♪」
 さきに落ちた使用人しようにん無事ぶじ確認かくにんし、安堵あんどいきをつく名物令嬢リカルル

 どっずうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅうん――――ゴッバギャァッ!
 しんギルド屋舎前おくしゃまえ、突き刺さる筋骨隆きんこつりゅうりゅう々。

「みなさまー、ご無事ぶじですかー?」
 暴走ぼうそうした魔法杖つえぎょし、楚々そそと降りたつ鳥の仮面リオレイニア

 ガヤガヤとあつまっていた人垣ひとがきが――魔神まじん再来さいらいうたわれる、給仕服メイド登場とうじょうともに散っていく。

 ぽきぱき――ふしゅるるる。
 倍化ばいかしていた筋肉きんにくが、その血を開放かいほうする。
 巨躯きょくを駆る一本角いっぽんつの麗人れいじんが、もとどおりのふとさになった。

 脱力だつりょく尻餅しりもちをつく麗人れいじん
 うつくしいかおおにが、つのちじめ――
 リカルルを開放かいほうした。

「リカルルさま、降ろして!」
 もがくおさな少女しょうじょ
「さぁて、どういたしましょうかしら?」
 そう言って、180度回転どかいてん
 ソコに立っていたのは――

「こらっ、レイダァ! いつもはシガミーのかげかくれていて、目立めだちませんでしたが――今日きょうという今日きょうは、お説教せっきょうをします! いいですね?」
 ギュギュギュギュィィィイィィィィィィィンッ!
 ギルドちょう眼鏡めがねは、アーティファクトである。
 興味きょうみ対象たいしょうをよりくわしく調しらべるときと、感情かんじょうたかぶったときに〝つまみ〟がはげしくうごく――なぞ仕様しよう

 ジタバタともがく子供こどもを、しっかりと親元おやもとへかえすリカルル。
 泣きわめく少女しょうじょかかえたギルドちょうの、長髪ちょうはつがはらりとほつれた。

「ギルドちょう男手おとこでひとつで、大変たいへんですわねぇ――」
 去って行くおとこ背中せなかには、哀愁あいしゅうただっていた。

 連日れんじつのギルド屋舎破壊おくしゃはかい――ぽっきゅらぽっきゅら♪
 むすめ教育きょういく――ぽっきゅぽっきゅむ♪
 なぜかあとをついていく、間抜まぬけた子馬うま爪音つまおとと――

「おじょうさま!? あの降ろしてください! これ、はずれないんですけど!」
 厄介やっかいごと(とく黄緑色おうりょくしょく関係かんけい)に巻き込まれやすい、メイドのさけごえは――
 ギルド会館かいかんしたからうえまで、ひびわたったという。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...