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3:ダンジョンクローラーになろう
347:龍脈の回廊、内観と外観と戦闘狂
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「いよぉし、あったぞ! 階段だ――ニャァ!」
ぽきゅぽきゅと――脇目も振らず、階下へ飛びこむ化け猫。
ぽっきゅ――――!
化け猫が階段に、足をついた瞬間。
カシュカシュッ、カシュカシュッ――――ガガゴゴォン!
開けていた階下への穴が、閉じられた。
「ニャミャァー!? なんだおい、通れなくなっちまった――ニャ?」
化け猫が、目のまえに立ちふさがった岩壁を――じゃりぃぃん♪
ずっどごがぁぁん――――ギャギィィンッ!
棒で叩くが、はじき返された。
「硬ぇなっ! この壁はビクともしねぇ。しかたねぇ、鷲の絵じゃねぇ方――反対側の突き当たりに行ってみるか――ニャ?」
きびすを返し、ぽっきゅ――――!
階段を戻ろうと、足をついた瞬間。
カシュカシュッ、カシュカシュッ――――ガガゴゴォン!
開けていた第八階層への穴が、閉じられた。
「おい、どうなってやがる――ニャッ!?」
ずっどごがぁぁん――――ギャギィィンッ!
棒で叩くが、やっぱりはじき返された。
真っ暗で何もみえねぇ!
目のまえに張りついてる、文字とか小さな地図とかのおかげで、完全に真っ暗闇じゃねぇのが救いだが。
ココで行き止まりか?
まだまだ下へ潜らねぇとおれぁ、行きてぇ場所に辿りつけねぇのに!
「って言ってもな、助けが来るわけじゃねぇから……駄目なら終わるだけだ――ニャァ♪」
化け猫は暗闇に、ごろり♪
「腹がぁ空く気配もねぇからぁ、ひとまず……昼寝でもすっか――ニャァ?」
ふわぁぁー、おやすみぃー。
§
「おにぎりを押しこんでる隙に――僕が切る!」
彼の敵を殲滅せんと歩む、その歩調。
それは打ち直された安物の聖剣を、加速するための射出装置。
「――――ィィィィィイィャヤヤヤッヤヤヤァァアアァッ!」
無造作に薙ぎ払われる、素っ首。
亀の首は、亀の足と同じような太さ――
かつ――蛇のように、塒を巻くほどに――長い。
その重量に押しつぶされ――――ぽぎゅむぎゅぎゅむむむむむむっぎゅむむむっ♪
唸りをあげる――強化服構造。
彼もしくは彼女の、精神的肉体的物理法則的な大原則は――
「ふぎゃみゃにゃぁぁぁぁぁっ――――♪」
ふぉん♪
『おにぎり>やられたら、やりかえすもの♪』
――である。
ボッゴガガッァァァァン――――爆発するおにぎり!
強化服が破れたわけではない――巨大な塒を押し戻す、黄緑色は健在。
「――ィィィヤァァッ――――!?!?」
惑う青年の剣。
このまま振り抜けば――――押しつぶされた反動で跳びあがってくる、おにぎりの体を両断してしまうだろう。
切れないはずの無敵の強化服を、彼は過去に寸断している。
「――――――――――――チィイィィッ!!!!」
揺らぐ視線は、巨大な亀の末端――尻尾に向けられた。
既に撃ち放った必殺の剣筋の軸線上にあり――
かつ、強化服を寸断しない、ただひとつの――逃げ場所。
亀の尾を横目に捕らえた、青年の動きは――
喩えるなら、僧兵猪蟹が前世で収得した――
七天抜刀根術三の型。その軌跡に似ていた。
一点を錫杖の足と鉄輪の先で、交互に打ち続ける技。
自重を根の先端へ、ダイレクトに伝播させる動きは――
外から見ると、まるで鉄製の錫杖が、折れ曲がったように見える。
亀の頭と尻尾。
二点間を結ぶ、大きく丸く花弁のような曲線。
一般的にスピログラフと呼ばれる、〝円中の小円に穴をあけ、鉛筆の先で回転させると描き出される図案。
そんな複雑で面白い軌道を、描く青年が――
「――――ィィィィィィィィィィィィィィッッェヤァァァァァァァァッ!!!」
首と比べると細く小さな。
それでも青年の倍はある太さの尾を――両断した!
その移動時間は、鍵剣を振る一瞬。
「ゴォギャァァーッ」
尾を切られた大亀が――――ぽっきゅむむむむむぎゅぎゅぎゅぎゅきゅどおどどぉぉぉぉぉん♪
耳障りで軽く、ゴム風船を踏んだような、怪しい音に――――吹き飛ばされた!
蛇のように長い首。それが一直線にカチ上げられ――――亀は裏返しになった。
§
「検出された低警戒度のバリアント反応、消失しました。検出された低警戒度のバリアント反応、消失しました。該当領域の管理者は、すみやかに関係各所へレポートを提出してください」
ここは、新ギルド屋舎最上階。
夕日が沈み、夜の帳が下ろされようかという時分。
「わっ、またうるっさい!」
「反応消失ってぇと……居なくなっちまったのかい?」
わめく御神体と女将。
テーブルの上、地図上で重なっていた『凡』と『▼』。
そのうちのひとつが点滅霧散し、『▼』だけになった。
全員の目が、見開かれる!
「な、なかなか、おやりになりますわねぇぇぇぇ……あの兵六玉ァ!」
コォォン――ぼごぅわぁ!
それは下に見ていた冒険者が、自分の手に余るほどの実力を備えていたことへの嫉妬の炎――ではない。
仄暗く揺らめくのは――戦闘狂としての渇望。
炎に照らされる両の瞳に、月光がやどる。
ガチガチガチガチッ――――ガッチャリッ♪
だれも手を触れていない壁の調度品が、ガチガチと角度を戻していく。
暖炉の上。区域地図がぱたんとひっくり返り、細剣が掛かる壁に戻る。
特に何も対策が打てないまま――事態は収束を迎えた。
「迅雷、シガミー邸――もう一回、呼び出して!」
「応答ありマせん、外出したよウです」
御神体と眷属が震える最中――
ばたばたばたと駆け込んでくる、最上階付きの執事。
元侍女長へ耳打ちされる、火急の伝聞。
「なんですって――お嬢さま! ギルド会館中を、暴れ馬が走り回っているそうです!」
叫ぶメイド・リオレイニア。
「はぁ? どういうことですの?」
不可解な出来事に――我に返る戦闘狂。
火急の伝聞はつづき――
「しかも、当家のメイドが――馬に引きずられてる!?」
目を丸くする、鳥の仮面のメイド。
目元が隠れていても、彼女の知人なら――
その内面は、手に取るようにわかる。
「まったくもう……私付きの衛兵から準待機中の者を、全員向かわせて……ふぅ」
燃えていた狐火が――ぷすん♪
瞳に宿った月光も――ぷすん♪
テーブルに表示されていた地図も――ぷすん♪
縮小されて、『▼』と周囲の町村だけになった。
ぽきゅぽきゅと――脇目も振らず、階下へ飛びこむ化け猫。
ぽっきゅ――――!
化け猫が階段に、足をついた瞬間。
カシュカシュッ、カシュカシュッ――――ガガゴゴォン!
開けていた階下への穴が、閉じられた。
「ニャミャァー!? なんだおい、通れなくなっちまった――ニャ?」
化け猫が、目のまえに立ちふさがった岩壁を――じゃりぃぃん♪
ずっどごがぁぁん――――ギャギィィンッ!
棒で叩くが、はじき返された。
「硬ぇなっ! この壁はビクともしねぇ。しかたねぇ、鷲の絵じゃねぇ方――反対側の突き当たりに行ってみるか――ニャ?」
きびすを返し、ぽっきゅ――――!
階段を戻ろうと、足をついた瞬間。
カシュカシュッ、カシュカシュッ――――ガガゴゴォン!
開けていた第八階層への穴が、閉じられた。
「おい、どうなってやがる――ニャッ!?」
ずっどごがぁぁん――――ギャギィィンッ!
棒で叩くが、やっぱりはじき返された。
真っ暗で何もみえねぇ!
目のまえに張りついてる、文字とか小さな地図とかのおかげで、完全に真っ暗闇じゃねぇのが救いだが。
ココで行き止まりか?
まだまだ下へ潜らねぇとおれぁ、行きてぇ場所に辿りつけねぇのに!
「って言ってもな、助けが来るわけじゃねぇから……駄目なら終わるだけだ――ニャァ♪」
化け猫は暗闇に、ごろり♪
「腹がぁ空く気配もねぇからぁ、ひとまず……昼寝でもすっか――ニャァ?」
ふわぁぁー、おやすみぃー。
§
「おにぎりを押しこんでる隙に――僕が切る!」
彼の敵を殲滅せんと歩む、その歩調。
それは打ち直された安物の聖剣を、加速するための射出装置。
「――――ィィィィィイィャヤヤヤッヤヤヤァァアアァッ!」
無造作に薙ぎ払われる、素っ首。
亀の首は、亀の足と同じような太さ――
かつ――蛇のように、塒を巻くほどに――長い。
その重量に押しつぶされ――――ぽぎゅむぎゅぎゅむむむむむむっぎゅむむむっ♪
唸りをあげる――強化服構造。
彼もしくは彼女の、精神的肉体的物理法則的な大原則は――
「ふぎゃみゃにゃぁぁぁぁぁっ――――♪」
ふぉん♪
『おにぎり>やられたら、やりかえすもの♪』
――である。
ボッゴガガッァァァァン――――爆発するおにぎり!
強化服が破れたわけではない――巨大な塒を押し戻す、黄緑色は健在。
「――ィィィヤァァッ――――!?!?」
惑う青年の剣。
このまま振り抜けば――――押しつぶされた反動で跳びあがってくる、おにぎりの体を両断してしまうだろう。
切れないはずの無敵の強化服を、彼は過去に寸断している。
「――――――――――――チィイィィッ!!!!」
揺らぐ視線は、巨大な亀の末端――尻尾に向けられた。
既に撃ち放った必殺の剣筋の軸線上にあり――
かつ、強化服を寸断しない、ただひとつの――逃げ場所。
亀の尾を横目に捕らえた、青年の動きは――
喩えるなら、僧兵猪蟹が前世で収得した――
七天抜刀根術三の型。その軌跡に似ていた。
一点を錫杖の足と鉄輪の先で、交互に打ち続ける技。
自重を根の先端へ、ダイレクトに伝播させる動きは――
外から見ると、まるで鉄製の錫杖が、折れ曲がったように見える。
亀の頭と尻尾。
二点間を結ぶ、大きく丸く花弁のような曲線。
一般的にスピログラフと呼ばれる、〝円中の小円に穴をあけ、鉛筆の先で回転させると描き出される図案。
そんな複雑で面白い軌道を、描く青年が――
「――――ィィィィィィィィィィィィィィッッェヤァァァァァァァァッ!!!」
首と比べると細く小さな。
それでも青年の倍はある太さの尾を――両断した!
その移動時間は、鍵剣を振る一瞬。
「ゴォギャァァーッ」
尾を切られた大亀が――――ぽっきゅむむむむむぎゅぎゅぎゅぎゅきゅどおどどぉぉぉぉぉん♪
耳障りで軽く、ゴム風船を踏んだような、怪しい音に――――吹き飛ばされた!
蛇のように長い首。それが一直線にカチ上げられ――――亀は裏返しになった。
§
「検出された低警戒度のバリアント反応、消失しました。検出された低警戒度のバリアント反応、消失しました。該当領域の管理者は、すみやかに関係各所へレポートを提出してください」
ここは、新ギルド屋舎最上階。
夕日が沈み、夜の帳が下ろされようかという時分。
「わっ、またうるっさい!」
「反応消失ってぇと……居なくなっちまったのかい?」
わめく御神体と女将。
テーブルの上、地図上で重なっていた『凡』と『▼』。
そのうちのひとつが点滅霧散し、『▼』だけになった。
全員の目が、見開かれる!
「な、なかなか、おやりになりますわねぇぇぇぇ……あの兵六玉ァ!」
コォォン――ぼごぅわぁ!
それは下に見ていた冒険者が、自分の手に余るほどの実力を備えていたことへの嫉妬の炎――ではない。
仄暗く揺らめくのは――戦闘狂としての渇望。
炎に照らされる両の瞳に、月光がやどる。
ガチガチガチガチッ――――ガッチャリッ♪
だれも手を触れていない壁の調度品が、ガチガチと角度を戻していく。
暖炉の上。区域地図がぱたんとひっくり返り、細剣が掛かる壁に戻る。
特に何も対策が打てないまま――事態は収束を迎えた。
「迅雷、シガミー邸――もう一回、呼び出して!」
「応答ありマせん、外出したよウです」
御神体と眷属が震える最中――
ばたばたばたと駆け込んでくる、最上階付きの執事。
元侍女長へ耳打ちされる、火急の伝聞。
「なんですって――お嬢さま! ギルド会館中を、暴れ馬が走り回っているそうです!」
叫ぶメイド・リオレイニア。
「はぁ? どういうことですの?」
不可解な出来事に――我に返る戦闘狂。
火急の伝聞はつづき――
「しかも、当家のメイドが――馬に引きずられてる!?」
目を丸くする、鳥の仮面のメイド。
目元が隠れていても、彼女の知人なら――
その内面は、手に取るようにわかる。
「まったくもう……私付きの衛兵から準待機中の者を、全員向かわせて……ふぅ」
燃えていた狐火が――ぷすん♪
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