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3:ダンジョンクローラーになろう

341:龍脈の回廊、追跡隊編成と続・ゴーレム馬について

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迅雷ジンライもう一回掛けてリダイヤル今度こんどわぁー、スピーカーホンでぇ
「はイ――出まシ
 青板スマホ表示ひょうじ一瞬いっしゅんだけ、『ニゲル』の文字もじ通話つうわアイコンに変わった。

「ニゲルくーん、ウケケケッ♪ 聞ぃこぉえぇるぅー
 ニタリとした女神めがみわるかおに、いまさら嫌悪けんおいだものは居ない。
 おいしい食事しょくじ屋台骨やたいぼね――ひいては〝世界せかい安寧あんねいねがう〟ことにかんして。
 美(しょくにこだわる)の女神めがみは、信頼しんらい実績じっせきがあるのだ。

「――なんですかー? またふざけるなら切りますよー?」
 ニゲル青年せいねん覇気はきのないこえが、室内しつないによくひびく。
「んっとねぇ、ソッチの位置いち特定とくていしたからぁ、つたえておこうとおもってぇ? いま立ち止まってるでしょ?」

「――はい、おにぎりがきゅうに、地面じめんあなを掘りはじめたんで――」
あなぁ? じゃあ、そこにシガミーが!?
 御神体メガミかおを上げ、滞空たいくうする迅雷ジンライを見る。

「わかりマせん――ニゲル、変わッたうゴきがアれば都度つド報告ほうコくしてくだサ
 ヴォォン♪

「――えぇーっ、おにぎりの居場所いばしょがわかったんなら、ぼくかえっても良いよねー? シガミーをさがたすけになればとおもって――こうして追いかけてきちゃったけどさー」
 不満ふまんくちにする通話相手ニゲル

「あー、それわ駄目だめなのよねぇー。特定とくていできたのわっさぁ、ニゲルくんのスマホでぇー、おにぎりにわぁまだぁマーカー付いてないからぁー
「――えぇーっ、そーなの? じゃぁいつまで張りついてれば良いんですかぁー
 不満ふまんくちにする通話相手ニゲル

 コツコツコツ――片付かたづけが終わり、様子ようすを見に来たリオレイニアが――
 テーブルの地図ちずうえ、浮かび上がる立体的りったいてきな『ニゲル』を見て止まる。
 御神体メガミ通話相手つうわあいて現在地・・・を、それとなく把握はあくした彼女メイド両目りょうめ見開みひらかれた。
 目元めもと仮面かめんかくしていても、そのおどろきはうごきにあらわれる。
 彼女かのじょ把握はあくしている、おにぎりの出立時刻・・・・現在位置・・・・
 みちびき出される――時速約じそくやく260キロメートル

 主人リカルルを見やるメイドリオレイニア
 うなずきかえす、あきれがおお嬢さまリカルル

「そうわねぇー……おにぎりからのぉ応答おうとうもしくわぁ、追跡ついせきマーカーを取り付けるまでかしらねぇん。そうでしょ、迅雷ジンライ
 スマホから、ふたたびかおを上げる女神御神体イオノファラー

「はイ。おにぎりかラの応答おうトう、いマだ途絶中とぜつチゅう

「――そう言われてもさー、一旦近いったんちかくのまちにでもよって一休ひとやすみみしたいですよ。おにぎりの速度はやさについていくのが精一杯せいいっぱいで、クタクタなんだよぉう――――」
 泣きごとくちにする通話相手ニゲル

 おにぎりとちがって、自律制御じりつせいぎょ静電筋肉せいでんきんにくサーボそうとソレをささえる超高精細ちょうこうせいさい空圧くうあつ圧電素子アクチュエーターも、女神イオノファラー星神カヤノヒメ加護かごもない――生身なまみからだ
 泣きごとも、無理むりからぬことだ。

 そのうえかれ、ニゲル青年せいねんは――異世界いせかい召喚しょうかんされた勇者ゆうしゃのような存在そんざいであるが。
 このトッカータ大陸たいりく召喚しょうかんされ――たときには、すでに聖剣せいけんはリカルルによって真っぷたつに折られていたし・・・・・・・魔王まおうまで討伐とうばつ済み。
 そのうえ聖剣切りの閃光ヴォルトカッター入隊試験にゅうたいしけんにまで落ちるという――不遇ふぐう存在そんざいである。

「そおねぇー、けどちょぉぉっとぉまってぇー。そんなア・ナ・タ・にぃ朗報ろうほうでぇーすぅ――――
 女神メガミ青板スマホに、わるかおをよせた。

   §

「だからですね、王女おうじょさま。このかわいらしいおうまのお人形にんぎょうのまま、おおきくはならないんですか?」
 子供こどもに言い聞かせるような、メイドの口調くちょう

「だって、こんなカワイイ姿すがただと、舐められるじゃないですらぁん?」
 まるで子供こどものような、口答くちごたえ。
「舐められるんじゃなくて――親しみ・・・! 親しみです・・・・・っ!」
 熱弁ねつべんのメイド。彼女タターはこの説得せっとくをもって、のちのち勲章くんしょうたまわることになる。

「そうですよぉう、王女おうじょさまのやさしさがみんなにつたわらないのは――いやだよぅ」
 迫真はくしん子供こども本心ほんしんからの言葉ことばではあるが――その手が馬の人形ぬいぐるみの、つぶらなひとみを撫でた。
 行儀ぎょうぎわるいシガミーののこしたパーツに、執着しゅうちゃくしているようにも見える。

「レイダちゃんは、良い子ですらぁんー♪」
 子供こどもあたまを、そっとなでる王女おうじょ

「じゃあ、王女おうじょさま。このおうまのデザインをしたのは――どなたなのですか?」
「そうだね、そのひとにゴーレムの絵を――描いてもらおうよ?」
 よっつのひとみが――疑問ぎもん提案ていあんの、眼差まなざしを向ける。

 もじもじと、なが沈黙ちんもくののち――
「わ、わたくしですらぁん」
 自供じきょうによるならば、ぬいぐるみの設計製作せっけいせいさくは、すべて王女おうじょの手によるもののようだ。

「は? 王女おうじょさまに、こんなかわいらしいおうまがデザインできると――おっしゃられるのですか?」
 ラプトル王女おうじょがガムランちょう居着いついてから、二人ふたりはずっと寝食しんしょくともにしている。
 多少たしょう無礼ぶれいみずなが間柄あいだがらである。

「タターさぁん! 携帯時けいたいじとがっているとあぶないので、まぁるくしただけらぁん! ぴゃ、ぴゃらぁーん!」
 たたまれたドレスにくっ付いている、ぬいぐるみをカチャリとはずし――
 うまのぬいぐるみを、ひっくりかえした。

「わっ!? ゴーレム――が出ない!?」
「ぐすん、ゴーレムは安全あんぜんボタンをはずさなければ――人形にんぎょうのままらぁん、ぐすん! ここをよく見てくださいらぁん!」
 ぬいぐるみの横腹わきばらに縫い付けられているのは――
 自治領じちりょう紋章入もんしょういりのボタンと――
 『ラプトル個人工房』と刺繍ししゅうされたタグ。

 勝ち気な表情ひょうじょうから――ポロポロとしずくがしたたる。

「だ、だめだよタターさん! 王女おうじょさまをいじめたら!」
 レイダが椅子いすから降り、王女おうじょひざへ抱きつく。
「あらら、言い過ぎました。ご無礼ぶれいをおゆるしください王女殿下おうじょでんか――けれど」
 かしずくあたまが、即座そくざに持ち上がる。

「「けれど?」――な、なんですらぁん?」
「シーガミーちゃんなら、上手じょうずにこのおうま姿すがたのままゴーレムを、つくりなおしそうだなぁとおもいまして――」
 メイドがニヘラとわらい、ココには居ない少女しょうじょおもい浮かべる。

 メイドの言葉ことば子供こどもが――「あー、それはやりそう! ものすっごくカワイイおうまさんにしそう♪」
 子供こどももにんまりとわらい、ココには居ない少女しょうじょおもい浮かべる。

「ふぅ、この人形にんぎょう姿すがたのままの、かわいらしいゴーレムならすでに――」
 こし工具箱こうぐばこから、よりちいさいうまのぬいぐるみを――
 渋々しぶしぶと取り出す王女おうじょ――ポイッス♪

 投げられた馬の人形ぬいぐるみ王女おうじょの手には――安全あんぜんボタンの刺繍タグ

 目を形作かたちづる、つぶらな宝石ひとみ
 くちは閉じられ、黒金くろがね銃身じゅうしん格納かくのうされている。
 胴体どうたいや四つあしは、やはりふと不格好ぶかっこうだったが――
 短毛たんもうおおわれたソレは・・・――

「「きゃぁぁあぁっ――――かっカワイイ!!!!」」
 飛びつく子供こども、駆けよるメイド。

わたくし工房こうぼうにケットシ……シガミーちゃんが来たときに、つくったった子らぁん」
 おおきな子馬こうまのぬいぐるみが、ゆかを踏みしめ――

 ピピピピッププンッ――ブッツン♪
 とりさえずりのような、電子音パイロット・ビープがとぎれ――くずれ落ちた。

「あれっ!? たおれちゃったよー!?」
たおれちゃいましたねー?」
 残念ざんねんそうな二人ふたり様子ようすを見た王女おうじょが、工具箱こうぐばこから眼鏡めがねのアーティファクトを取り出した。

 眼鏡めがねを掛け、テーブルに置かれた万能工具まほうのつえを見つめる、そのひとみに――ぼごぅわっ♪
 メラメラと燃えあがる、職人魂しょくにんだましいとでも言うものが――ぼごぅわっ♪
 ツナギ姿すがた王女おうじょ宿やどった。

   §

「ええーっ、おにぎり追跡隊隊員ついせきたいたいいんー? 仕事しごとで追いかけるのは、なんかいやだなぁー、仕事しごとだって有るし――」
 ドドッドン、バギバギャ――ドドォォン♪
 地面じめん木々きぎの根を掘る、破砕音はさいおんが聞こえてくる。

「あら、金一封きんいっぷうくらい出しま――」
 そう言いかけたリカルルへむけて、御神体メガミちいさな手が持ちあがる。
「あれっ――いま、なんかリカルルさまのこえが――」

「ふっふっふ、じつわねぇー……ひそひそ……このスマホなんだけどさぁ――もう一個いっこくらい複製こぴーしても、良いとおもうのよねぇん
 青板スマホかおちかづける、御神体イオノファラー

「――そ、それってどういうコト?」
 一瞬いっしゅん沈黙ちんもく
追跡隊ついせきたい隊長たいちょうのリカルルちゃんとのぉー……ひそひそ……ホットラインってことでs――――」
 ――ガッチャンッ!

 手元てもとくるったのか、スマホを落としたような衝撃音しょうげきおんが聞こえてきた。
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