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3:ダンジョンクローラーになろう
336:龍脈の回廊、にゃみゃにゃみゃ、ごぉー♪
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「にゃみゃごぉー♪」
新ギルド会館正面入り口から、飛びだしてきたのは――
フェスタ以来、お祭《まつり》さわぎの顔になりつつある――
黄緑色の猫の魔物。
正式名称を〝極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型/試作個体名おにぎり一号〟とする、彼もしくは彼女は――
ぽっきゅぽっきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽぽぉぉぉぉん♪
内部に詰まる物がないため、軽く弾むような――
それでいて多少耳障りな、騒々しい足音を発する。
「ニャや? おにぎりがスゴイ勢いで、走っていくニャア?」
ギルド正面入り口。
大きな紙箱を抱えた、猫の頭をした青年。
猪蟹屋本店店長代理にして、猪蟹屋随一のモテ男。
ネコアタマ青年である。
猪蟹屋の前掛けをしてる所をみるに、彼が抱えているのは――
串揚げか揚げ芋。
ギルド職員の遅めの昼食を、運んできたと思われる。
「にゃんやーみゃー、ぎゃにゃーぁ!?」
猫族共用語で話しかけるも――
「にゃみゃにゃみゃ、ごぉー♪」
そう返事をして、猫の魔物一号おにぎりは――
騒々しい足も止めず、爆走していく。
草原へ続く、ギルド南門へ向かって。
「えらく慌ててたニャアー?」
首を傾げる、ネコアタマ青年。
ちなみに〝ネコアタマ〟が名前で、名字はない。
一階ロビーの受付近く。
カウンターへ荷物を下ろし、職員を探していると――
下から階段を上がってくる――落着きがなさそうな二人と、目が合った。
「あっ、ネコアタマニャ♪ ふんふすん、ニャヤッ!?」
途端に駆けよる、猫耳形のバンダナを頭に巻いた猫耳族の女性。
「おいしそうな……においがする、コォン♪」
おなじく駆けよる、狐耳形のバンダナを頭に巻いた狐耳族の少年。
「だめだよコレは、ギルドからご注文の品だからニャア?」
「ケチニャッ!」
まだ、あどけなさが残る猫耳の女性が、顔をしかめた。
「ケチコォン!」
まだ、あどけない狐耳の少年も、顔をしかめた。
「ケチじゃないニャア。本当のシガミーが帰ってくるまで、本店は僕が守らなくちゃニャらニャいだけニャア」
紙箱のフタを押さえる、猫のような青年。
「それなんだけどニャ、あのお上品なシガミーは何ニャッ? まるで別人ミャ」
「けどリカルルが「あの娘はシガミーさんに相違ありませんですわ、良いですわね?」って念を押すから、聞くわけにもいかないコォン」
その場でジタバタする、二人組。
「えっ!? リカルルさまがどうしたってっ!?」
カウンターの向こう、声がした方を見れば――
ソコにあるのは――貸し出し用の装備品と、大量の灯りの魔法具、青い顔をした二号店店長なんかが詰まれた大きな棚だ。
「「「どうしたの、そんなとこに挟まっちゃったりなんかして――ニャア?」――コォン?」――ニャ?」
ネコアタマ青年、ルコル、ニャミカの三人からすれば――
ニゲル青年は、猪蟹屋で働く同僚だ。
「いやぁ、ちょっと苦手な人がいたもんだから隠れてたんだよね、へへへ」
ガチャガチャゴトゴト、バターン!
騒々しい音を立て、這いでてくる同僚。
「それで、リカルルさまがどうしたって?」
制服についた埃を、はたき落とした彼の顔は――
「目が笑ってない――ニャン」
紙箱へ半歩、吸いよせられる、猫耳バンダナ。
「目が笑ってない――コォン」
紙箱へ半歩、吸いよせられる、狐耳バンダナ。
「ニゲル、目が笑ってないニャア――あのお上品なシガミーのことで、リカルルさまに軽く口止めされたって話をしてただけだニャア♪」
紙箱をズズズとカウンター奥へ押し、遠ざける猫頭。
「その話かぁー、脅かさないでくれよー。てっきり僕はリカルルさまに、悪い虫でも付いたのかと思ったよ? 猫頭は、すっごくモテるしさ」
安堵する同僚。
「いやいや、まさかニャア♪ リカルルさまの目に適うのは、どこかの領主さまか、世界最強の豪傑くらいだニャア?」
目と耳を向け、この場の紅一点にうかがいを立てる。
「そうニャ、あのお姫さまは、見た目の割に話がわかるけど――たぶん男の選り好みだけは激しいとみたニャ♪」
針のような瞳孔を輝かせる、猫耳の女性。
「「そ、そうだよねぇー、あははははぁぁぁ」――コォォォン」
ふと顔を見合わせる、冴えない青年と狐耳の少年。
「選り好みで言ったら――シガミーが連れてた、あの猫の魔物がけっこう良い線いってるかもニャ……プフフニャハ♪」
下世話な話に興が乗る、紅一点。
「えっ――おにぎりがぁー!?」
「まさかコォン!?」
うろたえる青年と、うろたえる少年。
「でもおにぎりは、ルリーロさまより強いって話だニャア♪」
「フェスタの時に二時間くらい、毛皮のお腹を撫でてたのを見かけたニャン♪」
などという冗談に――
「「うむむぅ、その強さと手触りの良さ……侮れないな」――侮れないコン」
真剣な面持ちの二人。
「あ、そうだ忘れてたニャア。さっき、そのおにぎりを見かけたんだけどさ――」
「さっき? 今はイオノファラーさまたちの手伝いで、超女神像の間に居るはずだけど?」
いぶかしむ同僚。
「いや、本当だニャア。ものすごい勢いで、出て行くから「どうかしたニャ? 緊急事態ミャア?」って聞いたら――」
「「「聞いたら?」ニャ?」コォン?」
「「ううん、迎えにいくだけだもの」って言ってたニャア?」
首を傾げるネコアタマ。
「迎えに――!? みんなは二号店に居るリカルルさまたちに、おにぎりがそう言ってたって伝えて! 僕は跡を追――!」
頼りなさげな青年の姿が、ふっと揺らぐ。
「ニャヤ? ニゲル?」
「どこいったニャ?」
「いなくなったコォン?」
三人がフロアを見わたすも、黒い制服姿はドコにもなかった。
新ギルド会館正面入り口から、飛びだしてきたのは――
フェスタ以来、お祭《まつり》さわぎの顔になりつつある――
黄緑色の猫の魔物。
正式名称を〝極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型/試作個体名おにぎり一号〟とする、彼もしくは彼女は――
ぽっきゅぽっきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽぽぉぉぉぉん♪
内部に詰まる物がないため、軽く弾むような――
それでいて多少耳障りな、騒々しい足音を発する。
「ニャや? おにぎりがスゴイ勢いで、走っていくニャア?」
ギルド正面入り口。
大きな紙箱を抱えた、猫の頭をした青年。
猪蟹屋本店店長代理にして、猪蟹屋随一のモテ男。
ネコアタマ青年である。
猪蟹屋の前掛けをしてる所をみるに、彼が抱えているのは――
串揚げか揚げ芋。
ギルド職員の遅めの昼食を、運んできたと思われる。
「にゃんやーみゃー、ぎゃにゃーぁ!?」
猫族共用語で話しかけるも――
「にゃみゃにゃみゃ、ごぉー♪」
そう返事をして、猫の魔物一号おにぎりは――
騒々しい足も止めず、爆走していく。
草原へ続く、ギルド南門へ向かって。
「えらく慌ててたニャアー?」
首を傾げる、ネコアタマ青年。
ちなみに〝ネコアタマ〟が名前で、名字はない。
一階ロビーの受付近く。
カウンターへ荷物を下ろし、職員を探していると――
下から階段を上がってくる――落着きがなさそうな二人と、目が合った。
「あっ、ネコアタマニャ♪ ふんふすん、ニャヤッ!?」
途端に駆けよる、猫耳形のバンダナを頭に巻いた猫耳族の女性。
「おいしそうな……においがする、コォン♪」
おなじく駆けよる、狐耳形のバンダナを頭に巻いた狐耳族の少年。
「だめだよコレは、ギルドからご注文の品だからニャア?」
「ケチニャッ!」
まだ、あどけなさが残る猫耳の女性が、顔をしかめた。
「ケチコォン!」
まだ、あどけない狐耳の少年も、顔をしかめた。
「ケチじゃないニャア。本当のシガミーが帰ってくるまで、本店は僕が守らなくちゃニャらニャいだけニャア」
紙箱のフタを押さえる、猫のような青年。
「それなんだけどニャ、あのお上品なシガミーは何ニャッ? まるで別人ミャ」
「けどリカルルが「あの娘はシガミーさんに相違ありませんですわ、良いですわね?」って念を押すから、聞くわけにもいかないコォン」
その場でジタバタする、二人組。
「えっ!? リカルルさまがどうしたってっ!?」
カウンターの向こう、声がした方を見れば――
ソコにあるのは――貸し出し用の装備品と、大量の灯りの魔法具、青い顔をした二号店店長なんかが詰まれた大きな棚だ。
「「「どうしたの、そんなとこに挟まっちゃったりなんかして――ニャア?」――コォン?」――ニャ?」
ネコアタマ青年、ルコル、ニャミカの三人からすれば――
ニゲル青年は、猪蟹屋で働く同僚だ。
「いやぁ、ちょっと苦手な人がいたもんだから隠れてたんだよね、へへへ」
ガチャガチャゴトゴト、バターン!
騒々しい音を立て、這いでてくる同僚。
「それで、リカルルさまがどうしたって?」
制服についた埃を、はたき落とした彼の顔は――
「目が笑ってない――ニャン」
紙箱へ半歩、吸いよせられる、猫耳バンダナ。
「目が笑ってない――コォン」
紙箱へ半歩、吸いよせられる、狐耳バンダナ。
「ニゲル、目が笑ってないニャア――あのお上品なシガミーのことで、リカルルさまに軽く口止めされたって話をしてただけだニャア♪」
紙箱をズズズとカウンター奥へ押し、遠ざける猫頭。
「その話かぁー、脅かさないでくれよー。てっきり僕はリカルルさまに、悪い虫でも付いたのかと思ったよ? 猫頭は、すっごくモテるしさ」
安堵する同僚。
「いやいや、まさかニャア♪ リカルルさまの目に適うのは、どこかの領主さまか、世界最強の豪傑くらいだニャア?」
目と耳を向け、この場の紅一点にうかがいを立てる。
「そうニャ、あのお姫さまは、見た目の割に話がわかるけど――たぶん男の選り好みだけは激しいとみたニャ♪」
針のような瞳孔を輝かせる、猫耳の女性。
「「そ、そうだよねぇー、あははははぁぁぁ」――コォォォン」
ふと顔を見合わせる、冴えない青年と狐耳の少年。
「選り好みで言ったら――シガミーが連れてた、あの猫の魔物がけっこう良い線いってるかもニャ……プフフニャハ♪」
下世話な話に興が乗る、紅一点。
「えっ――おにぎりがぁー!?」
「まさかコォン!?」
うろたえる青年と、うろたえる少年。
「でもおにぎりは、ルリーロさまより強いって話だニャア♪」
「フェスタの時に二時間くらい、毛皮のお腹を撫でてたのを見かけたニャン♪」
などという冗談に――
「「うむむぅ、その強さと手触りの良さ……侮れないな」――侮れないコン」
真剣な面持ちの二人。
「あ、そうだ忘れてたニャア。さっき、そのおにぎりを見かけたんだけどさ――」
「さっき? 今はイオノファラーさまたちの手伝いで、超女神像の間に居るはずだけど?」
いぶかしむ同僚。
「いや、本当だニャア。ものすごい勢いで、出て行くから「どうかしたニャ? 緊急事態ミャア?」って聞いたら――」
「「「聞いたら?」ニャ?」コォン?」
「「ううん、迎えにいくだけだもの」って言ってたニャア?」
首を傾げるネコアタマ。
「迎えに――!? みんなは二号店に居るリカルルさまたちに、おにぎりがそう言ってたって伝えて! 僕は跡を追――!」
頼りなさげな青年の姿が、ふっと揺らぐ。
「ニャヤ? ニゲル?」
「どこいったニャ?」
「いなくなったコォン?」
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