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3:ダンジョンクローラーになろう

334:龍脈の回廊、にゃみゃごぉ♪

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「なんかさあ……もぐもぐ……あ、それおいしいからぁ、もう一皿ひとさらぁもらえるぅ……もぐもぐ・・
 付け合わせだか御神体ごしんたいだかわからない、さらうえ

「なんでしょうか、イオノファラー
 食事しょくじ邪魔じゃまにならないよう、みじかくなった空飛そらとぼう

「えっとさぁ……もぐもぐ……あたくしさまってさぁあさからばんまでぇ、ごはんばっかり食べてなぁい・・
 御神体めがみにつられ、かる食事しょくじはじめたまわりが――ピタリ。

 ながテーブルせき陣取じんどっていた面々めんめんは、はなしをするのに場所ばしょを借りていただけだったが――
 いつまでもはらを鳴らす御神体めがみを見かねた受付令嬢リカルルじょうが、人数分にんずうぶん軽食けいしょくとオススメコースを一人前いちにんまえ注文ちゅうもんしたのだ。

朝昼晩あさひルばん食事しょクじクわえテ、おヤつに夜食やシょく――だケでは満チ足ラず、朝飯前あさメしまえ昨夜さクやのコモのマでたイらげてイるのですから……当然トうぜんでハ
 まわりのおとが止んだのは――カチャカチャ、コトン、カチャッ♪
 一瞬いっしゅんだった。

「うんまぁ、そうなんだけどさぁー……もぐもぐ……ほらほらぁ、王女おうじょさまも元気出げんきだしてぇー♪ ひとはねぇ、どんなにかなしくてつらくてもさぁ、食べればしあわせ、絶対ぜったいに死なないんだからさぁ……もぐもぐ……あーそれじゃぁ、とっておきのぉおー、出しちゃおっかなぁー♪ 迅雷ジンライくんアレ・・お出しして差しあげてぇー・・

 食事しょくじをしにながテーブルせきへご案内きたくされたのは、伯爵夫人ルリーロ第一王女ラプトル二人ふたりだ。
 そのうちの一人ひとり、ラプトル王女おうじょ意気銷沈いきしょうちんしている。
 スプーンにもフォークにも、手が伸びない。
 焦げてやぶけてしまった馬の人形ぬいぐるみ
 そのあたまをやさしく、なでつづけている。

「アレとイうのは、アレ・・のこトでしょうか
 直立ちょくりつしてると燭台しょくだいに見えなくもないぼうが、おうかがいを立てる。
「そうわよ、決まってるじゃぁない・・
 「出せ」とフォークを向ける、付け合わせ。

「デ――」
 ヴッ――ことん。
 それはふかめのうつわ
 かおり立つ芳醇ほうじゅんかおり。

「あらぁ? コレはなんですらぁん? 嗅いだことのないかおりですらぁん♪」
 落ちていたかたが、持ち上がる。

まぼろしのミノタ……まぼろしの〝野菜やさいゴロゴロシチュー〟よ。普段ふだんわぁ出ませんがぁ、今日きょうわぁ特別とくべつでぇす、えへん・・

   §

「さっきまで居た、きりなかとはべつだなぁ……おらぁ!」
 ぽきゅ――ゴゴォォン!

 ビギッ――ズッガァァァンッ!
 ひび割れくずれる、ちかくのかべ

「さて、ドコに良きゃぁ良いんだ?」
 おれには、かえ場所ばしょがあったはずだ。

 そうかんがえたら、目のまえにひかいたあらわれ――
 ふぉん♪
『▼――――ガムラン大平原/主軸龍脈第一階層
      Q:1 D:278 P:73667』
 どこかの場所ばしょあらわした――地図ちずか?
 くびをかしげて見ていると――

 ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉぉん♪
 いたたおれたとおもったら、大雨おおあめいけみずが増すように――
 積みかさなっていく、ひかいた

 その最後さいご一番上いちばんうえの真んなかに――
 ふぉん♪
『蟹』
 なんて文字もじがでた。

「なんだかしらねぇけど――この『かに』が、おれだってことはわかるぞ?」
 よくよく見ればいまいるほそみちかたちが、『蟹』のところにも描かれている。
「するってぇと、なにか? おれはこのみちを……ひのふのみの……やっつもとおり抜けねえと、たどりつかねぇってぇのかぁ!?」
 おれがいるのは一番上いちばんうえいたで、行き先らしい場所・・・・・・・・一番下いちばんしたいたにある。

 一枚一枚いちまいいちまいが、そこそこひろくて入り組んでいる。
 そんなひかいたにして、八枚分はちまいぶんだ。
 相当そうとう時間じかんが、掛かりそうなことだけはわかった。

「ううむ? ちいともはらいたくはならねぇから、かわや心配しんぱいはなさそうだが……そのうちはらは減るだろうなぁ?」
 目のまえの地面じめんに、食べられそうなくさきのこも生えていない。
 というよりこけのひとつも、生えちゃぁいねぇ。
 途中とちゅうで食えそうな獲物えものでも、つかまえられりゃ良いんだがなぁ。

「えええっと、こう行ってこう行くと行き止まりか、じゃぁこう行ってこっちに行っても……行き止まりじゃねぇか!」
 おれがいる一枚目いちまいめ手に取って・・・・・みたが、わからん。
 仕方しかたがないからまずは――ちかいほうの行き止まりを目指めざすことにする。

   §

「えっ、みんなも食べたぁいぃですってぇぇぇぇっ――――!?・・
 テーブルに置かれた〝まぼろし野菜やさいゴロゴロシチュー〟は、ひとさらしかない。

「だ、駄目だめだもんねっ! もう中鍋ちゅうなべ三個分さんこぶんしか、のこってないんだぁからねっ・・
 ラプトル姫用ひめように出した、ひとさらまもるように――立ちふさがる御神体ごしんたい

「それデはせメて食べタことがない人だケにでも、振ル舞ってはいかガですか
 みじかからだをコツンと、丸茸まるきのこ当てる・・・飛ぶ燭台アーティファクト

「ルリーロさまと、カヤノヒメちゃんかぁ……じゃあ、もう二人分ふたりぶんだけ出してあげますぅ……ノヴァド工房長こうぼうちょうわぁ、残念ざんねんだったわねぇん。もちろん、ほかのみんなは我慢がまんしてくだーさいっ! なんせこの、あたくしさまが我慢がまんしているのですからぁっ・・
 ふたたびフォークを、ぼうに向ける丸茸まるきのこ

「「「「えっ、イオノファラーさまが、食べ物《もの》を我慢がまんっ!?」」」」
 チラチラとシチューのうつわを、物欲ものほしそうに見ていた全員ぜんいん驚愕きょうがくした!

「シガミーがもどるマでは手ヲ付けないと、願掛がんかけヲしたので
 ヴォン♪
 クルと半回転はんかいてんする棒。
 上下じょうげはなく、どちらのさきおなじようにとがっている。

「か、かみであらせられるイオノファラーさまが、願掛け・・・というのもおかしな気がしますが――わかりました」
 メイドがいきを吐いた。
「そうですわね。それにあのおあじをもう一度味いちどあじわったら、一杯程度いっぱいていど我慢がまんできるとはおもえませんものっ」
 おじょうさまも、ふかいきを吐く。

「シガミー……行儀ぎょうギわルホうのシガミーが帰還キかんすレば、確保かクほしてアるミノタ……まぼロし食材しょクざい調理チょうりシて、まタ大鍋おオなべにたくサんツくるこトが可能かノう

「たくさんつくる? あっ――薬草師やくそうし生産数倍化せいさんすうばいかスキル!」
 やわらかそうなねこ魔物まものかお菓子かし
 ソレを手にしたレイダが、シガミーの初期しょきスキルにおもい当たった。

「はいそウです。レイダはこまかなこトに、気づク才能さいのうがありまス
 ヴヴヴヴッ、はちうごき。
「あのギルドちょうの血を継いでしまっ……継いだのですね。ゆくゆくはギルドの事務方じむかたにスカウトしたいですわ」
 名物めいぶつ受付令嬢うけつけれいじょうが、サボりがちな仕事しごとおもいを馳せる。

「あぁらぁぁん、すっごくおいしぃですららぁぁん! なんですの、このおあじ! おとうさ……いえ国王陛下こくおうへいかにも召しあがっていただきたい、逸品いっぴんですらん!」
 目をかがやかせるラプトル王女殿下おうじょでんか

「うふふ、気に入ってもらえたぁみたいねぇん♪ そこまでおいしそうなかおをされるとぉ、振る舞ったぁ甲斐かいがぁ有るわぁねぇぇん…………しょうがぁなぁいわぁねぇぇー。今日きょう二号店にごうてん貸し切ります・・・・・・・・
 ちいさな手足てあしひろげ、そりかえる丸茸まるきのこ

「どうされルのですか
「この、ミノタ……まぼろし食材しょくざいおぉー使つかったぁー〝野菜やさいゴロゴロシチュー〟おぉー、みぃーんなぁにー振るぅ舞ぁいまぁーすっ・・

「ということわぁ、イオノファラーちゃぁん? ミノタ……まぼろしのぉ食材しょくざいのぉ、お披露目おぉする・・・・・・・・ってことぉー?」
 なりゆきを見守みまもりつつ、ひたすら〝シェフのおかせせコース〟をしょくしていた伯爵夫人ルリーロが――とうとうこえを上げた。

   §

 はちの巣をつついたような有様ありさまの、しんギルド会館かいかん
 ギルド職員しょくいんと、町中まちなか料理人りょうりにんと、大道芸人だいどうげいにん右往左往うおうさおうするなか

「にゃみゃごぉ♪」
 人知ひとしれず雄叫おたけぶ、ねこ魔物まもの
 魔物まものはダンスをやめて、猛然もうぜん超女神像ちょうめがみぞうのまから飛び出していく。

 ふぉん♪
『おにぎり>みつけたものっ!』
 くびに提げた木板きいたには、そんな文字もじが書かれていた。
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