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3:ダンジョンクローラーになろう

332:龍脈の回廊、シガミー探索四日目

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「それで、シガミーさがしは、どーなってんだ?」
「まだ、音沙汰無おとさたなしなのですわよね? さっき見てきたら、おどつづけていましたわ」
「はい、おにぎりが捜索たんさくはじめてからは、シガミーと会話かいわ出来できなくなってしまいましたし」
「まさか、このままかえってこないなんてことは……うぅ、ぐすん」
「「あー、泣かない泣かなぁい。大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶぅ、なんせ美の女神イオノファラーズであるあたくしさまたち・・がぁ付いているのですから――なんとぉ二匹にひきもぉ」」
「イオノファラー、せメて二体にタい、もシくは二柱ふたはシらかゾえてクださい。そレと、同期パケットロスが発生はっセいしていマ

「あら、みなさま。どうなさったのですか、こんなところでニャン
 二重にじゅうに立てた衝立ついたての、上からのぞく――ねこみみ

「「ぎゃ、見つかった」」
 おどろき飛び跳ね、尻餅しりもちをつく御神体イオノファラー

 金糸きんしかみをなびかせあらわれたのは、給仕服きゅうじふく姿すがたの――
 カヤノヒメニャン。

 つののように生えてきていた木のえだは――
 あたまに乗せた猫耳ねこみみを避けるように、うしろへ折れ曲がっている。
 ぎっちりと編み込まれた見た目は、樹皮じゅひしろいのもあってまるで――

「お出かけするときの、リカルルさまみたい♪ カワイイっ!!」
 はしゃぐ子供こども
「そうですわね、木のみきというかつのというか、上手じょうずかくせていますわね♪」

「うふふ、くすくす、ありがとうございますニャン
 研修中けんしゅうちゅう丸札まるふだも取れ、猪蟹屋ししがにや二号店にごうてん店長以上に・・・・・切り盛りする――やり手美少女てびしょうじょである。
 ここは猪蟹屋ししがにや二号店店内にごうてんてんないに、しつらえられた区画くかく
 まるで貴族きぞくのダイニングか、高層階こうかいそうにあるクェーサー家作けつくりりつけのテーブルのような。
 やたらとながいテーブルが、二脚並にきゃくならべられている。

「イオノファラーさまがた同期どうき遅延ちえんしょうじていますわ。ねんのためクイックセーブ・・・・・・・して、同期どうきなおすニャン
 「「あー、クイックセーブねぇー、あれさぁーなぁーんかさぁー、キュピキュピって変な感じ・・・・するからさぁー、また今度こんどで――」」
 テーブルから飛びおりる御神体ごしんたい
 そのかげに、もう一匹いっぴき……いやもう一柱ひとはしら姿すがたが、見えかくれしている。

 コン、コトン♪
 お盆トレーで受け止められる、御神体イオノファラー
 そのおとは、二つ重・・・なっていた・・・・・

「「くそう、さすがはシガミーのからだにぃ、星神ほしがみのぉ中身なかみねぇ……に、にげられなぁい」」
 スッと持ちあげられた、お盆トレーうえ
 ポコポコンと座りこむ、御神体イオノファラーズ。

我慢がマんしテください、イオノファラー。シガミー探索たんサくのタめの仮想環境かそうかんキょう維持いジしなければなりマせ
 ヴォォォン♪
 獲物えものを逃がすまいとするかのような、飛ぶ棒ジンライ機動マニューバ

「カヤノヒメ名義ログインでイオノファラーさまがたCTRL+Sクイックセーブニャン
 美少女びしょうじょカヤノヒメが――ぱちんっ♪
 ゆびを鳴らすと――

「キュピピピッ――!?
「キュピピピッ――!?
 双子ふたご生きた・・・丸茸まるきのこがパタリとたおれ――そのうちの一匹いっぴきが、ひかきりつつまれて消えた。

 カララララァン――♪
 ご来店きたくを知らせる、鈴の音ベル

 くるくるん♪
 テーブルのうえかるまわされるお盆トレー――コト、コトリ。
 そっと置かれる女神御神体イオノファラー視認可ビジブル)と、仮想化バーチャル女神御神体イオノファラー視認不可インビジブル)。

「おかえりなさいませニャ――ン
 ご帰宅らいてんしたお主人きゃくさま出迎でむかえるため、すべるように姿すがたを消す、超絶ちょうぜつ美少女びしょうじょカヤノヒメニャン。

「おい、ありゃぁ――リオレイニアよか、いたに付いてるんじゃぁねぇのか?」
 本日ほんじつ金槌かなづちなしの工房長ノヴァド
 作業着さぎょうぎでもなく普通ふつうのさっぱりとした服装ふくそう

「ふふん♪ まだまだですわよ。本気ほんきを出したレーニアニャンの可憐かれんなことときたらもう♪」
 血色けっしょくばみ、興奮こうふんするご令嬢れいじょう

「そうだね! ポイントカードが溜まると描いてもらえる、あの小さい絵・・・・は、リオレイニアさんと一緒いっしょのが一番いちばんおおいもんねっ♪」
「もう、やめてください、リカルルさまも、レイダもっ!」
 ヒラヒラと舞う子供レイダの手を、ギュッと押さえるメイドさん(元侍女長もとじじょちょう)。

「ガハハハ、〝魔神まじん〟もかたなしだぜ、こりゃ――――♪」
「ノヴァド工房長こうぼうちょう? いつまでもこんなところあぶらを売っていて、平気へいきなのですか?」
 ヒュォォォォ――――!
 冷気れいきを受けたレイダが、身をふるわせる。

「おっと、いけねぇ。じゃ、じゃぁ、シガミーのことぁたのんだぜ!」
 ピューっとみせ通用口うらぐちから、はしり去ってしまう工房長こうぼうちょう

 店員用てんいんよう通用口つうようぐちから「ノヴァドはどうしたんだい? あわててたけど……」
 と入れちがいに、出てきたのは――

「あら、ニゲル。ちょっとコッチにいらっしゃいな♪」
 おじょうさまが、たまたまとおりがかったらしいくろ服装ふくそう
 二号店にごうてん店長てんちょう青年せいねんを、気安きやすく呼びつけた。

「り、リカルルさまに、みんなも来てたの?」
 うしろあたまをかきながら、やってくるのは――
 あたまねこみみを乗せた、たよりがいのなさそうな。
 こしにはやすそうなけんが、たずさえられている。

「ええ、シガミー探索たんさく経過報告けいかほうこくをしていましたのよ。良ければアナタも参加さんかなさいな」
 命令めいれいする伯爵令嬢リカルル
 やや派手はでな、裾長すそなが大人おとなじみたドレス。

「はい、おおせのままに」
 うやうやしくこうべを垂れる青年せいねん
 自分じぶんのぶんのカップを持ち、着席ちゃくせきしようと――

「あら、これはこれは、ルリーロおじょうさま♪ 本日ほんじつはポグバードとムシュルがいが手に入りましたので、ダイニングへご案内あんないいたしますかニャン
 カヤノヒメの鈴の音こえが、店内てんないひびわたる。

「えぇー、そぉうなぁのぉー? じゃあシェフのおかせせコースでぇー、二名様・・・ぁご案内あんなぁいーっ♪」
 そんなしたっ足らずなこえに、かおをしかめるご令嬢リカルル
 長テーブルバンケットテーブルのある一画いっかくまで、そのこえとどいたようだ。

 衝立パーテーションの向こうから、姿すがたあらわしたのは――
「あらぁ、みなさまもぉー、来ていらしたのぉねぇぇー♡」
 質素しっそなドレスに、魔法まほうつえ
 ただし、山菜さんさいのようなかたちたばになっておらず一本きり・・・・
 本日ほんじつつえ質素しっそなようだ。

「みなさま、ごきげんようらぁん♪」
 おなじく質素しっそなドレスに身をつつんだ、連れの女性じょせいあらわれた。
 うま人形にんぎょうのようなものを、沢山たくさんくっつけたb彼女《かのじょ》をみるなり――

「――――っ!?」
 がたん――――カチャリ。
 鳴るカップ、姿すがたを消すニゲル店長てんちょう

「あら、ラプトルひめさま、ごきげんよう♪ ニゲル、ちょうど良いですわ、アナタにおはなしが――――あら?」
 キョロキョロと、あたりを見わたすご令嬢リカルル

 不意ふい伯爵夫人ルリーロかおが、天井てんじょうを向く。
 一斉いっせいうえを向くと――天井てんじょう張りついていた・・・・・・・のは、くろ制服せいふく

「ちっ――さすがは奥方おくがたさまだっ、逃げられない!」
 ッチェェェェェィィィィ――――――――ばたん!
 天井てんじょうさかさまになって駆けぬけ、換気かんきダクトへ飛びこんでしまう店長てんちょう

「ぴゃ、ぴひゃらぁぁぁっ――――ららぁぁん!」
 その場にくずれ落ちる、央都おうと自治領じちりょう第一王女だいいちおうじょ

「あー、泣いちゃった。王女おうじょさま――」
 たたたたと、駆けていくレイダ。
「お待ちなさい、ソレは布巾ふきんですよ!」
 子供レイダを追いかける給仕服姿リオレイニア

「まったくもう、ニゲルってば。お二人ふたりには一度いちど、きちんとはなし合っていただかなければいけませんわねぇー」
 おじょうさまがおともなく、紅茶こうちゃをすすった。
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