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3:ダンジョンクローラーになろう

320:惑星ヒース神(シガミー)、虚空をさまよう

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 ぽっきゅぽっきゅ――ぽきゅむ♪

 やぶけたうでをどうにかこうにか、しばりつける。
 これで、おれの中身・・が出て行っちまうことは、なくなった。

「ふぅ、ひと安心あんしんだなぁ」
 あたりを見わたすも、なにも無い。
 ただ、地面じめん何度なんどか踏みしめると――
 踏んだところしろく、まるでこおりか張ったみたいにいろが付くようになった。
 ピキパキと割れそうなおともするから、あまりつよくは踏めないけど。

 ぽきゅぽきゅぽきゅきゅむ♪
 この足音あしおとがなんだかはわからないけど、なにもないきりなかおとがするのはたのもしくおもえた。

「この化けねこなんだとしても・・・・・・・、おれをすくってくれたことにかわりはねぇ」
 大事だいじ着てやる・・・・ことにする。

「さぁ、ここはどこだ?」
 わからねぇやぁ。

「じゃあ、おれはだれだ?」
 わからねぇやぁ。

「じゃあ、どこへ行けば良い?」
 わからねぇやぁ。
 なんせ、このきりなかで見つけたのは――
 この化け猫一匹ねこいっぴきだけだからなぁ。

「なにもわからんなぁ」
 それでもつよひかりが、どっかに行ってくれたのはたすかった。

   §

「ねぇ――ルリーロちゃん……もぎゅもぎゅ
「もぎゅもぎゅもぎゅ……なぁんでぇすぅかぁー?」
 猪蟹屋ししがにや一号本店いちごうほんてん、フロアを一望いちぼうできる奥座敷おくざしき

 ひくひらテーブルのうえに、山盛やまもりの冷えた揚げいも
 そのまわりにならべられた小鉢こばちかずは、十個じゅっこほど。

「この柚胡椒ゆずこしょうなんて、良くなぁい
柚胡椒ゆずこしょう? どれぇ、もぎゅ? こほっ、こほっ!?」

「あれ? おくちにぃー合わーなぁーいぃー?」
「こほっ――か、かおりがつよぉて、かないませんわぁ!」

「また、京都弁きょうとべんになってるよぉ? そんなに、おいしくなかったぁ?」
久々ひさびさ使つこうてしもたら、ついついくちをついて出てしまいますなぁ――わては……わたくしわぁ、こっちのバベキュウあじほうがぁこのみどすぇー♪」

   §

「すこし、あるいてみるかな」
 ぽきゅぽきゅぽくぽくむぎゅっ♪
 しばったほうの手がみじかくて、あるきづれぇけど普通ふつうあるけてる。

「はしれるかな?」
 ぽっきゅぽっきゅぽっきゅきゅぽぽきゅきゅむっ――♪

 んゐ?
 ぽっきゅぽっきゅぽっきゅきゅぽぽきゅきゅむっ――♪
 ぽっきゅぽっきゅぽっきゅきゅぽぽきゅきゅむっ――♪
 ぽっきゅぽっきゅぽっきゅきゅぽぽきゅきゅむっ――♪

 結構速けっこうはやはしれるぞ!?

「こりゃぁいいやな、へへへ」
 飽きるかたおれるかするまで、はしつづけてみるか?

 ――――――――ををん。
 ん、なんかうるせぇなぁ。

 おとがしたほうを見――――――――ヴォォン!
「んっぎゃぁっ――――!?!?」
 あかひかり
 脈打みゃくうおおきな血色ちいろひかり
 そんなのがうなりをあげて、飛びかかってきた!

 さっきのまぶしいヤツに、また見つかったらしい。

「うっぎゃぁぁぁぁ――――!?」
 はしる。
 つよひかりからとおざかる!

 ぽっきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅ――――――――ヴォォン!

   §

「ねぇ、イオノファラーちゃぁん?」
「そうわねぇ、魔山椒まざんしょうコンソメあじもぉ、おいしぃよぉー

「いいえ、そうでわなくてぇー。シガミーちゃんのぉー数字すうじがぁ、増えてるみたい・・・・・・・だけどぉ――?」
「んぇ!? 増えてる・・・・? 迅雷ジンライどー言うことぉ!?
 ごとん――――ヴュゥゥゥンッ♪

 テーブルにあらわれた、おおきめの黒板くろいた
 ソコには、れいみっつの数字すうじとおぼろげな地形ちけい
 それに、シガミー(カヤノヒメ)の健康状態けんこうじょうたいなどが表示ひょうじされている。

 ふぉん♪
『>どうやら、何かから逃げているようです。音声を出します』

「うっぎゃぁぁぁぁ――――!?」
「「シガミーのこえ」」

迅雷ジンライ、メガホン出して!《・》」
 ふぉん♪
『>通話を試みることは可能ですが。
  店内では迷惑になりますので、
  コチラをお使い下さい』

 ヴッ――それはちいさなマイクスタンド。
 立てた爪楊枝つまようじのようなソレに、駆けよる御神体イオノファラー

「ココワァン――――シガミー、聞こえるぅー!?
「だれでぇーい、おれぁ死神しにがむじゃねぇやぁーぃ!」
「「返事へんじきたっ」」

「シガミー、無事ぶじなのっ!? ソコはドコなの!? いますぐかえってきなさぁぁぁぁぁいっ――――!!!
 まばらな店内てんない猫の頭のネコアタマ青年せいねんがチラリと振り向く。

「おれは御武家様おぶけさまじゃぁねぇやぁい。まぶしぃぃやぁぁーぃ!」
「もう、なにいってるのっ!? とにかく、そっちじゃないわよっ! どんどんとおざかってるわよっ
 うえ数字すうじが増えて、した数字すうじとの差がひらいていく。
 うえ数字すうじ黄色きいろになり、とうとうあかくなった。

「シガミーちゃぁん!」
「シガミー、引キかエしてクださ
 黒板くろいたはなしかける、きつねみみのご婦人ふじんとアーティファクト。

「だからぁ、おれぁ死神しにがみじゃねぇやぁーぃ!」
らちがあかないわねぇっ
 コトコトコトコトトトッ――地団駄じだんだを踏む御神体ごしんたい

「もっきゅもっきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ――――♪」
「このおとわぁ、シガミーの足音あしおとぉー
 コトコトコトトトト――――!
 跳ねる御神体ごしんたい

「そのよウで
 ヴォォンヴヴヴヴッ――――!
 うなるアーティファクト!

「あぁあぁもぉう、どんどんはなれてしもてますやないのぉっ!」
 そのするど視線しせんは、テーブルのうえ御神体イオノファラーへ。
 そのくびへ、釘付くぎづけになる。

 バシィィンッ!
 狐夫人きつねふじん平手ひらて一閃いっせん
 御神体ごしんたいまるあたまを、ペチリ。

   §

「うをわぁぁぁぁああっぁ!?」
 な、なんでぇい?

 あかたまから逃げてたら、どこかからはなしごえが聞こえてきやがった!
「だからぁ、おれぁ死神しにがみじゃねぇやぁーぃ!」
 ぽっきゅぽっきゅぽきゅぽきゅぽきゅきゅきゅむ♪
 はしはしる。
 きりなかをドコまでも。

「あぁあぁ■ぉう、どんどん■■れて■■■■■■ないのぉっ!」
 なんて言ってるか、わかりゃしねぇ。

 ――――ぞっぶぅん!
 きゅう足下あしもとがぬかるんだ!

「うっぎゃぁぁぁぁっ――ち、血の池地獄いけじごくかぁ!?」
 あたり一面いちめんが真っ赤に染まり――
 おれのからだが、しずんでいく。

 おれはジタバタともがき、すんでのところで赤くねぇ地面に・・・・・・・たどり着いた。
「はぁはぁはぁはぁ――――し、死ぬかとおもったぜ!」

   §

「ちゃいますぇ! そっちに行ったらあきませんぇ!」
 ペチペチペチリと御神体イオノファラーあたま平手ひらてたたく、伯爵夫人ルリーロ

「うぅむ、面妖めんような!? あたくしさまのあたまたたくと――」
 ぺちぺちと執拗しつようたたかれる、御神体じぶんあたま
 いたくはないのか、まるでどうじない美の女神めがみ

 ふぉん♪
『>はい。シガミーの進行方向が変えられるようです』

「そうっ、そっちどすぅぇ――――♪」
 数字すうじ緑色みどりいろにもどり――御神体ごしんたいたたく手が止まった。
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