291 / 741
3:ダンジョンクローラーになろう
291:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、杓子女とねこのまもの
しおりを挟む
「にゃみゃがぁぁあぁっ――――!」
鉄の格子を横にはらう!
ガキュッ――――キィィン!
直刀の先が、折れて飛んだ。
「ぅらぷっ――!?」
女が足下に刺さった刃先をみて、取り乱す。
体に付けた馬の人形をちぎっては投げ、ちぎっては投げ――
ポポポポポポイッス♪
コッチへ向かって、バラ撒かれる馬。
この狭い場所じゃ、仕込み刀を振り抜けねぇ――すぽん♪
ヴッ――ぱしん。
錫杖をしまい、小太刀をだした。
投げつけられた人形の姿が――――異形に変わる。
目を形作る、鋭利な宝石。
口からは、銃口の空いた黒金の銃身。
四つ足は太く不格好で、馬らしくはなかったが。
長い顔と首と胴を見るかぎり、やっぱり馬のつもりらしい。
背骨にぶら下がる腹は大きくて、まるで人ひとりくれぇすぽんと収まりそうなほどだ。
「ふぬぅ、檻を囲まれた!」
迅雷迅雷五百乃大角よう、姫さんでも妖怪狐でも誰でも良い。
助けろやぁー!
ついさっきまで、こんなことになるとは思ってなかった。
ガムラン近くの岩場に生まれ落ちてから――現れた敵はすべて倒してきた。
今回も、錫杖と小太刀で事足りるはず――という奢り。
毎日が、それなりに楽しくて、研鑽を怠ってなかったか。
どこか心が、ゆるんでいたのだ。
悔やんでも悔やみきれない。
§
「なんて焦ったときもあったが……もぐもぐもぐ」
こうして暮らしてみたら、ココもそれほど悪かねぇ。
「にゃみゃがにゃん、にゃみゃみゃごぉ♪」
飯のあとは、甘くねぇ菓子が食いてぇにゃぁ♪
小太刀を一本奪われたが、そのあとは何もされず――
飯の献立をコノ――目玉ギラギラ野郎が、甲斐甲斐しく聞きに来てくれやがる。
腹から飛びだす板。
ソコに描かれた飯の絵の中から、食いてぇ物を選ぶとソレがちゃんと出てくる。
最初のウチは〝死んだ角ウサギ〟、〝死んだ蝙蝠〟、〝死んだふた首の大鷲〟、くらいしか選べなかった。
描かれた絵を肉球で押すと、ほどなく死んだ何かが届くから――
自分でさばいて、料理して食った。
収納魔法具に入ってる食い物は、できるだけ温存しときてぇからな。
とにかく、五百乃大角対策で持ち歩いていた飯の支度一式が、役に立った。
そのうち〝鳥の丸焼き〟とか〝焼き魚〟とかが出てくるようになったのは、むしった羽や毛皮や鱗を、皿にのせて突っかえし続けたからかも知れない。
ときおり格子が開くから外に出ると、道先はひとつしかなく。
結局は別の格子へ移るだけだった。
それでも檻は次第に大きくなり、テーブルに椅子に厠に――なんと小せぇが風呂まで付くようになった。
袖から腕を抜いて冒険者カードをとりだし、現在日時を確かめるのにもなれ――
丸一日が過ぎた。
さっき選んだ菓子が届くのには、一時間くらいかかる。
「みゃにゃがぁー、みゃみゃがやーにゃん♪」
風呂にでも入るか。おれぁ祭りからずっと、働きづめだったからな♪
水も火も刀も槍も通さない服を着たまま、風呂に入ることに意味はない。
それでも(尻しか沈まねぇが)水に浸かる。
そして二号の中を〝みずのたま〟で満たし、首から下を水につけた。
すると暖かくなってまるで、風呂にでも入っているような気分になるのだ。
二号に溜まったぬるま湯は、厠で息むと勝手に落ちて流れていく。
コレはもとから強化服の仕組みで、普通に出来る。
猫耳頭をしたまま飯を食ったり、作った道具を口から外に取り出したりするやつの――逆をするのだ。
ただ、強化服の中に着ていた服や防具は、ぜんぶ腰の収納魔法具に仕舞った。
中には腰の革ベルトしか装備していない。
風呂のあとの乾燥の魔法も、だいぶうまくなったし……半年くらい住むか。
などと考えたころ、アイツがやってきた。
§
「こんにちらぁーん、ねこのまものらーん♪」
どうやらコイツぁ、地声がこうらしいらーん♪
例の女だららーん♪
この来世も広いもんだぜ。
色んなヤツが居るが、ゴーレムを操る女……か。
そんな酔狂な奴の話なんて……あれ?
どっかで聞いたか?
ガガンガンゴゴガガン♪
「みゃがにゃっ!」
うるせぇ、また杓子で格子を叩いてやがる!
お前さまは、そうやっておれの飼い主面をしてろ。
おれが、いかに快適に過ごし、だらけきっているのかも知らずになぁ。
この女は、猫族の猫族共通語をしゃべれない。
ゴーレムたちも、話すことは出来ないらしい。
おれが誰で、オマエが誰なのか?
ここはドコで、この牢は何だ?
なんていう話は、まるで出来ていない。
猫語を共用語に書きなおす板が、出せりゃ良かったんだが――
迅雷の収納魔法が使えないから、どうしようもねぇ。
というより、どうも首うしろに居るはずの迅雷が居ねぇっぽい。
つまり掛け値なしに、お手上げだ。
ガガンガンゴゴガガン♪
また杓子で格子を、叩く女。
目玉ギラギラのゴーレムが、付き従ってる。
今日のヤツは、人の形をしていた。
馬や蜘蛛の形の方が、まだましだぜ。
気持ち悪さに拍車がかかって、見るにたえない。
カタカタカタ――ン。
そのおぼつかねぇ足音もやめろにゃ。
気が滅入ってくるだろみゃぁ。
「にゃみゃがやー、みゃにゃん♪」
いいからさっさと甘くねぇ菓子を持ってきてにゃ。
ぬるくてあまりうまくない酒と、ツマミ代わりの鳥の丸焼きでもいいけどみゃっ。
ゴーレムの足音につづく――――ぽっきゅぽきゅぽきゅきゅ――――ん?
聞きなれた、ふざけた足音が聞こえてきた。
格子が開かれ――――ぽきゅぽきゅと踊り込んできたのは。
猫の魔物みたいな連中。
「ららぁーん♪ きょうはおともだちを、つれてきてあげたらぁーん♪」
ソレは、シシガニャンの群れだった。
鉄の格子を横にはらう!
ガキュッ――――キィィン!
直刀の先が、折れて飛んだ。
「ぅらぷっ――!?」
女が足下に刺さった刃先をみて、取り乱す。
体に付けた馬の人形をちぎっては投げ、ちぎっては投げ――
ポポポポポポイッス♪
コッチへ向かって、バラ撒かれる馬。
この狭い場所じゃ、仕込み刀を振り抜けねぇ――すぽん♪
ヴッ――ぱしん。
錫杖をしまい、小太刀をだした。
投げつけられた人形の姿が――――異形に変わる。
目を形作る、鋭利な宝石。
口からは、銃口の空いた黒金の銃身。
四つ足は太く不格好で、馬らしくはなかったが。
長い顔と首と胴を見るかぎり、やっぱり馬のつもりらしい。
背骨にぶら下がる腹は大きくて、まるで人ひとりくれぇすぽんと収まりそうなほどだ。
「ふぬぅ、檻を囲まれた!」
迅雷迅雷五百乃大角よう、姫さんでも妖怪狐でも誰でも良い。
助けろやぁー!
ついさっきまで、こんなことになるとは思ってなかった。
ガムラン近くの岩場に生まれ落ちてから――現れた敵はすべて倒してきた。
今回も、錫杖と小太刀で事足りるはず――という奢り。
毎日が、それなりに楽しくて、研鑽を怠ってなかったか。
どこか心が、ゆるんでいたのだ。
悔やんでも悔やみきれない。
§
「なんて焦ったときもあったが……もぐもぐもぐ」
こうして暮らしてみたら、ココもそれほど悪かねぇ。
「にゃみゃがにゃん、にゃみゃみゃごぉ♪」
飯のあとは、甘くねぇ菓子が食いてぇにゃぁ♪
小太刀を一本奪われたが、そのあとは何もされず――
飯の献立をコノ――目玉ギラギラ野郎が、甲斐甲斐しく聞きに来てくれやがる。
腹から飛びだす板。
ソコに描かれた飯の絵の中から、食いてぇ物を選ぶとソレがちゃんと出てくる。
最初のウチは〝死んだ角ウサギ〟、〝死んだ蝙蝠〟、〝死んだふた首の大鷲〟、くらいしか選べなかった。
描かれた絵を肉球で押すと、ほどなく死んだ何かが届くから――
自分でさばいて、料理して食った。
収納魔法具に入ってる食い物は、できるだけ温存しときてぇからな。
とにかく、五百乃大角対策で持ち歩いていた飯の支度一式が、役に立った。
そのうち〝鳥の丸焼き〟とか〝焼き魚〟とかが出てくるようになったのは、むしった羽や毛皮や鱗を、皿にのせて突っかえし続けたからかも知れない。
ときおり格子が開くから外に出ると、道先はひとつしかなく。
結局は別の格子へ移るだけだった。
それでも檻は次第に大きくなり、テーブルに椅子に厠に――なんと小せぇが風呂まで付くようになった。
袖から腕を抜いて冒険者カードをとりだし、現在日時を確かめるのにもなれ――
丸一日が過ぎた。
さっき選んだ菓子が届くのには、一時間くらいかかる。
「みゃにゃがぁー、みゃみゃがやーにゃん♪」
風呂にでも入るか。おれぁ祭りからずっと、働きづめだったからな♪
水も火も刀も槍も通さない服を着たまま、風呂に入ることに意味はない。
それでも(尻しか沈まねぇが)水に浸かる。
そして二号の中を〝みずのたま〟で満たし、首から下を水につけた。
すると暖かくなってまるで、風呂にでも入っているような気分になるのだ。
二号に溜まったぬるま湯は、厠で息むと勝手に落ちて流れていく。
コレはもとから強化服の仕組みで、普通に出来る。
猫耳頭をしたまま飯を食ったり、作った道具を口から外に取り出したりするやつの――逆をするのだ。
ただ、強化服の中に着ていた服や防具は、ぜんぶ腰の収納魔法具に仕舞った。
中には腰の革ベルトしか装備していない。
風呂のあとの乾燥の魔法も、だいぶうまくなったし……半年くらい住むか。
などと考えたころ、アイツがやってきた。
§
「こんにちらぁーん、ねこのまものらーん♪」
どうやらコイツぁ、地声がこうらしいらーん♪
例の女だららーん♪
この来世も広いもんだぜ。
色んなヤツが居るが、ゴーレムを操る女……か。
そんな酔狂な奴の話なんて……あれ?
どっかで聞いたか?
ガガンガンゴゴガガン♪
「みゃがにゃっ!」
うるせぇ、また杓子で格子を叩いてやがる!
お前さまは、そうやっておれの飼い主面をしてろ。
おれが、いかに快適に過ごし、だらけきっているのかも知らずになぁ。
この女は、猫族の猫族共通語をしゃべれない。
ゴーレムたちも、話すことは出来ないらしい。
おれが誰で、オマエが誰なのか?
ここはドコで、この牢は何だ?
なんていう話は、まるで出来ていない。
猫語を共用語に書きなおす板が、出せりゃ良かったんだが――
迅雷の収納魔法が使えないから、どうしようもねぇ。
というより、どうも首うしろに居るはずの迅雷が居ねぇっぽい。
つまり掛け値なしに、お手上げだ。
ガガンガンゴゴガガン♪
また杓子で格子を、叩く女。
目玉ギラギラのゴーレムが、付き従ってる。
今日のヤツは、人の形をしていた。
馬や蜘蛛の形の方が、まだましだぜ。
気持ち悪さに拍車がかかって、見るにたえない。
カタカタカタ――ン。
そのおぼつかねぇ足音もやめろにゃ。
気が滅入ってくるだろみゃぁ。
「にゃみゃがやー、みゃにゃん♪」
いいからさっさと甘くねぇ菓子を持ってきてにゃ。
ぬるくてあまりうまくない酒と、ツマミ代わりの鳥の丸焼きでもいいけどみゃっ。
ゴーレムの足音につづく――――ぽっきゅぽきゅぽきゅきゅ――――ん?
聞きなれた、ふざけた足音が聞こえてきた。
格子が開かれ――――ぽきゅぽきゅと踊り込んできたのは。
猫の魔物みたいな連中。
「ららぁーん♪ きょうはおともだちを、つれてきてあげたらぁーん♪」
ソレは、シシガニャンの群れだった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
異世界起動兵器ゴーレム
ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに
撥ねられてしまった。そして良太郎
が目覚めると、そこは異世界だった。
さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、
ゴーレムと化していたのだ。良太郎が
目覚めた時、彼の目の前にいたのは
魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は
未知の世界で右も左も分からない状態
の良太郎と共に冒険者生活を営んで
いく事を決めた。だがこの世界の裏
では凶悪な影が……良太郎の異世界
でのゴーレムライフが始まる……。
ファンタジーバトル作品、開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
報酬を踏み倒されたので、この国に用はありません。
白水緑
ファンタジー
魔王を倒して報酬をもらって冒険者を引退しようとしたところ、支払いを踏み倒されたリラたち。
国に見切りを付けて、当てつけのように今度は魔族の味方につくことにする。
そこで出会った魔王の右腕、シルヴェストロと交友を深めて、互いの価値観を知っていくうちに、惹かれ合っていく。
そんな中、追っ手が迫り、本当に魔族の味方につくのかの判断を迫られる。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる