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3:ダンジョンクローラーになろう

279:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、おかわりと食い道楽

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「どーぞ、あついから気をつけてっ――」
 リオとおな給仕服きゅうじふく着込きこんだレイダが、「わたしはこぶ!」って言って聞かねぇからまかせた。

 あんじょうけて「「ぅぎゃ――!?」!?
 ってなったが、おれがうつわに飛びつき――
 元給仕長リオレイニア重力軽減じゅうりょくけいげん魔法まほうをかけて、ことなきを得た。

「ふぅ~~っ。それにしても……アレとやり合うのは、気が引ける」
 あばくる大蜥蜴おおとかげをみてるだけで、くじけそうだ。

 さいわいなことに、やつらはちいさな入りぐちはいってこられない。
 リオレイニアの〝ひかりのたて〟も、当分持とうぶんもつし――テーブルに両手りょうてを投げだす。
 迅雷ジンライ、なんとかしてくれやぁ。

「それでしたら、この拠点きょてんから上に・・掘りすすんで階段かいだんつくったら、どーかしら?」
 うえゆびさす伯爵令嬢リカルル
 母上ルリーロの「壊る・・」にたいする、言及げんきゅうがねぇ。
 クエストならびに、かりゅうのねどこが失敗しっぱいしたら〝壊る・・〟ことに、まるでうたがいをもってないのだ。

 さらから目がはなせない五百乃大角いおのはらが、「火龍かりゅう半身はんしんをぉー、となりの広間ひろまにー閉じぃ込めぇてぇーしまうのぉねぇぇ――――――
 牝狐ルリーロの「壊る・・」にたいする補足説明ほそくせつめいがねぇ。
「(おい、交換条件こうかんじょうけんてなんでぇい?)」

「よぉくあじわって、おあがりなさぁい。もしも食べかたがぁわからぁないよぉうでしたらばぁー、食べるお手本てほんをみせてぇ、あげてもいーけどねぇー!? ぐひゅひゅひ♪ そのおつもりでぇー?」
 おれのはなしを、聞いちゃぁいねぇ。
 美の女神いおのはらはレイダだいになったゲールに……ゲールのめし余念よねんが無い。
 さんざん食ったばかりだし、ほどほどにしとけ?
 ひとめしを取りかえすのは女神めがみとして、いやひととしても本来ほんらいあるまじきおこないだからな。

 ふぉん♪
『>「一式装備ご依頼人とぉ話を付けてきたからぁ」と、
  言っていた経緯から、ミノタウロース素材の恣意的運用、
  ひいてはフィレ肉の先行試食に関する話かと』
 それはわかる。
 〝かりゅうのねどこ〟がガムラン町のまつりごとかかわるほど、大盛況だいせいきょうになるらしいことは魔術師組リオとフッカ様子ようすでわかったし。

 カチャカチャ――はぐはぐもぐもぐ――ごくん。
「コレは――なんと言えば良いのかわからぬが……ウレしさのあまりにサケびたくなるな」
 ニゲルのくろ店長服てんちょうふく
 ギルドの制服せいふくよりは簡素かんそな。
 その子供用こどもよう
 ソレに身をつつんだ火龍かりゅう化身けしん少年しょうねん)が目をかがやかせ、なれないさじでシチューをすくっている。

「えへへへっ、そーいうときはねー、おいしいっていうんだよ?」
 レイダは本当ほんとうに、火を吐く蜥蜴とかげが好きだな。
 ベッタリじゃねーか。

 ふぉん♪
『>ガムラン町に定住している子供は、
  いまだにシガミーとレイダの二人だけです。
  フェスタ開催までは、男児を見ることすらなかったので、
  よけいに珍しいのだと思われます』

「……もぐもぐもぐ、ごくん。火がなくて、マナがトオらぬ場所バショハナせば、じき冬眠トウミンする――カチャカチャ」
「そいつぁ、おれたちが落ちてきた――魔法まほう使つかえない階層かいそうのことか?」

「そうだ――火龍かりゅうには効果覿面コウカテキメンだ」
 それ、言っちゃって良いのか?

 ふぉん♪
『>全魔物に対する裏切りですね』
 だよな。
 まぁ信用しんようしてくれてるっていうよか、群れのボスに対して絶対的ぜったいてき服従ふくじゅうをしてるだけなんだろうが。

「よし、じゃあ食い終わったら、ソイツをたのむぜ」
「もぐもぐもぐもぐ……出来ぬヘヒム……もぐもぐもぐ、ごくん♪」
「なんででぇい?」
 なんででぇい?

「このちいさなからだには――まだ熱量ねつりょうが足りぬようだ」
 ぐきゅるるるっ――――♪

「ゲールはまだ、おなかいてるみたいっ!」
 からになったうつわを、かいがいしく受け取るレイダ。
 振りかえったさきに、巨大鍋きょだいなべはなく。

 ふぉふぉん♪
 収納魔法しゅうのうまほうなか
『<New>』の文字もじが張りついた、巨大鍋きょだいなべ和菓子アイコン
 それにしがみ付く――五百乃大角いおのはら和菓子アイコン)は、人知ひとしれず抵抗ていこうつづけていた。

 そう、オカワリをさせまいとしているのだ。
 ち、ちいせぇ。
 ふるふるふる――和菓子いおのはらくびを振る。
 フッカに持たれたままの、御神体ごしんたいくび一緒いっしょにうごく。

「(駄目だめだ、よこせ)」
 妖狐ようこルリーロに「壊る・・」されるよか、良いだろうが。

 すっく――きゅっ♪
 五百乃大角いおのはらなべアイコンのうえに立ち、こぶしかまえた。
 寸法すんぽうだけじゃなくて〝かみとなり〟までもが、すこぶるちいせぇ。

 おい、この世界うつつつくり、曲がりなりにも統べ、あまつさえすべてを喰らう――腹づもりで・・・・・おれを、この地に喚んだ・・・んだろう?
五百いおの〝はら〟よぉ、おまえさまは食い道楽どうらくの――まさに神髄しんずいだろーが?」
 うまいもんを食うよろこびは、人一倍ひといちばいわかるはずで。

 ふぉん♪
『>美の女神とは?』

「じゃあ、あとひとひとだ。それで手を打て、またつくってやるから!」
うそついたら、「食る・・」からね」
 この辺一帯へんいったいくらい尽くすってか。
 やりかねないのが、おそろしいから、聞きながしとく。
「わかった」
 ドズゥゥン♪
 巨大鍋きょだいなべあらわれた。

「――さぁ、おかわりどーぞ♪」
 ごとん。

   §

 ズズズウズズズゴゴゴゴゴゴゴン!
 せりあがる岩壁いわかべで、火龍かりゅう仕切しきられていく。
 ズズゥン、ドズズゥゥン――群青色ぐんじょういろに閉じ込められる大蜥蜴けしん
 しばらくのあいだ地響じひびききがつづき、やがておさまった。

「ふぅー。ほんとうに、大人おとなしくなったぜ」
「あのかべいろは、コレとおなじですわね♪」
 ひめさんが手に持つのは、おれがやった小太刀こだち群青色ぐんじょういろ新色しんしょく)。

「ソウダ。マナを枯渇コカツさせるドレイン・フィールドをツクりだすカベだ……ミノタウロースには効かなかったが――」
 そっと、差し出されたうつわを受けとるレイダ。

 ゲール少年しょうねんはニコリとわらい、真上まうえゆびさした。
「んぁ? 天井てんじょうがどーしたぁ?」
 ソコソコのたかさの岩天井いわてんじょうには、神力しんりょくとも魔法具まほうぐが取り付けてある。

 ヴォヴォゥン!
 ひかりのたてを解除かいじょする、リオレイニア。
 火龍かりゅうはいり、あたりをさぐるエクレア。
階段かいだん滅茶苦茶めちゃくちゃこわれていて、とてもあるいてのぼれそうもありません!」
 なんてこえが聞こえてきた。

「〝魔法まほう使つかえないいわ〟の影響えいきょうわたし魔法杖つえでは、とても全員ぜんいんを乗せて往復おうふくはできません」
 もどってきた給仕服きゅうじふくが、おおきいほうつえにぎりしめている。

「そうですわね。ただでさえ、おかあさ……名代みょうだい巨大な杖ルードホルドでもなければ、自在じざいそらを飛ぶわけにはまいりませんもの」
 リオが乗り物代ものがわりにしてる、おおきいほうつえ
 アレはフッカの魔法杖ヤツながさもふとさも、そこまで変わらない。
 気軽きがるに飛んでたけど相当そうとう熟達じゅくたつにしか、出来できねぇ芸当げいとうってワケか。

「あっ、じゃぁ、迅雷ジンライならどうだ!?」
 おもい出した!
 うえ魔法まほう使つかえない階層フロアで、彼女リオは〝超特大火球ひのたま〟と〝階層を満たす大波みずのたま〟を出してる。

「――そうでスね。可能かのウおモわれマすが、わたシ橋渡し・・・シないととおれない経路けいろみチとは呼べないのデは――」

「ワレは、おなじオイシイをもとむ」
 振りかえれば少年しょうねんが、ちいさなさじにぎりしめている。

「あー、うえまで掘るぶんの、めしを寄こせってのか?」
「それわねー、〝おかわり〟っていうんだよ」
 御神体ごしんたいへ向かって、三度突みたびつきつけられるうつわ

 さっきとおなじ、やり取りののち――
「もうひとさらだけだからねっ――それとコレよりもおいしいものを見つけたら、かならずあたくしさまかシガミーにおしえること! いーい?」

「――さぁ、おかわりどーぞ♪」
 ごとん。
 レイダが三皿目さんさらめをおくと――

「ソレならひとつ……もぐもぐ、ごくん……心当ココロアたりがないでもない」
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