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3:ダンジョンクローラーになろう

277:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、火龍とレイダ

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「――ダンジョン・トラップ<混乱コンラン>が、発動ハツドウしたワケではないのだな?――」
 みんなに持たせた耳栓みみせんは、手直てなおしに手直てなおしをかさねて、いまでは全部ぜんぶ種族しゅぞくあたまに付けられるようになった。
 つくるときにおおきさを変えてやれば――こうして火龍ゲールだってつかえる。

「ああ、安心あんしんしてくれ」
 すんでのところで、大騒動おおそうどうにならずに済んだ。

へん所見ところみせちゃって、わるかったわねぇー
 お前さまいおほはらからしたら、いつもの食い意地いじだけどな。
 おれのあたまうえ
 巨大鍋きょだいなべ四分よんぶんいちを、ひとりでたいらげた御神体ごしんたいはらふくれてる。
 こころなしかおもい気もするからひっつかんで、あとを付いてきた子供レイダ手渡てわたした。

「そういえば火龍かりゅうさんは、なにを食べるの?」
 袈裟けさのように上からかぶる、しゃらあしゃらしたふく
 そのへそのあたりについた物入れポケットに、ギュッと仕舞しまわれる御神体びのめがみ

「ムゥ? ヒト幼体ヨウタイが増えている? 繁殖ハンショクしたノカ?」
「(ちがうちがう、こいつはあの〝ねこ魔物まもの〟みたいなヤツの中身だ・・・)」
「(ムム? 店主てんしゅこえが、聞こえる)」
 すまん。つい念話ねんわ使つかっちまった。
 ココに居ないから良かったけど――貴族連中きぞくれんしゅう……えっとひと魔王まおうみたいな。
 なんて言やぁ良い、迅雷ジンライ

 ふぉん♪
『>まさにエリアボスと呼べば良いのでは?』
 んー、そうなのか?

「――ゲール、緊急時以外きんきゅうじイがい念話ねんワ使用しよウヲひかえてくダさい。ひト生息域せいそくイきにオけるボスで有ル狐耳族きつねみみゾく……天高てんタかトがっタみミを持ツ種族しゅゾくノ、まえではとク――」

「(ひとまず、おれ以外いがいのヤツが念話ねんわ使つかうと、攻撃こうげきされる場合ばあいが有るっておぼえておいてくれ)」
「(わかった)」
 だから使つかうな。
「――うぬぅ?――」
 火龍ゲール身動みじろぎをする。

 すたたと、おおききく下がる子供こども
 そうだな、ソレで良い。
 シシガニャンなしで触ると火傷やけどしそうだからな。

「それで火龍かりゅうさんは、なにを食べるの?」
 よっぽど知りたいらしい。
 こんなにでかくて火を吐く蜥蜴とかげなんぞ、女子供おんなこどもきらうもんじゃねぇのか。

「――幼体ヨウタイは、レイダと言ったか?――」
「うんそう、わたしレイダ! ただのレイダよ♪」
 おまえさんには〝クェーサー〟っていう、立派りっぱ氏名うじながあるだろーが。

「――フム。ワレは雑食ザッショクだ――」
雑食さっしょく……ざつなごはん? なんでざつなの?」
 うるせぇ、子供こどもか。

「――本当ほんとーところわぁ、どーなのぉん? 魔物まものひとも食べちゃうのぉぉんぉん――」
 耳栓みみせんから聞こえる、ふざけた声色こえ
 五百乃大角いおのはらだ。
 ささやくようなこえで、こっそりとはなしに混ざってきた。
 うまいめしをたらふく食って、食欲しょくよくが満たされて。
 めずらしく飯以外めしいがいのことに、気でも向いたのかもしれん。

「――ウヌゥ? ワレはヒトは食わぬ。魔石マセキのないヒトなど食べる魔物マモノらぬ――」
「じゃぁ、なにを食べるの? とりうさぎ?」
 子供こども、うるせぇ。

「――普段フダンはソコラに生えた、適当テキトウ鉱石イシを――」
 火龍かりゅうが手を伸ばし、かべから生えた――めずしくもないとがったいしをむしり取る。
 それをつめ器用きようにつまみ、ガッギャガッギャゴギャギャギギ!

「うるせぇ!」
「うるさぃ♪」
 火龍かりゅういしを、むさぼり食う。
 いしのかけらが飛び散ってあぶねぇから、おく拠点入きょてんいぐちまではなれた。

「――ちょっと引くわねー……よいしょっと。もしあたくしさまが「いしでも食ってろ」なんて言われたら……絶対ぜったいゆるさないわよいしょっと……むこうひゃく不可説不可説転ふかせつふかせつてん億年おくねんくらいたた自信じしんあるっ――」
 レイダのふくを、よじのぼはじめる御神体ごしんたい
 からだうごかすのは良いことだが、その永劫えいごう単位たんいはやめろ。

「しかしそうだなぁ。なんでも食えるなら、いしばかりってなぁ――味気あじけねぇやなぁ」
「じゃぁ、アレ・・っ――火龍かりゅうさんにも食べさせたいっ!」
 子供レイダゆびさしたのは――魅惑みわく蠱惑こわく狂乱きょうらんかおり。

 突きだしたうでに、よじのぼり――てちてちてち。
 ばっ!
 巨大鍋きょだいなべに立ちふさがる、美にして飯のかみ
 五百乃大角いおのはら……おまえは本当ほんとうに、大人おとなげがねぇなぁ。

「良ぃーじゃねぇーか、ひとさらぐれぇ。ありゃたしかに、いつでも食えるもんじゃねぇだろう?」

「ばかねっ! そのひとさらが、お鍋一個分・・・・・になるでしょ!?
 必死ひっしか!
 あの巨大鍋きょだいなべにはまだ、半分以上はんぶんいじょうシチューとやらがのこってる。
 けどたしかに――火龍ゲールを振りかえる。

「フッカさん、ちょうど良いや。そのあらったうつわ、ちょっとかしてくれる?」

「良いですけど、なに使つかうんですか? まさか、まだオカワリするの?」
「するかっ、もうこれ以上いじょうは入らん!」
 まるで五百乃大角いおのはらみたいな、ふくれたしたぱらおさえる面々めんめん

 かちゃ――うつわをひとつかりて、火龍かりゅうへもどる。

「おれたちが食うめしりょうは、こんなもんしかねぇんだが。こんなんでも、あじくらいはわかるか?」

「ウム。ウヌラをあそこまで狂乱キョウランさせたモノに、興味キョウミがわいた。スコし下がれ」
 火龍かりゅうあたりにだれも居ないことを、確認かくにんしてから――

 岩壁いわかべつめを立て――「ヌオワァ――――フム!」

 ズゴドドドドドゴゴゴォォォォン!
 ぐわらぐらわ、らららわっ!

 ガチャガチャァァン――パリパリィィン!
 グワラララッ――なんかが色々割いろいろわれてくずれてる。

 すっころぶ、おれたち。
 真っさきに、「おなべがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!?」とわめく御神体いおのはら
 つられて巨大鍋なべをみたらエクレアとニゲルが、必死ひっしに押さえてくれてた。

「ふう、大丈夫だいじょうぶかレイダ?」
「うん、へーき♪」
 起きあがりちいさな手で、おれよりはすこしだけおおきな手をとる。

 おそるおそる火龍かりゅうをのぞくと――――ソコには。

「グッギャワオォォォォォォウ――――グルルルッ!」
 荒れくるほのお
 蜥蜴とかげかたちをした――燃えさかる何か・・

 それと、もうひとつ。
「――店主テンシュよ。コノ姿スガタではドウか? ヒトとしての意識イシキ抽出チュウシュツしてみた――」
 燃えさかる何か・・にまたがるのは、少年しょうねんのすがた。
 あれ? かろうじてあたまに乗ってるのは、ひょっとして……耳栓みみせんじゃね?

「おまえ――〝牙江戸瑠伏げえとるぶ〟かっ!?」
 ひと意識いしきってなんだ、オマエは火龍かりゅうだろーが!
 それと――

「――どーせなら、もうひとこえ! あと半分はんぶんだけちいさく出来できなぁーいぃー!?――」
 うなごええと、燃えさかる業火ごうか
 その騒乱そうらんなか耳栓みみせんにとどく五百乃大角いおのはらこえ
 それは至極しごくもっともで。

 少年しょうねんおおきさは、大男エクレア倍くらい有った・・・・・・・

ーーー
不可説不可説転/仏典に記された最大の数詞。悟りをひらく徳の途方もなさを、表したもの。10の37澗乗。
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